ブリテン 戦争レクイエム K・ナガノ指揮
広島と長崎に原爆を落とされて71年。
無辜の民間人に対する爆撃は、単なる殺戮にすぎなかった。
同様に、日本各地、内地までへも空襲が激化し、沖縄には上陸戦も。
負けたから、それらはやむなしか。。。。
が、しかし、日本人は、歴史には学ぶが、過去にこだわり執着することはない、そんな人種だと思う。
終わったことはしょうがない、さあ、次・・・、そんな心情を誰しもがいつも持っているのでは。
現職の大統領が初めて広島の地を訪れた今年。
異論はあるかもしれないが、謝罪なくとも、その意義は大きい。
大統領退任後の反核活動のメルクマールともなろうとも・・・・
自分の身内の死に際しても、わたくしたちは、悲しみながらも、淡々と、日本人ならではの送り方でもって、亡き人への告別をする。
その後は、いろんな折りあいをつけながらも、亡き人と心の中で交流しながらも、自分を生き、そしてまた去ってゆく。
いわば、そんな墨絵のような、派手さはないけれど、決して色あせることのない、日本人の死生観を、いまさらながらに、つくづくと思う、そんな8月。
そして、聴きます、8月は「戦争レクイエム」とヴェルディ。
ブリテン 戦争レクイエム
S:エマ・ベル T:ランス・ライアン
Br:ラッセル・ブラウン
ケント・ナガノ 指揮 エーテボリ交響楽団/合唱団
(2013.11.22 エーテボリ)
久しぶりの更新だけど、もう書きつくしたこの名作。
優れたこの作品の構成や生い立ちなどは、過去記事にて。
ブリテンの自演盤のみが、唯一の偉大な存在だったこの曲に、多様な演奏が続々と現れるようになったのは、そんなに昔のことではない。
そして、演奏会でもよく取り上げられるようになった。
戦争をしあった国出身で、3人の歌手たちを選ぶということも、いまではあまりなされなくなったし、なによりも、指揮者もオーケストラも多様な顔触ればかりとなった。
今年の「戦争レクイエム」は、放送音源から。
スウェーデンの放送局のネット放送から以前録音したもの。
エーテボリ響の音楽監督を務めるケント・ナガノの指揮で。
ブリテンを得意とするナガノは、かつてハレ管の指揮者のときに、ブリテンをかなり取上げていたけれど、戦争レクイエムは録音しなかったんじゃないかな。
実に共感のこもった、そして緊張感の高い指揮ぶりで、ときおり唸り声も聞かれる、気合充分の演奏。
エーテボリ響が戦争レクイエムを演奏しているということが、興味深く、聴きものかと思い、それは、親父ヤルヴィのもと、北欧・スラヴ作品ばかり演奏しているイメージがあったから。
しかし、エーテボリ響のHPをのぞいてみて、歴代指揮者を俯瞰してみたら、北欧系の指揮者はもちろんのこと、D・ディクソン、コミッショーナ、デュトワなどなど、アメリカのオケのような指揮者の布陣だったのだ。
さらに、親父ヤルヴィの長期政権のあとは、ヴェンツァーゴ、ドゥダメル君、そしてK・ナガノと続いたわけ。
でも、残念なことに、ナガノは来年、降りることになっていて、次期指揮者はフィンランドの若手、サントゥ=マティアス・ロウヴァリという30歳のフィンランド出身の人になるらしい。
注目の指揮者のようだ。
そして、はなしは戻って、この演奏、澄んだ響きのエーテボリ響が、明晰なナガノの音楽造りとあいまって、とても耳に新鮮に響いたのだった。
威圧感なく、ブリテンの斬新な音色と、優しい目線を、申し分なく味わえる。
録音も放送とは思えないレヴェルの高さ。
歌手では、去年まで、バイロイトでジークフリートを歌っていたランス・ライアンがユニークだった。
クセのある歌声は、ときにエキセントリックに聴こえるから、戦争の異常さ、切迫感なども妙にリアルに歌いでしているように感じる。
でも、ときにやる気なさそうなところもあるのがライアンの特徴か。
清楚なソプラノ、誠実なバリトンもともによかった。
「Let us sleep now・・・・」(ともに眠ろう・・・・」
「彼らを平和の中に憩わせたまえ、アーメン」
いつ聴いても、耳をそばだて、そして両手を前に組みたくなる、感動的なラスト・シーンに、今年も胸が熱くなった。
過去記事。
「ブリテン&ロンドン交響楽団」
「アルミンク&新日本フィル ライブ」
「ジュリーニ&ニュー・フィルハーモニア」
「ヒコックス&ロンドン響」
「ガーディナー&北ドイツ放送響」
「ヤンソンス&バイエルン放送響」
「ネルソンス&バーミンガム市響」
おまけ
平和祈念公園は、何度か訪れたけれど、そのたびに見かけて、写真におさめていたのが、この真黒なねこ。
そして、オバマさんが来たときも、厳戒態勢をくぐりぬけて、カメラに映りこんでました。
平和であれ。
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コメント
新しい書き込み、ありがとうございます。
仕事の無い私には最高のお中元です!
さまよえる様の猫ちゃんブログ、久々ですね。戦争レクイエム、久しく聴いておりません。ケントナガノの演奏、今度チャンスがあったら聴きます。ご指摘のブリテンのレコードばっかり聴いている私には興味ありありの演奏ですね。ベルディのレクイエムの書き込みもよろしくお願いします。ず===っと昔にタバコのCMにも使われていました。タバコのCMってなくなりましたもんね。ちなみに私はタバコが大嫌い。レストランや食堂、パチンコの隣の席で吸われるだけで席を変えます。オーストラリアでは1箱3200円になったらしい。日本もそうしようよ。1箱50万円にして、1本2万5千円にしましょう。そうしたら逆に愛煙家は「おい!アノ人、タバコ吸ってるぞ!しかも1分で1本吸ったぞ、金持ちなんだなー」って言われるようになるかもです。
投稿: モナコ命 | 2016年8月 7日 (日) 20時30分
yokochanさん
ケント・ナガノは私は勝手に日本人的共感を持って、支持しています。確か奥様は日本人?
相当昔、ベルリン・ドイツ交響楽団の指揮者だった頃、フィルハーモニーホールで演奏を聴きました。
戦争レクイエムは、私には相当難しくて、CDも最後まで聴いたことがありません。
ケント・ナガノの録音で最近聴いたのはブルックナーでした。聴きやすい演奏でしたよ。
投稿: 安倍禮爾 | 2016年8月 9日 (火) 16時21分
安倍禮爾さん、こんにちは。
K・ナガノの奥さんは日本人でピアニストですね。
最近は、モントリオールとハンブルクオペラに専念のようですが、もっとビックポストを得てもいいと思う指揮者です。
彼のブルックナーは正統派ですね!
投稿: yokochan | 2016年8月27日 (土) 11時45分