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2015年12月 4日 (金)

コルンゴルト 「雪だるま」 ウーリー

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鮮やかな色合いで変化する大観覧車「コスモクロック21」。

ちょうど、ブルーな感じのときに撮れましたよ。

前にも書いたかもしれませんが、1989年の横浜博のときに、この場所よりランドマークよりに据えられたものが解体・移築されたもので、同博覧会には、当時結婚したばかりの新婚状態で遊びに行きましたものです。

この年は、昭和天皇が崩御され、平成が始まった年。
3月に新婚旅行で、ウィーンやスイス、パリに行きました。
そのあとは、天安門事件、ベルリンの壁崩壊、東欧諸国の共産政権の崩壊などが連続して起こり、やがてソ連の共産体制も滅んでゆくことになるのでした。
そうそう、旅行から帰ってきたら、消費税制がスタートしていた。

もう昔のことですが、歴史は巡りゆくのでしょうか、世界はまたも激動中です。

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観覧車といえば、ウィーンのプラター公園にも。

あちらは、横浜のほぼ100年前、1897年。

その年、エーリヒ・ウォルフガンク・コルンゴルト(1897~1957)は、生まれているのです。

コルンゴルトの名を神童としてとどろかせた出世作は、11歳のときに書かれた「雪だるま」。
1908~9年にかけての作曲。
ピアノの練習に明け暮れた少年コルンゴルトは、プラター公園に遊ぶ子供心を持っていたでしょうか・・・・。

そんな思いを払拭したくなるような、抒情と遊び心にあふれた「雪だるま」を聴きます。

Korngold_snow_2


   コルンゴルト  パントマイム「雪だるま」 全曲

        ピアノ:スコット・ウーリー

                    (1994.4@シンシナシティ)


             「雪だるま」~序奏、第1場 

        マティアス・バーメルト指揮 BBCフィルハーモニック

 

                    (1997.6@マンチェスター)

作品番号はありませんが、事実上のコルンゴルトの初成功作は、前段にも書いたとおり、11歳の作曲。

幼少よりピアノ演奏に天才的な閃きを見せたコルンゴルトは、5歳の頃からもう、ピアノを弾きながら、思いついた楽想をスケッチしたり、早くも作曲という行為を行うようになった。

父ユリウスが推していたマーラーにも出会い、少年コルンゴルトは自作を披露し、マーラーを感激させたといわれます。
そして、マーラーはコルンゴルトの作曲の師としてツェムリンスキーを紹介する。

そんな環境のなかで書き始めたのが「雪だるま」。
小曲ばかりだったこれまでの作品の情景描写の優秀さを思った父ユリウスは、息子のために、ちょっとしたパントマイム劇を創作してやり、コルンゴルトは、ピアノ独奏用の劇音楽として、1908年のクリスマスから作曲に着手し、翌1909年の春に完成させます。
40分の大作を、11歳の少年がわずか数カ月で書き上げたこと自体が驚きです。

私的な慈善演奏会で演奏されたこの曲に、居合わせた聴き手は驚き、さらにそこにいた皇帝ヨーゼフ1世の密使が、皇帝にこの曲や、作曲者のことを報告するという事態になり、「雪だるま」の正式上演への期待がウィーン中に高まることとなるのでした。

ピアノの原曲をそのままに、オーケストレーションを施したのが、師ツェムリンスキー。
その譜面を携え、出版社がマーラーの後任としてウィーン国立歌劇場の総監督に赴任していたワインガルトナーに勧めたところ、ワインガルトナーはとても気に入って、その上演を快諾。
そして、ついに、1910年10月、作曲から1年半で、フランツ・シャルクの指揮によって初演され、未曾有の大成功を収めることとなりました。
このとき、コルンゴルトは13歳。
ウィーンの寵児の誕生でした・・・・・・。

こうして人々から喝采を受けたコルンゴルトが、のちにアメリカに渡り、映画音楽に手を染め、そして戦後クラシック音楽界に復帰しても、ウィーンを始めとするヨーロッパ楽壇は、彼を冷遇し、失意のうちにアメリカに没するコルンゴルトの運命なのでした。

さて、オーケストラ版は、たぶん全曲がまだなくて、一番長く演奏しているのが、バーメルト指揮するシャンドス盤です。
今日は、ピアノ全曲盤と、オーケストラ版の一部を聴きましょう。

この劇の素材は、道化師、コロンビーヌ、パンタロン(意地悪役)の3人の登場するイタリア仮面即興喜劇で、いわゆるドタバタ系のオモシロ劇なんです。

序奏と、第1部、間奏(ワルツ)、第2部からなり、CDでも4トラックに分けられてます。

①雪のクリスマスの街かど、左手にはパンタロンの家で、姪のコロンビーヌがいる。
貧乏なヴァイオリニストのピエロは、コロンビーヌに恋するけれど、パンタロンに追い出されてしまう。
酒好きのパンタロンが酔って、雪だるまに挨拶する姿を見て、ピエロは、雪だるまに扮装して、窓越しに、愛するコロンビーナを見つめることとします。

②そのピエロが扮した雪だるまばかりを見つめるコロンビーヌに嫉妬したパンタロン氏。
その雪だるまを暖かい家の中に、冗談で、招待してみると、本当に動き出してやってきた。
驚いたパンタロンは、家人に雪だるまをやっつけるように命じるが、全然歯がたたない。
悔しくなって、また酒を飲みだすパンタロンの酔った目には、雪だるまが何人も見えるようになり、そのすきに、コロンビーヌとピエロは手を携えて逃げてします。
 目ざめた、パンタロンは顛末を聞き、怒り、広場にあった雪だるまに体当たりをくらわせる・・・・

                 幕

こんな物語につけられたコルンゴルトの音楽が、実にステキなんです。

登場人物たちに付けられたライトモティーフは簡明ながら、おそらく心情に応じて、表情も変化するし、敵役パンタロンの滑稽さや、ピエロの弾くヴァイオリンの優美さとの対比も鮮やか。
聴いていてその情景が思い浮かぶようです。
 若くしてこの才能。
この作品の5年後、コルンゴルトは、初のオペラを作曲しますが、その素材も、「人生で一番、大切なものを捨てる」という、実に大人な物語をユーモアたっぷりに描くわけです。
そんな劇場作品を次々に生み出し、実写のスクリーンに生き生きとした音楽を付けてゆく、今後の作曲活動の原点を、ここ「雪だるま」の音楽に見ることができます!

ツェムリンスキーのオーケストレーションは、そうしたコルンゴルトの優しくて、甘味な音楽を余すことなく反映させていて、これまたステキなものです。
 しかしながら、ちょっとムーディにすぎるかも。

ピアノ版の方が、もう少しメリハリも効いてて、雰囲気に流されないシンプルなよさを感じます。
それにしても、とっても美しいメロディーが。
ピエロの奏でるセレナーデは蕩けるように美しく、オケ版では、当然にヴァイオリン・ソロによって演奏されます。
それと、ワルツ。
劇中と、1と2の場の間奏曲にも使われます。
ウィーンの伝統に則った、煌めくようなワルツに、後ろ髪引かれるようなノスタルジーさえ感じます。
これを聴いた、ウィーンの人々は、胸をかきむしられるほどの想いを抱いたことでしょう。

あと、エンディングの小粋の効いたユーモア。

音楽だけでなく、映像でもいいからバレエ付きで観てみたいものです。

まだあと少し、コルンゴルトを今月は続けます。

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