ヴェルディ 「リゴレット」 ボニング指揮
つつじがまだ咲いていた頃の吾妻山より。
今年の桜は早かったけど、つつじも早かった。
でも色が濃くて、美しかった今年のつつじ。
今日は、日曜日、天気も上々、暑いし、そうだ、ヴェルディ聴こう!
ヴェルディ 歌劇「リゴレット」
マントヴァ公:ルチアーノ・パヴァロッティ リゴレット:シェリル・ミルンズ
ジルダ:ジョン・サザーランド スパラフチレ:マッティ・タルヴェラ
マッダレーナ:ユゲット・トゥランジョー モンテローネ伯爵:クリフォート・グラント
チェプラーノ伯爵:ジョン・ギッブス チェプラーノ夫人:キリ・テ・カナワ
マルロ:クリスティアン・ドゥ・プレシス ボルサ:リッカルド・カッシネッリ
ジョヴァンナ:ジョセフィッテ・クレメンテ
リチャード・ボニング 指揮 ロンドン交響楽団
アンブロージアン・オペラ・コーラス
合唱指揮:ジョン・マッカーシー
(1971.6 @キングスウェイホール、ロンドン)
ヴェルディ17作目のオペラ。
よりドラマに劇性を織り込み、愛国心一辺倒から、人間の心情により切り込むようになった中期の作品。
このあと、トロヴァトーレ、ラ・トラヴィアータ、シチリアの晩鐘、シモン・ボッカネグラ、仮面舞踏会、運命の力・・・・と続いてゆく。
このあたりから以降が、いまも一番上演され、聴かれているヴェルディのオペラです。
1861年、フェニーチェ劇場で初演。
ヴィクトル・ユーゴーの「王は楽しむ」が原作。
有名な話だけれど、モーツァルトとダ・ポンテがフィガロの結婚で、貴族の身勝手をチクリと刺したように、ヴェルディは、上演禁止をくらっているユーゴーの戯曲に着目した。
ただ、それは王の横暴よりは、醜く、毒舌の道化師と、その美しい娘、その父娘の清らかな愛とその悲劇に着目したわけだ。
場所や立場は変えたものの、ヴェルディの描き出した愛憎あふれるドラマに付した音楽は素晴らしい。
公爵への愛を愛を諦めず、疑わないジルダに、娘の目を覚ますために、公爵がマッダレーナを誘惑する姿を見せつけ、悲しむ娘に復讐を誓うリゴレット。
この高名な四重唱の、役柄それぞれの異なる心情を、あの軽やかともいえるメロディにのせたヴェルデイ、ほんとにすごいと思う。
でも、娘ジルダの優しさと深い愛は、さらに高次元だった。
急転直下のラストシーンに、呪いの恐怖と、なによりも娘を失い、ひとりとなったリゴレットの悲劇が浮き上がる仕組み。
極めてよくできたオペラだと思います。
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でも、懲りない女好きにすぎるマントヴァ公には困ったもので、観る側にとって、感情移入のしにくい役柄だ。
しかし、全盛期のパヴァロッティの朗らかかつ、あっけらかんとした美声と危なげない歌声を聴いちゃうと、憎めなくなる(笑)
この録音のあった1971年に、パヴァロッティは、NHKのイタリアオペラ団で来日し、マントヴァ公を歌っていて、私もテレビで見た記憶がうっすらとある。
この時の指揮は、マタチッチ。
マタチッチは、同時に、トゥーランドットも指揮していたので、これらのライブとか復活しないものだろうか。
あと、今日の音源で、実は一番好きなのが、ミルンズのリゴレット。
マッチョで、ヒロイックなミルンズの声が大好きで、さらに心情の襞の濃いカプッチッルリとともに、リゴレット役としてはすぐれたものの一つと思う。
意気軒高だった前半、しかし、娘をかどわかされ怒りを爆発させつつ涙を誘う、このあたりのドラマテックなミルンズはことに素晴らしく、すべてを失う悲劇に満ちた最後もいい。
サザーランドの美声も久々に聴くと新鮮なもんだ。
ときに機械のようで不感症チックに感じるときもあったが、そうでばかりでもないのかな、サザーランド。
ベルカント系が苦手だから、あまり聴いてこなかった歌手のひとりだ。
タルヴェラの美声のスパラフチレもいいし、今年、亡くなってしまったカナダのマッダレーナのトゥランジョー、いろんなオペラ録音にその名をみることが多かった。
思えば、主要なこの盤の歌手は、もうみな物故してしまった。
ミルンズは83歳で、まだ健在。
ロンドン響から、オペラティックな雰囲気の音を引き出しているボニングも、88歳ながら健在。
個性豊かな往年の歌手たちの時代、よかったぁ~
