神奈川フィルハーモニー第307回定期演奏会 広上淳一 指揮
ランドマークに、一足はやく、「春」やってきました。
河津桜咲いてました。
この日は、朝から、真冬のような寒さで、しかも、冷たい小雨も舞う曇天。
冷たい曇り空と、春先の桜。
さぁ、これから聴く、珠玉の北欧音楽の数々に、どこか、ぴたりと符合していて、ホールに向かう足取りも軽くなりました。
ラーション 田園組曲
ステンハンマル 2つの感傷的なロマンス
シベリウス ヴァイオリンと弦楽のための組曲 Op117
ヴァイオリン:小林 美樹
交響詩「タピオラ」 Op112
グリーグ 「ペール・ギュント」第1組曲、第2組曲
菅野 祐悟 大河ドラマ「軍師官兵衛」より「天才官兵衛」~アンコール
広上 淳一 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(2015.3.7 @みなとみらいホール)
ごらんのとおりの北欧音楽ばかりを集めた素敵なプログラム。
神奈川フィル、今シーズン最後の演奏会を指揮するのは、スウェーデンのノールショピング交響楽団の指揮者もかつてつとめた広上さん。
後半は、なじみのある「タピオラ」と「ペール・ギュント」で、前半は、クラヲタである、わたくしですら音源も所有したことない、初聴きの3曲。
でも、それら3つが絶品の曲であり、演奏でした。
①スウェーデンのラーション(1908~1986)。
序曲・ロマンス・スケルツォの3つからなる「田園組曲」は、まさに、わたくしたちが思う、すっきりとした透明感あふれる抒情あふれる北欧音楽のイメージそのまま。
静かに始まり、すぐさま快活な曲調になる序曲からして、オケはエンジンがすぐにかかり、明快な響きを引き出す広上さんのもと、のりのりでした。
次ぐ、ロマンスの美しいこと。
かなフィルの弦楽の魅力を、コンサート開始すぐさま堪能することになります。
いつまでも浸っていたかった、そんな優しい音楽に演奏でしたね。
フルートが小鳥たちのさえずりのような、合いの手を入れ、とても楽しい、うきうきするようなスケルツォ。
指揮者の楽しい動きを見てると、こちらも、にこにこしてしまう、そんな曲。
②こちらもスウェーデンのステンハンマル(1871~1927)
その歌曲を、フォン・オッターの歌でよく聴くステンハンマル。交響作品もいいですが、歌がお得意のこの作曲家らしく、まるで、愛らしいオペラアリアのような、ヴァイオリンソロのために作品です。
若い小林美樹さんの、柔軟でかつ、伸びやかなヴァイオリンにも魅惑されます。
春の野辺に座って、去りし冬を思うような曲調の第1曲目。
艶のあるヴァイオリンです。
哀愁溢れるメロディが、メンデルスゾーンのようにソロにもオケにも充満していた第2曲目は、どこか古典的な佇まいを感じ、とても麗しかったですね。
③おなじみ、フィンランドのシベリウス(1865~1957)の「ヴァイオリンと弦楽のための組曲」は、その作品番号のとおりに、作曲活動を緩めてしまう時期の直前のころ、すなわち、最後期の曲。
発表すらされなかったこの曲の初演は、1990年。
さすがに、聴き親しんだシベリウスサウンドが、短い曲ですが、随所にあふれていて、安心感と、小品の名手であるこの作曲家の腕前に感心しました。
3つの部分が、それぞれにまったく異なる顔を持ってます。
「田園風景」「春の宵」「夏に」のタイトルどおりの曲調で、いずれも、優しく、平易で、メロディアスでした。
美樹さんの、たおやかなヴァイオリンは、この曲でもぴたりとはまります。
とりわけ、もうじき訪れるであろう、春の宵のぬくもりと、甘い花の香りを感じさせる美しい2曲目は、とても、弦楽もソロもともに魅力的。
さらに、弦楽のピチカートにのって、細やかかつ、技巧的な名技性を発揮した3曲目も楽しく、盛り上がりました!
