バーバー ヴァイオリン協奏曲 スターン
汐留のイルミネーション。
このあたりが開発されて、大企業のビルが乱立するようになって、もう10年。
新橋までは行くけど、その先の汐留にまで足を伸ばすことは、あまりありませんでした。
へっぽこ人生ですから、こんな吹き抜けがふんだんにあって、高層エレベーターでオフィスまで駆け上がるような、カッコいい仕事はしたことありません。
ただただ、高い高級そうなガラス張りのビルを、下から仰ぎみるだけ。
そんなことには、縁もなく、人生を終えて行くことでしょう。
このあたりや、都心のオフィス街を、カツカツと靴音を立てて闊歩する、サラリーマン諸氏や、OLさま方たちを、眩しく見るのみですよ。
人生、それぞれ。
わたくしには、そんなかっこいいステージはありませんが、自分の幸せと、自分の道を、信じて歩くのみです。
バーバー ヴァイオリン協奏曲
Vn:アイザック・スターン
レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック
(1964.4 @マンハッタンセンター、NY)
アメリカの作曲家、サミュエル・バーバー(1910~1981)のヴァイオリン協奏曲。
マーラーの没した1年前に生まれ、世の中がデジタルになった時代まで生きた、作曲家。
自分はオジサンだから、バーバーが亡くなったときも覚えてます。
(なんたって、ショスタコやブリテンの死も覚えてるんですから、ジジイですよね)
亡くなった当時は、唯一の有名曲、「弦楽のためのアダージョ」が盛んにかかりました。
当時で聴けるバーバーといえば、その曲と、「悪口学校」、「ヴァネッサ」、チェロ協奏曲に、このヴァイオリン協奏曲。
いまもそんなに、バーバー受容は音楽界で変わってないように思うけど、交響曲や歌曲が聴かれるようになった。
なかでも「ノックスビル1915夏」は、スラトキンがN響でやったり、プレヴィンやMTTが録音したりで、隠れた名曲として記憶に刻まれるようになりました。
そして、しつこいようですが、わたくしの3大ヴァイオリン協奏曲のひとつが、このバーバー。
ベルク・コルンゴルト・バーバー=BKBなのです。
そして、僅差でエルガーとディーリアスを入れると5大ヴァイオリン協奏曲。
あくまで、「わたくしが好き」という概念ですので。
>1940年の作品。
日本は戦時への道をひた走り、国民は徐々に統制のもとに置かれつつあった時分に、バーバーはこんなにロマンテックな音楽を作っていた。
文化の豊かさの違いか、日本は暗い押し付け文化しか残されなかった。
私的初演のヴァイオリンは学生、指揮はライナー。
本格初演は1941年、ヴァイオリンはスポールディング(なんとスポーツ用品のあの人)とオーマンディという豪華版。< ~過去記事より~
3楽章の伝統的な急緩急の構成でありますが、バーバー独特の、アメリカン・ノスタルジーに全編満たされております。
ロマンティックなことでは、コルンゴルトと遜色ありませんし、ゆったりと甘味な1楽章、夢見つような2楽章、無窮動的な3楽章。
そんな楽章のそれぞれの色合いも、とても似てます。
しかし、コルンゴルトは、後ろ髪惹かれるような憧れと悔恨を感じるのに対し、バーバーは、あくまでも明るいアメリカの大地に根差したかのようなノスタルジーです。
それを強く感じるのです。
だれもが正しいと思い、清廉潔白で、陰りはナシ。
コルンゴルトの思いにあった過去(ヨーロッパ)、バーバーの思いにあった今と黎明期の美しき希望に満ちた過去(アメリカ)。
そんな風に思って聴く、ふたりのヴァイオリン協奏曲。
涙がでるほどに、美しく、愛らしく、哀しい。
ベルクは、また違う存在。
もっと緻密で、複雑で、雰囲気的じゃなくって、特定の思いに満たされている。
3曲の比較になってしまいました。
バーバーのこの曲を聴くと、ほっと一息、とても安心できます。
冒頭の、大らかで、ゆったりとふぅ~と呼吸したくなるような、それこそ、呼吸の良い音楽です。
そして泣ける2楽章。
