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2025年10月27日 (月)

J・シュトラウス 「こうもり」 カラヤン&ベーム

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秋の出雲大社相模分祠の手水舎。

神無月の10月なので、神様は出雲にお出まし中ですが・・・

名水の里、秦野市ですから、境内には龍蛇神の社があって、清らかな湧き水が流れ汲むことができます。

いまいる町は秦野に近いので、水はすべて秦野市内にいくつもある名水スポットから汲んできてます。
ともかく美味しい水です。

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2025年は、ワルツ王ヨハン・シュトラウス2世の生誕200年の年。
そして、10月25日がその誕生日。

1975年の生誕150年もよく覚えていて、まだウィリー・ボスコフスキーが健在で、数々のライブ放送がFMで放送されたし、なんといってもベームがウィーフィルとやってきて記念碑的な演奏をいくつもNHKホールでやってくれた年だ。
そのなかには、ジュピターとシュトラウス作品集のコンサートもありました。

今宵は、ともにデッカ録音のウィーンフィルとカラヤンとベームの「こうもり」を久方ぶりに聴いてみました。
ウィーンフィルには伝説級のクレメンス・クラウス、以前もブログで書きましたプレヴィンなどの録音もありますが、60~70年代、ウィーンで人気を二分したふたりの巨匠、しかもデッカ録音ということで。
クライバーやボスコフスキーは、またの機会に。

Fledermaus-karajan

   J・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」

   アイゼンシュタイン:ヴァルデマール・クメント
   ロザリンデ:ヒルデ・ギューデン
   アデーレ:エリカ・ケート
   ファルケ:ワルター・ベリー
   フランク:エベールハルト・ヴェヒター
   オルロフスキー公:レジーナ・レズニック
   アルフレート:ジュゼッペ・ザンピエッリ
   ブリント:ペーター・クライン
   フロッシュ:エーリヒ・クンツ
   イーダ:ヘドヴィヒ・シューベルト

 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
                  ウィーン国立歌劇場合唱団

  ガラ・パフォーマンス
    レナータ・テバルディ、フェルナンド・コレーナ
    ビルギット・ニルソン、マリオ・デル・モナコ
    テレサ・ベルガンサ、ジョン・サザーランド
    ユッシ・ビョルリンク、レオンティン・プライス
    ジュリエッタ・シミオナート、エットレ・バスティアニーニ
    リューバ・ヴェリッチュ

  ピロデューサー:ジョン・カルショウ、クリストファー:レイバーン
  エンジニア:ゴードン・パリー、ジェイムス・ブラウン

      (1960.6 @ゾフィエンザール、ウィーン)

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 J・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」

   アイゼンシュタイン:エベールハルト・ヴェヒター
   ロザリンデ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ
   アデーレ:レナーテ・ホルム
   ファルケ:ハインツ・ホレチェク
   フランク:エーリヒ・クンツ
   オルロフスキー公:ヴォルフガング・ヴィントガッセン

   アルフレート:ヴァルデマール・クメント
   ブリント:エーリヒ・クッヒャー
   フロッシュ:オットー・シェンク(映像)

   イーダ:シルヴァン・ラカン

  カール・ベーム指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
            ウィーン国立歌劇場合唱団

  プロデューサー:ジョン・モードラー
  エンジニア:ジェイムス・ロック、ゴードン・パリー

      (1971.11 @ゾフィエンザール、ウィーン)

10年を隔てたふたつの録音ですが、カラヤン盤はカルショウ率いるデッカのソニックステージの全盛期のもので、ウィーンフィルでゾフィエンザールといえば、カラヤンの一連のイタリアオペラ、ショルティのリングやシュトラウスなどが思い浮かびますね。
まさにそれらと同じく、レコードで視覚的な効果も再現するという、まさにレコード芸術を極めたもので、いま聴いてもそのリアリティは面白く、レコード時代には味わえなかった鮮明さも嬉しいものだ。
しかし、何度も聴くと飽きが来てしまうのも事実だろう。
このカラヤン盤の最大の特徴は、2幕の後半におかれたガラ・パフォーマンス。
11人のいまや伝説級の名歌手たちがまったく予想外のレパートリーを披露してくれる。
テバルディはメリー・ウィドウ、ニルソンはマイフェアレディ、デルモナコがナポリタン、ビョルリンクがレハールなどなど。
これらの豪華メドレーに、その場のパーティー会場の参加者たちはそれぞれに拍手喝采を送っていて、それらも一連の流れでよくできていてまさにリアル。
でもこれらは、この録音のためにその場で歌われたものではなく、音質も均一でないのでやや場違い管は否めず、日ごろ聴くには冗長だろう。
 カラヤン盤のプロデューサーとエンジニアの名前を見るだけでも、当時のデッカ録音の企画力と鮮やかな音がわかるというもの。
半世紀以上経過したいまも昨今のライブ録音とは別な次元でのリアル感ある素晴らしいものだと思います。

レコードを芸術に特化したカラヤン盤から10年後のベーム盤。
こちらはストイックなスタジオ録音で、おあそびはゼロで、登場人物たちのセリフも大幅カット。ガラ・パフォーマンスもなく「雷鳴と電光」のみ。
そうこちらは映像作品あり、その上質なサウンドトラックでもあります。
でも録音はデッカサウンドをしっかり踏襲していて極上であります。
そして、ベーム盤はやはり映像を見ないといけない。
どちらも楽しめるのがベーム盤のいいところ。