以上の、前半、桂曲を聴けた喜びに、ホールの聴衆もほっこりいたしました。
④後半は、厳しい北欧の一面をみせつけるシャープな交響詩「タピオラ」。
この曲を、コンサートで聴くのは、もしかしたら初です。
音源の、かっこいい聴かせ上手のカラヤンや、ヤルヴィで聴く北欧系クールかつ熱い演奏
とも、この日のものは、あたりまえですが、異なりました。
神奈川フィルならではの、華奢だけれど、美しい響き。
少し薄めだけど、スリムな音色が、徐々にホールを満たしてゆく、みなとみらいホールならではの体感。
けぶるような、深い森と湖の光景というよりは、われわれ神奈川県人の思う、神奈川県の海と山の自然と、横浜の街を思いたくなるような、そんなシベリウス。
都会的であり、ローカルでもあるシベリウスを堪能しました。
どのセクションも、どの楽器も、みんなよく聴こえます。
広上さんの、愉快な(?)指揮姿と、出てくる音楽の齟齬は、面白いものでしたが、神奈フィルのシベリウスは、今年アニヴァーサリーを迎え、交響曲や協奏曲も控えてますので、大いに楽しみです。
⑤最後は、ノルウェーのグリーグ(1843~1907)の名曲「ペール・ギュント」。
どこをとっても、みなさん、お馴染みのメロディーやフレーズが満載。
でも、恥ずかしながら、ライブでは、初ペール・ギュント。
山田さんの秀麗なフルートに始まり、小山さんの暖かなオーボエに受け渡される「朝」を聴いて、おじさんのワタクシ、一挙に中学時代の音楽室の一隅にワープ体験しました。
そんな風に、楽しんだ35分間。
思えば、神奈川フィルも、この曲は、学校訪問のときの定番。
味わい深さも、きっと、進化させてますね。
「オーゼの死」や「ソルヴェイグの歌」では、思わずゾクゾクして、心が震えてしまいました。
名曲・名演とは、このことを言うのですね。
広上さんの、熱のこもった指揮姿は、それは楽員さんを奮い立たせるものでもありましたが、やはり、面白い(笑)
できるだけ、楽員さんたちの熱演だけを拝見しつつ拝聴しました(笑)
そして、神奈フィルの誇る、打楽器陣の活躍する「魔宮の宮殿」では、大興奮。
ほんと、楽しく、美しく、充実のペール・ギュントでした♪
何度も、歓声に応えた広上さん。
素敵なスピーチをいただきました。
「日本のオーケストラが、レベルアップしているなか、神奈川フィルも例外でなく、ここ数年の充実ぶりは素晴らしくトップレベルに達した。
将来、日本の指揮界をしょって立つだろう、若い川瀬君(広上さんが師ですね)と、ベテランと若手このオーケストラを称えたい。
東京に近く、地域の皆さまとの触れ合いも大切に、みなさんで大いに盛り上げていただきたい・・・・」
こんなお言葉と、最後に、もう1曲。
⑥広上さんの、お弟子のおひとりの、菅野氏が担当した「軍師官兵衛」の最終話、官兵衛の死の場面で、彼が人々への感謝の気持ちを覚えつつ亡くなるシーンの音楽とのこと。
この素晴らしいプレゼントに、そして、その感動的な音楽に、わたくしは、目頭が熱くなるのを覚えました・・・・・・。
今シーズンも、これで大団円。
いつにもまして、このオーケストラを愛し、応援してきて、ほんとうに良かったなと思いながら、みなさまに、お疲れ様のご挨拶をしつつ、仲間たちと、ビールを傾けに巷に向かいました。
横浜地ビールの、いつもお馴染みのお店。
グラスもリニュール、お料理も、春バージョン。
春野菜とサーモンのサラダ、カツオと春鯛のお刺身、ハマチのフィッシュ&チップス、カレー風味のチキン、ほうじ茶のゼリー・・・・・。
そして、ビールたくさん。
今回も、お疲れのところ、楽員さんにも、ご参加いただき、楽しいひとときを過ごすことができました。
次の、神奈フィルは、わたくしは、ヴェルディの「オテロ」。
そして、シーズンが変わって、4月は、モーツァルトのホルン協奏曲(豊田実加さん)と、ハイドン「告別」に、シューマン「ライン」で、春の出会いと別れを味わい。
さらに、みなとみらいでは、レスピーギの「ローマ三部作」で大爆発。
春、きますね。
神奈川フィルを聴きに、横浜へ行こうじゃん!
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