ブルックナー 交響曲第8番 ショルティ指揮ウィーンフィル
何日か前の東京の壮絶な感じの夕焼け。
このあと、西の方から台風がやってくるのでした。
そして、60年代、ウィーンを中心に嵐を呼んだ指揮者を。

ブルックナー 交響曲第8番 ハ短調
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(1966.11・12 ゾフィエンザール)
ほんとは大好きだけれど、めったなことでは聴くことが少なくなってきていた曲、それが、「ブル8」であります。
「ブル7」は、あまりにも演奏されすぎて、食傷気味。
曲が偉大すぎて、大きすぎるから、8番を敬遠。
9番も、やたらに好きだけれど、こちらは彼岸の曲にすぎるから、逃げてる風があるかもしれない。
だから、ブルックナーは、1、2、4、5、6番を普段聴きしてる。
そんな自分が、ふと気になったのが、ショルティの指揮する「ブル8」。
一般的には、シカゴとの全集録音の一環が、「ショルティのブルックナー」ということになるだろう。
しかし、ショルティが60年代、ヨーロッパを中心に、オペラ指揮者として活躍していた頃のブルックナーやベートーヴェン、マーラーの録音があることに、はたと思い出し、それらを聴いてみようということになったのだ。
それらは、古いレコ芸の広告や、ロンドン・レコードの冊子などで見て、記憶の片隅にあったもので、これまで聴いてなかったけれども、ノスタルジーをかきたてる、そんな存在でもあったのだ。
で、手始めに聴いてみた「ショルティ&ウィーンフィルのブル8」。
いや、これが、実に爽快であった!
快刀乱麻、鬼のような形相で切りまくるブルックナーでもありながら、すべての音符が明快で、もやもやした、神棚に祀り上げられてしまったような、どこか遠い、崇高すぎるブルックナーではない。
手の届くところにある、ウィーンフィルのブルックナーでもあった。
そう、なんたって、プロデューサーは、ジョン・カルショーであり、音楽エンジニアは、ゴードン・パリーなのだ!!
66年の録音といえば、58年から始まった、ショルティ&ウィーンフィルのトリスタンを挟んでの「リング」録音が、65年に終結したその翌年。
ホールもスタッフも、みんなおんなじ。
当時は、まだ難解な大曲だった「ブルックナーの8番」を、あの「リング」と同じく、優秀な録音で、明快に、わかりやすく聴いてもらおうという意欲が、演奏者・録音スタッフたちの共通認識だったかもしれない。
録音後、はや50年が経過し、そんな風に思える演奏なのだ。
この1年前、デッカは、同じコンビで7番、メータで9番をリング界隈で残しているのも、そうした意図があるのかもしれません。
全曲は、約75分。
速いところは一気呵成、それと、ドラマティックに燃え上がるところでは、壮年期のあの激しい、切るような怒涛の指揮ぶりが伺われるような、そんなすさまじさもあるけれど、さらに、音圧も強くて、はっきりしすぎの感もあるけれど、でも、相対的に、ブルックナーとしての伸びやかな佇まいと、まばゆさに欠けていないと思いながら聴いた。
ことに、圧巻の終楽章フィナーレは、有無をいわせず、かっこいい!
