モーラン 交響曲 ハンドレー指揮
都会の中で見つけた、まるでイングリッシュ・ガーデンのような趣きある庭園。
英国庭園は、フランスのように整然としてなくて、自然のおもむくまま、流れにまかすまま、手つかず風のお庭がよろしいようで。
色の具合も、原色や赤色系よりは、クールなブルーやグリーンそのまま。
それはそのまま、英国音楽にぴったりのイメージなんです。
あと、英国のお庭には、薔薇も似合いますが、それは短い夏の一瞬。
おおむね、雪を除いた北海道と同じような四季に思います。
モーラン 交響曲 ロ短調
バーノン・ハンドリー指揮 アルスター管弦楽団
(1987.9 @ベルファースト アルスターホール)
アーネスト・ジョン・モーラン(1894~1950)は、そんなに遠くない世代の英国の作曲家。
イギリスの作曲家の系譜でいくと、直接的な師弟関係は、スコットランド系のジョン・アイアランドで、そのアイランドは、英国抒情派のひとりとして、素敵な音楽を残していて、わたしの大好きな作曲家のひとりです。
そのアイアランドが愛したのは、スコットランドも、そしてその影響下にあったケルト文化で、朋友バックスとともに、ケルトの神秘かつ原初的な世界に大いに影響を受けたのでありました。
その弟子でもあるモーラン、55歳の短命だったが、その活動の当初は、アイルランド系にありながら、自身が育ったノーフォーク地方の民謡や風物の採取に熱中し、しかるのちにアイルランドの血に目覚めていったという生涯。
簡単にいうと、その音楽は、イングランド風な大らかでなだらか、そして抒情的なV・ウィリアムズの流れと、アイルランド・北イングランドのケルト風なシャープでミステリアスな、アイアランド・バックス風の流れと、このふたつの特徴を持ち、ときにそれらがミックス混在するユニークなものといっていいかもしれません。
その基調は、ともかく抒情的。
1937年完成のこの4楽章からなる交響曲は、10年前のハミルトン・ハーティの依頼による時期にさかのぼり、この間の10年は、自身が酒におぼれてしまったという具体的な問題もあるにせよ、先に述べた作風の転換期にあったのかもしれません。
実際、この規模の大きな交響曲は、パストラルな雰囲気と、シャープで人を寄せ付けない孤独感、それとモダーンな作風とが混在していて、一度聴いただけでは、汲みつくせない魅力をたたえているのです。
聴けば聴くほどに、いずれの楽章にも愛着を覚えてくるのですが、とりわけ忘れ難く素晴らしいのが、第2楽章レント。
シベリウスの緩徐楽章のような幻想味あふれつつも、そこにあるのは、イギリスの時には厳しいブルー系のクールな自然。
その自然の絶景に、ケルトの妖精の姿をすら思い浮かべることができます。
全編、そんな風なイマジネーションを存分にはたらかせながら、シャープなアイラモルトなどを、口に含みつつ夢想するのが、最高の至福の瞬間なんです。
モーランは多作家ではないけれど、でもあんまり聴いて欲しくないような、そう、フィンジやハゥエルズ、アイアランドにも似た、こっそりとっておきたい、そんな作曲家です。
亡き、ハンドレーは、手兵のアルスター管とともに、モーランを集中的に録音しておりました。
響きの美しいシャンドスのこの録音は、このレーベルの初期を飾ったものの1枚で、ハンドレー、B・トムソン、ヒコックスと、3大英国指揮者たちの活躍の一端だったのです。
オケの響きが、オケの訛りとして美しく聴くことができます。
モーラン 過去記事
「ヴァイオリン協奏曲」
「弦楽四重奏曲」
| 固定リンク
コメント