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2014年4月 1日 (火)

「二つの世界の狭間で」 コルンゴルト・コンサート

Akabanebashi

東京 夜桜2014

コルンゴルト月間の3月最終日、歌曲、オペラの一節、室内楽などを、年代をたどっての素敵なコンサートに行ってまいりました。

上野を中心に行われている、東京・春・音楽祭の一環でもあります。

Korngold

 コルンゴルト 歌劇「ポリュクラテスの指環」~冒頭

          「7つのおとぎ話の絵」~①魔法にかかったお姫さま
                          ②えんどう豆の上に寝たお姫さま
                         ③山の精

          「まつゆき草」~6つの素朴な歌より

          ヴァイオリン・ソナタ ト長調~第4楽章

          歌劇「死の都」~マリエッタの歌

         
                    「4つのシェイクスピアの詞による歌曲」~①デスデモーナの歌
                                   ②緑なす森の木陰で

         弦楽四重奏曲第3番 ニ長調

         「ウィーンに捧げるソネット」

         歌劇「カトリーン」~第3幕フランソワの求愛の歌 (アンコール)

           S:天羽 明恵       T:又吉 秀樹

           Pf:村田 千佳  

           ストリング・クヮルテットARCO

              Vn:伊藤 亮太郎     Vn:双紙 正哉

              Vla:柳瀬 省太       Vc:古川 展生

           話・企画構成:中村伸子

                    (2014.3.31 @石橋メモリアルホール)


ようやく、「コルンゴルト広め隊」といいうことで、活動されている中村さんのプロデュースするコルンゴルトコンサートに行くことができました。

今年に入ってから、各所でヴァイオリン協奏曲、そのあと、びわ湖・新国での「死の都」。
そして、今回のコンサート。
このあとも、交響曲もありますし、わが神奈川フィルでも、ヴァイオリン協奏曲に、年は変わりますが、「シュトラウシーナ」、チェロ協奏曲(日本初演)もあるんです。

もう、どうしちゃったの、ってくらいのコルンゴルト旋風。

数年前のアニヴァーサリーより、どんだけ多いんだろ。

一過性にならず、かといってこのような集中もなく、普通にレパートリー化して欲しいものです。

今回のコンサートは、コルンゴルトの広範なジャンルの作品群を、年代を追いつつ、コルンゴルトの音楽のエッセンスをかいつまんで、概略把握できるというナイスな企画。

コルンゴルト・ヲタクにとっては、つまみ聴きすぎて、ちょっと欲求不満も誘う部分はありましたが、弦楽四重奏の全曲演奏で、その渇望は癒えました。
 でも、しかし、ジャンル横断で、奏者も都度変わる。
そんな気ぜわしさが、コルンゴルトサウンドを断片化してしまった感は否めないかもしれません。
素晴らしい企画を実現していただいただけでも画期的なのに、注文つけてすいません。

夫婦の絆を試されもするコメディ、ポリュクラテス。
湧き上がるような楽しさで始まった今宵のコンサート、コケットな天羽さんと、リリカルな又吉さん。
断片だけど、日本初演かな?
短いオペラだから、「ヴィオランタ」かツェムリンスキーの「フィレンツェ」、もしくは、「ジャンニ・スキッキ」あたりと組んで上演してもいいと思う。

7つのおとぎ話の絵
13歳の作とは思えぬ、グラマラスな音楽。
大人の夢を少年が早くも見てしまった感のある、美味なサウンドでした。

③④まつゆき草、Vnソナタ
CDで聴くオーケストラ伴奏よりも、ピアノのほうが、慎ましくて美しく思った「まつゆき草」。
そして、ソナタに引用された、方も実に美しい。
わたくしは、一方で大好きなディーリアスの音楽に近い、儚さをも感じてしまいました。

マリエッタ~ もう、なんも言えませんね。
名旋律といっていいかもしれない。
同オペラのピエロの歌とともに、カラヲケ希望します。

良き時代のウィーン懐古ともよぶべき、「シュトラウスの物語」。
技巧を駆使した名技性の光る演目のなかに、ワルツ王のメロディアスなサウンドと、コルンゴルトのキラキラ感が見事に融合。
 ②も素敵でしたが、こちらの村田さんのピアノは、輝きっぱなし。
新旧ウィーンの音楽の合作に、彼女の冴え渡るピアノは完璧。

シェイクスピア歌曲
原詩の英語による歌は、たしかにシンプル。
清らかさ雰囲気と、寂寥感はなかなかでした。

弦楽四重奏曲
1944年、コルンゴルト47歳のアメリカ時代、ウィーン帰りを図ったころの本格クラシカル。
半音音階の展開も目立ち、ちょっと斬新、でも、いつもの甘いコルンゴルトサウンド。
ことさらに美しくて、陶酔境に誘われたのが、3楽章。
この楽章を始めとして、自作の映画音楽からの引用も多い本作品。
各オーケストラのお馴染みトップ奏者たちによる、鋭利さと、柔軟さにあふれた名演奏ではなかったでしょうか。
 わたくしには、長らく接してきたヴィオラの柳瀬さん(神奈川フィル→読響)の、3月最後の演奏ということもあって、ちょっと胸に詰まるものもありました。
でも、柳瀬さんは、いつものとおり、職人技に徹し、艶やかな、いつものヴィオラで、このミステリアスで、かっこよさと、美しい旋律満載の曲をしっかり支え、かつ引っ張ってました!

ウィーン・ソネット
56歳のコルンゴルト。
なんか哀しくなるような詩の内容だけど、ウィーンという街の、いまもかわらぬ伏魔殿的な怖さも、その崇高な背景には読むこともできなくはない。
でも、なんだか、妙に立派な曲なんだ。
そこが哀しかったり。。。。

カトリーン!!
やった、やった~ 大好きなこのオペラ、まさか、アンコールにこれとは。
しかも、ピアノ五重奏バージョン。
終幕で、苦心惨憺のヒロインの彼氏が、帰ってくる。
その前に、それとお互い知らない息子と出会い、一曲歌い、息子ちゃんも応える。
涙が出るくらいに、暖かな場面を、しみじみと演奏していただきました。

ナイスな選曲でした。

こんな風に、駆け足だったけど、コルンゴルトの多面性も味わうことができたコンサート。

「死の都」で導入部。
これから、コルンゴルトを、ゆっくりと楽しまれる聴き手が増えることと存じますが、この日の、ほぼ満席の会場は、コルンゴルトの音楽を愛する雰囲気で一杯でした。

ホールを出たら、北風が冷たいのでしたが、そこここに、満開の桜が揺れておりました。

ふたつの世界~ウィーンとハリウッド。

「死の都」で体感した、現実と、あちらの世界。
それは、また、だれしも味わう、人との別れや、仕事の変化にともなう、環境変化にも同じです。

春は、そうした別れと出会いの季節でもありますね。

 
 

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