プロムス2012 後半
この夏、世界中がロンドンに注目。
パラリンピックも終了し、同時に音楽の祭典、プロムス2012もラスト・ナイト・コンサートでもって終わりました。
ほぼ2ヵ月間、オーケストラコンサートを中心に毎日行われたその模様は、全部BBCのストリーミング放送でもって世界中に配信されるという、開かれた文化発信のBBCの姿勢は、大いに評価すべきです。
8月の後半以降、聴いた気に入ったプログラムのみを、ここに記録しとこうかと思います。
⑰ディーリアス ヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチ 10番
Vn:タスミン・リトル
ヴァシーリー・ペトレンコ ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック
CDにもなっているタスミンのディーリアス。彼女はヴァイオリンのデュ・プレだ。
明朗快活、陰りも充分、歌いに歌うピュアなヴァイオリンは、ほんと気持ちいい。
ペトレンコのタコ10は、スピーディで疾走感あふれる快演だった。
⑱ブリテン 「ピーター・グライムズ」
ステュワート・スケルトン、アマンダ・ロウクロフト、イアン・ペテルソン
マテュー・ベスト、フェリシティ・パーマー
エドワード・ガードナー イングリッシュ・ナショナルオペラ
自国最大のオペラ作曲家ブリテンの代表作を演奏会形式・セミステージ風上演。
10月の新国でもタイトルロールを歌うスケルトンが、実に没頭的な歌唱で素晴らしい。
携帯音源として、日々楽しんでます。
オペラ全体に散りばめられた、有名な海の間奏曲をはじめ、聴き応え充分。
ガードナーは、期待の英国音楽演奏の継承者。
⑲パルシファル、ベルク ヴァイオリン協奏曲、ばらの騎士、ラ・ヴァルス
Vn:F・ペーター・ツィマーマン
ダニエル・ガッティ マーラー・ユーゲント・オーケストラ
渋いプログラム、でも、アバド以来続く、このオケのバックボーン的な曲目ばかり。
ガッティの思いのほか着実で手堅い演奏。
ツィマーマンとのベルクでは、歌謡性豊かで、とても美しかった。
⑳ドビュッシー フルート・ヴィオラ・ハープのためのソナタ
シェーンベルク ピエロ・リュネール
S:クリスティーネ・シェーファー
マーティン・ブラビンス ナッシュ・アンサンブル
ドビュッシーとシェーンベルクというナイスなショートプログラム。
シェーファーの蠱惑的かつ、没頭的な演じる歌があまりに素晴らしい。
バッハもルルもしっかり歌う彼女。どうも、わたしはあのホクロが好きなんだな。
㉑ハゥエルズ 「楽園讃歌」 エルガー 交響曲第1番
ミア・パーション、アンドリュー・ケネディ
マーティン・ブラビンス BBC交響楽団/合唱団
ロンドン・フィルハーモック合唱団
今年のプロムスの中で、尾高さんの英国ものと、ハイティンク&ウィーンとともに、
もっとも注目していたコンサート。
英国音楽好きのわたしですが、なかでも最も好きな曲がふたつ。
ハゥエルズの我が子の死への想いを込めた鎮痛かつ、慰みに満ちた合唱作品。
ブラビンスは心を込めて演奏してくれました。
ミア・パーションの清純無垢なソプラノも泣けました。
いつも陽気な、RAHに集まった聴衆も神妙に集中してます。
後半のエルガーでは、ブラビンスが、ヒコックスの後継者として決まり、
とわたし的に思わせる、納得の演奏。
㉒リゲティ アトモスフィール、ローエングリン前奏曲、シベリウス 4番
ドビュッシー 遊戯、ラヴェル ダフニスとクロエ組曲
サイモン・ラトル ベルリン・フィルハモニー管弦楽団
なんと、見事なプログラミング。リゲティとローエングリンは連続して演奏。
そして、精緻なシベ4へと続きました。
底光りするようなベルリンフィルの凄さを感じ、また後半のドビュッシーと
ラヴェルでは、ラス細工のような音色と、きらめきと爆発力に感嘆。
㉓メシアン われ死者の復活を待ち望む マーラー 6番
リッカルド・シャイー ライプチヒ・ゲヴァントハウス
なかなか長大・充実のプロ。
まさかのゲヴァントハウスのメシアン。
これが新鮮で、シャイーはこういうのがいい。
マーラーは、明るく軽快に聴こえましたが、集中力常に高し。
㉔シェーンベルク 5つの小品、パリのアメリカ人
デイヴィット・ロバートソン セントルイス交響楽団
前半のドイツものはスルー。お得意のシェーンベルクは切れ味よく、かつ説明的。
ラスト、ガーシュインはノリノリで、アンコールはキャンディードときた。
このコンビ、かつてのスラトキンのようになるか。
ロバートソンはもっと聴かれていい指揮者。日本のオケが捕まえとくべき。
