コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲 ホープ、フラング、カヴァコス
晴れの日の5月の空、そしてタワーに美しの花。
気持ちいいもの、大好きなものに囲まれて過ごすことの幸せは、誰しもそう願いたいもの。
でもなかなかに、そうはいかないもの。
とても忙しくなった4月以降。
ことに5月は。
それでも、懐かしさと切なさ、そしてほろ苦い思い出に包まれつつ過ごす日々に、マーラーとコルンゴルトの音楽はうってつけだ。
次はディーリアスかな。
愛するコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲をいくつか入手したので、ずっと聴いております。

コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
Vn:ヴィルデ・フラング
ジェイムス・ガフィガン指揮 フランクフルト放送交響楽団
(2015.7,8 @フランクフルト)
ノルウェー出身のフラングのヴァイオリンは、初めて聴いた。
もう日本には何度か来ているし、CDもそこそこに出ている。
若いのに、着実に実績を積みつつある実力派のようだ。
チャイコフスキーやメンデルスゾーンだったら買わないけれど、コルンゴルトと、おまけにカップリングがブリテンときたら、それはもう!
ちなみに、ムターとプレヴィンのコルンゴルトも愛聴しているが、カップリングのチャイコフスキーは、いまだに聴いたことがないのである・・・・・
さて、このヴィルデちゃんのコルンゴルト、実に自然体で伸びやかななのであります。
それでいて音楽へののめり込み具合も、ある意味、必死感があって、とてもスリリングにも感じる。
彼女によれば、この曲は、ブリテンとともに、2曲携えてレコーディングすることが、長年の夢だったそうな・・。
そんな想いを、ひしひしと感じ取れる夢中さ。
それでいて、冒頭に書いたとおり、自然なのであります。
ノルウェーの山と湖の自然のなかで、伸びのびと育ったと、本人が言っているように、天然素材のようなヴァイオリンの音色で聴くコルンゴルトは、ほんと美しい。
ことに2楽章のロマンスは美品。
ジャケットは、いかにも北欧美人でステキですが、映像などいくつか観たら、まだまだ健康的な女の子って感じ。
大好きなニコラ・ベネデッティが、このところ、大人の女性に変貌しつつある。
ヴィルデちゃも、いつか・・・・、むふふのお楽しみである。

コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
Vn:ダニエル・ホープ
アレクサンダー・シェリー指揮 王立ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団
(2013.1 @ストックホルム)
「ベン・ハー」の愛のテーマで、いきなり始まる秀逸な企画の1枚。
ESCAPE TO PARADISEと題された、ハリウッドにまつわる銀幕の音楽をぎっしり詰め込んでいるのだ。
そんななかに、主役のように配されているのが、コルンゴルトのヴァイオリン協奏曲。
ナチスのドイツから逃れた先がハリウッドの映画界。
コルンゴルトの映画音楽もたくさんあるし、このヴァイオリン協奏曲も、自身のそんな映画音楽から、旋律が編み取られている。
今回は、この協奏曲のみに絞りますが、楽園として亡命した何人かのハリウッドを飾った作曲家たちの素敵な作品も、またいつか取り上げたいと思います。
ヴィルデ・フラングのあと、ダニエル・ホープのヴァイオリンを聴くと、やはりスケール感と練り上げられた音色の深みが違うことに気づきます。
大人の音楽。
繊細さでは、ダニエルさんのほうが上回り、快活さや技巧の冴えではヴィルデちゃん。
1楽章からして、苦みの効いたサウンドが、わたしの気持ちをわしづかみにしてくる。
遠くを見通すかのような淡さもあるし、第2楽章では、過ぎ去った日々を懐かしむ、そんな儚い男の夢にぴたりと寄り添ってくれる、そんなホープの優しいヴァイオリンに涙したい。
ところが3楽章では、それじゃダメとばかりに、エッジの効いた鋭さで、背中を思い切り押してくれる前向きなヴァイオリンを聴かせるホープさん。
歌いまわしも自在で、いやぁ、これはいい。

コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲 ニ長調
Vn:レオニダス・カヴァコス
マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団
(2016.1.14 @ミュンヘン)
バイエルン放送局のネット配信で視聴したのがこちら。
録音もしちゃいました。
画質も音質も、この局のものはほんとに素晴らしい。
いずれ、音盤になるのかな?
なんたって、ヤンソンスのコルンゴルトだから!!
ちなみに、この日の演奏会の演目は、コリリアーノに、この協奏曲に、ラフマニノフの「鐘」という渋いけれど、好きなひとには堪らないもの。
さらに、このあとの欧州ツアーでは、コルンゴルトに、ショスタコーヴィチの7番。
バイエルンに一筋の男ヤンソンス。
そんなヤンソンスの情熱に、バイエルン放送響の輝かしさと、明るい音色が加わって、絶品のオーケストラ伴奏となっている。
艶やかな弦に、木管のあたたかな囁き、そしてマイルドな金管、色気あるホルン。
ほんと、いいオーケストラだ。
おっと、カヴァコス氏を忘れちゃいけない。
今回の3人のヴァイオリニストのなかで、一番年長。
そのお姿のように、求道的ともいえる集中力を感じる、研ぎ澄まされたヴァイオリンの音色。
そして、驚きの2楽章の美演。
音色の美しさでは、もしかしたら、今回の3人のなかで、一番。
終楽章の盛り上がりも、ライブならではだし、みんな乗せちゃうヤンソンスの指揮の力もあるかも。
DVDでの演奏も、カヴァコスにはあるけれど、もう一回確認してみなくては。
オーケストラの魅力もあるが、今回の3つの演奏の中では、一番バランスがよい。
で、どれが一番好きかって?
そりゃ、全部だよ。
さて、今宵も、コルンゴルトの音楽に咽び泣きつつ、盃を呷るのでありました・・・・・・。

過去記事
「ムター&プレヴィン」
「パールマン&プレヴィン」
「ハイフェッツ」
「シャハム&プレヴィン」
「ハイフェッツ&ウォーレンシュタイン」
「ベネデッティ&カラヴィッツ」
「ズナイダー&ゲルギエフ」
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コメント
うっかり忘れていました。ベネデッティのコルンゴルドもオランダのNPO Radio4の公式サイトに演奏がありました。これにも魅了されました。
https://www.youtube.com/watch?v=W_sSGr8z5VM&t=1423s
投稿: Sammy | 2017年6月 5日 (月) 20時23分
Sammyさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
ベネデッティのご案内の映像、わたくしも、発見して既に視聴しております。
とても練れてきていて、素晴らしい演奏に思いました。
彼女のライブは、あと数種類ありまして、みんな録音して楽しんでます。彼女はスペシャリスト化してますね。
投稿: yokochan | 2017年6月 8日 (木) 07時58分