シューベルト ピアノ五重奏曲「ます」 ギレリス&アマデウスSQ
毎度の画像ですが、お正月の吾妻山は、相模湾を背景に菜の花が咲き誇っております。
春まで、この菜の花は一部頑張って、桜の花と華麗な饗宴を行います。
初夏にはつつじ、紫陽花、夏にはいち早くコスモス。
今日の名曲は、室内楽から、心弾むような素敵なメロディのこの曲を。
シューベルト ピアノ五重奏曲 イ長調 「ます」
Pf:エミール・ギレリス
Cb:ライナー・ツェペリッツ
アマデウス弦楽四重奏団
(1975.8 @トゥルク、フィンランド)
シューベルトの音楽には、どこもかしこにも「歌」がある。
その朗らかな「歌」と裏腹に、どこか悲しい死の影のようなものも聴いてとれる。
でも、この「ます」には、ちょっと風変わりな編成ということもって、家族的な雰囲気も漂ってます。
1919年の秋口に書かれたこの作品は、オーストリア北部の町で鉱山業を営み、音楽を愛するアマチュア・チェリスト、パウムガルトナーさんの依頼によって書かれました。
ときに、シューベルト22歳。
その生涯は、あと9年しかありません。
昨日のショパンは、19歳の作品で、39歳の生涯。
モーツァルト35歳、シューマン46歳、メンデルスゾーン38歳。
早世の作曲家たちのなかでも、シューベルトは一番若くして亡くなり、そして、オールジャンルにわたったその作品数も非常に多い。
歌曲「ます」の旋律を第4楽章の主題として、変奏曲形式として、全体が5つの楽章に。
ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの編成。
だから、この曲は、低音域が厚みがあり、その分、ピアノの軽やかさと、高音域が引き立つように聴こえて、見事な5という数字のバランスを保っています。
「ます」の旋律は、まず弦楽だけで、優しく、親しみを持って奏でられます。
そして、第1変奏から、ピアノが登場。
弦が、さながら水のさざ波のように、たゆたう中、ピアノは、その中を泳ぐ鱒のように、ときにトリルを聴かせながら、気持ちよさそうにメインテーマを弾くのです。
こんな素敵な旋律と、その変奏の展開って、ちょっとないですよ。
歌の人、シューベルトに脱帽です。
きっと初演で、チェロを弾いたであろう依頼者のパウムガルトナーさんは、幸せな気持ちで、一家団欒のようにして、こお曲を楽しんだことでしょう。
ほかの4つの楽章も、みんな素敵ですよ。
思わず深呼吸したくなるような、みずみずしい第1楽章に、さわやかで、次々に転調していって微細にムードが変わる2楽章は、いつまでも浸っていたくなります。
快活なスケルツォの3楽章、陽気な終楽章でおしまい。
今宵の演奏も、ちょっと古めだけど、思い出の1枚。
高校生の時に、よく聴いたものです。
硬派なイメージのギレリスは、西側に出てきてDGに録音をたくさんし始めて、柔和さと、音の深い探求ぶりとで、実は凄いピアニストなのだということを痛感したものです。
ブラームスやモーツァルトの協奏曲に、ベートーヴェンのソナタなど。
アマデウスとのコラボレーションが、とても新鮮だったこの1枚。
全員が、生真面目にこの曲に取り組みながらも、どこか微笑みを絶やさす、まろやかな美しさにあふれた名演だと思います。
ベルリンフィルの名物コンバス奏者、ツェペリッツも嬉しい。
ブレンデルやペルルミュテールもよく聴いてきた1枚ですね。
こちら側の海は、三浦半島。
子供たちが寒いのに、薄着で元気に、縄跳びで遊んでいました。
お正月の光景です。
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コメント
yokochanさんの写真のとおり、「春」のイメージですよ、「ます」は。ニックネームの基となった「ます」の変奏曲楽章より、僕は第1楽章や、どことなく民族舞曲調のフィナーレが好きですが。
僕がこの曲で選ぶとしたらブレンデルの演奏かな?ギレリスのピアノだと、硬質で冷たい印象があるんだけれど、どうでしょう?