「カラヤン盤」

60年代のキリリと引き締まったカラヤンならではの演奏。
しかもウィーンフィルの当時の美質が満載で、まだまだローカル感もほどよくあり、いわゆるウィーン訛りも聴かれるオーケストラだ。
EMIのフィルハーモニアとの旧盤の方が世評は高いようだが、私は未聴。
ウィーン国立歌劇場の音楽監督として在籍した時代、59年アイーダ、60年こうもり、61年オテロ、62年トスカ、63年カルメンと毎年ウィーンフィルとオペラ録音を重ねたカラヤン。
その後はスカラ座、さらにはベルリンフィルとオペラ録音をするようになり、ウィーンフィルとのオペラ録音は74年の蝶々さんまで間が空くことになりました。
いろんな時代のカラヤンのオペラのなかで、60年代がいちばんカラヤンらしく、指揮者中心のオペラでなく、歌手もオーケストラも対等にある総合芸術としてバランスがいいと思う。
歌いまわしの巧さ、キレの良さ、なによりも若々しい表情が魅力で、そこにウィーフィルの音色もプラスされます。
録音の良さも前述のとおり。

歌手に関しては、やや古めかしいと感じる声も散見されるが、なんといっても懐かしい名前ばかりで、まさにウィーンで日頃歌っていた日常の名歌手たちによる歌唱で、チームワークもばっちり。
ギューデンの声の美しさはすばらしく、エリカ・ケートも可愛い、がしかし、いずれも今の歌手たちの歌唱に慣れた耳からするとやや時代を感じさせもする。
クメントとヴェヒターは、ベーム盤でも役柄を変えて登場していて、ともに「ウィーンのこうもり」にはなくてはならない存在だった。
手持ちのCDは、CD初期の西ドイツ原盤だが、最新のリマスターでも聴いてみたいと思う。
とくに賑やかで晴れやかなガラ・パフォーマンスのシーンは刷新された音質で聴いてみたい。

「ベーム盤」

セリフのないぶん、音楽のみに浸ることができ、その結果、シュトラウスのこのオペレッタがメロディーの宝庫とわかる。
汲めども尽きぬ、美しく楽しい音楽。
そして巧みに素敵なアリアが挿入され、それらが実に心ニクイほどによく書けてて、思わず口ずさみたくなるものばかりときた。
このあたりを生まれたばかりの音楽のように鮮やかに演奏してみせたのがクライバーということになるだろう。

ベームの音楽は、決して四角四面のものでなく、またこの時期は覇気にもあふれていたので活気あふれるものです。
さすがに跳ねるようなリズムや、カラヤンのような歌いまわしの巧さなどはありませんが、オペラ的な感興にあふれていて雰囲気豊かです。

歌手たちは、70年代ともなると、自分にはお馴染みの顔ぶれとなり、実際に聴いたこともある名歌手も混じってます。
このあたりが、いにしえ感を感じさせるカラヤンの60年代メンバーと違うところ。
そしてやはり、この時期にウィーンでこうもりを歌っていた常連ばかりで、クンツ、ホレチェク、ホルムはまさにウィーンでの、そしてお馴染みのシェンク演出の常連だった。
そしてこの3人の芸達者ぶりが実に見事なものでした。
あとなんといっても、ヘルデンテノールのヴィントガッセンのオルロフスキー公が愉快だし、まさにあのヴィントガッセンそのものの声で大真面目に歌っている。
その真面目さが逆に滑稽の域に達していて、どこかかったるそうにしているところが聴きもの。
トリスタンを歌うヴィントガッセンに、クルヴェナールを歌うウィーンのカヴァリエバリトンのヴェヒターという組み合わせも妙なる面白さ。
まだまだ若々しいヴェヒターのアイゼンシュタインは、テノールで歌われる同役を器用に、巧みな技巧であくまで自然に歌っていて素晴らしい。
素晴らしついでに、ヤノヴィッツの硬質だけれど美声のロザリンデもこの役の理想形でありました。

Fledermaus-bohm-dvd1

音楽にみを納めたCDは、先に書いた通り、音楽の良さが素直に味わえるのですが、一方でセリフがなく、間がなさすぎることや、ドラマとして真剣に考えると唐突な展開にすぎると言えるかもしれない。
そのうえで、連続して何年振りかでDVDを視聴してみると、これがまた実に面白かったし、実によく出来てる。
舞台でなく、映画のセットでの映像であるだけに、細部にいたるまで完璧だし、豪華絢爛で、ヨーロッパのこの時代の贅沢三昧の人々の生活の上澄みを味わうこともできる。
具象的なシェンクの演出もこうした作品では文句ないし、そのシェンクが愉快なフロッシュ役でドタバタ演技をしているのも楽しい。
 序曲ではベームとウィーフィルの演奏もそのまま収録されていて、この時期のウィーフィルのお馴染みの面々が確認できたりする。
最後にヴィントガッセンはCDで聴くより、こちらの映像の方が数十倍も面白いデス!

Izumo-031

じつは「こうもり」は、劇場で観劇したことがありません。

始終やってるからまあいいや、と思っているうちにお爺さんになってしまった(笑)

神奈川フィルのコンサートオペラでやったらウケると思うんだけど。

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