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2014年1月15日 (水)

モーラン 「ロンリー・ウォーターズ」 ディルクス指揮

Sodegaura1

1月1日の相模湾の夕日。

海辺に育ちながら、海から昇る朝日は、数えるほどしか見ていない。

朝が弱いのですよ。

それ以上に、夕日、夕焼けが大好き。

箱根と伊豆の山に、紅く染まりながら静かに沈んでゆく夕陽が、子供の頃から大好きだった。
そんな絵も描いてた少年でした。

Moeran

  モーラン 小管弦楽のためのふたつの小品

    「ロンリー・ウォーターズ」、「ホイソーンの影」

 

  ネヴィル・ディルクス指揮 イングリッシュ・シンフォニア

               (1971.6 @アビーロードスタジオ、ロンドン)


アーネスト・ジョン・モーラン(1894~1950)は、スコットランド系のジョン・アイアランドの弟子にあたり、ともに、英国抒情派のひとりとして、バックスとともに、ケルトの神秘かつ原初的な世界に大いに影響を受けた作曲家であります。

55歳の、海での事故死による短命だったが、その活動の当初は、アイルランド系にありながら、自身が育ったノーフォーク地方の民謡や風物の採取に熱中し、しかるのちにアイルランドの血に目覚めていったという生涯。

簡単にいうと、その音楽は、イングランド風な大らかでなだらか、そして抒情的なV・ウィリアムズの流れと、アイルランド・北イングランドのケルト風なシャープでミステリアスな、アイアランド・バックス風の流れと、このふたつの特徴を持ち、ときにそれらがミックス混在するユニークなものといっていいかもしれません。
(以上、自身の過去記事から引用しました)

そんなに多くはない、モーランの作品の中で、一番有名なオーケストラ作品がこちら。
あとは、交響曲とヴァイオリン協奏曲。

ふたつの小品とありますが、お互いにその関連性はないけれど、ともに、エッセイ風の瀟洒でデリケートな、ラプソディック作品であります。

「ロンリー・ウォーターズ」というタイトルからして、静的な水の流れを思わせ、気持ちが穏やかになりますが、その音楽も、まさにそのとおり。
移ろいゆく、水、それは、河でもあり、沼拓でもあり、静かな波の海でも、湖でもあります。
この動きの少ない静謐な音楽は、心に染み入る民謡調で、モーラン自身が少年時代を過ごしたノーフォーク地方のそれに相応しいものです。

日本人の誰しもが、和的な田舎の田園風景や、夕べの空に一筋に立ち上る野焼きの煙を思うように、モーランのこの音楽には、きっと英国に住まう人々の、同じような思いが去来するのかもしれません。
同様に、RVWも同じであります。

ふたつめの「ホリソーンの影」は、中世エリザベス朝の作曲家ホイソーンのパートソングに基づいたラプソディです。
古風ないでたちに身をまとい、そこに、先ほど来の、淡い色彩に基づく懐かしいほどの歌をにじませるのです。

こうした、モーランの作風は保守的ではありますが、そのいずれの音楽にも流れる抒情には、抗しがたい、ほのぼのとした魅力を感じるのであります。

英国ベテラン指揮者ディルクスの音源は、これ以外にはアイアランドやウォーロック、ハーティ、アーノルド、レイなど、地味系の英国音楽家のものばかりで、名も知れぬ要素ばかりなのですが、ここで聴く演奏は、心のこもった、共感にあふれたものでした。
優しいです。

モーランの過去記事

 「モーラン ヴァイオリン協奏曲 モルトコヴォッチ」 

 「モーラン 弦楽四重奏曲、ヴァイオリンソナタ メルボルンSQ」 

  「モーラン  交響曲 ハンドレー指揮」

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コメント

こんにちは、よこちゃん様。
夕日綺麗ですねぇ。私は朝焼けより夕焼けが好きです。
何故か訳もなく泣きそうになりませか?
私がケルト音楽を知るきっかけは〈エンヤ〉ですね。
あの独特の世界感に惹かれます。
モーランという作曲家の知識は全く持ち合わせておりません。しかしながら相変わらずよこちゃん様の音楽の幅の広さに驚きです!
また、CD探しにさまよい歩きますかな、これもまた楽し…
さて、今日は三浦大輔氏の「ようこそ先輩」がEテレであるので見逃せません。早く帰らねば☆

投稿: ONE ON ONE | 2014年1月17日 (金) 18時09分

ONE ON ONEさん、こんにちは。
夕焼けは、切ないです。
いつも感傷に浸ってしまいますが、暗くなっていくのが寂しいのでしょうね。

保守的な存在ですが、モーランは、師アイアランドや、バックス、バントックなどとともに、わたしの好きなケルトに感化された作曲家たちのひとりです。
常に、シャープな海を感じさせる、ちょっと切ない系の音楽です。

番長のテレビ見逃しました。
あと、佐々木大魔神の野球殿堂入り、目出度いです。

投稿: yokochan | 2014年1月18日 (土) 10時14分

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