H・メニングハウス ヴィオラ&室内楽リサイタル
コンサート前の静けさ漂うホールです。
緊張と期待の高まる瞬間。
こちらは、代々木上原にありますMUJICASA(ムジカーザ)という音楽専用ホールでして、室内楽やピアノ演奏で、その立地のよさとともに、優れた音響にて定評ある場所です。
バイエルン放送交響楽団の主席ソロ・ヴィオラ奏者のヘルマン・メニングハウスのソロと室内楽コンサートに行って参りました。
ヒンデミット 「葬送音楽」
ブラームス ヴィオラ・ソナタ第2番
ブリテン 「ラクリメ」~ダウランドの歌曲による投影
ブラームス ピアノ四重奏曲第1番
シューベルト 「万霊節の連祷」 (アンコール)
ブラームス ピアノ四重奏曲第1番 終楽章コーダ (アンコール)
Vla:ヘルマン・メニングハウス
Pf:諸田 由里子
Vn:水谷 晃
Vc:山本 裕泰
(2012.10.04@ムジカーザ)
メニングハウスさんは、バイエルン放送響の前はカラヤン治世下ベルリンフィルの史上最年少のメンバーの第一ヴァイオリン奏者という超一流の経歴の持ち主。
カラヤンのBPO、ヤンソンスやマゼールのBRSOの映像にきっと映っているでしょうね。
そして、われらが神奈川フィルのソロ首席の山本さんに、奥様の諸田さん、群馬響の若きコンマス水谷さん。
メニングハウスさんの要望による合わせものに高い信頼感ある諸田さんに、日本オケの名手たち。
独日練達のブラームスをこれから深まる秋に聴く妙。
後半ばかりに期待していたらとんでもない。
思いのほか、メロディアスで哀悼の念が滲み出たヒンデミットの曲は、英国滞在中に遭遇した国王ジョージ6世の逝去に伴って書かれた桂曲。
滴るようなヴィオラの豊かな音色にびっくり!
この日は、終始、声量豊富なバリトン歌手の歌声を耳元で聴くというような贅沢な案配でありました。
次ぐブラームスのヴィオラソナタは、その第一音から、ホンワカしみじみとしたブラームスの旋律に心の底から、「ああええなぁ~、これだよこれっ」と思いましたね。
そして諸田さんの、そのお姿からは想像できない、構えの大きなピアノ。
メニングハウス氏のヴィオラとともに、ブラームス特有の呼吸感と豊かな足取りを感じることができました。
それにしても、この曲、クラリネットでのソナタもいいけれど、ヴィオラの人声に近い緩やかな親近感には至福の思いを感じます。
暑い夏も終わって、空気も澄んできたから、よけいに感じるその思いです。
さて、前半最後は、わたくしのファイバリット作曲家のブリテン。
この演目はアナウンスされてなかったので驚きでした。
そして初聴きの曲でした。
シビアで取っ付き悪いブリテンの器楽曲ですが、最近は無伴奏チェロ組曲にはまってます。
技巧の限りを尽くし、これといった旋律もないまま、リズムと断片的な感覚のみで曲が進行してゆくのは、ブリテンお得意の世界で、いずれその緊張が高まった時に、思い切り感動的なフレーズやメロディが現出するのがブリテンワールド。
緻密な劇音楽でもその力量は全開で、ブリテンのオペラにはまるとわかっちゃいるけど、やられてしまう感動の常套手段なのだ。
それらがそっくり、この曲にもあてはまり、最後の場面にいたって、ジョン・ダウランドの「あふれよ我が涙」の名旋律が滔々と奏されるのでした。
あまりの感動に、涙が出てしまいました。
帰宅後、調べたら弦楽合奏を背景にした演奏のCDを持っておりました。
心震わす、素晴らしい音楽に、あまりに豊麗かつ劇的なメニングハウスさんのヴィオラでした。
これを聴いて、封印していたオペラ鑑賞への思いがふつふつと湧き上がったのでした。
新国の「ピーター・グライムズ」にございます。
涼しい夜気にあたり、後半はいよいよブラームスのピアノ四重奏。
