プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 ブロンフマン
桜の開花の始めの頃と月。
この月も今頃は満月を過ぎ、早かった今年の桜も散り始めている。
夜風も心地よくなり、あの冬が遠くに思い起こされるようになったが、コロナは変わらずか・・
満月に地球が月から受ける重力の影響は、潮の満ち干が大潮になり、地震にも影響があるとかないとか・・・
心の備えも万全に!
それはさておき、プロコフィエフ。
プロコフィエフ(1891~1953)の作品シリーズ。
略年代作品記(再褐)
①ロシア時代(1891~1918)
ピアノ協奏曲第1番、第2番 ヴァイオリン協奏曲第1番 古典交響曲
歌劇「マッダレーナ」「賭博者」など
②亡命 日本(1918)数か月の滞在でピアニストとしての活躍
しかし日本の音楽が脳裏に刻まれた
③亡命 アメリカ(1918~1922)
ピアノ協奏曲第3番 バレエ「道化師」 歌劇「3つのオレンジへの恋」
④ドイツ・パリ(1923~1933)
ピアノ協奏曲第4番、第5番、交響曲第2~4番、歌劇「炎の天使」
バレエ数作
⑤祖国復帰 ソ連(1923~1953)
ヴァイオリン協奏曲第2番、交響曲第5~7番、ピアノソナタ多数
歌劇「セミョン・カトコ」「修道院での婚約」「戦争と平和」
「真実の男の物語」 バレエ「ロメオとジュリエット」「シンデレラ」
「石の花」「アレクサンドルネフスキー」「イワン雷帝」などなど
まだ①の時代やってまして、ピアノ協奏曲です。
プロコフィエフ ピアノ協奏曲第2番 ト短調 op16
Pf:イェフム・ブロンフマン
ズビン・メータ指揮 イスラエル・フィルハーモニック管弦楽団
(1993.7 @テルアビブ)
①のロシア時代の作品で、1913年の完成。
22歳の学生時代のプロコフィエフ、同年の自身のピアノによる初演では、そのぶっ飛びぶりに、批判が相次ぎ騒ぎになったそうな。
翌年にロンドンに渡り、ディアギレフに出会ったときも、この作品を聴かせ、さらにオペラ化を考えていた「賭博者」を提案したものの、断られ、ロシアっぽいバレエを書きなさいということで、「アラとロリー」や「道化師」が生まれることになる。
ロシアの原初的な物語や荒々しさを期待していたであろうディアギレフは、この協奏曲をどう聴いたであろうか。
しかしながら、時はまさに、ロシア革命前夜ともいえるストライキだらけのロシア、自身もヨーロッパ各地へ楽旅、さらには後に日本経由でアメリカ行き、こんななかで初稿のスコアは紛失してしまう。
どこで紛失したかは不明だが、10年後の1923年にドイツで記憶を遡ってプロコフィエフ自身がスコアを復元したのが現行版。
紛失オリジナル版が今後出てきたら、と思うとわくわくしますな。
初期作品は、ラフマニノフ調やスクリャービンっぽいところも聴かれるプロコフィエフの音楽ですが、ここでは、いわゆる先鋭化したモダニズムの風情が勝ってます。
4楽章形式で33分ぐらい。
①アルペジオをともなった憂愁込めたピアノ、そんなラフマニノフ風なスタート。
その後、テンポを上げて、プロコフィエフらしいギクシャクとした雰囲気となり、ピアノもオーケストラも切れ味を高めていき、威圧的なモットー的な主題が響き渡る。
再び冒頭に回帰。そして、ピアノの長くかつ自由なカデンツァは凄まじい!
②速いパッセージで転がるように進む、これまたプロコフィエフらしい、クールでかつ息もつかせぬ急展開。
③禍々しい楽章。アラとロリーを思わせる。
即得な奇妙なリズムを伴ったフレーズが出るし、口笛のようなすかした弦がかっこよく、ここ好き。
④急速感ある出だし、むちゃくちゃノリノリになれる萌える楽章。
そして、落ち着くと民謡風のメロディを楚々と弾くピアノ。
こうして、なんとなくロシアのムードに浸っていると、勢いを増して、一度聴くと忘れられなくなるモティーフが現れる。
で、またロシア調に回帰し、懐かしいムードに哀愁を感じる。
でも、オーケストラに例のモティーフが、盛大に出て(ジャジャジャジャ、じゃじゃじゃじゃジャーン)とで、曲は一気に終了に向かう。
いったい何だったんだろう、といつも聴いたあとに思ってしまう、モザイク的な2番の協奏曲。
超絶技巧を要するピアノと、強弱振幅の大きいオーケストラ。
カデンツァがしっかりあり、主役はちゃんとピアノで、オーケストラは引き立て役であるとともに、いくつかの忘れえぬ独特のモティーフを堂々と響かせる。
協奏曲としてのバランス感覚にも優れた2番だと思います。
ブロンフマンの技巧に裏打ちされた豊かなピアノが素晴らしい。
メータの指揮には切れ味をもっと求めたいが、合わせものとしては、ソリストを引き立ててうまいもんです。
エアチェック音源で聴いてる、トリフォノフとティルソン・トーマス&クリーヴランドの方が凄まじくも爽快な演奏。
あと、デニス・コジュヒンとオロスコ・エストラーダ&サンフランシスコも豪快な演奏。
プロコフィエフ・シリーズ、次はいよいよ、「賭博者」。
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