で、なんといっても、ウィーンフィルの美しさ。
いまのオールマイティなウィーンフィルにない、ローカルな言語で語られるブルックナーは格別であった。
オーボエを中心に、鄙びた雰囲気の木管に、柔和なホルンに、丸みをおびた金管、そして懐かしいほどの親しみあふれる弦。
これらを、しっかり捉えたデッカの録音。
あの「リング」の録音の延長線上にあるといっていいかもしれない。
この国内盤の解説には、リングの合間をぬって録音とあるが、それは間違い。
「アラベラ」 1957年
「ラインの黄金」 1958年
ベートーヴェン 交響曲第3番、5番、7番 1958、59年
「トリスタンとイゾルデ」 1960年
「サロメ」 1961年
「ワルキューレ」 1962年
「ジークフリート」 1964年
ブルックナー 交響曲第7番 1965年
「神々の黄昏」 1965年
ブルックナー 交響曲第8番 1966年
「エレクトラ」 1966,67年
「ばらの騎士」 1968年
ウィーンでのショルテイの録音は、あと、ワーグナーの管弦楽作品があるけど、こんな年譜かな。
こうしてみると、ひとつのレーベルが、ウィーンでのオペラ録音をとても計画的進めていったことがよくわかる。
あと、ショルティは、ローマやロンドンで、ヴェルディの録音を同じように行っていた。
ともかく、どちらかというと避けていた、この作品に、この演奏、大いに気にいりましたぞ。
ベートーヴェン 交響曲第3番、5番、7番 1958、59年
「トリスタンとイゾルデ」 1960年
「サロメ」 1961年
「ワルキューレ」 1962年
「ジークフリート」 1964年
ブルックナー 交響曲第7番 1965年
「神々の黄昏」 1965年
ブルックナー 交響曲第8番 1966年
「エレクトラ」 1966,67年
「ばらの騎士」 1968年
ウィーンでのショルテイの録音は、あと、ワーグナーの管弦楽作品があるけど、こんな年譜かな。
こうしてみると、ひとつのレーベルが、ウィーンでのオペラ録音をとても計画的進めていったことがよくわかる。
あと、ショルティは、ローマやロンドンで、ヴェルディの録音を同じように行っていた。
ともかく、どちらかというと避けていた、この作品に、この演奏、大いに気にいりましたぞ。
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コメント
今晩は。
ブルックナー8番は、
もう結婚を前提にお付き合いしたいほど(笑)
好きで色々な演奏を聴いておりますが、
ショルティの8番は、晩年のシカゴを指揮した
ライブCDしか聴いたことがありません。
あれは大学時代に買ったディスクだったと思います。
当時の私にはゴリ押しで過激すぎる演奏に思えて
手放してしまいました。
今になって悔やんでおります。
ブログ主様にこんな魅力的な文章で紹介されると
私もショルティ旧盤を聴きたくなってしまいました。
ウィーンフィルのブル8ならユニークな演奏ですが、
ブーレーズが非常に好きです。
投稿: 越後のオックス | 2017年9月28日 (木) 21時59分
こちらにもコメントありがとうございます。
かなり、お好きのようですね、ブル8。
この剛毅だけれども、ウィーンらしい演奏、録音も含めて、多面的な楽しみ方がありました。
投稿: yokochan | 2017年10月 1日 (日) 21時56分
>「ラインの黄金」 1958年
>「ワルキューレ」 1962年
>「ジークフリート」 1964年
>「神々の黄昏」 1965年
この指環の録音年代は間違いでは?
「ラインの黄金」1958年
「ジークフリート」1962年
「神々の黄昏」1964年
「ワルキューレ」1965年
↑
これが正しくて「ワルキューレ」が最後のはずです。
というのも当時デッカはRCAと提携してて、RCAのラインスドルフの「ワルキューレ」をデッカチームで録音する事になったので、ショルティと録音するのは無駄(主役のニルソンが被るし)だと言われて当初の計画は却下されたそうです。
「神々のたそがれ」が予想以上に売れたのでやっとツィクルスで完成させる事になり「ワルキューレ」にGOサインが出た、、、という裏話がカルショウの本にありました。
投稿: | 2017年11月19日 (日) 15時18分
あ、そうですね。完全に間違えました。
CDを確認しましたら確かにそうです。
自分の中でも、ワルキシューレが最後だと思っていながら間違えました。
ご指摘、まことにありがとうございます。
そしてカルショウの興味深い裏話もお教えいただき、感謝いたします。
しばらく後に、間違いは訂正しようと思います。
しかし、いろんなエピソードがあってこそ、レコード史に残るような名盤が生まれるのですね。
投稿: yokochan | 2017年11月19日 (日) 17時57分