㉕アダムス 「ニクソン・イン・チャイナ」
カスリーン・キム、アラン・オーケ、ジェラルド・フィンリーほか
ジョン・アダムス BBC交響楽団 BBCシンガーズ
3幕の長大なオペラのセミステージ上演。
ながら聴きも半分、録音したのでいずれレヴューしたいと思います。
クセになる音楽の一種であります。
こんなオペラをやってしまうプロムスがすごい。
ちなみに、今年のプロムスのオペラは、「トロイ人」「ペレアスとメリザンド」
「女王のボディガード(サリヴァン)」「フィガロ」「ピーター・グライムズ」
そして、「ニクソン・イン・チャイナ」
㉖ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番 ブルックナー 交響曲第9番
Pf:マレイ・ペライア
ベルナルト・ハイティンク ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
もう、なにをか言わんや、この素晴らしいハイティンクならではのプログラム。
ペライアの透明感とともに、雄弁さも兼ね備えたベートーヴェンはいい。
そして、ハイティンクのブルックナー。
もったいなくて、1楽章のみの視聴でお預けとしました。
録音したので、これもまたいずれ。
㉗ハイドン 104番「ロンドン」 R・シュトラウス 「アルプス交響曲」
ベルナルト・ハイティンク ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
これもまた充実極まりないプログラムに、その演奏。
至芸品のような手作り感溢れる名演。
活気あふれるハイティンクのハイドンは、録音が少ないのが残念。
かつて、ロンドンフィルと録音していたフィリップス盤を復刻希望。
そして、ハイティンクの定番となったアルペン。
堂々たる構えで、恰幅よろしく、でも重ったるさはひとつもなく、どこまでも明快。
ウィーンフィルも、ときおりやらかしてますが、夢中の演奏ぶり。いい!
アンコールは、驚きのウィンナ・ワルツ、「春の声」でした。
㉘ラスト・ナイト
シンプソン、スーク、ディーリアス「告別の歌」、オペラアリア
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 J・ウィリアムス オリンピックファンファーレ
ドヴォルザーク 「謝肉祭」、ショスタコーヴィチ「くまあぶ」・・・・あとはいつもの。
Vn:ニコラ・ベネデッティ
T:ジョゼフ・カレヤ
イルジ・ビエロフラーヴェク BBC交響楽団 合唱団
ビエロフラーヴェクの任期、最後の出演となるのでしょうか。
ディーリアスの「告別の歌」が実にしんみりと演奏されました。
だが、さしもの自国物とはいえ、部分部分で拍手が入ってしまう・・・。
快活なニコラたんのブルッフは素敵すぎ。
カレヤはちょっと好みの声じゃないけど、盛り上がり大。
5月にCBE勲章を叙勲したビエロフラーヴェクの指揮する後半は、自国物と、
英国の国歌みたいな各曲をユーモアたっぷりで、そして有終の美に輝く演奏。
以上、プロムス2012おしまい。
今年は、オリンピックがあって、実に賑やかで多彩な演目。
それとディーリアスを中心に英国音楽も多々演奏され、実に嬉しいことでした。
そんななかで、久々登場の尾高さんが誇らしく思えます。
BBC系の各地のオケとロンドンの各オーケストラの実力もまざまざと感じましたね。
外来常連の、ベルリンとウィーンのオケのスーパーぶりも引き立ってました。
画像は、BBC放送のサイトより拝借。
プロムス2012 前半
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コメント
ブラビンズが名フィルの常任指揮者についに就任しますね。次年度の定期演奏会のプログラムが発表されていますが、いいセンスしているなと思います。東海圏にもし住んでいたら確実に定期会員になっていると思います。今まで東京のオケを振った演奏会は聴き逃してしまっているので、名フィルとともに東京に是非来てもらいたいものです。
投稿: ナンナン | 2012年9月13日 (木) 00時10分
ナンナンさん、こんばんは。
そうなんですよ、T・フィッシャーに続き、名フィルは英国のいい指揮者を迎えたものです。
フィッシャーも今年はプロムスでも活躍。
名古屋が羨ましいです。
ブラビンスは、CDでは、誰も録音しないような秘曲をたくさん残していて、なかでもコルンゴルトは私の宝物のような音源です。
是非、聴きたいですね。
投稿: yokochan | 2012年9月13日 (木) 00時24分