今は映像主体だし、劇場からも遠のいているから、最近の歌手たちを覚えきれないし、ロシア系やバルト系などの振興もあって、よけいにその名前をおぼられない焦燥の思いをいだいてます・・・・
久々の、休日のヴェルデイ。
気分がよかった。
新緑が眩しい。
梅雨の足音も近い。
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コメント
ご無沙汰しております。ご案内のリゴレット。いいですね!学生時代にかなり無理をして購入したレコードです。とりわけパバロッティがすばらしい。highDの声の輝きの虜になった記憶があります。ご指摘のミルンズのリゴレットも素敵です。なつかしくも大好きなアルバムです。豪華キャストのジュリー二盤や同じパバロッティでもシャイー盤だけが取りざたされさびしい思いをしていました。さまよえる様に高い評価をされ、私までうれしい気持ちになっています。
投稿: モナコ命 | 2018年6月 2日 (土) 21時06分
モナコ命さん、こんにちは。
そうそう、パヴァロッティの輝かしい声、悪いヤツなのに、無垢な感じになってしまうところが素晴らしいですね。
そして、ミルンズが大好きです。
この音盤、思った以上にボニングの指揮が全体をうまくまとめてまして、今回、見直した次第でもありました。
60~70年代は、贅沢な時代でした!
投稿: yokochan | 2018年6月 3日 (日) 10時45分
名盤に恵まれぬとされる『リゴレット』の中で、愚生の最も愛でる盤が、これです。キャストにムラや穴がなく、録音もよろしいですし、強いて難癖を付ければ、冒頭の宴会の場の群衆のざわめき、テンペスタでの雷鳴の擬音効果が、繰り返し聴いていると、耳障りになる点でしょうか。
世評高いWarnerのカラス&セラフィン盤、公爵のカヴァティーナ『頬の涙が』の後の後半のカヴァレッタが、ごっそりと刈り込まれております。初めて聴いた際は、『何じゃ?!』と思いました。雑誌の月評やガイド本で、この点に言及していないのは、如何なる訳でしょうか。
投稿: 覆面吾郎 | 2019年5月21日 (火) 10時12分
デッカの目覚ましい録音は、効果音もやたらとリアルでしたね。
セラフィン盤、というよりカラスの音盤は、トスカとノルマ以外は持っていない変なわたくしですので、ご指摘の点は不明ですが、しかしヒドイもんですね。。。
投稿: yokochan | 2019年5月22日 (水) 08時34分
昨日ディスクユニオン大阪館で、サンツォーニョ指揮のこのオペラ全曲LP‥KING、SLX3-17‥を無論中古品で買いました。解説書の奥付けが昭和38年1月15日と言う昔の盤ですが、ボックスの背文字も剥げておらず、丁寧な作りの解説書も殆ど手垢が付いてなく、つい買ってきた次第です。昔のKINGがやっていた頃のオペラ全曲物は、セッション中のスナップもふんだんに掲載されて、主要なナンバーの譜面も楽曲解説に載って、本当に贅沢な商品だったんだなぁ‥と、溜め息が出ました。
ただ専門誌月評での評価は、セラフィンやショルティには到底及ばない演奏水準で、Deccaレーベルとしても貴ブログでお取り上げのボニング盤の方が遥かな立派な演奏と、されておりました。それでもマントヴァ公爵のレナートーチオニ、スパラフチレ役のCーシエピの美声には、引き込まれました次第で、ありました。また、前述のスナップ写真で、このレコーディングの担当プロデューサーが、エリックースミスと言う事も初めて知りました。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年2月17日 (月) 11時10分
サンツォーニ盤、ありましたね。
ボニング盤が出て、影が薄くなってしましましたが、シエピがスパラフチレなんですね。
CDでも出てるようで、ちょっと気になります。
ロンドンレーベルのオペラなどの組み物は、たしかに豪華で、解説も充実してましたね。
重量もなかなかのもので、たくさんそろえると、床が抜けそうな感もありました。
投稿: yokochan | 2020年2月19日 (水) 08時47分
シエピのDeccaレーベルへの録音参加、このサンツォーニョ盤でのフパラフチレ役が、最後なのだそうです。まだまだ歌える年齢でしたのに、どのような事情が、あったのでしょうね。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年2月23日 (日) 20時25分
