マーラー 交響曲第10番 2月神奈川フィル定期
ゴールデンウィークもあと1日。
私の住む関東・首都圏は日替わりで不安定な天候。
雨や荒天によって災害や事故に遭われた方々には、お見舞い申し上げます。
海沿いの神奈川中西部の実家に帰っても、渋滞と雨ばかりの連休にございました。
連休前の日比谷公園のチューリップを。
パープルとホワイト主体の渋めの庭は、とても美しゅうございました。
白と紫、高貴なる配色にございますね。
思えば、マーラーの音楽は、いろんな要素があって雑多な印象もあるけれど、基本線は真面目に人生を真っ直ぐ見据えた気品ある存在に思います。
マーラー 交響曲第10番 D・クック補筆完成全曲版
金 聖響 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
2013年 2月15日 (金) 19:00 みなとみらいホール
来年2月の神奈川フィルの定期演目は、マーラーの10番の全曲版。
聖響&神奈フィルのマーラー・チクルスのひとまずの最後。
8番は、神奈フィルがきっと晴れて嬉しい日を迎えることができる暁のお楽しみに。
その全部が聴きどころだけど、とりわけ聴き逃せないのが、ワーグナーとこの10番全曲の神奈川フィル今シーズン定期。
実は、わたくしのブログでは、この全曲版を取り上げるのは、これまで唯一の実演体験の飯森範親&東京交響楽団の演奏会のみ。(過去記事→こちら)
音源視聴は、シャイーのベルリン時代のFM音源のCDR化と、ずっと最近のハーディング&ウィーンフィルのCDとスラトキン盤のみ。
でも、ご厚意により、色んなCDを比較視聴することもできた10番。
ここ1~2年で、ついに、わたしのところにやってきた、というかこちらから10番に近づき好きになった全曲版であります。
何故、こんなに遅くやってきたのか?
それは、わたしがずっと聴いてきたマーラー指揮者たちが10番全曲版を録音してくれなかったことにもあります。
でもそれ以上に、作者オリジナルじゃない補筆作品であることが、どうにもフィルターとしてかかっていて、無意識、いや意識的、に遠ざかる心情になっていた。
でも来ましたよ、ある日突然。
そのある日は、ハーディングとウィーンフィルのこのライブCDを何度も何度も聴いて。
時には、車を運転しながら。
余談ながら、同じ補筆完成版のエルガーの交響曲第3番も同じ運命をたどった曲で、いまではエルガーには3つの交響曲があるものと完全認知しております。
マーラー死の前年、1910年の夏、第9に続いて書き始めたジンクスを破る第10交響曲。
妻アルマと建築家グロピウスとの仲にさいなまれ、自身の体調の変調にも悩んでいたマーラーの心情が反映された音楽といわれます。
5つの楽章で構想され、1楽章アダ―ジョは、ほぼ完成。ほかは、スケッチの状態で残されたのです。
これらのスケッチには、愛する妻アルマへの思いや、それと思われるマーラーの書き込みが残されていて、このスコアを遺品として後生大事に保管したアルマの消し込みなども見られるとされることから、アルマに対する焦がれるような心情の吐露をその音符に乗せようとしていた晩年のマーラーの思いが察っせられる。
マーラーに封印を指示されたアルマも、おそらく、この残されたスケッチの素晴らしさを、感じていたのでありましょう、同時代のゆかりある作曲家にその補筆完成を依頼してます。
しかし、アルマが当初容認していなかった英国のデリック・クック版がいまやいくつもある完成版の決定稿としての存在を固めつつあるんです。
それでも、クック版には3稿あって、その最終稿が年代的にも新しく、これからの定番となりそう(かも)。
聖響&神奈川フィルも、きっとこちらの版にての演奏。
今日の音源も最終稿。
ラトルと並ぶ10番のスペシャリスト、ハーディングと朋友関係にある聖響さんゆえ。
第1楽章 アダージョ 25分
第2楽章 スケルツォ 11分
第3楽章 プルガトリオ~煉獄 4分
第4楽章 スケルツォ 12分
第5楽章 フィナーレ 25分
前後にアダージョ楽章を置き、真ん中にインフェルノの意の煉獄を置き、そこでは短いながら皮相なパロディがたくさん詰め込まれている。
そして、それを挟んで、スケルツォ楽章。
4月定期の素晴らしかったアダージョ楽章が、さらに深まることを期待しましょう。
そして、一度聴いたら妙に忘れがたい2楽章は変転するリズムと主題が聴きもの。
短いけれど、どこか怪しげで、とらえどころない、でもこの愛にあふれたマーラーの曲の一面を伝えてやまない3楽章では、パロディのモザイクを聴き分けたい。
大地の歌の旋律も現れては消える4楽章のスケルツォ、ヴァイオリンのソロも聴きものだし、レントラー風のリズムの取り方も決め手。
この楽章のキモ、終楽章のドラムの強打。
