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2013年10月26日 (土)

ブルックナー 交響曲第7番 シュナイト指揮

Takane

昨年の今頃、法要があって群馬方面に走ったおり、榛名山に行きました。

その途中の展望スペースにて。

木の様子が、ヨーロッパっぽい。

この先を行くと、真っすぐの一本道。

ついついスピードが出てしまうところ、最近はやりの、音楽が鳴る道路になってるんです。

「静かな湖畔の森の宿から・・・・」ってね。

ナイスです。

Bruckner_sym7_schneidt

  ブルックナー  交響曲第7番

    ハンス・マルティン・シュナイト指揮 

  ジャパン・アカデミー・フィルハーモニック

              (2008.10.28 @杉並公会堂ライブ)

台風去って、冷気を呼んだ今宵は、澄んだ夜の空気のなかで、秋のブルックナーを。

しかも、シュナイト翁の日本での忘れ形見的な1枚で。

上記の日付のライブ録音。

この日、わたくしは、この会場におりましたし、ご一緒した方々もよく覚えてます。

その日の演奏会の感想はこちら→シュナイトのブル7

シュナイト師のもとに生まれたユースオケですが、この演奏を境に、シュナイトさんは退任し、同時にわたくしの愛する神奈川フィルや、バッハオーケストラからも身を引いて、南ドイツに帰られました。

この若いオケは、その後、ゲルハルト・ボッセを指導者にむかえましたが、そのボッセさんも、いまや亡く、巨匠のもとでの若いオケから、徐々にプロ化を目指す動きもあるといいます。

当日は、演奏の細かな精度など気にならないほどに、音楽全体をつらぬく、一本の緊張と暖かみを伴ったエモーションが強くて、それに飲みこまれるようにして、長い演奏時間の73分をいとおしむようにして味わったものです。

CDになったこの音源をあらためて聴いてみると、アンサンブルや個々のセクションに物足りない場面はあります。
しかし、演奏会での印象と同じく、指揮者の強い意志とそこに、全面的に従う奏者の意思とを、ともに感じることができます。
 当日、シュナイトさんが自らマイクをとり、聴衆に語ったのは、ブルックナーがワーグナーの死に際し捧げた2楽章のこと。
そして、ブルックナーのカトリック信仰とアルプスへの自然信仰のこと。

これらの言葉をCDでは、かみしめるようにして、聴くことができるのが喜びです。

ことに25分をかけた第2楽章は、一音一音、大事に慈しむようにして演奏されていて、多少の傷はまったく気にならなくなってしまうほどに、真摯で熱っぽい、そして暖かさにあふれた素晴らしい表現です。
遅いテンポにだれることなく、フレーズが次々に繋がる、シュナイトさんならではの、緩やかな表現。
まるで、オペラの一場面のような、心に刻まれる名場面とも呼ぶべき楽章です。

もちろん、全曲のどっしりした構成のなかに、しっかりこの楽章はおさまっているのでありまして、伸びやかな歌が、深呼吸したくなるほどに気持ち良い1楽章。
若々しいリズムの刻みと、中間部ののどかな田園情緒がさすがに素敵な3楽章。

そして、当日も驚きだった、終楽章の堂々たる佇まい。
あせらず、あわてず、ゆるやかに、でもどこまでも歌い、音楽を忘れぬ献身ぶり。
本当に素晴らしいエンディングです。
曲が終って、しばしの沈黙ののちに発せられるブラボは、シュナイトさんのものでしょうか。

神奈川フィルや、シュナイトバッハの演奏を通じて、いつも聴いてきたもの。
それは、南ドイツてきな大らかさと、音色の暖かさ、そして祈り。
ここでも、それはおなじ。
ヴァントのような厳しいブルックナーでなく、南ドイツのアルプスの麓にある、ゆるやかなブルックナーで、その山の麓には村の人びとが集う教会があって、親密なオルガンの音色がいつも響いてる。
それは決してうまくはないけど、人の心を引きつけてやまない優しさがあるのです。

昔のレコ芸を見ていたら、ドイツのレポートのなかに、シュナイトさんと、ミュンヘンバッハとの出会いの記事がありました。

1984年、カール・リヒター亡きあと、シュナイトさんを後継者に据えることを決定ずけるマタイ受難曲の演奏です。

Schneidt


ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場では、さまざまなオペラを指揮することになりますし、前職のヴッパタールでは、ワーグナーのニーベルングの指環を指揮してるんですよ。
びっくりです。

オケには厳しかったシュナイトさん、でもその音楽は優しかった。
いつまでも元気でおられますこと、お祈りしてます。

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コメント

へえ、ハンス・マルティン・シュナイトという人は、こういう経歴の人だったんですか、全然知りませんでした。新聞の切り抜きの記事、とても興味深く読ませていただきました。ミュンヘン、あるいはその近郊に住んでいるのかな?
 今は健康がすぐれないとか、そういうことがあるんでしょうか。

投稿: 安倍禮爾 | 2013年10月27日 (日) 11時41分

安倍禮爾さん、こんにちは。

シュナイトさんの偉大さの片鱗をお分かりいただけましたでしょうか。
神奈川フィルは、こんな大物を指揮者に迎え、毎回伝説的なブラームスやベートーヴェン、シュトラウスを演奏していたのです。

日本大すきだったシュナイト師、本人はまだまだ活躍するつもりでしたが、無理もたたり、異国での指揮活動もドクターストップとなりました。
長旅は難しいのかもしれません。
アルヒーフにある、バッハのいくつかのレーゲンスブルク音源の復活が望まれます。

もちろん、日本での演奏の数々も、しっかり音源化されてます。是非!

投稿: yokochan | 2013年10月27日 (日) 22時29分

こんばんわ。

いや、懐かしいですねぇ。シュナ爺とJAPの7番。
あの時の演奏は完成度云々は別として
素晴らしく、見事な音楽をしてましたねぇ。
若さと逞しさと、なによりシュナ爺のバトンによる
歌いあげる演奏へ導かれてましたね。

録音では伝わらないあの瞬間に満ちた充実感。
今思い出しても・・・。

そして、その後の我等呑んだくれ親父たちの
若々しい終電ダッシュも(笑)

投稿: スリーパー | 2013年10月27日 (日) 22時57分

スリーパーさん、まいどです!

そうです、あのダッシュはきつかった・・・けど、わたしは帰れませんでした。

CD化されたこの音源は、また違う次元で魅惑的ですが、あの場所での演奏はまた格別の思いがありますね。

いまでも脳裏に残りますよ、シュナ爺の指揮とうしろ姿!

投稿: yokochan | 2013年10月27日 (日) 23時20分

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