そういえば、シエピさん、デッカには出なくなってましたね。
RCAには、ベテランとして登場してましたが。
投稿: yokochan | 2020年2月26日 (水) 08時25分
サンティ指揮のモンテメッツィ/『三王の恋』でしたね。そう言えば、バスティアニーニも当初カラヤン&VPOの『オテロ』のイアーゴ役に決まっていながら、録音開始の時点でまるで役をマスターしていないと帝王の怒りを買い、降ろされてしまった‥と、1980年頃音楽之友社から刊行された『オペラのすべて』と言うムックに、確か小林利之さんが書いていらっしゃいました。で、以降バスティアニーニはDeccaとの関係を清算して、DGのスカラ座シリーズのサンティーニ指揮の『ドン-カルロ』、ガヴァツェーニ指揮の『仮面舞踏会』に参加なさったのだそうです。
投稿: 覆面吾郎 | 2020年2月26日 (水) 10時25分
yokochan様
たびたび、お邪魔致します。この、イギリスDeccaアナログ最盛時の、ボニング指揮の『リゴレット』本当に名盤です。私的な好みでは、ジュリーニやシノーポリより、これを採りたいです。これ程のレヴェルの全曲盤が、現今音楽之友社が度を越して御執心の企画、『名曲名盤500・ベストレコードはこれだ!』の『リゴレット』の項に、影も形も無いのは、どういう事か‥とも思いますね。まぁ、名盤は聴き込み自ら作るもの‥と思えば、さして気にもなりませんけれども‥。脱線ですが、この企画について、一つ疑問を。各選者の皆様は、ある曲についてどの程度の種類の同曲異盤を比較試聴為さり、各々のベスト3をランキングして居られるのか‥と、言う点です。例えば、音楽之友社さんが、各選者にモーツァルト/『ハフナー交響曲』に、50種類の音源を均等に配布し、それから三強を選ぶように‥とでも為さって居るのならば、まだ納得です。同曲に於いて、例えばトスカニーニ&NYフィルから、ラヴィノヴィチ&シンフォニア・ヴァルソヴィア迄の音源を全て耳を通して、ベスト3を選択しましたと言う人が、居られるのかな‥と、疑問を抱いて仕舞います。
長々と、失礼致しました。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年6月21日 (火) 10時40分
こちらにもありがとうございます。
デッカのオペラ録音は、やはり一皮むけたようで違いますね。
安心して聴けますし、いまでも鮮度バツグンだと思います。
ご指摘のレコ芸のベストチョイスシリーズですが、たびたび更新されるこの企画、次々に新しい話題の録音に上位陣が上書きされていると思います。
定番の名盤は上位にしっかり食い込んでますが、わたしが好む音盤は、どんどん下位に、そして姿も見えなくなっていきます。
若い頃は、こうしたランキングや評価に一喜一憂しましたが、いまや完全スルーで、我が道を行く、という感じです。
投稿: yokochan | 2022年6月28日 (火) 09時02分
yokochan様
私の取るに足らない長口舌に、ご辛抱強くお付き合い下さり、篤く御礼申します。
まぁ、この企画の執筆陣にも、要注意人物いらっしゃいました(笑)。鬼籍にお入りに成った方を云々するのは失礼ですけれども、S・Sさんなんかベートーヴェンの『ピアノソナタ第31番変イ長調』に、三点全てバレンボイム、ポリーニ、ギレリスとDG原盤と、『ポリドールの回し者?』と苦笑せざるを得ない、選択ぶりでしたよ。最近やはりお隠れになったT・Uさんと良い勝負と、言った所で、かえってこれ程露骨なあるメーカーへのすり寄りが読めると、『あっ、この御仁の文章は、スルーすべし。気に入る盤への出会い等、絶対無理。』となるので、実害は被りませんでしたが(笑)。それでは、失礼致します。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年6月28日 (火) 12時37分
かつての音楽評論は、読者が情報不足で、完全な受け手でしたので、評論家諸氏の個性が逆に楽しかったりしました。
しかし、いまや、読者も音楽界の状況を世界レベルで取得できるし、さまざまな演奏も簡単に聴くことができるようになりまして、それぞれが情報発信者ともなりました。
そういう意味で、評論家諸氏も大変であろうかと思います。
評論家も聴き手も、それぞれに音楽を愛し、楽しむに尽きますね!
