神奈川フィルハーモニー県民ホールシリーズ第1回定期演奏会 小泉和裕 指揮
赤レンガ倉庫では、恒例のクリスマス・マーケット。
ドイツやオーストリア、スイス、フランスなど、各国で、街の中心の広場で行われるクリスマス・マーケット。
クリスマスの飾りや、ソーセージやパンなどの食材に、ホットワインが、可愛い出店で売られ、寒い夜が、とても暖まる光景を、かつては、羨望の思いで、雑誌などで見ておりました。
日本各地でも、大小のマーケットが出現するようになりました。
なかでも、横浜の赤レンガ倉庫のものは、一番大きくて、そして美しい。
でも、人が多すぎなところがちょっと難点。
ベートーヴェンもホットワインの飲んだのでしょうか。
今年も、第9が巷にあふれる季節に。
神奈川フィルは、これまでの特別演奏会から、県民ホール定期に。
ベートーヴェン 交響曲第9番 ニ短調
S:佐々木 典子 Ms:手嶋 眞佐子
T:福井 敬 Br:小森 輝彦
小泉 和裕 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
神奈川フィル合唱団
合唱団音楽監督:大久保 光哉
(2014.12.19@神奈川県民ホール)
特別客演指揮者の小泉さんの第9。
となれば、楽譜は、当然にブライトコプフ版と予測でき、まさにそのとおりの演奏でした。
多くの方が聴きなれた版であり、その版による、まさに安心安全の演奏が、堂々と、そして最後には熱気もはらんで演奏されました!
神奈川フィルのファンをやってると、ほんとに久しぶりの従来の第9が帰ってきた、という感じ。
そう、5年間の聖響さんの第9は、ベーレンライター版で、対抗配置、バロック・ティンパニということで、ある一定のイメージが、「聖響&神奈フィルの第9」ということで植えつけられてしまいました。
5年のうち、3年は聴きましたが、それでも、都度印象が異なり、指揮者がまだ、その版を使っての演奏の解釈に揺らぎを持っていることも感じており、まいど、複雑な思いで、年末を過ごすこととなっておりました。
今年の小泉さんの第9は、王道をゆく、ゆるぎない信念のもとに、奏者一同が、音楽そのものに打ち込んで、熱のある演奏になりました。
版の違いは、第1楽章冒頭からはっきりとしてます。
ベーレンライターでは、弾むようにして始まる第1楽章は、疾風怒涛のような印象を受けるし、神奈フィルの演奏姿で、3度も体験しちゃったから、そうじゃない、1楽章は、妙に歯がゆかったという、実に不思議な体験をすることとなりました。
それでも、小泉さんの指揮を見ながら、だんだんと慣れてきました。
そう、神秘的な雰囲気と、劇的な展開は、ブライトコプフならではで、小学生の頃から聴いて、耳にタコのように貼りついているカラヤンの演奏の響きを求めておりました。
ちょっと脱線。
いまはどちらでもありませんが、アンチ・カラヤンになる前は、大のカラヤン・ファンだった。
第9のレコードは、DGの62年盤を、小6で購入。
中1のときに、父親にせがんで、カラヤンの第5と第9の演奏映画を、新宿厚生年金会館に観劇に行った。
目をつぶって、オーケストラを導くカラヤンの姿は、もう神かと思いましたよ。
その指揮ぶりを、子供の自分はすっかり真似しちゃって、4楽章で、独唱が入ってくるところで、つぶっていた目を、かぁっ!と見開くわけですよ。
ちなみに、多くの一般ピープルと同じように、ヲタクの子供に付き合わされた親父は、終始、意識がなく、カラヤンが目を開いた瞬間、すなわち、ワルター・ベリーのバリトンの声で、飛び起きるという微笑ましさを発揮してくれたものです・・・・。
各楽器の橋渡しが見ていても楽しい2楽章は、繰り返しがなしで、やってもらったほうが、もっと楽しめたかもです。
そして、いつも、美しいけれど、さらさらと流れてしまって不満だった3楽章が、実に気持ちがこもっていて、平穏な祈りにあふれたような名演でした。
しかめっ面のベートーヴェンでなく、わたくしは、こんな柔和な表情のベートーヴェンの音楽が好きです。
デッドな県民ホールの音響ですが、それでも、カナフィルの弦はきれいに鳴りましたし、木管やホルンもとても美しかった。
アタッカでなだれ込んだ4楽章。
思わず、おっ!と思いましたね。
これ好き。
あとは、ど定番の展開に、ホールのお客様も一体になって、最後の燃えるようなアッチェランドに突き進むわけでした。
わたしの大好きなバリトン、小森さんの明るくも、滑らかなドイツ語により明快なソロ。
スピントする、力強い福井さん。
輝かしい佐々木さんのソプラノに、艶のあるメゾを聴かせてくれた手嶋さん。
ワーグナー歌手がそろったかのような豪華な独唱陣でした。
欲を言えば、みなさん立派すぎ。
佐々木さんは、声がドラマティコなので、第9にはほんとうは、もっと軽いソプラノの方がいい。
