ブリテン 戦争レクイエム ハーデング指揮
もう何度か、ご紹介している少女像。
毎夏、町内はおろか、各地から寄せられる千羽鶴が飾られる。
家族が営むガラス工場が東京大空襲にあい、母と妹を失った少女。焼け跡から出てきたガラスのうさぎを手に、父と神奈川県二宮町に疎開。
駅に停めてあった貨物車両を狙った米軍の機銃掃射が、駅舎も襲い、そこで父を失う。
その時、亡くなったのは無辜の人々、5人。
二宮駅のホーム屋根の鉄骨には、今だ銃弾の跡があります。
わたくしの育った、小さな町も、海沿いということもあってか、相模湾方面から米軍機が終戦末期には飛来しました。
もちろん、お隣の平塚市が、軍事工場が多かったこともあって、空襲の被害はとても大きかったし、神奈川はもちろん横浜の空襲被害が大きかった。
そして、東京、名古屋、大阪の大都市圏も甚大な被害を受け、南方が陥落され、爆撃機が容易に本土各地にやってくるようになり、空襲被害は各地に拡大。
工場に加え、隣接する街々民家も、日本では木造であることこら、焼夷弾が使われ、一般国民の恐怖を煽る戦術を展開した。
最期は、広島と長崎への原爆投下。
ふたつの原爆は、種類が異なり、アメリカはソ連に先んじて、投じることの効果も、さらに実験的な実証の狙いもあったわけだ。
空襲被害を受けていない、都市を選んでの、残酷な仕打ち。
一般人をこれほどまでに殺害したことは、戦争犯罪にほかなりません。
ドイツにはここまでやらなかったのは、民族差別的な思想もあったはずだ。
もちろん、日本軍もなにがしかの戦禍による、一般人の犠牲を巻き起こしたこともあるのは事実でしょう。
強い国であらんとしなくてはならない、アメリカは、日本の本気の強さ、手ごわさを身をもって知り、日本という国が二度とはむかってこないように、制度、教育、報道、あらゆる場面で、日本がすべて悪かったとの自虐思想を植え付けた。
戦後70年以上を経て、アメリカは、大切なパートナーとして、真の同盟国としての日本に、本当の意味での独立を促してます。
心優しい、われわれ日本人は、過去のことは水に流して、今をともに生きることを由とします。
二度と戦争になってはいけない。
日本がしたくなくても、強大化する某国が、太平洋への出口を狙っている。
そのための、ちゃんとした議論を正々堂々としていただきたい。
国民にも、すべてを知らして、理解させながら、反対意見もちゃんと聞きつつ、そんな国の運営を期待したい。
ちょっと保守的な、さまよえるクラヲタ人が、終戦の日に「戦争レクイエム」を聴きつつ、いつにないことを綴ってます。
もっと、もっと書いてしまいそうですが、レフト方面からボールが飛んできそうなので、これ以上、やめときます。
ただひとつ。
このガラスの少女像は、事実です。
どこかの国の少女像とは違います。
ガラスのうさぎ
ブリテン 戦争レクイエム
S:エマ・ベル
T:アンドリュー・ステイプルス
Br:クリスティアン・ゲルハーヘル
ダニエル・ハーディング指揮 パリ管弦楽団
ウィーン学友協会合唱団
ウィーン国立歌劇場合唱団
(2019.5.27 @ウィーン・コンツェルトハウス)
ハーディングとパリ管の、戦争レクイエムを引っさげてのヨーロッパ公演のうち、ウィーンでの演奏会をオーストリア放送協会のライブ放送で聴いたものを録音しました。
もん何度も聴きました。
これは、迫真の名演です。
ソプラノとテノールは、イギリス。
バリトンは、ドイツ人で、イギリス人が、フランスのオーケストラを指揮して、合唱はオーストリア。
まさに、ブリテンが望んだ、かつて戦った連合国と枢軸国の人々たちによる演奏。
ついでに、パリ管には日本人もいらっしゃいます。
音楽の演奏行為じたいもインターナショナル化した現在、ブリテンが作曲し、初演した当時と世界の枠組みはまったく変化してますし、こうした組み合わせも容易に仕立てることもできます。
それでも、超がつくくらいの集中力を感じさせ、全体をリードしていくハーディングの指揮振りには、なみなみならないものを感じます。
迫力あるディエスイレ、弦の刻みも克明で、パリ管の金管のシャウトもすさまじい。
一方で、ラクリモーサの哀しみも切度たかく、続く祈りも静謐。
ウィーンのお馴染みの合唱団も、とてもうまくて、絶叫にならずに、バランスもよろしく、とてもすてきです。
最期の、敵兵同士の邂逅と許しあいの感動的なシーンも、音楽を明快に聴かせるハーデングらしく、とても端麗な仕上がりだし、そのあとの平安に満ち、浄化されゆくエンディングも緊張を糸が途切れず、素晴らしいです。
