ヴェルディ 「アイーダ」序曲 アバド指揮
夏みかんも、これからが旬です。
ぶ厚いかわをむいて、中身の房も厚いので、さらにむいて。
粒が大きく、そのプチプチ感をほんのりの甘さと酸っぱさでもっていただく夏みかん。
潮風を浴びるとみかん同様に甘さの奥行きが出ます。
子供の頃は、重曹と砂糖を少しかけて食べました。
いまは、甘さも増してそのままいただきますし、ウィスキーやドライな焼酎のあてにもなっちまうんです。
ヴェルディ 「アイーダ」 序曲
クライディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団
(1977.@ロンドン)
クラウディオ・アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団
(1978,80 @ミラノ)
スエズ運河開通の1869年、及び、カイロのオペラハウス、オープニングのために作曲・・・・・、という風にはうまくいかず、いずれにせよ、カイロからの委嘱により作曲され、当地で翌々年、ヴェルディの立ち会いなしで、当地に初演された大グランド・オペラ。
それが「アイーダ」であります。
ヴェルディは、カイロで成功したアイーダの、イタリアでの国内初演、しかもミラノ・スカラ座での上演に先立ち、3分あまりだった前奏曲を、さらにヴァージョンアップさせ、一大シンフォニアとも呼ぶべき序曲を仕立てました。
作曲家の志を抱いて、地方であったブッセート近郊から音楽都市ミラノに上京し、成功も失敗も味わわせてもらったミラノへの思いから、格別なる序曲にしたてようと意気込んだすえに生まれた作品。
出だしは、オリジナル、すなわち今我々が、通常聴く「アイーダ前奏曲」とまったくおんなじですが、途中から、アムネリスのモティーフとかも絡みだし、アイーダの旋律も絡めつつ、大規模なオーケストラサウンドに変貌、進行していくのです。
有名すぎて、ふだん浮足立ってしまう行進曲やバレエ音楽の華やかな場面は完全スルーして、アイーダとアムネリスの拮抗を浮かびあがらせるような心理的かつ劇的な、オペラからの重要素材だけをチョイスした濃密な11分間なのです。
シンフォニアともとれる序曲バージョンが11分。
通常の前奏曲が3分。
しかし、やはり、後期の最充実期にあったヴェルディが描き出した、恋と、肉親への愛、祖国への愛、それぞれが葛藤する深い人間ドラマの前奏曲としては、より簡潔な澄みとおるような前奏曲の方が相応しい。
当然に、ヴェルディは、ミラノ初演のリハーサルで、すぐさま不釣り合いを感じ取り、大序曲を引っ込めてしまい、以来この序曲ヴァージョンはお蔵入りしてしまうこととなります。
ヴェルディの死後、ヴェルディ邸に眠れるこの序曲を発見し、蘇演したのがトスカニーニ!
さらにイタリア本国では、モリナーリ指揮でローマ甦演。
いずれも、時は1940年頃、第二次大戦中で、連合国アメリカとファッショ・ムッソリーニ下イタリアでの出来事であります!
しかし、戦中のこれらの演奏後、また眠りについた「アイーダ」序曲。
次には、クラウディオ・アバドがその価値を見出し、1977年に、ミラノとロンドンで演奏と録音を行いました。
簡潔さはないものの、ワーグナーのような、登場人物のライトモティーフ化を施したオペラ本編を凝縮したような充実しきったオーケストレーションと、ヴェルディならではの歌心。
唯一、欠けているのは、華麗さと大衆性。
この渋さでもって、次なる「オテロ」と、人生の終着点ともいえる「ファルスタッフ」へと着地するヴェルディなのでした。
この曲のご本家とも呼ぶべきアバドのふたつの演奏。
ロンドンとスカラ座、ふたつのオーケストラは、アバドの意志や意欲をもっとも反映できたオケかもしれません。
音楽家として良心の塊のような存在のアバドとふたつのオケが奏でるヴェルディは、心沸き立ち、震えを呼ぶほどの共感と熱にあふれていおります。
このレアな音楽を、現田&神奈川フィルが果敢にも取り上げます
ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
Vn:三浦 文彰
ヴェルディ 「アイーダ」序曲 「シチリア島の晩鐘」序曲
「運命の力」序曲 「ナブッコ」序曲
「ラ・トラヴィアータ」前奏曲
「アイーダ」凱旋行進曲とバレエ音楽
現田 茂夫 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
2013年 5月24日 PM7:00 みなとみらいホール
