モーツァルト ピアノ協奏曲第27番 ピリス&アバド
少し先取りしすぎですが、数年前の深まる秋に某寺所で撮った苔と紅葉です。
こういうのを見ると、つくづく日本人でよかったと思います。
騒がしい周囲のお国の方々には、こんな静的な静寂はわかりますまいて。
モーツァルト ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調
Pf:マリア・ジョアオ・ピリス
クラウディオ・アバド指揮 モーツァルト・オーケストラ
(2011.9 ボローニャ)
モーツァルト最後のピアノ協奏曲と、中期の短調の名作のカップリング。
あらゆる意味で、いま最高の高みに達して、なお若々しさと進取の気性に富んだふたり、ピリスとアバドの息の会ったコンビが久しぶりに、モーツァルトで共演してくれました。
21・26番ウィーンフィル(90)、14・17番ヨーロッパCO(93)に次いで、3枚目。
集中力と感受性の強さをひしひしと感じさせるピリスは、当時も今も変わらず、さらに無作為の美しさも加味して透明感が増してます。
そして、アバドは、過去録音の年代の履歴の通りに、ウィーンスタイルに乗った躍動感と歌心満載のウィーン時代から、若い奏者と共感しあいつつ瑞々しく簡潔な演奏に傾くようになったECO(ベルリン時代)を経て、古楽奏法も視野に入れ、テンポも増してより躍動的でシンプルな音楽造りが目立つようになったベルリン卒業後のいまがあって、その進化ぶりが著しい。
歳を経て、こんなにも、どんどん若々しい音楽造りに帰ってゆく芸術家はこれまでの大家で果たしてありえた存在でしょうか!
音は軽く羽毛のようでもあり、純水のように恐ろしくピュアでかつ特定の味がない。
味がなく無色透明だけれど、何にも染まらない水にこそ、味がある・・・。
日本酒や葡萄酒は研ぎ澄ますと水のようになるといいますが、まさにそんな感じ。
ひっかかるものがなくて、面白くないとおっしゃる方もおいででしょう。
ピリスとともに、アバドの作り出すこの透明感プラス若々しさには老成感は一切なく、モーツァルトの微笑みや悲しさ、遊び心もすべて内包しているようです。
早めのテンポでサラリと流すように演奏される変ロ長調の第2楽章の美しさといったらありませんでした。
同じくニ短調の2楽章も低徊感はなく、さりげないくらいに弾き、オケも演奏されます。
どうしたらこんなに無心に演奏できるのでしょう。シンプルさが恐ろしく、そして美しいのでした。
とかく深遠な思いにとらわれがちのこれらの協奏曲を、いともさりげなく、無色に演奏してしまったピリスとアバドでした。
清々しいモーツァルトが聴けました。
モーツァルト管は、若いプレーヤーとアバドを慕う仲間演奏家たちとのコラボレーションオケのようです。
ジャケットやHPサイトを見ると、ルツェルンでのメンバーたち喜々として参加してます。
シューマン2番、メンデルゾーン3番、ピリスとの23番、バッハ管弦楽組曲などなど、魅力的な演奏が報じられております。
楽団のページにあります紹介映像を貼っておきます。
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コメント
お早うございます。モーツァルト最後のピアノ協奏曲である27番、本当に素晴らしい作品ですよね。アバドとピリスの演奏は未牒ですが、素晴らしい作品の素晴らしい演奏のようですね。私はペライア指揮&ピアノのイギリス室内管、アシュケナージ指揮&ピアノのフィルハーモニア管で聴くことが多いです。最近感銘を受けたのは1955年録音のバックハウス&ベームの演奏です。武骨な鍵盤の師子王を巨匠指揮者と名門楽団がしっかりと支えている偉大な演奏ですね。
水滸伝なのですが最初は岩波少年文庫で読みました。岩波少年文庫は大人が読んでも面白い作品が多いのです。今は北方謙三の水滸伝を読んでいます。全19巻の13巻めです。ハードボイルドの第一人者といわれる北方氏ですが、歴史小説や時代小説を書かせてもすごい人です。水滸伝は原稿用紙で9500枚だそうです。
投稿: 越後のオックス | 2012年10月20日 (土) 08時09分
越後のオックスさん、こんばんは(になってしまいました)。
ペライア、アシュケナージと弾き振りの音源でお楽しみなのですね。
あとは2種のバレンボイムでしょうか。
いずれも気になるモーツァルトの協奏曲でして、どれも揃えてみたいと思ってますが、余生でそんな時間とお金はなさそうです。
バックハウス盤は、わたしも大切な1枚ですが、早々に聴くことがもったいない深淵かつ軽やかな演奏に思います。
で、こちらのピリス&アバド盤は、この曲にひるむことなくさりげなく聴ける1枚でした。
この曲、ヘブラーやブレンデルもいいです。
ほう、北方謙三氏の水滸伝もあるんですか。
なかなか大作は読む時間や機会もないもので、最近ストレスを感じますが、面白そうです。
とはいうものの、毎日の中で本を読む習慣は自らが意識して作らなくてはなりませんね。
投稿: yokochan | 2012年10月21日 (日) 00時54分