泣きのオーボエ、次ぐヴァイオリンソロ、オケとソロが連綿たる旋律を紡いでいくさまは、もう視線は遠くに飛んで、いつしか、ぼやけてしまいます。
短くて元気良すぎる3楽章が、あっけないですが、それはそれ、不思議と、前の素敵なふたつの楽章にぴったりと合ってます。
いかにもスターンらしい、大らかさと男気の優しさ。
素晴らしいヴァイオリンに、バーンスタインの気持ちのこもった指揮。
第9は行けなかったけれど、こうして今宵も、緩やかな気分で過ごせたのは、バーバーのおかげです。
(コルンゴルトの次は、これですよ、神奈フィル様)
いま、外は冷たい雨ですが、夜半には雪になるのでしょうか。
過去記事
「スラトキンのハンソン」
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コメント
月曜日の記事で、3大バイオリン協奏曲と仰っていたので、CD棚を探して、正にスターンのバーバーを聴いているところでした。ロマンチックな名曲と思っております。
投稿: faurebrahms | 2013年12月19日 (木) 01時09分
この間、外れた詰め物の治療が終ったばかりなのに、先週初か中頃にどうも奥歯が欠けた様で、年末にしょ気ているスリーパーです。こんばんわ。
コルンゴルト、バーバーときたら次はベルクでしょうか?
実はコンチェルト嫌いな私め、それでもこのバーバーやベルクのコンチェルトは比較的隙かも。
このバーバーのコンチェルトは何だか、50年60年代ハリウッド、かの地が一番良かった時代の最後の頃につくられたほろ苦い名画を思い出してしまいます。
ちなみに僕の3大Vn協奏曲はブルッフ、シベリウス、ラロです(笑)
次点で作品の出来不出来は別にドヴォルザーク、グラズノフでしょうか。
投稿: スリーパー | 2013年12月20日 (金) 21時34分
faurebrahmsさん、こんばんは。
自分の中での勝手な3大云々であります。
お伴いただき、恐縮にございます。
アメリカの生んだ、新ロマンティックですね。
投稿: yokochan | 2013年12月20日 (金) 23時32分
スリーパーさん、こんばんは。
年末、クリスマス時の歯の支障は、まったくイヤなものですね。
子供の時にありました。
アメリカンドリームを感じさせる、楽観派の音楽ともいえますね。
どこか懐かしい。
しかし、渋いとこきましたね。
ラロが入ってるとこは。
そして、ドヴォさんに、グラさんですかぁ!
ドヴォルザークは、しみじみですね。
グラズノフは、石田氏の演奏で開眼しました。
あとモーランとブリテンと、ウォルトンも捨てがたいところ。
投稿: yokochan | 2013年12月20日 (金) 23時45分
お早うございます。不快な内容のメールを送り付けたりして本当に申し訳なく思っております。本当にごめんなさい。12月の神奈川フィルの第9の演奏会に行きたかったのですが、チケットも購入する一歩手前までいったのですが、今回は見送ることになりそうです。
kasshiniさんとそううつ病者同士の交流ができて本当にうれしかったです。同氏も相当文学にも音楽にも造詣の深い人のようですね。場所を提供してくださったブログ主様に感謝です。私のことkasshiniさんやSHUSHIさんが心配してくれています。本当に感謝です。
バーバーのコンチェルト本当に素敵な曲ですよね。冒頭部分からして詩的な美しさに満ちています。コルンゴルト、ベルクのコンチェルトは私も好きです。プロコフィエフとバルトークの2番も捨てがたいですね。
投稿: 越後のオックス | 2015年12月12日 (土) 06時20分
越後のオックスさん、こんばんは。
ご返信遅くなりました、件のメールアドレスは、現在は使用しておりませんので、確認できませんでした、すいません。
音楽好きのみなさんが、顔は知らねど、いろんな形で交流できるのは、こうしたSNSのよさですね。
バーバーのこの曲、来年は実演で聴けそうです。
投稿: yokochan | 2015年12月20日 (日) 22時59分