神奈川フィルハーモニー 第286回定期演奏会 下野竜也指揮
みなとみらい地区の一番好きな景色のひとつ。
この日は、月と雲もうまく収まりました。
あと14分で、コンサートが始まります。
いつもながらギリギリの行動は、我ながらどうにかならないものでしょうかね・・・。
ニコライ 「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲
ハイドン トランペット協奏曲
Tr:三澤 徹
ブラームス=シェーンベルク編 ピアノ四重奏曲第1番
下野 竜也 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(2013.1.25@みなとみらいホール)
ユニークなプログラムの1月の定期。
「マーラーとその時代、爛熟のウィーン」が今シーズンのお題目で、今回の演目は、「ウィーン」に関わりある4人と、マーラー後のシェーンベルクが爛熟の世紀末ということで、きれいに収まった感があります。
下野さんならではの曲の配置に、今シーズンの目玉のひとつとして期待しておりました。
小柄だけれど、その指揮姿は安定感ありひとつもブレません。
後ろ姿を見ている私たちには安心感があり、その指揮を見つめる楽員さんたちからは信頼感がきっとあるのでしょう。
この日も、オケの皆さんは音楽に入り込んで、時に微笑みつつ、いきいきとしておられました。
楽しくセンスあふれるニコライの序曲。
いまにも幕があがりそうな、そんな雰囲気にあふれた感興満点の桂演でした。
年初めの定期演奏会の幕開きに相応しい音楽に演奏です。
首席トランペットの三澤さんが登場のハイドンの協奏曲。
神奈フィルのマーラーやシュトラウスで、輝かしいソロを聴かせてきた三澤さん、少し緊張の面持ちで、聴くこちらも緊張が伝播してしまいそう。
でもすぐにほぐれていつもの煌めくようなトランペットを響かせてくれました。
楽器一本で、ホール一杯に音を満たしてしまう、そんなトランペットっていう楽器はスゴイと同時に怖いイメージもありますが、三澤さんの音色は優しく柔和で、耳にとても優しいものでした。
奏者泣かせの緩徐楽章。いつも思うのはドイツ国歌、すなわち同じハイドンの皇帝四重奏曲に似ていること。トランペットを静かに吹くのは難しいことと実感しましたし、罪な曲とも思いましたよ。
鮮やかで爽快に曲を閉じると、まずは心温かい仲間たちからの祝福の拍手。
メンバーがソロをつとめたときに、オケのみんなの演奏ぶりと、演奏後のうれしそうな姿をみるのは毎度楽しく心温まるものです。
ホンワカ気分となりましたハイドンでしたね。
休憩後は、お楽しみのブラ・シェン。
手持ちのツェンダー盤とエッシェンバッハ盤でもって、今回はギレリスの四重奏版も加えて徹底的に聴きこんでいどんだ本番だけに、音のひとつひとつ、旋律のどれもこれもが耳に親しく馴染んでどんどん飛び込んでくる、あっという間の40分間でした。
聴きながら痛感したのはここにある明らかな世紀末の響きで、すなわちシェーンベルクのもの。
それも当時アメリカにいて12音技法も極めてしまったのちに、若い日々の後期ロマン派の響きに帰りつくといった感があって、ウェーベルンのパッサカリアを思い起こしてもしまった。
アメリカの学生や聴衆も意識して、平易な作風を心がけるようになっていたというシェーンベルクですが、遠い故国やヨーロッパを思う望郷の響きも今回の演奏に感じることができました。
とうのは、下野さんの指揮は、哀感あふれる場面で思いきりオケを歌わせ、心憎いほどに聴いてるわたしの気持ちを刺激してくれちゃうのですから。
第1楽章の第2主題は、思わずこっちも4拍子を取りたくなっちゃうほどに、感情あふれる歌い回し。
3楽章のこれぞブラームスのロマンともいうべき、いぶし銀的な優しい旋律はじっくりと、深呼吸するかのように深々と。
はちゃむちゃなジプシー・チャルダッシュの4楽章の中にも、何度も楽器間で受け継ぎながら奏でられる哀愁のメロディーのチャーミングかつ連綿たる歌わせ方。
シモノーさんの揺さぶるような指揮に応えて、楽員さんたちも、本当に気持ち良さそうに、心を込めてのめり込むようにして演奏してましたよ。
それにしても、ブラームスの原曲が持っている楽章間・楽章内の多面性、それがシェーンベルクによって鮮やかな対比でもって引き出されているのを痛感しました。
ミステリアスな冒頭部分の音列にシェーンベルクが着目したのは別稿で書いたとおりですが、それがどんどん発展・進行してゆくさまを、オーケストラによって目の当たりするのは耳と目の贅沢なご馳走でした。
しかも、神奈フィルの美音が終始満載なのですからね。
第3楽章の中間部に打楽器高鳴る行進曲が潜んでいるなんて思いもしません。
原曲の四重奏曲ではしっくりと収まっているんだけど、シェーンベルク版では、凶暴なくらいに突出してきて、別次元に連れていかれそう。
この楽章が印象深く静かに終わったと思うと、お一人様拍手が起きてしまいました。
それほどに、この楽章がふたつに聴こえて、もう4つの楽章が終わってしまったと思われたのでしょうか。
2楽章も奇異なまでにふわっとした存在で、マーラーの怪しげでロマンティックな楽章のように感じられる。ここではホルンと、山本さんのチェロが素敵だったことを添えておきます。
そして終楽章では興奮しましたね。炸裂する打楽器、唸りを上げるコントラバス、嘆き節のクラリネット、華麗なヴァイオリンソロ、どれもこれもがキマリまくり!
先に書いたとおり、下野指揮の着実な煽りは、最後、見事に爆発して、わたくしは興奮の坩堝。
思わずブラボーしちゃいましたぞ!
いやはや素晴らしいコンサートをありがとうございました。
ブラームスとシェーンベルクと下野さんと素晴らしい聴き手と、そしてそして、神奈川フィルに感謝です。
ということで、毎度お馴染みアフターコンサートで、ビールと紹興酒を飲みまくるのでした。
今回もお疲れのところ、楽員、楽団からそれぞれお越しいただき、さらに新しいメンバーもお迎えして、終電コースでございました。
心地よい酔いで、終電でウトウト。
満足の1日はこうして更けゆくのでした。
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コメント
どうも先日はありがとうございました。
楽しいコンサートでしたね、シェーンベルクアレンジのブラームスを実際に聴けたのも刺激的でしたけど、三澤君のトランペットもありで、結構盛りだくさんに知性を刺激して頭と心を心地よく疲れさせてくれるコンサートのあとはこれまた楽しい皆さんとのひととき、神奈川フィルの演奏会の楽しみでした。
それにしても、下野さん、いいですね。また来て欲しいですね。
そして、三澤君、いい音色で、そして緊張しましたね。それもまた楽しかった。
投稿: yurikamome122 | 2013年1月27日 (日) 06時18分
yurikamomeさん、こんにちは。
ウィーンと題されつつも、バラエティ豊かな楽しいコンサートでした。
さすがは下野さんでした。
若い三澤君は、ほんとにいいトランペッターですね。
これから、神奈川フィルとともにその力をどんどん伸ばしていって欲しいです。
そして、今回も短時間ですがいつものように飲みすぎてしまいました。いい音楽のあとはでも心地よい酔いでした。
こちらこそありがとうございました。
投稿: yokochan | 2013年1月27日 (日) 10時41分