ラヴェル 「クープランの墓」 ハイティンク指揮
お昼のコンサートで、休日とはいえ、もうビルのフロアの明かりも少なくなっている、この夜の光景。
なんでいつもこうなっちゃうんだろ。
それもこれも、音楽を聴く楽しみと、仲間と語り合える嬉しさ。
神奈川フィル定期は、しばらくお休みだけど、後半のスタートにはまたいつものみんなが勢ぞろいして、あれこれ楽しく過ごしたいです!
ラヴェル 「クープランの墓」
ベルナルト・ハイティンク指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(1973 @アムステルダム)
ラヴェルの数ある作品のなかで、わたくしは、「優雅で感傷的なワルツ」と「ラ・ヴァルス」のふたつの円舞曲、そしてこの「クープランの墓」と「古風なメヌエット」が好き。
ほかの曲も、もちろんよく聴くのですが、過去に軸足を置いて、少し懐古調なところと、フランス風に鼻に抜けるよな洒落た雰囲気と、格調の高さ。そんな感じのラヴェルが好き。
熱烈な愛国主義者だったラヴェル。
第1次大戦では、パイロットを志願したものの叶わず、従軍の看護兵として傷病兵の看護や運転手として活動。
そこで書き続けた作品が、6曲からなるピアノのための組曲で、この戦争で亡くなった知人たちの名をそれぞれに付して18世紀の音楽の形式と意匠をこらして、愛国心と伝統への尊敬を思いを通じて、レクイエム的な追悼の思いをここに込めた。
フランスの伝統と、尊い命を国に捧げた人々へのオマージュともいうべき高尚かつ、愛情にあふれた桂作。
本来のフランス語の原作名の意味は「墓」ではなく、「亡き偉人を偲ぶとか、尊んで」という意味合いがあるようです。
ピアノ曲からラヴェル自身が4つ選んで、室内オーケストラ規模の編成の音楽にしましたが、ここでは全曲にわたって、オーボエとイングッシュホルンが大活躍。
プレリュードの冒頭からまさに古風なイメージを奏で、次いで木管どうし、木管と弦とのかけあいが愛らしく楽しいフォルラーヌ、さらに、オーボエが古(いにしえ)を懐かしむように古雅な雰囲気をかもしだすメヌエット。
そしてその最後は、まるでマジックにかけられたように夢見心地にうっとりと終わります。
ラストの快活なリゴードンでは中間部にオーボエの懐かしくも洒落たソロがあります。
このあたりの詩的な美しさいかにもラヴェルの音楽そのものに思うものです。
ともかく素敵の一言につきるラヴェルの「クープランの墓」。
こんなこ洒落た音楽をハイティンクとコンセルトヘボウは、ブラームスやブルックナーをどっしりと演奏するあのコンビとは、とうてい思えないくらいに、軽いタッチでもって、ふんわりと聴かせてくれます。
このコンビのフランス物は、一様に素晴らしく、ドビュッシーではもう少しくすんだヨーロピアン・セピアトーンを聴かせ、少し重さも加えたりもするんですが、ラヴェルでは、オランダのカラーとしてイメージされるオレンジ色風の明るさも加えて、落ち着きとあでやかさのバランスの兼ね合いがとても素晴らしく聴こえます。
フランドル調のラヴェル。
この曲では、あとなんといっても、アンセルメ、クリュイタンスの往年の名演が忘れがたいところ。
ボストンでもラヴェルを再録しているけれど、やはりコンセルトヘボウの魅力には敵わない。
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