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2020年1月20日 (月)

ベートーヴェン 「フィデリオ」 アバド指揮

Azumayama-24a

毎度の場所ですが、お正月の吾妻山から。

富士と海と菜の花が一度に見れます。

Azumayama-31a

麓の小学校に通っていたから、子供の頃から始終登ってました。
でも、当時は山頂はこんなに整備されてませんでしたが。

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  ベートーヴェン 歌劇「フィデリオ」

 レオノーレ:ニーナ・シュティンメ
 フロレスタン:ヨナス・カウフマン
 ドン・ピッアロ:ファルク・シュトルックマン
 ドン・フェルナンド:ペーター・マッティ
 ロッコ:クリストフ・フィッシェサー
 マルツェリーネ:ラヘェル・ハルニッシュ
 ヤキーノ:クリストフ・シュトレール

  クラウディオ・アバド指揮 ルツェルン祝祭管弦楽団
               マーラー・チェンバー・オーケストラ
               アルノルト・シェーンベルク合唱団
         
          (2010.8.12,15 @ルツェルン)

1月20日は、クラウディオ・アバドの命日となります。
あのショックだった2014年から、もう6年が経ちます。

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ベルリンフィルを退任後、しばらくしてスタートさせたルツェルンのスーパーオーケストラとの共演は、2003年からスタートし、マーラーを毎年連続して取り上げました。
8番は予告されながら、残念ながら取り上げなかったのですが、2010年は、マーラー・チクルスの最後の9番と、「フィデリオ」が取り上げられました。
翌2011年には、折からの東日本大震災への追悼演奏で10番のアダージョを取り上げたほか、ブルックナー・チクルスが開始され、ベートーヴェンに、やがてブラームスにと円熟のアバドのルツェルン演奏が期待されていたなかでの死去でありました。

ベートーヴェンの作品の多くを指揮してきたアバドですが、「フィデリオ」を取り上げたのは、このルツェルン2010が初めてのはず。
(アバド歴長いので、そうだと思い書いてます)
人間ドラマを伴うオペラを好み、かなりのオペラのレパートリーを持つアバドでしたが、76歳にしての初「フィデリオ」とはまた興味深いことです。

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ジングシュピールの流れをくむドイツオペラとして、このフィデリオは、セリフも多くあり、番号オペラを取り入れつつ、音楽の流れがセリフによって寸断されてしまい、オペラとして、どうも居心地のよろしくない作品だと不遜にも常々思ったりもしてました。
 苦心のあげくに行き着いた夫婦愛唱和の作品ですが、オペラに関しては、ベートーヴェンはモーツァルトのような天性の才に恵まれなかったのかもしれません。
 しかし、個々のソロや重唱、合唱に目を向ければ、抒情と激情の織り交じったベートーヴェンらしい音楽です。
マルツェリーネの可愛いアリアや、ロッコの人の好さそうなアリア、父娘にレオノーレが加わった3重唱、ピツァロのイャーゴの信条告白のような悪のアリア。
そして素晴らしいのが、レオノーレの名アリア「悪者よどこへ行くのか」と、フロレスタンの苦悩から希望へと歌い込む監獄内のアリア。
あと、やはり劇的なのが、勇敢なレオノーレの夫救出のシーン。
息詰まるほどの間一髪の場面に、その後の歓喜の爆発。
ベートーヴェンならではの感銘を与えられる個々の音楽であります。

これらの個々のシーンを、アバドはまさにライブで燃えるアバドらしく、そして絶妙の歌心でもって丁寧に、そしてドラマティックに描き分けています。
冗長なセルフも、必要最小限にカットしていて、音楽の流れが停滞することがないように、心地よいテンポで、ある意味一気呵成に仕上げてます。
最後の歓喜の満ちたエンディングでは、興奮にあふれていて、ライブならではの感興に浸ることができます。
ヴィブラート少な目で、ルツェルンの凄腕のメンバーたちに、若いマーラーチェンバーの面々が加わったことで、いい意味での緊張感と若々しさも加味されたのではないかと思う。
アバドの音楽の若々しさというのは、常日頃、若い奏者たちと楽しみながら、音楽を築きあげるという、こうしたところにもあるのだから。

旬の歌手をそろえた配役も見事な顔ぶれ。
なかでも、このオペラの主役であるシュティンメのレオノーレの声の安定感と、力強さと明晰な知的な歌唱が素晴らしくて、声質にクセもないので、聴き飽きないのがシュティンメの歌なのです。
対するカウフマン。
フィデリオにおけるフロレスタンの出番は、あまりに少なくて、ベートーヴェンにこの点はなんとかして欲しかった・・・と思わせるカウフマンです。
アバドのお気に入りだったハルニッシュのリリカルなマルツェリーネがいい。
ほかの歌手もまとまりがよく、チームとして均整がとれていることも、このルツェルン音楽祭の持つ特徴かもしれません。
でも、シュトルックマンは、ちょっとアクが強すぎるかな・・・
 あと、鮮度高いのが、アルノルト・シェーンベルク合唱団の緻密さ。

