「平井茉莉 ヴァイオリン・リサイタル」
3年前に開館した、鶴見駅、ほぼ直結の「サルビアホール」。
鶴見区の文化施設として、区民文化センターとしての役割を担う存在でもあります。
都内から東へ向かう、一番近い、ヨコハマという意味合いもあって、市の中心部へ行くよりは、わたしのような、都内ないしは、千葉からのリスナーにとっては、手軽な場所でもあるんです。
鶴見は、ご覧のように、線路が複数、交錯する駅でもあるんですね。
相当な乗降客数の、激しい流れに、右往左往しながらたどりついた、「サルビアホール」なのでした。
さて、今宵は、神奈川フィルの第1ヴァイオリン奏者として、わたくしたち、かなフィル応援団としても、お馴染みの、平井茉莉さんの、初夏の頃、恒例のリサイタルに行ってまいりました。
なにかとお幸せの彼女、そんな想いや、音楽への情熱が、たっぷり詰まった、素敵なコンサートになりましたよ。
心から楽しかった。
クライスラー プニャーニの様式による前奏曲とアレグロ
シューマン ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調
パガニーニ/クライスラー編 ラ・カンパネラ
ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 「雨の歌」
岩田 匡史 「Mari」
ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第3番~第4楽章
ヴァイオリン:平井 茉莉
ピアノ :加納 裕生野
(2014.5.30@サルビアホール、鶴見)
前半・後半のメインに、ロマン派のふたつの1番。
そのそれぞれ前に、クライスラーにまつわる技巧派の華やかな作品を配した、よく考えられたプログラム。
すっかり手の内に入ったと聴いたクライスラーとパガニーニ。
特に、のっけからアクセル全開、スパートを掛けたかのような「前奏曲とアレグロ」では、ホール一杯に、その音色を響かせる前向き志向の明るい演奏で、いかにも平井さんらしい。
シューマンのヴァイオリンソナタは、とっつきの悪い作品にいつも思ってて、どことなく彼の疾病による綻びも感じさせる曲だなと感じてました。
でも平井さんの、求心力高い演奏は、この曲にロマンティックな色合いをずいぶんと添えていたように思います。
自分は、クレーメルの辛口の演奏によるCDしか聴いたことがなかったものですから、余計です。
ことに、第2楽章が可愛らしく、シューマンならではの甘い語り口が、平井さんの艶やかなヴァイオリンと加納さんの優しく寄り添うピアノとで、とても麗しく感じられました。
そして、両端楽章での情熱の奔流とも呼ぶべき熱い演奏ぶり。
オーケストラの一員として、いつもは拝見してる、「茉莉ちゃん」なんですが、ソロで接すると、こんなに明快で、キレのよいヴァイオリンなんだ!といううれしい驚き。
よく鳴るホールも、後押ししていたように感じますね。
彼女のMCで紹介された、コンサートの3つの仕掛け。
ひとつめは、こちらのポストカードを頂きました。
何種類かありまして、わたくしは、これ。
まさに、このカードのとおりのお二人でしたよ。
そして、五月雨の季節を迎えるまえの、ブラームスって感じで、素敵でしょ。
ふたつめは、お花。
エントランスにも、お二人の髪にも、そして譜めくりの女の子の髪にも、淡いパステル系のお花が。
みなさん、いい仕事してらっしゃる。
そして、後半のブラームス。
まさに、しっとりと、女性らしい情感にあふれた演奏に、会場は聴き入りました。
シューマンとブラームス、こうも違うものなのだね、と、あらためて実感。
成熟したブラームスの音楽を、若い平井さんが感じたまま、そして、この曲に大切な、気品をもよく導きだしてました。
彼女なりに歩んできた、傍から拝見するに、きっと、思いきりの一生懸命の毎日。
そんな中の一日を、立ち止ってみたかのような心情あふれるブラームス。
きっと、これから、まだまだ進化して、この先、もっと大人のブラームスを聴かせてくれるのではないでしょうか。
そのときもまた、楽しみなのであります。
神奈川フィルの若い常任指揮者もそうですし、どんどん増える若い奏者のみなさん。
聴き手のこちらは、どんどん歳を重ねてしまうけれど、そうした若い方々の演奏を聴き、元気をいただき、そして、その成長を見守ってゆくというのも、音楽を享受するひとつの楽しみであります。
そんな、暖かな気持ちを、きっとみなさんもたれたでしょう、素敵なアンコール曲。
彼女のこと、「Mari」を作曲されたのが、神奈川フィルでお仕事をされてる岩田さんのチャーミングな作品。
この曲が、3つめの仕掛けでした。
最後は、情熱的に、バリっと、ブラームスの3番の終楽章のプレスト。
ご家族とお友達、多くのお客さんの暖かい拍手に囲まれ、素敵な演奏会でした。
平井さん、加納さん、ありがとうございました、若さと元気を頂戴しました。
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