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2023年12月22日 (金)

チャイコフスキー くるみ割り人形 スラットキン指揮

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クリスマスシーズンになると訪れる銀座の教文館。

毎年ステキな雰囲気あふれる飾り付けがなされ、心洗われます。

右の方にはイエスの降誕のシーンが。
そちらは次に。

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こちらはゴージャスな六本木のカルティエのツリー。

数年年前の自粛時の人けの少ないクリスマスが嘘のように、今年はどちらも、内外の人々も含めて賑やかだ。

LEDの進化と普及で、ますますイルミネーションは多彩になったが、それもこれもわれらが日本人の同胞の発明によるところだ。
ありがたくも楽しませていただく。

そして、クリスマスは心温まる物語もつきもの。

いくつになっても、爺ちゃんになっても大好きな「くるみ割り人形」。

Nutcracker-slatkin

 チャイコフスキー バレエ音楽「くるみ割り人形」

  レナード・スラットキン指揮 セントルイス交響楽団

    (1985.3.26,28 @パウエル・シンフォニーホール)

みんな大好きチャイコフスキーの「くるみ割り人形」。

小学5年か6年に組曲版で小学校の授業で聴きました。
当時もう、クラシックが好きでレコードを集めだしていただけに、音楽の先生のレコードの扱い方がぞんざいで、指紋がついちゃうとか冷や冷やしてましたね~
町のレコード屋で、毎度お世話になったコロンビアのダイアモンド1000シリーズのなかの1枚を購入したが、廉価盤業界のなかの名指揮者ハンス・ユイゲン・ワルター指揮のプロ・ムジカ交響楽団の演奏だった。
今一度聴いてみたい。。。

チャイコフスキーの晩年の傑作群のひとつ。
「眠れる森」、交響曲第5番や「スペードの女王」と「イオランタ」「悲愴」に挟まれた時期である1891年の作曲。

大人から子供まで、みんなが楽しめるバレエとして「白鳥の湖」とともに世界中で上演されているし、コンサートでも全曲版や2幕が、一夜のプログラムや後半のメインとして演奏される。

数々の全曲盤があり、いずれもそのジャケットはメルヘンを感じさせ、とても美しく楽しい。
スラットキン盤のジャケットはネットからの借り物ですが、いかにもアメリカらしくリアルで写実的なもので悪くないです。
チャイコフスキーを得意とするスラットキンがセントルイス時代に、交響曲全曲と3大バレエを一気に録音した。
いつも若くて元気な印象のスラットキンですが、もう79歳になります。
そのスラットキン40歳のときの録音は、最新のものと比べるとやや潤い不足ですが、ホールの残響少なめな、これもジャケットのようなリアルサウンドで、音楽そのものを楽しめる。
全体に速めにキリリと引き締まった演奏で、そのリズム感のよさはスラットキンならではで、クリスマスのワクワク感や、各バレエの弾むような楽しさがとてもよい。
もちろん夢見るようなファンタジーシーンもいいが、このあたりはもうちょっと連綿とやって欲しかったとも思う。
よくも悪くもアメリカらしい、明るくもあっけらかんとした演奏ともいえよう(笑)

スラットキンは日本には何度も来ていてきっと日本びいきなのだろう。
テラークレーベルから高音質CDを連発していたころ、N響にやってきた。
たしか、84年のことだったか、得意のラフマニノフ2番や幻想などが演目で、私は狂喜してエアチェックにいそしみ、その弾むような指揮ぶりもテレビで見て、当時のN響から鮮やかな音を引き出すその指揮ぶりがおおいに気にいったものだ。
音楽監督選出にもその名前があがって、最終的にはデュトワになったのもいまでは懐かしい。
セントルイス(79~96)のあとは、ナショナル響、BBC響、ナッシュビル響、デトロイト響、リヨン管と欧米のオケを歴任したスラットキンですが、いまでもセントルイスでは名誉指揮者のポストにあり、毎シーズン客演しているようだ。
再来年には都響に来てラフマニノフの2番を指揮してくれるから楽しみだ。

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以前の記事の再掲で、私の好きなシーンをいくつか。

       第1幕

①おなじみの序曲とそれに続くワクワク感満載の「クリスマスツリー」の情景。

②祖父ドロッセルマイヤの踊り。こんな楽しいお爺ちゃんになりたい。

③お客さんが帰り、夜。そしていよいよの高揚感。

④冬の松林~チャイコフスキーならではの情景描写

⑤雪片の踊り~こ洒落たワルツ、女声(児童)合唱を入れたところ、天才的

       第2幕

⑥お菓子の国と魔法の城~城を見渡せる高台にいるかのような気分でわくわく

⑦クララと王子~さあさあ、主人公たちの登場ですよって感じ

⑧ディヴェルティスマン~各国のダンスが勢ぞろい、いずれの筆致も神がかり

⑨花のワルツこそ、チャイコフスキーの代名詞か。
  ステキすぎるだろ、このワルツ。

⑩パ・ド・ドゥ~ロマンティックなアダージョで夢見る少女な気分になれるよ、
         こんなオジサンでも。
         そしてタランテラときて、金平糖さんは可愛いチェレスタ
         でもって、急転直下のコーダ
         この展開好き♡

