プロコフィエフ スキタイ組曲「アラとロリー」アバド指揮
こう見えても「牛」さんです。
今年ほど、その年の干支が何であるか?あまり意識しない年はないと思う。
なにもかも、世界中がおかしくなってしまった。
それでも、4丁目交差点の和光は、こうして2021年を演出してくれました。
プロコフィエフシリーズ、そして今日は怒りを込めて野卑に。
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プロコフィエフ(1891~1953)の作品シリーズ。
略年代作品記(再褐)
①ロシア時代(1891~1918)
ピアノ協奏曲第1番、第2番 ヴァイオリン協奏曲第1番 古典交響曲
歌劇「マッダレーナ」「賭博者」など
②亡命 日本(1918)数か月の滞在でピアニストとしての活躍
しかし日本の音楽が脳裏に刻まれた
③亡命 アメリカ(1918~1922)
ピアノ協奏曲第3番 バレエ「道化師」 歌劇「3つのオレンジへの恋」
④ドイツ・パリ(1923~1933)
ピアノ協奏曲第4番、第5番、交響曲第2~4番、歌劇「炎の天使」
バレエ数作
⑤祖国復帰 ソ連(1923~1953)
ヴァイオリン協奏曲第2番、交響曲第5~7番、ピアノソナタ多数
歌劇「セミョン・カトコ」「修道院での婚約」「戦争と平和」
「真実の男の物語」 バレエ「ロメオとジュリエット」「シンデレラ」
「石の花」「アレクサンドルネフスキー」「イワン雷帝」などなど
①の時代から。
プロコフィエフ 「スキタイ組曲」~アラとロリー op.20
クラウディオ・アバド指揮 シカゴ交響楽団
(1977.2.22 @シンフォニーホール、シカゴ)
1914年、音楽院を卒業したプロコフィエフは、ロンドンでディアギレフに出会い、新作の委嘱を受け、手掛けるべく準備していたオペラ「賭博者」を提案するが断られる。
第2のストラヴィンスキーとして期待していたディアギレフは、「ロシアのおとぎ話か、原始的なものを」という提案をし、バレエ「アラとロリー」に取り掛かり、仕上げたピアノスコアで、ディアギレフに聞かせたものの、お気にめさず、別な素材にしてほしいとされる。
ディアギレフのバレエ・リュスでの作品は、こうして流れてしまい、プロコフィエフは出来た「アラとロリー」のなかから気に入った素材を集めてオーケストレーションし、1915年「スキタイ組曲」として完成させた。
バレエ・リュスのために同時に書いたバレエ作品は、「道化師」op21で、1916年に完成。
しかし、その後、ロシア革命やアメリカ亡命などで、「道化師」の初演は1921年まで待たねばならなかったようだ。
→「アバドの道化師」
1.ヴェレスとアラの崇拝
2.邪教の神、そして悪の精の踊り
3.夜
4.ローリーの輝かしい出発と日の出
スキタイ人は、有史以前に黒海周辺に暮らしていた世界史上初の遊牧騎馬民族で、その歴史を紐解くと世界を股にかけていて、なかなかに面白い。
この物語は、
「スキタイ人の偶像崇拝神、太陽神ヴェレスの姫アラ。
彼女に邪な愛を抱き、さまざまな霊をしかけたりと、ちょっかいを出し、脅かす続ける邪教神チュジボーグ。
そして、若い戦士ローリーは、彼女を苦境から救いだし、やがてアラと愛し合い結ばれる」という古きスラヴの伝説に基づくもの。
「春の祭典」を聴いて、自分もそれっぽい作風のものを書いてみようという思いが念頭にあったプロコフィエフ。
立派に、バーバリステックしてます!
1916年1月29日のマリンスキー劇場での初演は大騒ぎになったとか。
1.冒頭から激しく荒れまくる狂暴極まりない音楽。
ヴェレスへの帰依、憑依といいますか、もう狂っとるで。
静まると、なんとも怪しげなミステリアスな世界へ、こちらはアラを表すものだそうな。
2.そして来ますよ、キターっ!
邪教の神さんが、地下より悪霊召喚だ!
原始的でもあり、暴力的でもあり、かつまた超かっちょええ!
短いけど、ハルサイも真っ青の世界で、禍々しい世界にひたりましょうぞ!
3.一転、静かな夜想曲タッチの「夜」の音楽。
こちらも負けじおとらじの怪しげタッチな音楽。
夜陰にまぎれて、アラーを襲う邪教神チュジボーグだが、涼しげなチェレスタやハープによって表される月光を浴びて退散。
4.今度は、月の光から、日の出の明るい光景で、妙に明るくもあり、なんだか飄々としても感じるクルクル回るような音楽だ。
邪教神の成敗に向かうロリーと、闘いの様子。
そして、なんだかあっけないくらいに打ち負かしたようで、あたりを眩しい光線が徐々に照らしていくさまは、怪しさも満載。
光線のような輝かしい唐突な盛り上がりとエンディングは、スクリャービンの「法悦の詩」の終結に似たり。
ということで、にぎやかな22分間です。
夜中には絶対聴けない、ある程度音量を上げないと、ダイナミックレンジの幅が大きすぎて聴き取れない。
こんな音楽を、アバドは喜々として指揮しているように感じる。
全然、刺激的な音楽には聴こえない。
羽毛のように軽やかかつ、ナイフのように鋭利で、でもしっかり歌うスタイル。
あのスタイリッシュな一連のストラヴィンスキーシリーズにも通じる。
おまけに、ここではシカゴの強靭なアンサンブルが最高潮に寄与していて、オケはべらぼうにうまい。
ホールの乾いた響きをうまくとらえたDGの録音も、レコード時代から最高によかった。
この年の2月、同時期に、アバドとシカゴは、ポリーニを迎えて、あの名盤、バルトークの協奏曲を録音してます。
70年代から90年初期まで続いたアバドとシカゴの蜜月関係。
先ごろ、ハイドンのコンチェルタンテのライブが復刻されたが、シカゴ響のライブラリーに音源があれば、どんどん出して欲しいな。
荒ぶるプロコフィエフの初期の音楽を、スタイリッシュなアバドの指揮で聴きました。
次のプロコフィエフは、ピアノ協奏曲2番か、「賭博者」であります。
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コメント
お久しぶりです。このスキタイ組曲第2曲、’80年代に桃屋の樽仕込イカの塩辛のCMで使われておりました。スルメイカの夜釣りの勇壮な絵にお馴染み三木のり平のナレーションがカブる作りで。奇妙なマッチングでした。You Tubeにありますのでよろしかったら(笑)。
投稿: Edipo Re | 2021年1月30日 (土) 03時48分
桃屋の塩辛のCM、youtubeで見ました(笑)
イカ大漁ですね、あそこで来るか、という感じで笑えました!
曲の趣旨とはまったく違いますが、思わず、イカのきゅうきゅうする悶絶声も思い浮かべましたね(笑)
投稿: yokochan | 2021年2月 1日 (月) 08時17分
こんばんは。ワタシもyoutubeで観ました。ある意味どストレートな使われ方ですな。のり平師匠の語りも味がありますが、女性タレント起用ののCMだったら、人気曲になっていたかも。
投稿: アキロンの大王 | 2021年2月 1日 (月) 20時30分
桃屋のCMシリーズは今見ても、味がありますね。
たしかに、女性の声で面白おかしく、もしくは淡々と語るのもありかと思いますね(笑)
吹奏楽では結構な人気曲のようです。
投稿: yokochan | 2021年2月 7日 (日) 15時28分