CDにはなったけど、アバドのルツェルン演奏の恒例の映像DVDは、このフィデリオにはなかった。
映像の契約元が、2010年から変わったことが影響しているのだろうか。
マーラーの9番(2010年)から、EiuroartsからAccentusに変更。

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その舞台の様子を探したところ、オーケストラの後方に低いステージを作り、合唱は観客席に置くというスタイルのようです。
衣装も均一だし、オペラの上演というよりは、やはりオラトリオ的な演奏の仕方ともいえるかもしれません。
これまでオペラ上演として「フィデリオ」を取り上げなかったアバドの考え方が、このあたりにあると思いますし、ルツェルンで若いニュートラルな奏者たちと、やりたかった気持ちもわかるような気もします。

世を去る3年と少し前。
アバドはこのように、常に挑戦と、若者たちとの共演を望み、実践し続けました。
これまでの巨匠たちにはない謙虚さと、進取の気性にあふれたアバドでした。
アバドのもとで演奏し育った若い演奏家たちが、いま、そしてこれから、世界のオーケストラの主力として活躍していきます。
そして、彼らはアバドのことをレジェンドとして心に刻み続けていくことでしょう。

フィデリオ 過去記事

 「新国立劇場公演 S・グールド、ヨハンソン」

 「ベーム&ベルリン・ドイツオペラ DVD キング、ジョーンズ、ナイトリンガー」

 

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今日は大寒。
菜の花は満開なれど、春まだ遠し・・・

アバドの新譜や音源発掘が絶えて久しい。
何度も書きますが、下記の正規音源化を強く、激しく希望。

 ①ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」
 ②ワーグナー「パルジファル」
 ③ワーグナー「ファウスト」序曲
 ④マーラー 「大地の歌」
 ⑤バッハ  「マタイ受難曲」
 ⑥バッハ  「ロ短調ミサ」
 ⑦バッハ  カンタータ ロンドンでのF・プライとの共演
 ⑧ノーノ  「プロメテオ」
 ⑨モンテヴェルディ ロンドンやベルリンでの演奏
 ⑩ヴェルディ 「シモン・ボッカネグラ」 ベルリンフィルとのもの
   ⑪ヴェルディ 「オテロ」  ベルリンフィルとのもの
 ⑫ヴェルディ 「ナブッコ」 むかしのスカラ座とのもの
 ⑬ヴェルディ 「アイーダ」 ミュンヘンオリンピックのときの上演
 ⑭ドニゼッティ「ルチア」  むかしのスカラ座とのもの
   
  あとまだたくさん、なんでもいからお願いっ!

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コメント

愚生も恥を忍んで告白しますと、この『フィデリオ』、少々苦手な歌劇なのですよ。LPでフルトヴェングラー、クレンペラー、CDではマゼールと相当以前の収録の3種を持っているだけです。貞節と勧善懲悪をテーマと言うのが、却って楽しめないのでしょうか。『ドン-ジョヴァンニ』や『リゴレット』や『カルメン』のように異性をたぶらかす好色漢や悪女を扱った諸作品の方が、どうせ絵空事の世界なら、面白がる事が出来るかな‥等と不埒な思いすら頭をかすめます(笑)。今後どのような録音がそのような思い込みを、打破して呉れるかな‥とも、感じております。

投稿: 覆面吾郎 | 2020年1月21日 (火) 15時23分

当方の「フィデリオ」盤歴は、やはり高校時代に買ったマゼール盤が最初でした。吉田秀和氏が「世界の指揮者」で「二枚組で何か面白いものならお薦め」と書いておられていたのを鵜呑みにしたのですが。当時国内盤は廃盤でしたので、神田小川町の輸入盤専門店で取り寄せて貰いました。対訳は音友の新書判オペラ対訳シリーズで。

その後はバーンスタイン盤にCDではラトル盤やバレンボイム盤も。バレンボイムは冒頭いきなりレオノーレ2番が鳴ったのでビックリ。数年前のスカラ座オープニングでも同様でしたが。

というわけで決して苦手ではないのですが、やはりオペラティックな愉しみにはいささか欠ける名作というところでしょうか。それでも第二幕第一場の終わりでレオノーレがピツァロの前に立ちはだかり、トランペットが響いて「おお、名状し難い歓び!」のあたりではウルっとなってしまいますが。アバドがセミステージ的な上演を選んだのも理解出来ます。