⑪終幕のワルツにアポテオーズ~ドラマチックになりすぎない可愛い終幕
         夢から覚めた夢を見た感じ

ともかく楽しく、メロディアスで何度でも聴いちゃうくるみ割り人形。
楽しいったらありゃしない。

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アメリカ中西部の都市セントルイスは歴史の街でもあります。
ミズーリ川とミシシッピ川にはさまれ、R66とR40も通る、水上と陸上の交通の要衝。
さらには、スポーツでは高名なるカージナルスがあり、野球は大人気で、ヌートバーがいるところ。
人口は周辺のセントルイス都市圏でみると280万人で、巨大企業もたくさん存在。

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ミシシッピ川沿いに立つゲートウェイアーチが有名で、いわゆる絵になるインスタ映えする名所もあります。
典型的なアメリカの大都市のひとつで、名物グルメもアメリカらしく、バーベキューにステーキに、ステーキ肉を刻んでトッピングしたセントルイスピザが有名だとか。

音楽では一般的には、ブルースということになりますが、われわれクラシック愛好家には、セントルイスといえば、オーケストラです。
オーケストラでは、アメリカ第2の古さを有する名門。
1880年の創立で、歴代指揮者で有名どころは、ゴルシュマン、ジェスキント、セムコフ、そしてスラットキンときて、フォンク、ロバートソンと続き、現在はドゥヌーヴが音楽監督として2019年から務めてます。

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セントルイス響の本拠地、パウエル・ホール。
ここで数々の名録音が生まれたが、現在は大規模修繕で閉業中で、2025年に新規開業の予定とか。
アメリカ人指揮者ロバートソンあたりから、録音が途絶え、ドゥヌーヴの録音もひとつも出てないと思う。

スラットキンが指揮者となって、テラーク、EMI、RCAと次々と録音が増え、オーケストラの実力もうなぎ登りとなり、スラットキンのオーケストラビルダーとしての力量も70年代後半から評価されるようになった。
83年だったかと思うが、タイム誌のアメリカのオケランキングで、セントルイス響をいきなりビッグファイブのなかに選出。
このときは世界がどよめきましたし、わたしも、レコ芸のみが情報源でしたがビックリしたもんです。
80年代をピークにセントルイス響の人気や実力もやや下降ぎみ。
いまのこのオケの姿をこの耳で確かめたいものだ。
ネット放送もなく、youtubeでいくつか断片的に聴けるにとどまる状況ですが、ほかのアメリカのオケ、いや世界のオケによくあるように、メンバーにはアジア系の弦楽器奏者が大半を占めてます。
隣国のふたつの国の、教育水準の高さと熱心さは見習わなくてはならないですが、彼らの物怖じしない強さもわが邦にはないものです。

セントルイスを舞台にした映画、邦題は「若草の頃」、Meet Me in St.Luis~セントルイスで会いましょう。
終戦間近の1944年の作品で、ジュデイ・ガーランドの主演。
クリスマスイブに妹に歌うHave Yourself a Merry Little Christmasは、クリスマスソングの定番となり、涙が出るほどにステキだ。

アメリカには夢があった・・・・
正直それはもう過去形です。
かつでは20年遅れぐらいで、アメリカの波が日本にも起きたけれど、いまはもうすぐに来るし、病めるアメリカと同じ波がもう来てる。
悲しいことに、過去を思い出すことで幸せを感じるようになったと思う。

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いや、それじゃだめじゃん、いくつになっても希望や夢を捨てちゃダメだ。

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コメント

いよいよ押し詰まりました。

スラットキンと言えば、彼がデトロイト交響楽団を率いて来日したとき、大阪公演のアンコール2曲目で、阪神タイガースの帽子をかぶって「六甲おろし」を指揮したとか。小生はその場に居合わせておりませんが、さぞや大盛り上がりだったことでしょう。もし今年、それが行われていたらもっと大変なことになっていたでしょうが(笑)。

これはタイガース繋がりですが、アメリカのオケって、こういうお遊びをたまにやりますよね。MTTがサンフランシスコ響と来日したとき、ソリストがユジャ・ワンだったのですが、指揮者とオケ全員が彼女と一緒に、あの彼女独特の体が二つ折りになる最敬礼をして聴衆の笑いを誘ったこともありました。来年は米国メジャーオケの来日が復活するでしょうか。

