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2014年5月28日 (水)

東京都交響楽団定期演奏会 マルク・アルブレヒト指揮

Suntry

久方ぶりの「サントリーホール」。

「みなとみらい」ばかりなもんで、最初はアウェイ感、はんぱなかった。

でも、音楽が始まれば、なんのことはない。

すぐさま、このホール特有の響きの良さと、音の溶け合いに、耳は馴染んでしまうのでした。

ご縁をいただき、ありがとうございました。

Tmso_201505

  メンデルスゾーン  ピアノ協奏曲第1番 ト短調

  シューマン      トロイメライ

       Pf:サリーム・アブード・アシュカール

  コルンゴルト      交響曲 嬰ヘ調

    マルク・アルブレヒト指揮 東京都交響楽団

                (2014.5.27 @サントリーホール)


メンデルスゾーンとコルンゴルト、ともに、ユダヤ系の独墺作曲家で、あの不幸な時代には、いわれなき、迫害や無視にあった人たち。

メンデルスゾーンはともかく、コルンゴルトには、何度かの潮流の波があって、日本楽壇では、今度こそ、本物と思わせる勢いが、2014年にはあります。

数年前の、生誕と没後のアニヴァーサリー両方がきた時も、ほんのいっときのブームにて、静かに波を引くように終わってしまった。
 そんな、コルンゴルトの受け止めかたであることが、あたりまえで、むしろ、そうあった方がいいと思っていたのですが・・・

ヴァイオリン協奏曲を主体に、東西の「死の都」の舞台上演をピークとして、本年前半は、その思わぬコルンゴルトブームが。
 そのブームの一環を飾るのが、今回の都響定期だったのです。
わたしも含む、コルンゴルト好きが訪れたサントリーホール。

 前半は、軽めに20分くらいのメンデルスゾーン。

イスラエル生まれの、オリエンタルな風貌の若いアシュカール氏のピアノは、スタンウェイを存分に鳴らしつつの、抒情性も満点の、粒立ちのよい、うるわしのメンデルスゾーンとなりました。
いつも頭に思い浮かぶ3楽章の明るさには、ほとほと気持ちのいい思いを満喫できました。

静寂のホールに響いたアンコールのトロイメライも、あざとさはなく、夢想的な演奏で、わたくしは、聴き入ってしまいました。

さてさて、わたくしには、これまでが前座。

コルンゴルトですよ。

この交響曲のことは、過去記事で散々かいてますので、そちらを。

以前、シティフィルが、コルンゴルトのスペシャリストのひとり、アルベルトを招いて演奏したとき、仕事でチケットをふいにしてしまい、ようやく、その実演にありつける次第で、その期待は、これまたこの曲を得意にするM・アルブレヒトの指揮だけに、いやでも増すばかりで、夢まで見そうな勢いでした。

そして、その高まる期待に、見事なまでに応えてくれた超素晴らしい演奏に大感激。

すっかり曲が手の内に入ったかのように、入魂の指揮ぶりのアルブレヒトさん。

細部にこだわると、交響曲としての大局を見失ってしまい、とりとめのない音楽になりかねないこの曲だと思いますが、大きな流れをしっかりと構築して、自分が思うには、緩徐楽章たる悲嘆にくれるようなクールな3楽章の熱い盛り上がりのフォルテにピークを持ってきて、その半面である、楽観的な終楽章との対比も鮮やかに、描いてみせてくれたように思います。
 4つのまったく異なる様相を持つ楽章ごとの特色の抽出も、そんなわけで実に見事。
ビターさと、スィートさ、そのどちらもが変転しつつ交錯する難解な表情の1楽章。
めまぐるしく錯綜するリズムと、そのすぐあとに登場するホルンの勇壮なSFチックな咆哮に、快感すら覚えた2楽章。中間部のミステリアスな雰囲気も精妙。
 そして、大好きな3楽章は、じわじわと締めつけられるような哀愁に、すっかり身も心もほだされて、アルブレヒトの後ろ姿と指揮棒に、わたくしも釘づけに。
そのピークでは、痺れるような感動を味わいました。
 いつもCDで聴くとき、どうも浮いて感じる終楽章も、交響曲の伝統を踏んだような、曲全体の回顧・回帰をしっかりと描かれることで、音楽そのものの完結感が完璧に増したものと思います。

 アルブレヒトさんの、オペラ指揮者としての、音楽の流れの構築力の高さを、まじまじと感じました。
数年前のバイロイトにおける「オランダ人」の指揮での、スマートかつ知的な演奏ぶりを思いだしました。
次の「オランダ人」のプロダクションでは、ティーレマンの過去に軸足をおいたかのような演奏とは、全然違うのでした。

実演で、オーケストラを目の前に聴くと、こうした曲では、各奏者のみなさんが、ここではあんな風に弾いてる、こんな風に奏でてる・・・、CDで聴くのと大違いの面白さだったのです。
そして、久方ぶりの都響。
ものすごく上手い。
音の密度が濃くて、きめ細やかで、精度も高し。
オーケストラにも、おおいなる喝采を差し上げたいです。
演奏終了後、ふぅ~、終わった的な満足感と、ちょっとのお疲れの表情をみとることができました。

都響の今後の演奏プログラムは、わたしにとって垂涎の曲目が多いのです。
スーク、F・シュミット、ウォルトン、RVW、ブリテン、ディーリアス・・・・
いやはや、困った、忙しい。
横浜とにらめっこして、無理のない限り、こちらもまいりましょう。

Oreita_1 Oreita_2

コンサート終了後は、乗り換えの新橋駅で、イタリアン立ち飲み。

ピッツァも美味しい、エビちゃんのアヒージョも最高じゃん。

今回は、どうもお世話になりました。

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