アイアランド 「聖なる少年」 D・ライト
今日ももう1枚、吾妻山のツツジから。
日の当たる斜面に、ふんだんに咲くツツジですが、年々、だんだんと花の数が少なくなってきた気がします。
それでも、ごらんのとおり、青い空に、新緑の緑、そして、鮮やかな花の色合いが、美しすぎるくらいに、眩しいんです。
実際に、この場にいくと、ほんと、素敵なものですが、花の命の儚さにも、ちょっと哀しい気分にもなったりします。
桜は、ぱっと咲いて、ぱっと散ってしまうから、潔いけれど、ツツジの花は、色が枯れたように朽ちてきて、老いさらばえてしまうから・・・・・
アイアランド 前奏曲「The Holly Boy」~「聖なる少年」
ピアノ:デスモンド・ライト
(1994.10 @ベルン)
ジョン・アイアランド(1879~1962)は、マンチェスター近郊のバウデン生まれの英国作曲家。
アイランドは、かねてより大好きで、このブログでも何度か取り上げてきましたが、そのメインとも呼ぶべき、ピアノ作品を取り上げるのは初めて。
ジャッキーと呼ばれて可愛がれた少年のアイランドは、8歳頃から、ピアノを母に学び、やがて、13歳にロンドンに出向き、ロイヤル・カレッジを受験し、14歳からそこで、ピアノとオルガンを学び、すぐさま作曲にも興味を示し、音楽造りも始める。
16歳で、弦楽四重奏曲を書いて、それが、大御所スタンフォードの目にとまり、ドイツの古典・ロマンの音楽を叩きこまれる。
それでも、彼の本来の嗜好は、印象主義的なものであったり、ケルト文化に根差した民族主義的なもへの傾倒が強いです。
ですから、交響曲へは目もくれなかったのです。
英国作曲家の多くは、エルガーやRVW、ウォルトンを除くと、交響曲をあまり残しておりませんので、日本ではあまり脚光を浴びないのでしょうかね。
アイアランドのピアノ作品は、ほぼ、そのすべてが小品たちの集まりです。
若書きのものから、円熟期にいたるまで、万遍なく作曲してます。
そのほとんどが、シェイクスピアを始めとする文学や、自然の風光、街の情景、さりげない日常や人々の愛などをモティーフにした優しい柔和な音楽たちなんです。
抒情派アイアランドらしい、この数々のピアノ曲は、強烈な個性や音楽が強く語ることもない代わりに、あくまでも静かで、自然な語り口で、淡々とした佇まいです。
ときに、ドビュッシーやフォーレ、場合によってはキース・ジャレットみたいにも聴こえたりもします。
前奏曲は4篇からなっていて、
1.「低い音」~The Undertone
2.「妄想」~Obsession
3.「聖なる少年」~The Holly Boy
4.「春の炎」~Fire of Spring
もっとも有名な、「聖なる少年」は、1913年のクリスマスに書かれた、クリスマス・キャロルです。
みどり子誕生のその日を、しずかな感動を持って歌うパストラーレであります。
楚々とした美しさが、胸を打ちます。
この曲は、のちに、合唱曲と、室内バージョンにへと、作者自身により編曲されておりまして、本ブログでは、ヒコックス盤を取り上げております。
5年後に追加された3曲も、それぞれに素敵です。
印象派風の「低い音」は、たゆまぬ静かな繰り返しに、耳を澄ましてしまいます。
捉えどころのない、無窮の動きを感じる「妄想」、これもまたドビュッシー風。
やってきた明るい春にも、決して浮かれることなく、慎ましいアイアランドの描く「春の炎」。
どうでしょうか、それ以外にも、素敵な曲がたくさん。
わたしは、たまに仕事しながらでも、これらの曲を静かに流したりしてますよ。
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