神奈川フィルハーモニー第310回定期演奏会 パスカル・ヴェロ指揮
蒸し暑かった土曜の午後、これからフランス音楽特集を聴くのだ。
今シーズンは、土曜の午後が多くて、集客にはよろしいですが、なんだか、金曜の夜も懐かしい今日このごろ。
夜の方が聴くに相応しい音楽もあるからして・・・・
ラヴェル 組曲「マ・メール・ロワ」
ピアノ協奏曲 ト長調
ショパン 練習曲作品25 第1番「エオリアン・ハープ」~アンコール
ピアノ:小菅 優
サン=サーンス 交響曲第3番 「オルガン付き」
オルガン:石丸 由佳
パスカル・ヴェロ指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(2015.6.13@みなとみらいホール)
夜と昼、コンサートの時間について、冒頭書きましたが、自分的には、ラヴェルは夜、サン=サーンスは、白中。
そんなイメージですが、もちろん、昼のコンサートで聴いたからといって、ラヴェルの精妙な音楽の素晴らしさは、少しも劣ることはありません。
ふだんCDでは、全曲盤を聴くことが多い「マ・メール・ロワ」ですが、こうして本来の組曲版で聴いても、マザーグースの夢の世界は、変わりなく素敵なものでした。
計算されつくされたラヴェルの精緻な音楽は、こうして生で聴くと、ほんとうによく出来てるなと思う。
そして、神奈川フィルの繊細・美麗なサウンドが、ラヴェル、そして、なんといってもこのお伽の音楽にぴたりと符合します。
各奏者が、少しづつですが、あまりにすてきなソロを奏でるのを、まるで夢見心地で聴いておりました。
なんてたって、石田コンマスの美しい、あまりに美しいソロがちょこっとはさまれる「妖精の園」。思わず涙ぐんでしまいました。
白昼のまどろみ誘う夢の世界を、優しく導いたのは、久しぶりのヴェロさんの指揮。
若々しいイメージだった南仏生まれのヴェロさんも、ずいぶんと落ち着きを増してきました。
きらめくラヴェルは、次いでピアノ協奏曲に引き継がれました。
シンプルで明快、弾むリズムのこの曲、初小菅さんですが、音楽への集中度、のめりこみ具合が、拝見してて楽しく、そして、その溌剌たる演奏がぴったりでした。
ことに、第2楽章アダージョは、ふたたび涙ぐんでしまうほどに、美しく、そして内省的でした。
長いソロ、オーケストラは休止してますが、オケの皆さんは、ときに目を閉じ、じんわりと小菅さんのピアノを聴いて、出に備えます。
鈴木さんのコールアングレのソロが、ふるいつきたくなるような美しさ。
みなさん、小菅さんのソロに感じて、同質の音のパレットをゆったりと広げてくれました。
急転直下の華麗なエンディングも、見事に、オシャレにきまりました!
アンコールは、流れるような流線型の音楽、ショパンのエチュードからでした。
おフランスの流れに沿った、エレガントな選曲に、演奏にございました。
小菅さん、今度は、プロコフィエフあたりを聴いてみたいな。
休憩後は、豪奢なサン=サーンス。
ヴェロさんの、自在かつ即興に溢れた指揮姿は、後ろから拝見してても、面白い。
大振りはせずとも、オーケストラから強大なサウンドを引き出し、そればかりでなく、抒情味に富んだ1楽章の第2部が、神奈フィルの弦の魅力もたっぷり味わうことができて、極めて魅力的でした。
弦楽器が、分奏で弾き分けて、きめ細かくその抒情の綾が成り立っていくのを目で確認しつつ聴くのも、実に楽しいものでしたね。
それと対比して、2楽章2部のゴージャス極まりない音の洪水。
涼やかなピアノも楽しい第2主題、強大なフォルテも濁らずに、すっきり聴こえます。
CDで聴いてると、途中で虚しくなってしまう音楽ですが、ライブはいい。
集中できるし、なんてたって、お馴染みの神奈川フィルの面々が夢中になって演奏している様子を拝見しながら、音楽に入り込むことができるから。
神戸ティンパニ、豪放乱れ打ちを伴って、圧倒的な大迫力で最後の一音を、これでもかとばかりに伸ばしたヴェロさん。
オルガンの石丸さんを称えるヴェロさん、いかにもフランス紳士らしく、さりげなく、そしてオシャレでしたよ。
みなとみらいホールのオルガンが、こんな風にして大音響として鳴り響くのを聴くのは、実は初めてなんです。
オルガンリサイタルでも聴いてみようとは、前から思ってましたが、ここで聴いたそのオルガンは、豪快さよりは、明るい鮮明さが際立ち、この豊かな響きのホールに似合うものでした。
優しい音色というとパイプオルガンらしくない表現ですが、石丸さんのオルガンは、きっとそんな響きなのでしょうね。
ソロや協奏曲で是非、と思いましたね。
それと、神奈川フィルには、次は、ヴェロさんとプーランクですな!
鳴りやまない声援と拍手に応えて、「(この曲は)、ちょっと、うるさいですねぇ、でももう一回」と、2楽章2部を短縮して再演。
今度は、さきほどと、少し表現を変えて、より演奏効果を高めていたように思いますし、神戸さんも、叩き方が違ってました。
そして、さらに、最後の和音を引き延ばし~
大ブラボー飛び交いました。
気分すっきり、頬も紅潮したまま、この日は、都内で用事がありましたので、仲間や楽員さんへのねぎらいもせず、すぐさまホールを後にしました。
演奏する側は、きっとテンションの維持も含めて大変な演奏会ではなかったでしょうか。
お疲れ様でした。
そして、いつも、素敵な演奏をありがとう、神奈川フィル
We Love神奈川フィルのみんなは、お約束の横浜地ビールの店で、こんな美味しそうなのを食べてたみたいですよ。
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