会場をつつむ静寂も音楽の一部のようで、ライブならではの雰囲気を共有できるものです。
ちょっと歌いまわしが巧すぎるゲルハーヘルに、いかにも英国テナーらしい、透明感あるステイプルスの声の溶け合いのバランスもいいし、ワーグナーを得意とするベルの真摯なソプラノも好ましい。
あと、ウィーンの響きの豊かなホールもよく録音で捉えられてます。
ネット放送のありがたみをここでも満喫できました。
敵同士が戦場でまみえ、やがてともに、許しあいながら眠っていく・・・というこのレクイエムの最期のシーン。
最前線の兵士の戦場の場面をオーエンの詩に託し、あと、死者を弔うことは、ラテン語の通常典礼文にて描ききったブリテンの名作です。
作者自身の手を離れて、つぎつぎに名演・桂演が生まれます。
これもまた、名曲たるゆえんでありましょう。
過去記事
「ブリテン&ロンドン交響楽団」
「アルミンク&新日本フィル ライブ」
「ジュリーニ&ニュー・フィルハーモニア」
「ヒコックス&ロンドン響」
「ガーディナー&北ドイツ放送響」
「ヤンソンス&バイエルン放送響」
「ネルソンス&バーミンガム市響」
「K・ナガノ&エーテボリ交響楽団」
「ハイティンク&アムステルダム・コンセルトヘボウ」
「デイヴィス&ロンドン響」
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コメント
ハーディング最新の演奏が流れているとは思いませんでしたが、新日フィルでの戦争レクイエムはすこぶる感動的でありましたヨ!
投稿: Ianis | 2019年8月15日 (木) 20時34分
ianisさん、まいどです。
新日は、墨田区のおひざ元ですから、大空襲にからめて、よく「戦争レクイエム」を取り上げます。
わたしは、前任のアルミンクの指揮で聴きました。
そしてハーディングの指揮は格別ですね。
投稿: yokochan | 2019年8月18日 (日) 15時58分
(5年も前の投稿とは知りつつ、ブリテンの作品と、そして指揮者ハーディングのファンとしてコメントしないわけにはいかなかった)
はじめまして。
ハーディング指揮の戦争レクイエムが放映されていたとは…聴いてみたかった…orz
荒んでいく世界情勢、日本の国内情勢も予断を許さない状況ですが、この作品をゆっくり鑑賞する時間だけは没入できる気がします。
サンタ・チェチーリア管やバイエルン放送響とも取り上げてくれることを切に願います。
投稿: y-taro | 2024年6月13日 (木) 00時08分
y-taroさん、こんにちは、そしてコメントありがとうございます。
ブリテンとハーディングのファンとのころ、これもまたうれしく存じます。
ハーディングの指揮活動もあと少しとか、限られたこの先の活動に目が離せませんね。
パリ管を離れたいま、こちらの戦争レクイエムは貴重な音源となりました。
平和を愛したブリテンの戦争レクイエムが、いまのこの時こそ切実に響くことはありません。
ローマとミュンヘンは、パッパーノがすでに録音し、ラトルもきっとやるでしょうね。
でも、わたしも双方のオケでやってほしいし、あまり登場しないロンドンのオケでも是非にもやってもらいたいものです。
投稿: yokochan | 2024年6月15日 (土) 14時35分
ハーディング、音楽の仕事を絞っているようでありつつも、大御所(バレンボイムやウェルザー=メストなど…)の代役でしょっちゅう指揮台に上っている印象ですね。
パリ管との関係が長続きすることを願っていた一人なので、短期政権になったことが悔やまれます。パリ管との戦争レクイエム、どこかで再放送などしていたら教えてください。今度こそは録音して聴きますので。
ロンドン、確かにそうですね。以前ロンドン響とのコンサートを現地で聴きましたが非常に相性が良いと感じました。
投稿: y-taro | 2024年6月17日 (月) 19時48分
y-taroさん、コメント返信遅くなりました。
海外のネット放送で、私の録音したときは、オーストリア放送協会のものです。
ヨーロッパをこのプログラムで歴訪したようですので、ネットでもほかの会場のものが放送されていたと記憶します。
私的にメールに乗せられればお送りします、ご遠慮なく。
ZUM02164@nifty.ne.jp
投稿: yokochan | 2024年6月27日 (木) 22時16分