ブリテン イギリス民謡組曲「過ぎ去りし時・・・」 ラトル指揮
少し前の東京タワーと芝公園。
都心は狭いもので、歩いていろんな場所へ行けちゃうけど、ほんのちょっと移動するだけで、そこに普段住まう方や、勤務する方のカラーがまったく違って見える。
大使館などもあれば、外国の方の人種や雰囲気もすぐに違ってみえる。
狭いけど、大きすぎる東京は、行き過ぎた都会だな。
疲れちゃうよ。
私が、神奈川の片田舎から、都内に初めて出てくるようになったのは、幼稚園ぐらいのことかしら。
親戚の家が板橋にあったので、内部がまだ木製の湘南電車に乗って、東京駅まで出て、そこから丸の内線で池袋。
活気あふれる高度成長時代、車の排気ガスなんか、へっちゃらで、渋滞だらけで、カローラとサニー、いすゞN360とかが走りまくってた。
当時の写真は、みんなモノクロだけど、いまやそれもセピア色に変じてしまった。
ブリテン イギリス民謡組曲「過ぎ去りし時」
サー・サイモン・ラトル指揮 バーミンガム市交響楽団
(1984.5@ワーウィック大学、コヴェントリー)
ブリテン(1913~1976)最後の管弦楽作品。
1974年秋に完成させ、翌年のオールドバラ音楽祭にて初演。
その翌年には、63歳で亡くなってしまうブリテン。
最晩年にいたって、イギリス民謡を扱った作品を残し、英国作曲家の先達の伝統に回帰した。
それもそのはず、この作品は、パーシー・グレインジャーに捧げられている。
三浦淳史先生の解説を参考に記します。
この作品の副題は、トマス・ハーディの詩「生まれる前と死んでから」よりとられていて、この詩をもとに、ブリテンは、「冬の言葉」という名歌曲を編んでいる。
誰にもおそらく想像がつくように そして地上のさまざまな証拠が示すように
意識というものが生まれる前 万事はうまくいっていた・・・・・
しかし、感じるという病がおこった
そして原始の正しさは間違った色に染まり始めた
いったい無知が再認識されるのは あとどれくらいの時間がかかるのだろうか
ハーディ 命の芽生えの前とあと
なるほどのの、なかなかに深い詩、だけど、明快なテーマ。
そして組曲は、5つからなる。
①「美果と美酒」 Cakes and Ale
②「にがいヤギ」 The Bitter withy
③「まぬけのハンキン」 Hankin Boody
④「リスを追え」 Hunt the squirrel
⑤「メルバーン卿」 Lord Melbourne
17~8分の、いたって平易でシンプルな音楽で、とても聴きやすい。
勇ましい感じの①、ちょっと、まさに苦みあふれる雰囲気の②は、ハープの美しさがアクセント。
舞曲調で、シニカルでドラムも効いてる③
面白いのは④、弦楽器でバグパイプそのものを再現してしまった。
そして、一番深みあふれるのが⑤
コールアングレの物哀しいソロが、懐かしさを誘い、どこかに忘れてきてしまった、そして記憶のどこか遠くにあるものを思い覚ますような、そんな淡さをもった音楽。
この曲、初めて聴いたのは、バーンスタインの演奏で、初演間もないNYPOとの録音だった。
FMでの録音だったけど、後年、CDで買い直して聴いてみて、明快なバーンスタインの指揮と、ブリテンへの共感にあふれた演奏が素晴らしいと思った。
それとこのバーンスタイン盤は、「ピーター・グライムズ」からの「4つの海の前奏曲」と「パッサカリア」がとてつもなくいい演奏だ。
それと、ラトル盤。
シンフォニア・ダ・レクイエムの名演に隠れてカップリングされたこの曲に喜んだものだ。
ラトルの音楽への切り込みの鮮やかさは、バーミンガム時代の方が、いまよりもずっと上ではないかと思ったりもする。
フィルハーモニアとの初来日を聴いて、ラトルのCDを聴きまくったけれど、ベルリンフィルになってから、ほとんど持ってません(笑)
ちゃんと聴かなくては、と思いつつ、いまに至る。
で、過去を振り返るのでありました。
| 固定リンク
コメント
私も、この曲はラトル盤とバーンスタイン盤で聴いています。
初めて聴いたのはFMで、ロジェストヴェンスキー指揮ロンドン響のライヴだったと思います(たしかザルツブルグ音楽祭)。
そのときはバグパイプを模した4曲目が印象的でしたが、後々聴き返すごとに他曲も好きになっていきました。
ブリテン、そしてイギリス音楽は貴ブログを道しるべとして聴き進めているようなものです。
本当に得難い道標ですよ。
あっ、それから、BPO時代のラトルをほとんど聴きそびれて今に至ってしまったの、なんか似ています。
投稿: 親父りゅう | 2017年6月23日 (金) 00時07分
親父りゅうさん、これはどうも、こちらでもこんにちは!
ロジェヴェンもそうでうすね、FMでエアチェックした記憶がかすかにあります。
BBCの首席の頃、英国音楽をかなり指揮していましたね。
この素敵な音楽は、どうしてもバグパイプのところの面白さに耳がいってしまいますが、個々の曲は、じんわりとくる見逃せない良さがありますね。
そして、過分なお言葉、おそれいります。
少しずつ、以前のペースに戻りつつあります。
ラトル様も聴いていこうかと・・・・、というか、ロンドン響との組み合わせが楽しみです。
投稿: yokochan | 2017年6月23日 (金) 07時01分