ラヴェル マ・メール・ロア ブーレーズ指揮
有楽町駅前の交通会館周辺は、まだご覧の通り、クリスマスしてございましたよ。
ワタクシ、ウレシイデス。
馬しょった「豆しば」がそこに。
有馬記念までのカウントダウンだそうで、それも「豆し馬」だそうな。
アベノミクスで何故か元気になった雰囲気が漂う街。
でもそうじゃないんだろーな・・・・。
今宵は、いい夢みたくてこんな曲。
ラヴェル バレエ音楽「マ・メール・ロア」
ピエール・ブーレーズ指揮 ニューヨーク・フルハーモニック
(1974.@NY)
ラヴェルの作り上げた、音楽のおとぎ話。
ピアノ連弾版の原曲が1908~10年、オーケストラ版が1912年。
前回のバックスの作品と同じ頃の、英仏での創作。
ドイツ・オーストリーではマーラーが亡くなってしまい、新ウィーン楽派が表現主義音楽で走っていた頃。
ちょいと調べたら、この年、タイタニックが沈没、日本では明治天皇が崩御、大正時代の元年でした。
ともかく、過去の歴史はダイナミックで、いまある私たちの日々は、未来、どのように評価されるのでしょうか?
ばかだなぁ~なんて孫子(まごこ)に言われないようにしなくちゃ。
この曲は、ピアノ版をそのままオケ編成にした組曲版より、そこに前奏曲・間奏曲・紡ぎ車の踊りなどをあらたに加えた全曲版の方をこそお薦めしたいです。
大人の音による童話ともいうべきラヴェルの優しいタッチと、精緻なる筆致により生まれた柔和で夢見心地な世界。
聴いてる、わたしたちも、日々の不満や不安をいっとき忘れ、ホワ~ンとした心地と、そんなお顔になります。
オーケストラのみなさんも、きっと優しいタッチでの演奏に心がけ、柔らかなお顔になっているのでしょう。
指揮者も、それこそ指揮棒を持たず、5つの指を微妙に駆使しつつ、ともかく優しく優しく、首なども傾けつつ指揮するのでしょう。
そんな理想的なイメージの演奏を、かつて小澤さんと新日フィルで聴きました。
誰でも思い浮かぶとおりの、そのお姿にございますよ。
で、今日のブーレーズの指揮は、そのイメージからすると、冷徹無比のお顔で、表情なし、よけいな動作もなし。指揮棒なしだけど、拍子以外はなし。
おとぎ話とは無縁のオッサンに思われがちだけど、これがどうして、スンバらしいんです。
ベルリン・フィルとの再録音は、ことごこく聴いたことがないけれど、CBS時代のアメリカ録音は、そのどれもが好きです。
ことに、このレコード。
ニューヨーク時代全盛期の録音で、その万華鏡みたいなジャケットの裏には、微笑むブーレーズの写真がありました。
あの頃、とかく冷たいお人のイメージがあったブーレーズも、鬘を装着し、微笑む人になっていったのです。
そんな外面はともかく、クリーヴランドとニューヨークとのラヴェルは、オケの機能を美的なまでに引き出し、触れると熱い、鋼鉄のようなサウンドを聴かせてくれました。
このレコードは、ラ・ヴァルスと古風なメヌエットもカップリングされていて、そのどちらも、わたくしは、それらの演奏のアバドとならぶ最高のものと思っております。
クリュイタンスやアンセルメが、いい意味で持っていた、フランス風な甘いタッチは、ときに弛緩するオケがそこにあったりしました。
それは実は味わいになるのですが、ブーレーズは、そんな曖昧な情緒は許すわけがありませぬ。
きっぱり、きっちり、ラヴェルの持つ鏡のような透明で冷たい音楽、それがおのずと暖かく響くさまを、あきれるくらい見事に描ききってみせたのです。
ここでの夢の数々は、リアルすぎて、次の朝も鮮明に思い出せそうなくらいに明確です。
しかし、そこが美しい。
さらに、「妖精の園」における感動の盛り上げも、胸が熱くなるほどの巧みさで、あんなそしらぬ顔して振ってるくせに、けっこう盛り上げ上手なブーレーズに感心することになるんです。
というわけで、高校時代に買ったレコードを思いだしつつ、CD復刻盤を聴いた今夜でございます。
さぁ、いい夢見ようっと!
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コメント
貴ブログに触発されまして、SICC-1608~11と言う番号の、『タワーレコード-スペシャル-セレクション』の鬼才時代のブーレーズのラヴェル管弦楽曲集成を買って参りまして、じっくり耳を傾けています。初出当時の我が国のレコード評論界は、クリュイタンス、ミュンシュ、アンセルメetc.のラテン系お爺様三人衆の評価が高かったようです。でも2010年代の現在、このブーレーズの解釈も、当時云々されたほど冷徹でシャープなものには聴こえないように感じます。『クープランの墓』は、えもいわれぬ香気と風情が開曲から漂って、魅せられました。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年9月 8日 (日) 11時13分
覆面吾郎さん、こんにちは。
わたしも、アンセルメ、ミュンシュから入ったラヴェル。
なぜかクリュイタンスは、聴いてませんでした。
そのあとに、ブーレーズでしたので、CBSの録音もあるのか、鮮明で、すべてが白日のもとにあるかのようなラベルが新鮮に聴こえました。
一方で、アメリカのオケから引き出す色彩感はさすがと思われます。
投稿: yokochan | 2019年9月11日 (水) 08時15分
当時のアメリカ-コロムビアCBSレーベルの、一連のブーレーズの物、それに一枚ずつ入念にリリースされた、グールドのモーツァルト-ピアノ-ソナタ全集等は、演奏自体のユニークな魅力と特質も勿論ですが、ジャケット-デザインのセンスに唸らされたものです。LPならでは‥と申せましょう。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年9月12日 (木) 22時35分