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2025年5月24日 (土)

R・シュトラウス 「町人貴族」 マリナー指揮

Minamiasigara-031

花の便りとしては遅きに失した感ありますが、ネモフィラとチューリップ。

今年の春は寒暖の差が日々激しく、あれよあれよという間に終わってしまった。

晴れの日にうまく行動できる日がなかったりで、季節の花めぐりも不発に・・・

Minamiasigara-021

ブルーとチューリップの白、さわやかな色合いに癒されました。

Strauss-bourgeois-marriner

  R・シュトラウス 組曲「町人貴族」 op.60

    サー・ネヴィル・マリナー指揮

 アカデミー・オブ・セント・マーテイン・イン・ザ・フィールズ

   (1955.7 @セント・ジョンズ・スミス・スクゥエア、ロンドン)  

静岡で観劇した「ナクソス島のアリアドネ」の余韻がずっと継続していて、手持ちの音源をとっかえひっかえ聴いていました。
そして同時に、「アリアドネ」としてオペラ独立した元作の一部であった同じ作品番号60を持つ「町人貴族」も聴いてました。
アリアドネを聴きつつ、町人貴族も何度も聴くと、いままではあまり気にしていなかった同じ旋律が見つかったり、またシュトラウスの常套として、他作からの引用などもしっかりみつかり、面白い発見もありました。

作品59の「ばらの騎士」の続く6作目のオペラ作品も、ホフマンスタールとばらの騎士での演出担当マックス・ラインハルトとの協力で企画され、モリエールの戯曲に基づくリュリのコメディ・バレエをベースに編曲や新曲の音楽をつけて劇音楽とし、くわえて悲劇とドタバタ劇を融合させた劇中劇とで「町人貴族」という大作を作り上げた。
そうして1912年に初演はされたものの、構成にやはり無理もあり成功とはいえなかった。

その後、「ヨゼフの物語」や「影のない女」を経て、劇中劇を独立させ、ドタバタの部分をプロローグとしてグレートアップさせた「ナクソス島のアリアドネ」を1916年に初演。
一方の残された「町人貴族」の劇音楽部分は、これもまた手を入れて独立の劇付随音楽作品として規模を拡大して1918年に初演。
さらにここから9曲を選びだして、組曲「町人貴族」が編み出され1920年に初演。
いまでは組曲版しか聴かれることがないかもしれない。
ちなみに、初稿の全曲録音のケント・ナガノ盤はまだ聴いたことがないので、こちらは自身の課題といたしましょう。

   ーーーーーーーーーーーーーーーーー

成り上がりものの金持ちジュールダンを風刺した物語。
音楽や舞踏、剣術や哲学まで、貴族としての素養をつけるべく毎日毎晩金にものをいわせて励んでいるものの、まったく身に着かず状態しない。
クレオントという青年が、このジュールダンの娘のリュスィルと愛し合う仲になるが、彼は貴族ではないので、それを理由に結婚は許されず。
そこで一計を案じ、トルコの王子になりすますことになり、めでたくリュスィルと結婚してしまう・・・という他愛のないオハナシ。

①序曲(町人貴族としてのジュールダン、滑稽さと優美さ)
②メヌエット(ダンスのおけいこ中)
③剣術の先生(おおげさな身振りと緊迫感)
④仕立て屋の入場と踊り
⑤リュリのメヌエット(リュリの原曲の編曲)
⑥クーラント(宴会のお開きはカノン風)
⑦クレオントの登場(トルコ王子になりすましてリュリの原曲も活かし、異国情緒も)
⑧2幕前奏曲(ジュールダンも恋心、公爵夫人とその恋人を美しく描く)
⑨饗宴(ジュールダン主催の大宴会、食卓の音楽に料理人たちの踊り)

組曲で抜粋されたので、ストーリー性はなく脈連もない感じだが、いかにもシュトラウスらしい匠の描写性と優美さ、洒脱さあふれる音楽。
37人編成の室内オケは、アリアドネの方と同じく、ともかく軽やかさや晴朗さへのこだわりがあり、歌がないぶん、BGM風に流しつつ、わたしはPC作業など、実に軽やかにキーボード操作も進んだものです。

①のオーボエで奏でられる優美な旋律は、オペラのプロローグで作曲家が歌うモノローグに出てくる。
②のメヌエットの軽やかなフルートも、同じくプロローグで舞踏教師の登場シーンで出てきます。
さらに面白いのは、⑨の宴会での多彩な次々に供される料理の描写に、「ラインの黄金」のラインに娘たちのいる河の流れで鮭料理、自作の「ドン・キホーテ」で羊料理を、「ばらの騎士」の逢瀬の朝の鳥のさえずりで鳥レシピ(!)・・・など、ほんと面白い。

音源は実はあまり持ってませんで、マリナー盤が録音もよく、いつものマリナー&アカデミーのように、さらりとして軽快な演奏なので、何度も聴くのに過不足なくよろしい。
もっと歌いこんで巧く聴かせることもできるのでしょうが、そこはマリナー卿、紳士的な佇まいを崩さず遊び心は抑え気味にでもノーブルさをさりげなく引き出していて心地よい。

あとはテンシュテットとライナー(抜粋)を持ってるのみですが、実はエアチェックしたサヴァリッシュとウィーンフィルのライブがとても素晴らしい演奏なんです。
この作品を演奏するのに、やはりウィーンフィルは最適で、オケの柔和な響きとサヴァリッシュの清新な指揮とがうまくマッチしていて、アリアドネでもベームのあとを受けて指揮をしていたとおり、シュトラウスの持つ地中海的なサウンドを引き出す妙味を味わえます。

Minamiasigara-011

5月の最終週のお天気は連日の曇空や雨予報。

梅雨の訪れも早そうで、季節の巡りはどんどん早くなり、もう若くない自分は身体を慣らすのについていけない。

みなさまも体調管理に気をつけて、やってくる厳しい夏に備えてくださいまし。

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