はじめはびっくり。でも、音楽は徐々に浄化されて極めて美しくなってゆく。
無常なる響きも漂わせる、愛と死と、悲しみの音楽は涙誘う美しさ。
とくにフルートいけませんぜ。泣かせちゃ。
きっと、ホールは静寂が包み、その美しさにわれわれ聴衆は息を飲み、涙を浮かべ、楽員と指揮棒の動きに釘付けとなってしまうエンディングを迎えることとなりましょう。
ハーディングの自信に満ちた演奏は、この音楽をおっかなびっくり演奏していた時代が過去のものとなり、マーラーのスタンダードとしてこの曲が確立したかのような堂々たる指揮ぶり。
ウィーンフィルの美音も手伝い、まったく普通に楽しめる未完の作品の完成された完全演奏に感じる。
だが、しかし、こんなに滑らかかつ完璧でいいのだろうか、とうわだかまりも捨てきれない。
美しすぎるから。
わたしには、まだこの10番がわかりません。
ほかの版も、もっと比較して聴いてみたいと思ってます。
そして、来年2月の本番定期を、いろんな見方で聴いてみたいと思います。
10番完成版が聴ける、神奈川フィルの定期会員になるにはお早めに。
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コメント
マーラー10番完全盤…なんだかマーラー以外の人が付け足したみたいな気がして聞いた事が ありません。けれど、食わず嫌いは考えなおして聞いてみようと思います。
ベイスターズ3連勝おめでとうございます。5月攻勢準備万端ですね。いよいよここから快進撃!へっぽこベイとはおさらばですな。
投稿: ONE ON ONE | 2012年5月 6日 (日) 20時13分
正月の特別休暇、あるいは代休を振り、万難を排して参戦します!
唯一の不安はここ数年の異常気象。最寄の新幹線駅までの移動を阻む地吹雪だけ。10番のことを思えば、2時間かかるのも何のそのであります!・・・とはいえ、今年2月の「沈黙」上演では、自宅から駅まで、2時間半かかったのには焦りましたが。
チケットのいい席、とれますかねぇ。第7はいい席だったけど、第9が2階の隅っこだったもので。出来ればバスドラの圧力がしっかり聴き取れる席で聴きたい!
投稿: IANIS | 2012年5月 6日 (日) 21時02分
ONE ON ONEさん、こんばんは。
わたしも実は、食わず嫌い。
でもこんな美しく泣ける曲、捨て置くにはあまりに惜しいです。
そしてなによりも、立派なマーラーの交響曲と仕立てられております。
ホントに素晴らしい曲ですよ。
で、ベイの対中日戦。
わたしが頑張ってほしいと思っていたプロパーふたり、吉村と筒香の活躍がとてもうれしいです。
中日さんは、いまちょっとスランプなのでしょうか。
いつも裏切られてきた慎重なわたくし、まだまだ信用できません。
強いベイを忘れたファンの心情なのでしょうね。
「へっぽこ」はつねにあります。
と思って一喜一憂方が楽な悲しみのファンなのですよ。
投稿: yokochan | 2012年5月 6日 (日) 23時27分
IANISさん、こんばんは。
10番に対するそのお熱意。
前回のミューザにも増して、頭が下がる思いです。
2月の極寒の時期に、この魅力的な選曲。
お天気は祈るのみです。
チケットは、あたってみますね。
来年の冬のこととなりますが、横浜で一杯やれれば幸いです。
投稿: yokochan | 2012年5月 6日 (日) 23時38分
こんばんは。マーラーの「第10番」ハーディングは持ってます。後、オーマンディ、フィラデルフィア管があります。クック版で他の指揮者より真っ先に1965年に録音。「第1番<巨人>“花の章”付き」マーラー録音数は少ないながら先駆者が伺えられます。
今度は茨城の竜巻と自然災害は絶えませんね。怖くなってきます。
投稿: eyes_1975 | 2012年5月 8日 (火) 20時23分
eyes_1975さん、こんばんは。
オーマンディの10番全曲はまだ聴いたことがないんですよ。
花の章もそうですが、オーマンディは先駆的な指揮者ですね。
シベリウスもショスタコも、みんな先人をきって紹介につとめました。
今度聴いてみますね。
そして、明日もまた関東は荒天が予報されてますね。
地球規模で荒れる惑星になってしまいました・・・
気をつけましょう。
投稿: yokochan | 2012年5月 8日 (火) 22時05分
この記事を拝読後、唯一保有のザンデルリンク・ベルリンso盤で「終楽章のドラムの強打」を確認、他も聴いてみようという気になり、記事のハーディングVPO盤と、さらにラトルBPO盤も購入しました。意外な事に、ザンデルリンクが強打とすれば、ハーディングもラトルも中打という感じでした。