投稿: yokochan | 2022年7月 4日 (月) 08時39分
yokochan様
確かに先日『日本に於けるDeccaレーベルの、発売状況の変遷』と申しますフレーズで、検索を入れて見ましたら、熱烈なコレクター様の発信blogがございまして、英国Deccaのワイド・バンドにナロー・バンド(お恥ずかしながら、当初この両者の意味、判りませんでした!)、アメリカLondon、西ドイツTeldec、韓国Decca(!)他の各国レーベルの表示をなさって居る、物凄いコレクターがいらっしゃいます。とにかくここまでの域に達しますと、殆ど専業ライターのレヴェルでは、無いかと‥御傾倒(笑)。内心『この調子じゃ、レコ芸誌の命脈いつまで保てるのか?』と言う、思いすら‥。何でもこのお方、エルネスト・アンセルメへの
投稿: 覆面吾郎 | 2022年7月 4日 (月) 19時54分
yokochan様
確かに先日『日本に於けるDeccaレーベルの、発売状況の変遷』と申しますフレーズで、検索を入れて見ましたら、熱烈なコレクター様の発信blogがございまして、英国Deccaのワイド・バンドにナロー・バンド(お恥ずかしながら、当初この両者の意味、判りませんでした!)、アメリカLondon、西ドイツTeldec、韓国Decca(!)他の各国レーベルの表示をなさって居る、物凄いコレクターがいらっしゃいます。とにかくここまでの域に達しますと、殆ど専業ライターのレヴェルでは、無いかと‥御傾倒(笑)。内心『この調子じゃ、レコ芸誌の命脈いつまで保てるのか?』と言う、思いすら‥。何でもこのお方、エルネスト・アンセルメへの
投稿: 覆面吾郎 | 2022年7月 4日 (月) 19時54分
御傾倒が病こうこうの域に達して居る‥と、御自身でおっしゃって居られます。このお方に取りましては、昨今の日本のクラシック・レコード評論界での、アンセルメ軽視の風潮等、屁とも思って居られないでしょうし、またそれでよろしいと確信致します。また、変な切れ方になりまして、お詫び申し上げます。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年7月 4日 (月) 20時00分
yokochan様
去る4日19:54頃送信させて戴きました分が、謝って連打となり、同一内容がダブってしまいました。深く御詫び申し上げます。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年7月 5日 (火) 13時22分
yokochan様
去る11月27日、大阪府吹田市のメイシアターにて、関西二期会の『リゴレット』観劇に言って参りました。舞台装置が些か簡素化されて居りましたが、歌手陣の総体的な出来栄え、鈴木恵里奈様指揮の、関西フィルハーモニー管弦楽団の演奏、先ずは満足度の高い水準と、聴きました。欲を申しますと、外題役のHさんにもう少し役柄の様々な側面を歌い上げて戴けたら、申し分御座いませんでした。声その物は良く通る美声で、いらっしゃいましたが。
投稿: 覆面吾郎 | 2022年12月 7日 (水) 12時45分
日本各地で質の高いオペラが上演されるようになり、まずは慶賀の至りです。
まずオーケストラを揃えるのが大変ですが、関西フィルとは豪華ですね。
わたしのいる小さな町でも、先日フィガロが上演され、観劇はできませんでしたが、ミニサイズのオケで、レシタティーボは日本語、歌唱は原語という具合に、おそらく初めてオペラを見る方にもわかりやすかったようです。
リゴレットは、感情移入しやすいオペラですので、さぞかし盛り上がったことでしょうね!
投稿: yokochan | 2022年12月14日 (水) 08時45分