以前書いておられたベーム指揮ゼルナー演出の映像はやはり理想的ですね。もはや今後には期待出来ないかもなどと、またぞろネガティブな考えが頭を持たげますが(苦笑)…。

投稿: Edipo Re | 2020年1月22日 (水) 07時36分

覆面吾郎さん、まいどありがとうございます。
不思議なオペラとしてのフィデリオの存在。
指揮者の大半が、この作品を録音してますね。
でも、なぜか、日本になじみのサヴァリッシュやスウィトナーは録音してません。
もっぱらのオペラ指揮者は取り上げず、シンフォニーもよくやる指揮者が取り上げる、そんな感じともとれたりします。
やはり、ドラマとして弱いのと、物語に毒気がないことなのでしょうね・・・
 今後は、誰でしょうね。
クルレンツィスあたりは面白そうですが、ちょっと好みではないし・・・

投稿: yokochan | 2020年1月23日 (木) 08時52分

Edipo Reさん、こんにちは。
わたしは、初の音盤が、このアバド盤で、映像はベーム。
ハイティンクのCDも買いましたが、聴いてません・・・
長い視聴歴でフィデリオ歴はこれだけです。
 ずいぶんとお聴きになってらっしゃいますね。
マゼール盤が気になってきました。

たしかに、ベームの映像は理想的ですし、映画調でとても好ましいです。
カラヤンの映像があれば、美人のデルネッシュゆえに見てみたいですが、あるのか否か。。。

このオペラは、演出上、こねくり回すのが難しい作品ですね。。。

投稿: yokochan | 2020年1月23日 (木) 09時00分

Edipo-Re様
マゼール指揮の『フィデリオ』輸入盤をお買い求めになったお店、ひょっとしたら香川信一様御経営の、『パパゲーノ』でしょうか?愚生も二十代の頃、通信販売で御世話になりました。LP党でCDには御批判の厳しい目を向けて、いらっしゃいましたね。

投稿: 覆面吾郎 | 2020年1月25日 (土) 02時31分

覆面吾郎様。
マゼールの「フィデリオ」、購入したのはやはり神田駿河台の「ハーモニー」で'74年くらいだったと。経営者は上田應輔氏で博覧強記で知られ、当時友人たちと「ハーモニーの主人は手強い」と噂しあっておりました。ありきたりの盤を買うと「フン」と鼻で笑われてるようだなどとも。十数年前に店仕舞いし、その後は通販専門店として営業されていたようですが…。

投稿: Edipo Re | 2020年1月29日 (水) 08時15分

Edipo-Re様
かつての個人経営の古書店に輸入ないし中古LP店の御主人には、そう言うある種の灰汁の強さをお持ちのお方、いらっしゃいましたね(笑)。買い手の音楽的教養の程度を見極め、『大したことの無い奴。』と判定すると、丁寧に接しないと言うタイプの‥。

投稿: 覆面吾郎 | 2020年1月29日 (水) 23時22分

覆面吾郎様。
確かにおっしゃる通りでした。灰汁の強さというよりも、あれほど偏屈?な人柄でなければ、ああいう商いは出来ないのだろうなと感じてすらいました。まあ、そういう店主との付き合いも疲れるので、新譜の購入は石丸3号店などに向かうことが多かったのですが。
yokochan様。軒先お借りして失礼しました。

投稿: Edipo Re | 2020年1月30日 (木) 05時06分

すみません、記事の内容とは少々外れるかと思うのですが、アバド/スカラ座による「ナブッコ」の上演があったのでしょうか?確かドイツグラモフォンの冊子に乗っていたインタビューで、いずれ取り上げたい作品としてあげられていたと思うのですが。

投稿: アキロンの大王 | 2020年3月 6日 (金) 18時24分

コメントならびに、ご指摘ありがとうございます。
調べましたところ、たしかに、「ナブッコ」は取り上げていないようです。
70年代初めのレコ芸の、海外通信のイタリア編で、ナブッコをやるんだか、やったんだかの記述を読んだ記憶が薄っすらとあったものですから、盲信してました。
失礼いたしました。

投稿: yokochan | 2020年3月 8日 (日) 09時54分

早速のご返答ありがとうございます。
私が先のインタビュー記事を読んだのは、ウィーン転出のころではなかったかと思います。他にも「オテッロ」や「ファルスタッフ」が挙げられておりました。「ファルスタッフ」はベルリンで録音されましたが、この作品こそミラノかウィーンで…などというのは今更ですが。
上演記録のあるものでは、ベッリーニの「キャプレティとモンテッキ」をよい音質でと思っております。LP時代に聞いたきりで、CDは怪しげなものしか見当たらず、未入手のままです。

投稿: アキロンの大王 | 2020年3月 8日 (日) 20時27分

ご返信ありがとうございます。
そうですね、ベルリンフィルの明るい音色も好きですが、できれば、おっしゃるように、ウィーンフィルでも、スカラ座でもやって欲しかったです。
ベッリーニは、その怪しげな音源を持ってますが、たしかに音がイマイチでして・・・・

いずれにしても、アバドファンとしては、なんでもいいから新しい音源が出てくることを今後も願います!

投稿: yokochan | 2020年3月12日 (木) 08時14分

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