ヴェルディ生誕200年。
ワーグナーのそれとともに、盆と正月が一緒にきてしまったようなワタクシにとって、最大のイヴェントのひとつが、この演奏会。
ヴェルディの守護神のような現田さんの歌いまくりの指揮と、美音満載の神奈川フィルのコラボレーションはきっと会場をヴェルディの熱気で包みこんでしまうことでしょう
5月の空に鳴り響く、存続あいなった神奈川フィルの晴れやかなヴェルディ。
楽しみです。
そして、是非とも会場へ
合唱も絡めた「アイーダ」の凱旋行進曲とバレエの超名盤は、アバド&スカラ座・合唱団のヴェルディ合唱曲集。
わたくしの高校時代の愛聴盤です。
すり減るほどに聴いた38年前は、いまはむかしですが、ほんの昨日のよう。
横浜でその思いは蘇るかも
過去記事
「知られざるヴェルディ パヴァロッティ&アバド」
「運命の力 イタリア5大指揮者で聴く」
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コメント
こちらのパヴァロッティおじさんの演奏はLP時代から親しんでいます。好きです。誰も歌わない曲ばっかり集めました的なコピーで売り出されたレコードです。
アバド卿といいパヴァロッティといい、イタリア人とは思えないくらい研究熱心です。少なくとも1970年代までのパヴァロッティは音楽に対して真摯だった。アバド卿はずっと誠実でした。
神奈川フィルの取り組みもステキです^^こちらの演奏会!私が神奈川県民なら決して見逃しません。
投稿: モナコ命 | 2013年5月23日 (木) 16時35分
モナコ命さん、こんばんは。
こちらのリコルディ社が出したレコードは、わたしは買いそびれまして、CD化なってすぐに手にいれました。
おっしゃるとおり、3大テナー前の、そんなに巨体になる前のパヴァさまは、学究熱心で、それが歌にも反映されてドミンゴより知的だったりしました。
若い頃のパヴァさまの声を聴くと、耳が洗われますね。
神奈川フィルのこの演目、正直言って応援団としては自慢できます。
県民にそのお言葉、呼びかけたいです。
今シーズンは、ブリテンもありますし、タンホイザーやトリスタンも、ワルキューレ上演もあるんですよ!
投稿: yokochan | 2013年5月24日 (金) 00時43分
今晩は、よこちゃん様。 今日のEテレ「らららクラシック」はアイーダがテーマ。 ヴェルディの失敗からの汚名返上等のエピソードも盛り込まれ仲々面白く見ておりました。
しかし、東京ドームで開催されるはずだった公演の中止には驚かされました。チケットの売れ行きが悪かったとの事ですが、折角のアニバーサリーイヤーなのに何とも残念な話ですね。ここへ来て韓国のイベント会社の関与云々、キナ臭い裏話的な記事もネットで掲載されてますが、実際どうなんでしょうね?
まぁ、この歌劇の素晴らしさは疑うところは無いにしても、もし記事が事実なら、あまり良い気持ちはしませんですねぇ。
投稿: ONE ON ONE | 2013年9月 7日 (土) 21時59分
今日9月9日のあまちゃんを見て…鈴木のばっぱの北鉄への感謝のセリフに涙ぐんだ私です。よこちゃん様もよく言っておられますが、年齢と共に涙もろくなりましたです。
投稿: ONE ON ONE | 2013年9月 9日 (月) 23時12分
ONE ON ONEさん、こんにちは。
お返し遅くなってしまいました。
だいたいにおいて、東京ドームでオペラをやるという企画事態がバカげてます。
オペラをなんと考えてるんでしょう。
スペクタクルはほんの一部で、アイーダは、祖国と親子、恋人への愛に揺れる女性の物語です。
普通の劇場で、普通にやれば、こんなことにはならなかったはずです。
超大型画面で、パブリックビューイングを企画してたみたいですから、だいたいどこの某国企業が関わっていたかおわかりでしょ!
わたしは、中止でよかったと喜んでます(笑)。
とか言ってると、どこからか矢が飛んできそうですが。
有名歌手を網羅してただけに、そのスケジュール変更は、世界のオペラハウスに玉つき現象を起こしてるみたいです。
そして、「あまちゃん」ね。
このところ毎日泣かせますね。
これまでに軽やかなまでのスピード感が、すこししっとりうとしてきて、終わりにむかってるんだな、と思わせます。
あと10回ちょっと、終わったら、そのあとどうして過ごせばいいんでしょうね・・・。
投稿: yokochan | 2013年9月11日 (水) 10時54分