神奈川フィルハーモニー第309回定期演奏会 小泉和裕指揮
16日、土曜のみなとみらいは、曇天でしたが、湿度が高くて、ちょっとむしました。
広場では、横浜出身の音楽ユニット、「コアラモード」が歌ってまして、握手会にたくさんの行列が。
前にも、彼女たちをここで見ましたが、人気も出てきて、人も集まるようになってきましたね。
彼らの曲は、「七色シンフォニー」という可愛い曲で、とても音楽的ですよ。
さて、この日は、神奈川フィルの定期。
北欧の協奏曲とシンフォニーを聴きます。
シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ニ短調
Vn:米元 響子
ニールセン 交響曲第4番 「不滅」
小泉 和裕 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(2015.5.16 @みなとみらいホール)
ともに、今年生誕150年を迎える北欧のふたりの作曲家、フィンランドのシベリウスと、デンマークのニールセン。
その代表作を同時に味わえる、魅力的なコンサートでした。
ナイスプログラミングですね。
そして、両曲ともに、曲の真髄を堪能することのできた名演だった。
2007年のシュナイトさんとのブラームス以来の、米元さん。
彼女の、決してぶれることのない、強い意志に貫かれたヴァイオリンのひとつひとつの音色が、実に素晴らしい。
強い音から、繊細な弱音まで、音の幅の表出力が鮮やかで、どれひとつとして気持ちのこもっていない音はないように聴きました。
とりわけ、2楽章は、深々(しんしん)として、胸に迫ってくる感動を届けてくれました。
この協奏曲で、一番好きなのは、この楽章なのですが、オーケストラのクールな情熱のパレットを背景に、米元さんのヴァイオリンがしっとりと、そして、だんだんと熱くなってホールに響いてゆくのを、耳をそばだてて聴きました。
そして、不覚にも、涙ぐんでしまいました。
この楽章で、応援メンバーの仲間Aさんも、ハンカチで涙をぬぐう姿を、わたくしは見逃しませんでしたよ!
この協奏曲では、小泉さんは、譜面を置かず、暗譜で指揮しました。
編成は、さほど大きくはありませんが、オーケストラは、いろんな仕掛けがあったり、リズムが難しかったり、そして大いに幻想的なものですから、以外と難しい曲なのです。
ソロもオーケストラも、小泉さんの指揮は、きっと安心できるものだったでしょうね。
いつも思うけれど、小泉さんは、指揮中、日本の足を絶対に動かさない。
しっかり地に足が着いてます。
そして、米元さんも、しっかり、動くことなく、きれいな立ち姿での演奏でした。
後半は、ニールセン。
この曲を実演で聴くのは初めてかも。
CDでは、ラトルやベルグルンドが刷り込み。
オーケストラの編成は、ぐっと大きくなり、ティンパニが左右に別れて、二人の奏者が構える。
爆発的な出だしから、神奈川フィルのきらめくサウンドは全開で、次いで出てくる牧歌的な、いかにも北欧らしい場面も、このオーケストラならではの繊細さと優しい音色がぴたりときます。
ニールセンの6つの交響曲は、それぞれに個性的で面白いけれど、どの曲にも通じるとっつきの悪さ。
晦渋さをも備えもった作品たちなのです。
4つの連続した楽章は、思えば至極古典的な構成で、最後の輝かしい集結に向かって、悲劇色や、緊張、そして柔和さも併せ持つ場面が続出します。
それらの流れを、小泉さんは、しっかりと把握したうえで、オーケストラを統率していた感があり、聴いていて、その流れがとてもよく理解できました。
CDで聴くと、最後の最後ばかりに耳を奪われてしまい、それまでの経緯や過程が、どっかへいってしまうのですが、この日の演奏は、眼前で展開されるお馴染みのオーケストラの演奏ぶりと、安定の小泉さんの指揮により、曲全体を俯瞰するようにして、詳細な場面の積み上げを楽しむことができました。
深刻な3楽章には深いものを感じ、またバルトークのような響きとも思いました。
戦乱の不安も描かれたこの楽章。
さらに、のちのショスタコーヴィチをも思い起こしました。
その不安を一掃してしまう、ティンパニ協奏曲のような終楽章は、少し眠りに入りそうな観客の方々をも覚醒させる強烈なもの。
神戸さんの鮮やかさは、いつもの通り言うにおよばす、今回は、広響からの岡部さんの来演で、ふたりが張り合うかのような、すさまじいティンパニの殴打を聴かせてくれました。
これには、ホールは湧きましたね。
間髪いれずのブラボーは、フライングぎみでしたが、その思いも分からなくなありません。
指揮者もオーケストラも、目いっぱいの熱演・秀演でした。
抜けるように美しい響きの神奈川フィルは、北欧音楽にも適性がばっちり。
ニールセンのほかの作品や、シベリウスの全作を、今後も取り上げて欲しいです。
6月は、フランスものと、オール・プッチーニ。
楽しみが止まりません。
| 固定リンク
コメント