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2020年10月 8日 (木)

ベートーヴェン 交響曲第4番

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お彼岸の頃の彼岸花なので、まだ満開ではありませんが、赤と緑のコントラストが美しい。

背景の稲木干しもよろしく、この日本の原風景的な稲田は、伊勢原市の日向地区であります。

Hinata-01

この斜面には、同じ赤のサルビアとのコラボ。

農家の方々も、この美しい景色を見てもらいたいから解放してくれてます。
節度とマナーを保って拝見したいものです。

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今年はベートーヴェンイヤーであるとしても、そして大規模編成を要さないからといっても、再開されたコンサートのラインナップを見てるとベートーヴェンばかり。
コンサート行きは封じてはいても、それにしてもプログラムを見ているだけで食傷ぎみになる。
それに鞭打つように4番の交響曲をたくさん聴いてみた。

で、やっぱり、ベートーヴェンはいいわ、ということになりました(笑)
いちばん、印象に残った極端に違う2つの演奏を。

Beethoven-sym45-dausgaard

 ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調 op.60

  トマス・ダウスゴー指揮 スウェーデン室内管弦楽団

       (1999.1&5 @エーレブロ、コンサートホール)

Beethoven-sym48-daivis

 ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調 op.60

  サー・コリン・デイヴィス指揮 BBC交響楽団

     (1972.2 @ロンドン、ウォルサムストウ・タウンホール)

デイヴィスのベートーヴェンは、ドレスデンとの全集が有名で、オーケストラの魅力も相まって人気も高いですが、なんとワタクシは未聴です。
デイヴィスは、ボストンやコンセルトヘボウ、ドレスデン、バイエルン放送などの名門とも深いつながりを持ち、そのオーケストラの持ち味を生かした名演を数々残しましたが、重厚で落ち着きのある英国紳士としての姿を反映できたのは、自国イギリスのオーケストラとの共演。
 BBC交響楽団の首席を務めていたことから、ブーレーズが首席になって、その任を離れても録音は継続されました。
70年代半ばに企画されたデイヴィスのBBCとのベートーヴェン交響曲シリーズは、ロンドン響も一部使いながら第9以外は録音したのではなかったかな、と記憶します。
レコ芸では、月評担当の大木氏が、デイヴィスの急速な成長を認め、かなり絶賛していたけれど、私が聴けたのはCD時代になって廉価盤になったこの1枚のみ。
ほかの番号のその後の再発も、いまは絶版で入手できません。

この演奏、ともかく構えが大きく、4番にしては巨大な趣きを持つものです。
演奏時間が、その演奏の良しあしを決めるものではありませんが、37分45秒です。
クレンペラーが35分、ワルターやベームも同じくらい。
37分台では、最近聴いた、ティーレマンとドレスデンのライブがあります。
 しかし、デイヴィスはテンポがゆったりで、歩みも大きく、3番と5番に挟まれたギリシャ云々ではなく、3番と5番と等しく存在力の高い強い作品に聴こえます。
特に悠揚とした前奏から、いきいきとした主部に入り込む場面は、なかなか他の演奏では聞けないユニークさです。
ノーブルで清潔さもあるので、決して重々しさはないです。
2楽章の美しさと歌心はとても素敵です。
慌てず騒がずの終楽章も安心感のあるもので、これは立派に演奏会のトリを務めることのできる4番でありました。

デイヴィスの1回目のベートーヴェン、再発を望みます。

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デンマーク出身の指揮者、ダウスゴーは、ここ数年、注目している指揮者です。
現在、アメリカのシアトル交響楽団とBBCスコテッシュ交響楽団の首席指揮者です。
昨年秋に、BBCスコテッシュとの来日で、マーラーの5番を聴いて、とても感心しました。

プロムスやBBCRadioの放送をいくつも録音して、ダウスゴーの演奏を集めましたが、いずれの演奏もテンポを速めにとり、キビキビとかつ、颯爽としたなかに、爽快感と、意外なまでに曲の本質をついたものが多いのでした。
マーラーやシベリウス、チャイコフスキーも素晴らしく、初めて聴くような新鮮さもありました。

そのダウスゴーがかつて指揮者を務めたスウェーデン室内管弦楽団とベートーヴェン全集を録音しております。
進取の気性に富むダウスゴーですから、90年代の終わりに早くもベーレンライター版を採用してます。
ゆえにテンポ設定も速いわけですが、そこにダウスゴーの音楽性が加わって、スリリングかつ爽快極まりないベートーヴェンが生まれてます。
スウェーデン室内管という北欧のすっきりサウンドを持った、比較的小編成によるオーケストラも、ここでは実に有能でして、どこまでも機敏でかつ繊細。
演奏時間は31分42秒。
1楽章の主部への入り込みシーンなど、先のデイヴィスと真逆のさりげなさと、ナチュラルさがあります。
2楽章の透けるような抒情や、3楽章のリズムの扱いの巧みさ、そしてなんといっても疾風さながら、駆け抜けるような終楽章に快感すら覚えます。

ギリシャ云々の4番の存在ではなく、3番と5番に挟まれた気力充実期の幸せにあふれた4番というイメージです。

まだ全曲を未入手ですが、ダウスゴーのベートーヴェン、全部聴いてみたい。
あとシューマンやブラームス、ブルックナーも。
近くシュトラウス取り上げます。

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あと勢いで、4番の刷り込みレコード、カラヤンの60年代ものを聴いてみた。
繰り返しなしにもよるけど、演奏時間31分2秒。
しかし、速さは感じず、むしろ響きの豪華さと重厚さ、そして気品の高さを感じた。
 ついでに、ベルリンつながりで、アバドとのベーレンライター版による演奏。
こちらの演奏時間は、32分56秒。
これもまた速さは以外にも感じず、ふくよかな歌と端正で凛々しい奥ゆかしさを感じる。
これらもまた、4番の姿であろう。

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もうひとつ、コロナ前、2020年1月のバーミンガム市響のネット録音から。
現在、音楽監督のリトアニア出身の、ミルガ・グラジニーテ=ティーラの指揮で。
「ミルガのベートーヴェン」という番組放送だった。
当然にベーレンライター版で、これまた俊敏極まりない鮮烈な4番。
彼女のオケを導き、夢中にさせてしまう能力には脱帽だ。
演奏時間31分20秒。
ダウスゴーの演奏にも近い雰囲気だけど、エッジも効きつつ、優美さも感じるのは、女性ならではの所作による指揮さばきからでしょうか。

その彼女、2児目の赤ちゃんを身ごもりつつ、3月にコロナ陽性反応が出て治癒静養期間には、多様な書籍に目を通すなど、勉学に勤しんだそうです。
その結果、見事に完治し、8月にはめでたく出産。
この1月のベートーヴェンの演奏のときは、お腹がもう大きかったそうな。

ワインベルクのCDが大いに評価され、グラモフォン誌の賞を受賞しました。
ラトル、オラモ、ネルソンスと続いたバーミンガムの指揮者たち。
ティーラさん、いや、わたしはいつも「ミルガたん」と呼んでますが、彼女の今後の活躍とステイタスの向上を期待したいです。

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郷愁さそう風景。

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近くでみると怪しい気配の彼岸花は、曼珠沙華との名前も。

台風来ないで・・・・・ 

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