さて、急に冷え込んできました。風邪などひかれることなく、皆さまお揃いでよいお年をお迎えください。

投稿: KEN | 2023年12月23日 (土) 08時49分

アメリカのオケがわたしは好きでして、そのオケがある都市を調べて悦に入ったりしてます。
そして、そのオケのお膝元には必ずメジャーリーグやフットボールチームがあります。
その首席指揮者たちが、メジャーの帽子をかぶって応援している写真も多く発見してニンマリしてもいます。
ネルソンスすらレッドソックスのキャップをかぶってました。
あとは当然にスラットキンがカージナルスやタイガース、オールソップがオリオールズだったり。
バーンスタインはヤンキースがお似合いです。

来年はもっとブログ上でアメリカオケの旅をしようと目論んでます。
良いお年お迎えください。

投稿: yokochan | 2023年12月27日 (水) 09時19分

yokochan様
ご無沙汰気味ではございましたが、2023年も押し迫り、是非コメントをと思いまして‥。実は、去る17日に豊中市民管弦楽団の定期で、『くるみ割り人形』組曲を、愉しく拝聴して参りました。
お取り上げのスラットキン盤、直輸入盤(但し、カット・アウト盤で、ケースに切り込み在り)で、私めも試聴済みでございます。我が国でのセールス面はそれほどでも‥の感がございましたが、指揮者の優れたセンスとエンターテイメント性に、オケのハイレベルな技量とで、『最初にコレ買っちゃったら、アンセルメと小澤はまぁ後回しで良いかなぁ‥。』と思ってしまいました。この両盤の愛聴者の方々、お気を悪くされませんように‥。
でも、スラットキンさんがデトロイト交響楽団との大阪公演で、アンコールに『六甲おろし』をやって下さったなんて、何とも嬉しく良いお話し有り難うございました!
2024年も、ブログ主とここに集う愛好家の皆様の御健康とご多幸を、祈っております。
それでは皆様、良いお年を!

投稿: 覆面吾郎 | 2023年12月27日 (水) 10時16分

本日から年末年始休暇に突入しております。

小生もアメリカのオケの現代的な機能美が大好きで、なぜかウィーン・フィルを聴いてもあまり感動できないへそ曲がりであります。

1993年の秋から年末まで、仕事の関係でフィラデルフィアに滞在したことがありまして、毎週末にフィラデルフィア管のコンサートを楽しむという天国のような生活を送っておりました。音楽監督がムーティからサヴァリッシュに代わった年で、会場はまだAcademy of Musicでした。

その年、フィリーズがワールドシリーズに進み、結局、ブルージェイズに完敗したのですが、街をあげて応援する雰囲気で盛り上がり、City HallのてっぺんにあるWilliam Pennの立像がフィリーズの赤い野球帽をかぶっていました。ただ、オケの演奏会の方は盛り上がらず、サヴァリッシュ先生は野球にあまり興味がなかったのでしょう。ま、彼が野球帽をかぶる姿はちょっと想像できませんが(笑)。

2024年が素晴らしい年となりますように。

投稿: KEN | 2023年12月30日 (土) 07時40分

yokochan様
2024年明けましておめでとうございます。
元旦に、聴き初めの定盤、ビンダー指揮ウィーン交響楽団の『J・シュトラウス名曲集』聴き終え、ラジオを捻ると、石川能登半島地震の報道と避難呼び掛けに、ビックリです。
『元旦早々、何たるこっちゃ!?』でしたが、難事にあっさり屈する事なく、頑張ろうではございませんか!

投稿: 覆面吾郎 | 2024年1月 3日 (水) 12時04分

KENさん、こんにちは、そして年も明け日が経ちましたが今年もよろしくお願いいたします。
フィラデルフィアに滞在なさったとのこと、サヴァリッシュ時代のフィラ管も好きです。
ミュンヘンでは出なかったサヴァリッシュのシュトラウスの眩いサウンドがすばらしいと思います。
そしてさすがのサヴァリッシュ先生、ベースボールとは別次元の御存在ですね。
この歳になると、アメリカへの渡航なんて夢のまた夢ですが、オーケストラの旅は常にできます、今年も世界のオーケストラを楽しみたいと思います。

投稿: yokochan | 2024年1月 9日 (火) 08時55分

覆面吾郎さん、間が開いてしまい恐縮ですが、今年もよろしくお願いします。
新年早々に大きな災害や事故が起きて、落ち着かない幕開けとなりました。
新年の音楽初めは、ブルックナーやワーグナー、ショスタコーヴィチというヘビー級でした。
今年のニューイヤーコンサートも音源で楽しみましたが、こちらもティーレマンということで重めの演奏でしたが、とてもよかったと思います。
 北陸の被災地に思いをはせつつ、大きな災害がこれ以上起きないことを祈りたいと思います。

投稿: yokochan | 2024年1月 9日 (火) 09時01分

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