投稿: faurebrahms | 2012年5月26日 (土) 17時37分
yokochanさま~、夜分にすみません。
ついに来ましたねぇ~、マーラーの第10番全曲補筆完成版!ん~、この曲に関しては思い入れが強いせいか、ザンデルリンク盤、バルシャイ盤、ハーディング盤とCDで聞きましたが、やはり!演奏内容の濃さと、抒情性繊細な感受性に秀でた、LP時代のモリス盤の右に出るものはないと思いますね。この1972年録音のモリス盤に比べると、他の演奏は押しなべて~インパクトが弱く、平板で薄味な演奏に聞こえて物足りないですよ。
投稿: Warlock Field | 2012年5月27日 (日) 00時01分
faurebrahmsさん、こんにちは。
10番は聴くほどに魅力を増しますね。
そしてザンデルリンクのドラムの強打は意外でした。
昨今のバランスよく耳当たりもよく聴かせる演奏とは異なるものに思われますね。
一度、聴いてみようと思いました。
ご案内ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2012年5月27日 (日) 10時07分
Warlock Fieldさん、こんにちは。
モリス盤は、まったく聴いたことがありませんでした。
レコード時代に発売されたものを見た記憶がありますが、10番??って感じで、曲自体への興味がわかずスルーしておりました。
たくさんお聴きの皆さんに、お教えいただき感謝です。
モリス盤は、廃盤のようですので、中古屋さんでは必ずチェックしてみるようにいたします。
投稿: yokochan | 2012年5月27日 (日) 10時27分
お早うございます。過去記事に書き込み失礼いたします。聖響さんのマーラー10番、私も参戦したいのですが、お金の問題などで諦めることになりそうです。皆さん、私の分もマーラーサウンドを堪能してきてください。マーラーの10番の補筆完成版には、クックをはじめ、ホイーラー版、バルシャイ版などいろいろな版がありますが、くどいようですが私はバルシャイ版がベストです。ギターとかマンドリンとかあまりオケには縁がない楽器が多数登場しますが、それらの楽器が第2、第4楽章で圧倒的な威力を発揮しています。これほどの名盤がブリリアント価格600円程度で買えるとは…バルシャイは来日して読売日本交響楽団でこの曲をやったとき「マーラーがこんな楽器使いますか?」といわれて、「7番で使ってるじゃないか」とやりかえしたそうです。クック版はシャイーの正規音源とラトル旧盤を好んで聴いています。ハーディング、スラトキン、モリス、オーマンディなども聴いてみたいです。
バーバーのヴァイオリン協奏曲はIANIS様が書いておられるように保守的だけど本当に素晴らしい曲ですよね。バーバーのピアノやチェロのコンチェルトも好きです。
投稿: 越後のオックス | 2012年11月17日 (土) 07時29分
越後のオックスさん、こんばんは。
マーラー10番、わたしには、遅れてやってきた真性と思えるマーラー作品ですが、でもやっぱり抵抗はありました。
それを難なく覆したのがハーディングとシャイーでしょうか。
バルシャイは、いまのところ未聴ですが、以前にもお聞きしましたとおり、なかなかのユニークかつ説得力ある演奏のようですね。来年の定期までには、練習しておきたい音源です。
バーバーの協奏曲は、わたしも各種聴いております。
ことにヴァイオリンは素晴らしいです。
いつのまにか何種も揃えておりました。
懐かしいアキコ・マイヤースがCDでブレイクした頃、N響に来演して、ギブソンと共演した演奏が最高に素晴らしいものでした。映像と音源、両方大切にしてます。
投稿: yokochan | 2012年11月18日 (日) 00時05分
二年前聴いたマーラー9体験は忘れえぬ思い出です。その日はジャック&ベティで「マーラー、君に捧げるアダージョ」を観て、直ちにみなとみらいへと走ったのでした。その時の席は金管楽器の裏で、マエストロ金聖響の表情を見ながらの演奏でした。最後に照明が消えてゆき、深い静寂の世界へと誘われました。今回、翌日の研究会発表とうまく重なり、運よくあの映画の第10番と重なりました。ところで、ラトルもレヴァインもモリスも持っていますが、バルシャイ版が一番好きです。
投稿: マーロウ | 2013年2月 2日 (土) 19時07分
マーロウさん、こんにちは、はじめまして。
あのときの第9は、CD でいまでも大事にしております。感動的でした。
そして、震災直後の感動の6番から、じきに2年。ライヴ録音も予定されている今回の10番。
お聴きになることができてなによりです。
きっといい演奏になることと思います。
投稿: yokochan | 2013年2月 3日 (日) 18時25分