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2014年12月13日 (土)

サン=サンース 交響曲第1番と2番 マルティノン指揮

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まるでヨーロッパを思わせるような街並みと、きらびやかなゴールド。

恵比寿のガーデンプレイス。

一番奥の高いところから俯瞰してみました。

パリのシャンゼリゼ通りみたいに、通りの奥に美しいモニュメントがあって、均整の取れた雰囲気がいいです。

そんな、おフランスの香りを、ちょこっと楽しめる若書きのフレッシュ交響曲を。

Saintsaens

  サン=サーンス 交響曲第1番 変ロ長調 op2

                          交響曲第2番 イ短調 op55


         ジャン・マルティノン指揮 フランス国立放送管弦楽団

                       (1972.6,11@パリ、サル・ワグラム)


カミーユ・サン=サーンス(1835~1921)の作品は、多岐にわたるジャンルに、多くの作品がありますが、特定の作品ばかりに人気が集中し、それ以外の作品には日の目があたることが少ないです。

オルガン交響曲、動物の謝肉祭、死の舞踏、ヴァイオリン協奏曲第3番、ピアノ協奏曲第2番、チェロ協奏曲第1番、サムソンとデリラ・・・・ぐらいが頭に浮かびますが、室内楽作品、器楽作品、歌曲、声楽、オペラは多数あるのにまったく知りません。
 そして、交響曲と協奏曲の他の番号は?

ということで、今回は、3番「オルガン付き」の陰にかくれた、ふたつの番号付き交響曲を。
ほかに、習作的な未完作ふたつと、完成された作品番号なしのふたつの交響曲がありますので、完全なものとしては、サン=サーンスの交響曲は5つあることになります。

 交響曲 イ長調       15歳

 交響曲第1番 op2  18歳

 交響曲「ローマ」       21歳

 交響曲第2番 op55 23歳

 交響曲第3番 op78 51歳


こうしてみると、年齢的に円熟期に書かれた3番が、作品としても、もっとも充実していることがわかりますね。

でも、サン=サーンスの音楽の魅力は、若い頃のものにも、如実にあらわれておりまして、屈託なく、明るく伸びやかな、若い人にしか書けない、そんなフレッシュさにあるんです。

ともに4楽章形式で、しっかりとした交響曲の姿を身にまとってます。

1853年に書かれた第1番、ティンパニ2基、ハープ、管も3管、サキソフォーン、シンバルを要します。
大きな編成の本格交響曲は、当時のフランス音楽界にあっては、ベルリオーズ以来かもすれず、作者の名を伏せられて、そのリハーサルから聴いた、当のベルリオーズやグノーといった先達たちを感嘆させたといいます。

堂々たる1楽章は、どこかシューマンの「ライン」を思わせる、と解説にも書いてありますが、まさにそう、それにメンデルスゾーンとベルリオーズのエッセンスを足したような感じ。
 以外に古風な、行進曲的なスケルツォを経て、この曲のもっとも魅力的な緩徐楽章たる3楽章が素晴らしいです。
クラリネットの優雅なソロに始まり、この楽章で終始活躍するハープが、美しいアルペッジョを奏でるなか、オーケストラはメロディアスに、ほんとうに美しい世界を展開します。
18歳の青年の作とは思えない、この優美な感興極まる音楽ですが、一面、心になにも残さず、流れてしまうという恨みもあります。
それでも、ともかく美しい。
最後は、すべての楽器がにぎにぎしく鳴り渡る気合のはいったもの。
若い眩しさが、一方で、若気の至りみたいに未成熟な空虚を感じさせもしますが、緩急おりまぜ、全曲を見通し、完結感を与えつつ、力強いエンディングを迎えます。

 
交響曲第2番は、1858年で、1番から5年を経て、その音楽は、若々しさを保ちつつも、よりシンプルに、その編成もずっと小さくなり、打楽器はティンパニだけ、金管もトランペットだけと、効果を狙うようなことは少なくなり、より内面的な要素が出てくるようになったと感じます。
全体に、すっきりムードがただよい、古典回帰のような雰囲気もあります。
シューマンっぽくあり、メンデルスゾーンの1番や、ビゼーの交響曲をも思い起こさせます。
 短調のムードが覆う1楽章は、どこか捉えどころがないままに、走るようにして進んで、終わり。
抒情派サン=サーンスの、ここでも面目躍如たる2楽章のアダージョ。
シンプルなロンド形式で、静かで優しい曲調は、1番と同じ調でありながら、あちらの連綿たる美しさには、かなり及ばず、物足りなさを覚えます。
 3楽章はスケルツォ。
これまたメンデルスゾーンチックなスケルツォ楽章。のんびりとした牧歌調の中間部を持ちながらも、冒頭のスケルツォに回帰せず、そこでジャンと終わってしまう面白さを持ちます。
 ついで、前楽章の雰囲気を引き継ぎつつ、タランテラの軽やかかつ、リズミカルな展開の終楽章は、なかなかに楽しい。
これも、ビゼーとメンデルスゾーンを思わせますよ。
なんとなく、イマイチ感を持ちつつ聴いてくると、この最後の楽章で、気分が高揚していい感じになりますよ。
 伝統的な交響曲を生真面目に書きたかったサン=サーンスさんでしょうか。

1番も、2番も、このように、それぞれに個性があって楽しい聴きものです。

みなさまも是非。

完成された5つの交響曲をすべて録音しているのは、マルティノンだけでしょうか。
番号付きでは、プレートル、レヴィぐらいかな。

60~70年代の、典型的なフランスのオーケストラの音色をここに感じます。
華奢でありながら、瀟洒な響きは、サン=サーンスの若い音楽にぴったり。
マルティノンは、ほんと、いい仕事をEMI&エラートに、たくさん残してくれましたね。

Ebisu_w

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コメント

手元のインバル指揮フランクフルト放響1975年録音CDで1番の3楽章を聴いています。サンサーンスは本当に、美しいのに知られていない曲が多いですよね。

投稿: faurebrahms | 2014年12月14日 (日) 12時15分

faurebrahmsさん、こんにちは。
インバルも録音があるんですね。
ヴァイオリンソナタもとてもメロディアスな曲ですし、オペラも、声楽曲もメロディの宝庫ですね。

投稿: yokochan | 2014年12月14日 (日) 14時42分

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