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2013年1月17日 (木)

ブリテン チェロ交響曲 ウィスペルヴェイ&聖響

Wako_1

銀座和光の1月のショーウィンドゥ。

ギリシア神話の商売の神さまのオブジェに絡みつく、今年の干支、巳。

Wako_2

5つありました、それぞれ木・火・土・金・水というイメージなそうで、物事の根源であり、1年の季節の源でもあります。

なかなかに見ごたえあるウィンドウでした。

惜しむらくは、ここで待ち合わせる方が多く、彼らはこれに背負向けるばかり。
これを楽しみに眺め、写真も撮るワタクシには、ちょっとどいてとは言えない雰囲気なんです。

Britten_wispelwey

   ブリテン チェロ交響曲

      ~チェロとオーケストラのための交響曲~


        チェロ:ペーター・ウィスペルベイ

      金 聖響 指揮 フランダース交響楽団

                   (2009.11.29@アントワープ)


ブリテン(1913~1976)の傑作のひとつ、チェロ交響曲は、1963年、作者50歳の時の作品。
ブリテンのチェロのための音楽には、この協奏作品と、チェロソナタ、無伴奏組曲3曲がありますが、そのいずれも、1960年以降の作曲で、ロストロポーヴィチとの出会いと交流から生まれたこれらの名作たち。

ちょっと怪しい関係と充分に推察できるけれど、こうして残された作品の素晴らしさと、二人の共演で録音されたブリテン以外の演奏が、その楽曲の定番となっていることから、わたしたち愛好家からすると、本当に嬉しい出会いだったと認めざるをえない。

ロストロポーヴィチとブリテンもいまは亡く、彼らを音源でしか聴くことのできない世代から、またあらたなブリテン演奏が創生されつつある昨今。
生誕100年の節目は、まさに、自演やゆかりある奏者たちから離れて、ある意味で醒めた視点でもってブリテンを再生するという試みの年になるかもしれません。
もちろん、40年近く前に早世していたブリテンですから、ことにオペラの領域においてはそうした傾向は定番で、今後ますます拍車がかかり、レパートリーとして定着化していくわけです。

今回の演奏も、まさにそうでして、求道的なオランダのチェロ奏者ウィスペルベイと、ブリテンとはなんのゆかりもない、我らが金聖響と、ベルギーのフランドルオケ。

初演後46年を経てのこの演奏には、譜面を信じ、素直に音に置き換え、かつウィスペルベイ特有の磨き抜かれた美音と深みでもって、この難渋なる音楽をクリアーに置き換えているところが素晴らしい。
この人のチェロは、エルガーの協奏曲で2回ほど聴いていますが、中でも忘れられないのは、新潟のリュートピアホールで聴いたときのアンコールのバッハの無伴奏。
ホールの美しい響きをよく把握したうえでの神々しくも輝かしい音色だった。

聖響さんが首席をつとめるようになったフランダース響の歴史をさかのぼると、1960年。
ブリテンのこの曲とほぼ同じくするところが偶然ながら面白いです。
ヘルヴェッヘと、デ・ワールトのフランダース・フィルの方が実力も実績も上ですが、今後力を蓄えていくことを期待したいです。
正直、愛する神奈川フィルの方が力量と音色の素晴らしさで数等勝ってます。
ただ、録音のあり方含めて、その雰囲気が欧州なのでして、これはなかなかに真似のできるところではないのでしょう・・・・。

以前書いた、この曲についてのことを再褐しておきます。

>1963年、ブリテン50歳の充実期の作曲で、その頃の作品はというと、「カンタータ・ミゼリコルディウム」(これいい曲です)、歌曲のいくつかと、そして「カーリュー・リヴァー」。
かなり渋い音楽ばかりを創出していた時分で、東洋のエキソシズムなどにも感化し、ミステリアスな雰囲気と独特のリズム感などにも特徴を見出すことができる時期。
正直、この曲は難解でありますし、確たるメロディーの噴出もない。
でも、ブリテン特有のクールさと熱っぽさが、混濁した響きの中から立ち昇ってくるのを聴くと、五感を刺激されるような大いなる感銘を覚えることになるんです。
ブリテンの音楽をオペラ中心に何度も聴いてくると、そうしたことが必ず体感できるようになります。

 クールでかっこいい音楽、それがブリテン。

ラプソデックな第1楽章からブリテン節炸裂。
 スケルツォとしての2楽章は、短いけど、とらえどころが難しくチェロの目まぐるしい動きの背景で、オーケストラが明滅し、これ演奏者には大変じゃないかしら。
 アダージョ楽章。この時期のトレンドか、東洋風な神秘的アトモスフェアが忍びよってくる。こんなヶ所に痺れてしまうのがブリテン好きの所以。
そして、休みなく続く終楽章では、トランペットのソロが素敵すぎる。
ここは、パッアカリアになっていて、ちょっと古風な面持ちながらも、クール&ホットなブリテンの面目躍如たる音楽が満載。<

ちょっと手を抜いてしまった記事ですが、この曲は手抜き一切なしの名品です。
ブリテン&ロストロも含め、もっといろいろ聴いてみたいです。

過去記事

 「ウォールフィッシュ&ベッドフォード」


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コメント

こんばんは

チェロ“協奏曲”でなく、交響曲であるところが、気になります。聴いてみようと思います。
“確たるメロディの噴出もなく…”
う~む、噴出しないだけに、聴き手それぞれに託される“芯”の起爆力たるや、さぞかし!と思わせますね。

無伴奏チェロ組曲第二番の、あの、渋さ極まりない感じと同じなのでしょうか。

余談ですが、同チェロ組曲、yokochan様も、格別の思い入れゆえ、記事としての“噴出”を、未だ熱い核として温存してらっしゃる様に、お見受け致します

穿ち過ぎでしょうか(笑)

私個人としては、その日を楽しみにさせて頂きます。

長々、失礼いたしました(汗)

投稿: Booty☆KETSU oh! ダンス | 2013年3月 4日 (月) 18時54分

Booty☆KETSU oh! ダンスさん、こんばんは。
いつもありがとうございます。
このチェロ協奏曲は、ブリテンらしい、カッコよさも満載ですが、実に渋い音楽です。
東洋風な雰囲気と、欧州風なペシミズムがとてもマッチしてます。
機会がありましたら是非お聴きください。

そして、ご明察のとおり、このCDの余白と、ロストロポーヴィチの名演で、無伴奏組曲は何度も聴いて、自分の中で、言葉が生まれてくるのを待機しているところです。
ちっとやそっとでは、軽々しく書けないような気がしまして、逆に機会を失しております。
あい、すいません。

投稿: yokochan | 2013年3月 5日 (火) 20時28分

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