交響曲みたいな存在の大きなこの曲、ご存知のとおり、シェーンベルクがオーケストラバージョンに編曲してまして、まばゆい世紀末音楽へと変身させております。
そちらは、今シーズンの神奈川フィル定期で、下野さんの指揮で演奏予定でして、山本さんもチェロ主席の座で、再度いどまれることでしょう。
この熱く若い情熱が詰まったようなブラームスの曲に、4人の名手たちは渾身の力を込めて演奏してました。
みなぎる若さ全開の水谷さん、豊麗極まりないメニングハウス氏、硬軟見事な諸田さん、そして山本さんのチェロはいつもながらの人情肌の温もりあふれる音色でもって、メンバーたちと目を配せあいつつ、和の中心として核たらんたる存在でした。
2楽章と3楽章で、お外は雷鳴と雨音。
そんなナイスな効果音とみなぎる緊張感は、今宵の演奏を後押しするかのようでした。
あの緩やかかつブラームスらしい毅然とした3楽章を聴きながらの雨音は悪くないものです。
そして皆さんを拝見していて、そして「来るぞ~」と期待していた終楽章のジプシー風暴走特急に手に汗状態のワタクシにございました。
若いお兄さんブラームス、キターーっ、ですよ、まったく。
アンコールは、シューベルトの歌曲から。
こんな曲を聴いちゃうと、ヴィオラはまさに人声、バリトンです。
こんなに歌いまくることができるヴィオラって、いったい・・・・・・・!!
最後の最後は、再度嬉しい、暴走特急。こっちもさらにすごかった。
コンサートがはねたら、外はまだ雨。
出口でご挨拶して・・・・・。
ご一緒した皆さんと、近くのチェコ料理のお店「セドミクラースキー」へ。
チェコのビールに、珍しいチェコのお料理。
ブラームスに続いて、ドヴォルザークも聴きたくなる雰囲気にございました。
素晴らしい演奏を聴かせていただいた4人と、ご一緒した仲間に乾杯です。
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コメント
おおっ!
ブリテンの「ラクリメ」の生が聴けるとはっ・・・!
隠れたるヴィオラの名品であり、ブリテン室内楽の逸品でありますね。今、ブリテンの作品カタログも充実させるべく蒐集していますが、余りの美しさに感涙でありました。羨ましい限りであります-。
さて。来週は「ピーター・グライムズ」。yokochan様、ブリテンを味わい尽くしてまいります。
投稿: IANIS | 2012年10月 6日 (土) 01時38分
IANISさん、こんばんは。
思わぬ「ラクリメ」鑑賞でした。
泣けました。
そして不覚にも、CDを持ってることも忘れてました。
それからご報告ですが、本日5日の新国公演に飛び込みしてまいりました。
戦慄の3時間でした。
記事は土曜に起こしますが、ご覧にならずに観劇くださいますよう。
投稿: yokochan | 2012年10月 6日 (土) 01時54分
どうも先日はありがとうございました。
なんだか贅沢なひとときでしたね、そして知性的で。
秋にはピッタリの選曲でした。
アフターのチェコ料理も含めこんな贅沢をご一緒できて楽しかったです。
オペラもまた解禁なさった由、
少しづついろいろ軌道に乗ってきたのでしょうか。
来週はまた定期ですね。
よろしくお願いいたします。
投稿: yurikamome122 | 2012年10月 6日 (土) 06時44分
yurikamomeさん、こんばんは。
先日はどうもお世話になりました。
思えばゴージャスな顔ぶれに驚きです。
こんな演目を普通に楽しめるのが東京のすごいところですね。
毎日じゃ敵いませんが、ときに味わうにはこんな想像をかきたてるコンサートはたまりません。
オペラ観劇は、ほんの一時の楽しみです。たまには・・・です。
次週も面白いプログラム、楽しみです。どうぞよろしくお願いします。
投稿: yokochan | 2012年10月 6日 (土) 22時00分