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2013年6月20日 (木)

ブリテン 「ラクリメ」 今井信子 

Ouji_a

今日も雨。

きっと明日も雨。

体も適応し、慣れれば、そして多く降らなければなんのことはない。

しかし、いけませんね、ここ数年の豪雨は。

居座る前線まではいいけれど、熱帯性の低気圧、ましてや台風が悪さをするのが。

美しい紫陽花を愛でる、そんな情感のへったくれもない無慈悲な雨は遺憾です。

Takemitsu_britten_debussy_imai

  ブリテン  「ラクリメ」 ダウランドの歌曲による投影

       ヴィオラ:今井 信子

       ハープ:吉野 直子

                 (1993.2 @ラ・ショウド・フォン、スイス)


「悲愴」に始まった今週。
哀感・哀愁路線中。

毒食わば、皿まで、梅雨の虚しい天候にこっちも波長を合わせきって、テンション下降の音楽を聴いてやろうっていう寸法ですよ。

今宵は、ブリテン。

哀感表現の楽器としては、ヴィオラはもううってつけでございましょう。

1913年生まれ、誕生日は、わたくしと1日違いのブリテン、37歳の作品。

英国ルネサンス末期の作曲家、ジョン・ダウランドの「あふれよ、わが涙」というリュート歌曲にインスパイアされた、ヴィオラとピアノのための17の部分からなる変奏曲。

ジョン・ダウランドは、英国国教と相いれず、フランドルやドイツ、イタリアで活躍し、のちに英国に戻り、作曲家兼リュート奏者として名を成した人であります。
もっとも高名な作品が、このもとになった歌曲。

そして、もしかしたらもっと有名だったのが、リコーダー奏者だった頃の、フランス・ブリュッヘンが吹いたレコード、「涙のパヴァーヌ」。
フランドル国のファン・エイクが、ダウランドのこの曲をリコーダー1本に編曲しました。
短髪のブリュッヘンが、ジャケットになったこのレコードは、わたしも高校時代に無心に聴きました。ほんと、無垢の音楽を、純なる奏者が無心に演奏するけがれない完全無垢のレコードでした。

ブリテンにも、この曲があることを最近知りました。

昨年、バイエルン放送響の首席ヴィオラ、メニングハウス氏と山本裕康さん夫妻との演奏会で、聴いて大いに感銘をうけました。→こちら

でも、自分のCD棚をよくみたら、いくつも持ってました。
メインの曲になっていないから見逃してるんでした。

その代表が、今井信子&吉野直子のコンビのもの。
こちらはピアノではなくて、ハープでの伴奏。
リュートの古雅で混じりけない雰囲気に近いものかもしれないハープによる演奏。
日本人同士、透明感と諦念の表出がハンパない。
研ぎ澄まされすぎて、ちょっと怖いくらい。

あと手持ちは、タヴェア・ツィマーマンとハルトムート・ヘルとのピアノ版。
ナッシュアンサンブルによる、作曲者自身の弦楽オーケストラ編曲版とふたつを持ってまして、今宵、その3種を聴き比べました。

劇的に緊張感高いのが、意外にピアノ版で、集中力も要求されます。
弦楽版は、よりブリテンらしいミステリアス感やクール感が表出されますが、劇的なのはピアノ版で、弦楽版は意外と癒し系の美しさを感じます。

どの版も、最終場面でピュアに再現されるダウランドのオリジナル旋律が、極めて感動的で、思わず、それこそ涙が出そうになるくらいに感銘がじんわりと広がります。
ブリテンの筆の冴え、人の心に訴える作曲家としての才能と劇作への適性を、この14分あまりの作品で感じ取ることができます。

明日も、自分を思いきり哀しい気分にしてやりたい。
そんな曲を聴こうじゃないか。
(大丈夫ですよ、ワタクシはいたって元気ですからね)

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コメント

そうなんです。あんまり誰もホメてくれないって言うか、弦楽器をやってる人にしかウケないっていうか、ツウ好みの演奏家!今井信子。知れば知るほど今井信子はすごい。渋いし深い。。。クラシック界のスルメイカと専門家の間で呼ばれている(呼ばれていないか。。。)方なのです。かめばカムほど味わい深い。。ブリテンのこちらの作品は今はじめて知りました^^;(俺ってダメなヤツ!)
それに、なになに?さまよえる様はブリテンと誕生日が?1日違い?ほほー^^そうなんですね、ブリテンと。ほほー^^
しかあーっし!!!おほん!不肖わたくし、かの著名なる作曲家である「シャルル・エミール・サンサーンス」と誕生日が、おほん!誕生日が一日違い!おほん^^一日違いなのでございます。どうよ!
クラシックファンってけっこう探しますよね^^;
私が雨の日に聴きたくなる曲ってバッハが多いんです。ブッシュの弾くバイオリンにゼルキンが伴奏してる録音とか。これからじめじめしますよね。雨が降りますよね。
こんな時こそ!蓄音機でSPレコードを聴こう^^
スクラッチノイズが全く気にならない。蓄音機愛好家にはじめじめの季節っていうか梅雨の季節はまさに最高のシーズンといえます。
スレッドから敷衍しすぎた書き込み。。お許しください^^;

投稿: モナコ命 | 2013年6月20日 (木) 23時28分

モナコ命さん、こんばんは。
今井さんは、ヴィオラで世界に通用する初の奏者でしたね。
メジャーのフィリップスから、デイヴィスとベルリオーズを入れたり、ブラームスのソナタを入れたりで、小澤、内田、今井、そんな3大世界基準といってもいいかも。

そして、ブリブリブリテンさまと、ご生誕が近いからといって、変な目で見ないでくださいましよ。
あたしゃ、れっきとした・・・・。

サン・サーンスさまの誕生日違いは、お洒落ですね。
おフランスの香りがするでございますよ。
ちなみに、AKBの新センターちゃんは、わたしと同じ誕生日ざますよ。
さそり座の男ですからして。

雨の日は、音楽を聴くに限りますね。
蓄音機でバッハなんて、想像するだけで素晴らしいです。
雨の被害がなければ、いい季節ですね。

投稿: yokochan | 2013年6月21日 (金) 23時20分

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