投稿: IANIS | 2014年1月 9日 (木) 02時02分
菜の花、いいですね。お浸しにして食することができますから。
そちらだと、2月中旬以降なら、’ふきのとう’が現れてきても良いはず。
自分は、たくさん山から採ってきて、ふき味噌を手作りしますよ。。
東京にいる間はできませんでしたが、今年から再開ですね。
グラモフォンのジャケットの黄色。菜の花の黄色。ふきのとうも黄色。
菜の花 も ふきのとう も食感の’適度なさりげない苦味’が命。
シューベルトの’ます’は、ピアノと弦楽器が妙なる調和を生み出していることが命。均衡が保たれているから価値があるのであって、バランスが崩れると’苦味’がある演奏になってしまいますね。こちらは苦味欲しくない。
投稿: T.T | 2014年1月 9日 (木) 02時43分
IANISさん、ここでは名曲シリーズの側面をクローズアップしましたので、4楽章を強調しましたが、わたしも好きな楽章は1楽章です。
そして久しぶりにギレリスの演奏を聴いて、硬いイメージよりは、柔和さを感じましたが、それはアマデウスとツェペリッツありき、ということもあるかもしれません。
ベートーヴェンやブラームスをちょっと確認してみます。
DGの録音イメージもあるかも。
そして、やはり、ブレンデルですね。同感。
投稿: yokochan | 2014年1月10日 (金) 08時51分
T.Tさん、おはようございます。
ジャケットと写真のマッチングに気づいてくださり、ありがとうございます。
山上で、この光景を見たときに、この音源を思いました。
菜の花は、食してもよしですね。
辛子和えが好きです。
そして、ふきのとうは、天ぷらもいいですねぇ。
いずれも、少しのエグ味が決め手でしょうか。
シューベルトにも、きりっとした音色が必要ですが、苦みはあまり相応しくないですね。
冬の旅を、ぼちぼち聴いてみたいところです。
投稿: yokochan | 2014年1月10日 (金) 08時59分
yokochan様
この曲、バドゥラ・スコダ(Pf)ウィーン・コンツェルト・ハウスSQ団員のWestminster原盤(東芝が発売権を持っていた際のLP)、リヒテル(Pf)、ボロディンSQ団員の、EMI原盤のCD、デムス(Pf)シューベルトSQ団員(上記WKH弦楽四重奏団の契約都合上の変名)のタワレコ復刻の、DG原盤CDの三点が、手持ちのディスクです。世評高い、ブレンデル(Pf)、クリーヴランドSQ団員のPHILIPS盤は、未だに手に取って居らぬ、体たらくです。順位付けは敢えて避けさせて下さいませ。
脱線ですが、昨年11月21日に生涯初のこの曲の実演に接する事が、叶いました。確か近畿のオーケストラ団員の弦楽パートの有志メンバーに、神戸市室内管弦楽団の主席コントラバス氏が、加わって下さり、優秀なピアニスト様も御協力、良い音楽会でした。前半がモーツァルトの『弦楽三重奏の為のディヴェルティメント変ホ長調K.563』と言う、豪華なプログラムでして、神戸市灘区の酒心館と言う、木の内装の豊かな響きの、見た感じはログハウスに似た感じながら、優れた施設での催しでした。阪神電鉄本線・石屋川駅から少し南下した所にございまして、名演奏に浮かれ『箱入り酒饅頭』を、兄夫婦への土産に‥と、余分に財布の紐を緩めてしまった次第です。またまた、長々失礼を、それでは。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年6月29日 (水) 12時03分
「ます」は、ほんと名旋律のつまった名曲ですね。
ブレンデル盤は、エアチェックしたカセットでのみ聴いてまして、正規のCDは未取得なんです。
やはり一家に1枚的な存在ですね。
実演に接したとのお話し、ステキですね。
木質の響きのなかで聴くモーツァルトやシューベルト、想像するだけでもうっとりします。
そして、灘の酒どころですね。
そちらも大いに気になります(笑)
投稿: yokochan | 2022年7月 4日 (月) 08時51分