そういえば、佐々木さんのマルシャリンは、神奈フィルがピットにはいった「ばらの騎士」で体験してますし、若杉さんの指揮による「ダナエの愛」も聴いてます。
日本人歌手として数少ないバイロイト音楽祭出演経験を持つ、すごい方なのです。(バイロイトのことは、わたくしの勘違いです、のちに訂正いたします2015.03.26)
そして、合唱。
力強い響きでしたし、大きな県民ホールに、オーケストラに負けずに、その歌声を響かせました。
でも、ちょっと苦言を申さば、今少しの明晰さが欲しいところ。
毎年思いますが、数を少し刈り込んだほうがいいと。
1~3楽章は、とても素晴らしい音楽だと思います。
ベートーヴェンは、まったく神がかかっていると思います。
しかし、お叱りを受けるかもしれませんが、4楽章で、盛大な合唱は、それまでの神妙な世界を、へたをすれば、お祭りさわぎにしてしまいます。
このあたりのバランスと、4楽章の座り心地の悪さが、歳とってからどうも強く感じるようになりました。
ですから、合唱も小編成にして、楽器のように扱って、「合唱付き」じゃなくて、「合唱なし」・・・なんてのはどうでしょう
あぁ、なんて不遜なことを言ってるのでしょう。
これはあくまで、私見ですので、ご笑い草におとどめ置きくださいまし。
合唱をやられてる皆さま、第9好きのみなさま、こんなこと書いてすいません。。。。
でも、オーケストラをつぶさに拝見しながら、感心したのは、ベートーヴェンの音楽の造り方のすごさ。
いつも、幻想交響曲を聴いて、ベルリオーズのこの曲が、第9のほんの6年後と、感心しているわけですが、その逆もありで、第9の6年あとに、幻想が生まれた、とみれば、第9のスコアには驚きがたくさん詰まっているわけですね。
小節内の多彩な音符の数、長いのも、短い刻みも、それぞれ多様で、奏者の必死の演奏ぶりをみてると、あの分厚いポケットスコアが頭に思い浮かびました。
そして、打楽器の効果的な使用。
ティンパニの活躍も目覚ましいのですが、太鼓、シンバル、トライアングルというトルコ調の打楽器を導入したことも、ベルリオーズのファウストにも通じるものかもしれません。
そんなこんなをあれこれ思いながら、熱いエンディングを迎え、わたくしも大いに胸が高鳴り、かつ胸のすく思いで、音楽にのめり込みました。
大きな拍手と、ブラボーに包まれたことはいうまでもありませんね。
やっぱり、第9はこうでなくちゃいけません。
気持ちよかった!
アフターコンサートは、We Love神奈川フィメンバーと、お疲れのところ楽員さんにもご参加いただき、県民ホールのお楽しみのひとつ、中華街へ
中華街も、ちょこっとクリスマスしてます。
こんな美味しいお料理をお腹いっぱい食べ、ビールと紹興酒をたらふく飲んで、そしてなにより、音楽や、いろんなお話で大いに笑い、楽しかった。
みなさま、ありがとうございました、今年も、たくさんお世話になりました。
そして、来年もよろしくお願いいたします。
| 固定リンク
コメント
いつも楽しく拝見しております。佐々木さんに関しての「日本人歌手として数少ないバイロイト音楽祭出演経験を持つ~」は何かのお間違いではないでしょうか。二期会のサイトの経歴やバイロイトのデータベースにもありませんので。何らかの出演経験があるのであれば教えていただければ幸甚です。
投稿: TG | 2015年3月25日 (水) 22時57分
TGさん、こんにちは。
いつもご覧いただきありがとうございます。
コメントを頂戴し、張り合いがでます。
さて、佐々木さんの、バイロイトですが、わたくしも、各種調べました。
どうも、私の勘違い、というか、思いこみだったようです。
片桐ひとみさんと混同してました。
いけませんね。
この場をお借りして、お詫びしますとともに、混同申しわけありませんでした。
記事を修正したいと思います。
ご指摘、ありがとうございました。
今後とも、どうぞ、よろしくお願いいたします。
投稿: yokochan | 2015年3月26日 (木) 21時51分
片桐仁美さんについては存じ上げませんでした。バイロイト音楽祭というとつい藤村富美子しか頭になかったのですが、せっかくなのでバイロイト音楽祭のデータ・ベースで日本人を調べてみました。片桐さんは史上3人目の日本人出演だそうですね。
投稿: TG | 2015年4月 1日 (水) 19時21分
すみません、藤村富美子でなく藤村実穂子でした(-_-;)。
投稿: TG | 2015年4月 1日 (水) 19時53分
TGさん、片桐さんは、わたくしの記憶では、年末恒例のNHKのFM放送にも出てらして、舞台裏の楽しいお話をしておられたと思います。
主役級の藤村さんは、画期的ですが、後続があること、心から祈念してます。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2015年4月 2日 (木) 21時54分