シューマン ヴァイオリンソナタ第2番 クレーメル
わたくしの住む関東地方も、本日、6月8日に、梅雨入りしました。
昨年より、3日遅いそうですが、それでも、ちゃんとやって来た梅雨。
どたぴしゃ降らないで、日本らしく、しっとり、しとしとした梅雨になって欲しいものです。
そして、今日、6月8日は、205年前、ドイツ・ザクセンのツヴィッカウにR・シューマンの生まれた日です。
シューマン ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ短調 op121
Vn:ギドン・クレーメル
Pf:マルタ・アルゲリッチ
(1985.11 @スイス、ラ・ショー・ド・フォン)
シューマン(1820~1856)には、番号付きのヴァイオリン・ソナタが3つありまして、そのいずれもが、40代になってからの作曲。
1番と2番は、期を接していて、1851年。
残りの3番は、ちょっとその生い立ちが変わっていて、ディートリヒという作曲家と、ブラームスとの3人で、ヨアヒムのデッセルドルフ訪問を歓迎する意図で共作した作品から、自作部分に、プラスして書き足して、全作をシューマン・オリジナルとしたもの。
そして、3人の共同作品は、ヨアヒムのモットーにちなんで、F・A・Eソナタと呼ばれてます。
ブラームスも3つのソナタがあり、F・A・Eもありで、やはり師への思いは、なにかと格別だったのですね。
実は、わたくし、シューマンのソナタは、3番の音源を持ってませんで、このクレーメル盤にある、2曲しか聴いたことないのですよ。
作品番号は離れているけれど(1番:op105)、このふたつは、姉妹作で、先にあげた年、1851年の秋の作です。
3楽章形式で、情熱的な1番の出来栄えに、ちょっと不満を抱いたシューマンは、すぐさま、2番に取り掛かり、より規模と構成の大きい、4楽章形式のソナタを、ほぼ1週間で書き上げました。
この頃のシューマンは、デュセルドルフで、指揮者としても活動しており、これまでライプチヒや、ほかの都市では、その楽壇との折り合いもよろしくなく、さらに、精神疾患も患うなか、ライン沿いの明るい陽光にあふれた新しい街で、充実の活動を始めておりました。
それでも、シューマンの内面には、さまざまな形での疾患の予兆が出始めていた。
そんな、明るさと、内面の複雑さとが、織り交ぜになった二つのヴァイオリンソナタですが、ちょっと、取っつきが悪く、晦渋な顔付きですが、よく聴けば、いいえ、どう聴いても、そこはシューマンらしさが一杯であります。
静かに、という表示が付いた3楽章の歌心にあふれた旋律には、とても癒されますし、それがまた変奏形式でもって、表情を変えつつ繰り返されるのには、堪らない魅力を感じます。
この旋律は、コラール「深き苦しみの淵より、われ汝を呼ぶ」です。
長い充実の第1楽章は、ドラマティックで、序奏のあとの主部は、ときおり、シューマネスクな世界を垣間見せるピアノが素敵であります。
スケルツォ風の第2楽章、そして、先にあげた3楽章。
終楽章は、音符の動きの忙しい展開と、ちょっと落ち着いた楽想の第2楽章とが交差する、ちょっと不安も感じさせる、これもまた、この時期のシューマンの心情を反映させる内容に思います。
全曲で30分あまり。
聴いて、終わって、感動や充実感とは違う、シューマンの世界を垣間見たという感想を抱きます。
そんなところが、またシューマンなところなのでしょうか。
シューマンのヴァイオリン・ソナタは、まだ初心者ですので、これらの曲の魅力を、お聞かせいただければ幸いです。
クレーメルとアルゲリッチのいくつかあるソナタ録音の中でも、このシューマンは、お互い、異なる個性が、微妙にマッチングして、明快でありつつも、シューマンのほの暗さや、歌を巧みに聴かせてくれているように思いました。
3番も、いつか聴かなくちゃ。
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コメント
この曲の魅力に気づかされたのは実演、戸田弥生さんとエル=バシャの5月のコンサートでした。期待していたフランクのソナタを上回る感動を残してもらいました。次々に湧き上がる楽想が、迸る感興が独特の世界を形づくっています。シューマンらしい? さっそくアルゲリッチとクレーメルの新旧CDを買い求めました。交響曲や歌曲にしか興味がなかった私ですが、これをきっかけにシューマンの室内楽やピアノ曲をよく聴いております。この新旧CDのジャケットの二人の姿、時の流れを感じずにはおられません。それは私も年取ったという現実に気づかされます。
投稿: ornellaia | 2015年6月 9日 (火) 12時03分
今晩は。私は世評の高いアルゲリッチ&クレーメルの演奏を持っておりません。ただブリリアントのシューマン室内楽全集を持っていて、ヴァイオリンソナタ3曲は確保しております。でも数年前に買っただけで四重奏曲3曲を聴いただけでミチョランマになっておりました。ブログ主様の魅力的な記事のおかげてソナタの1番と2番を昨日から今日にかけてゆっくり聴けました。地味でシブいけど素敵な曲ですね。有難うございました。ヘンスラー音源のなかなか立派な演奏でした。3番をこれからゆっくり聴いてみたいと思います。他の室内楽も…
私事になりますが、4月から大阪の通信制大学で、司書講座に挑戦しております。13教科24単位必要な国家資格です。4年前に京都の大学で見事にこけましたが、今日、一教科目のレポートが添削されて帰ってきました。結果は、「優」で合格でした。2教科めのレポを今日提出しました。最短一年、最長二年で司書資格が取れます。今回はやれそうな気がいたします。図書館を利用する市民の皆さんに喜ばれるサービスが提供できるライブラリアンになるのが目標です。幸先のいいスタートが切れて嬉しいです。
投稿: 越後のオックス | 2015年6月10日 (水) 19時26分
ornellaiaさん、こんにちは。
演奏会で聴くと、曲のディテールもリアルによくわかりますし、親しみも増しますね。
1番は、昨年、コンサートで聴けましたが、この2番は、なかなか演奏しないこともあって、まだです。
シューマンは、ピアノ・歌曲が中心に、室内楽に、声楽曲、そして交響曲といった位置づけの人なのでしょうね。
わたしも、ここ数年です、室内楽に耳が届くようになったのは。
それにしても、ふたりとも、表情が若いですね。
クレーメルは、あるものがある時期でしたし(笑)
投稿: yokochan | 2015年6月10日 (水) 21時29分
越後のオックスさん、こんにちは。
司書資格への挑戦、そして幸先のいい結果、おめでとうございます。
じっくりと、そして、ゆったりとしたお気持ちでもってこの先も挑まれ、どうぞ、成功の果実を勝ち取ってください。
シューマンの室内楽は、有名なピアノ五重奏を除けば、晦渋な内容をもっているように聴こえますが、何度も聞き返せば、味わいも出てきて、シューマンらしさを意識するようんになりますね。
投稿: yokochan | 2015年6月14日 (日) 21時54分