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2014年8月28日 (木)

グラズノフ「四季」、チャイコフスキー「悲愴」

Azumayama_201408_11

いったい、どうなっちゃったんでしょう。

夏はどこへ隠れちゃった?

8月の終わり、最後の夏休みを楽しもうという人たちに冷や水を浴びせるかのような、連日のしとしと雨と、低温。
広島の悲しい惨事にくらべたら、こんなのどうということはないけれど、この季節感のなさは、異常で、天気図を見ると、日本列島は、どこかが、前線につねに覆われていた夏でした。

自分の影を映しこむなんて、最低の画像ですが、奥の方にある富士山も見てくださいましな。

 明日は、今シーズンから始まった、8月の定期演奏会です。

 神奈川フィルハーモニー第301回定期。

 小泉和裕 特別客演指揮者就任披露演奏会。

  グラズノフ      バレエ音楽「四季」

  チャイコフスキー  交響曲第6番 ロ短調 「悲愴」

   小泉 和裕 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

          2014年8月29日 金曜日 19:00 みなとみらいホール


涼しいけれど、真夏に、ロシアもの。

グラズノフとチャイコフスキーという、これまた、ロシア音楽史のひとコマを感じさせるプログラム。
そして、小泉さんのロシアものは定評あるし、ことに、チャイコフスキーはデビュー時、カラヤン・コンクールの優勝時からの得意演目。
さらに、そして、期せずして、この涼しさと、鬱陶しい厚い雲に覆われた空模様が、露西亜音楽にぴったり。

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  グラズノフ バレエ音楽「四季」

   エルネスト・アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団

                      (1966.5 @ジュネーヴ)


チャイコフスキーの西欧風ロシアロマン主義と、恩師R・コルサコフら、5人組のロシア民族主義的、その双方のDNAを受け継いだような存在のグラズノフ。
とくに、ライモンダと四季、有名なふたつのバレエ音楽にその傾向は顕著です。

35分ほどのバレエ音楽ですが、その名のとおり、4つの季節を、それもロシア特有の四季を素敵なほどに描いてます。
1~2分ぐらいのディヴェルティスマンの連続する、ある意味めまぐるしく変わりゆくその表情ある音楽たち。

「春夏秋冬」ではなくて、「冬春夏秋」という構成で、「冬」から始まるのが、いかにも、ロシアの風情であります。

①厳しい閉ざされた季節のなかにも、霜や氷、雪などを幻想味ゆたかに表現してる冬。
②ほのぼのとやってくる「春」は、小鳥や花の世界で、たまらなく美しい旋律が続出。
③北国の短い「夏」は、春との境目が緩やかで、恵を予感させ、さらに緩やかな夜も舟歌を歌って楽しげ。
④実りの「秋」は、祭りの秋、豊穣の秋だ。爆発的なバッカナーレがあります。
だが、しかし、最後には、冬の横顔もチラつきだしながらも、晴れやかに幕!

これ、いい曲ですよ。

録音は古くなりましたが、アンセルメの演奏は完璧でしょう。
欲をいえば、指揮もオケも、ロシア臭が皆無なところかな。

美しい神奈川フィルでどうなるかしら?

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  チャイコフスキー 交響曲第6番 ロ短調 「悲愴」

    ロリン・マゼール指揮 クリーヴランド管弦楽団

               (1981 @クリーヴランド)


今さらながらの名曲中の名曲。
そのタイトルゆえ、暗さゆえ、ふだんはあんまり聴くことがないけれど、それでも、こうして久しぶりに聴くと、めちゃくちゃいい曲やん、と痛感します。

中高生のころは、アバド&ウィーンフィル、バルビローリ&ハレで、毎日聴きまくり、最後には沈痛の面持ちになったもんだ。

でも、なにも、胸焦がして、悲劇的に聴くことはない、そんな曲なんですよね。
タイトルを考えず、第6交響曲として、すんなり聴けばいい。
幻想曲のような第1楽章に、変拍子ながらワルツ感覚で第2楽章、お祭りさわぎで第3楽章、そして、緩徐楽章としてのユニークは終楽章。

ウィーンフィルとの若き日のチャイコフスキーは、そのシベリウスとともに、マゼール節を警戒して一切所有することも、聴くこともなかったけれど、亡くなってしまったいま、そんなマゼールが懐かしく、なんたって、あんな芸風の指揮者はいまやいないから、とても聴きたい。

クリーヴランドとの再録音盤を入手しましたが、激安のCD頒布会のもので、陳腐なジャケットでした。
オリジナルは、上褐のもの。
死相のあわられた病人顔のくらーーいチャイコフスキーの姿。
これもまた困ったジャケットじゃないですか。

でも、この演奏は、想定外に、すっきりと明確なもので安心、というか、ちょっと裏切られた感じ?
細かいところでは、伸びたり縮んだりと、マゼールらしく、ちょこちょこやらかしてるけれど。
ともかく、オーケストラがうまい。
完璧にマゼールの棒についてゆくフレキシビリティあふれるクリーヴランド。
1楽章の激烈なところでは、かなり追い込んだテンポとなりますが、そこも完璧であります。
全体に、メロディストとしてのチャイコフスキーの魅力を見事に引き出したマゼールの演奏だと思います。

チャイコフスキーを得意にする小泉さんの指揮。
楽しみです。
カラヤンコンクールに優勝後、ザルツブルク音楽祭でウィーンフィルを指揮されましたが、その時の演目が、ハイドンのオックスフォードと、チャイコフスキーの5番。
FM放送を録音しましたが、残念ながらそのテープは消失してしまいました。
慎重な演奏でしたが、美しく、ダイナミックなチャイ5だったかと記憶します。
さらに、3大交響曲を、ロンドンのロイヤルフィルとも録音してますので、それも聴きたいところです。
美音のオケとともに、どんな6番になるでしょうね。

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コメント

さまよえるクラヲタ人様
こんにちは。
昨日の神奈川フィル&小泉氏の四季、良かったですね。気持ちのよいテンポとメリハリで、次々と曲想の変わる曲を素敵にまとめ上げてくださった感じでした。ちなみに、いつもはハイキン版を聴いています。
私的にはロシア最高のシンフォニストであるグラズノフ、なかなか演奏される曲目が増えてこないのが不思議です。

投稿: ヴィッテルスバッハ | 2014年8月30日 (土) 14時47分

ヴィッテルスバッハさん、こんにちは。

金曜日は、また神奈フィルで、いいコンサートが聴けましたね。
悲愴もよかったですが、グラズノフがとても素晴らしかったです。
楽員さんも、楽しみながら、気持ちよさそうに演奏されてましたし!
アンセルメ以外の演奏、ご指摘のハイキン盤、加えてスヴェトラーノフなども聴いてみたいと思ってます。
交響曲では、5番と8番が好きですね。
そうですね、演奏会ではめったに取り上げられませんね。
演奏効果もあがるいい作品ばかりなので、残念ですね。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2014年8月31日 (日) 11時08分

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