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2025年11月 3日 (月)

ドヴォルザーク 交響曲第7番

Togawa-01

赤に染まりつつあるコキア。

秦野市内を流れる水無川をたどって丹沢方面にあがったところにある戸川公園です。

近くに新東名高速道路が通り、開通のおりにはサービスエリアができそうです。

深まる秋の日々、連日にわたり、ドヴォルザークの交響曲第7番をばかみたいに聴いた。

  ドヴォルザーク 交響曲第7番 ニ短調 op.70

Szell

秋から冬、しみじみドヴォルザークもいい。
数多い室内楽やヴァイオリンやピアノ作品、オペラもたくさんあるが、ルサルカ以外はあまり上演されない。
あとなんといっても交響曲作家でもあったが、それなのに後半の作品ばかりで1~4番はあまり演奏されない。
そんななかで、最近もっとも演奏頻度があがっている気がするのが「7番」なのであります。
新世界はいまだに新鮮だけど、8番は正直食傷気味なのであります。
あといえば、5,6番はいい曲だと思うのだけど演奏会でほぼなし。

7番は、当時の音楽楽壇の繫栄地ロンドン、そのフィルハーモニー協会から委嘱され、はりきって作曲された作品。
ブラームスの3番を聴いて、おおいに触発され、自信も付けながら完成。
ロンドンでの初演は1885年で大成功。
次の5年後の8番が、かつては「イギリス」と呼ばれたものの、そちらはイギリスで作曲されたわけでもなく、単に出版社がロンドンの社だったのでそのように呼ばれたから、音楽の内容と関係なく「イギリス」と名をつけてしまうなら「7番」のほうがそれに相応しいともいえるかも。
しかし、この7番はイギリスはおろか、ブラームスの亜流といったものを感じさせない音楽なところがよい。
ボヘミアの風土、音楽語法、民族臭などが強めだったこれまでの交響曲に比し、ドイツ的なかっちりした構成と豊かな表現力、オペラをいくつも手掛けてきて養われた劇的な音楽の進め方などが際立つ交響曲なのですね。
しっかりした交響曲でありながら、ドヴォルザークらしいボヘミアの風も感じさせるところが魅力的であります。


最初と最後の楽章が短調だが、それぞれの楽章の第2主題は、田園情緒感じる和みの旋律。
第2楽章が大好きです。
ブラームスの3番の2楽章とも似通っていて、抒情的で歌にあふれていてずっと聴いていたい音楽。

3楽章も、8番のスケルツォ楽章を思わせるメランコリックな雰囲気で、こちらは舞曲的な民族色が濃厚。
新世界→8番→7番の順に好きになっていったけれど、最初は3楽章が気にいったものだ。
いまはダントツで2楽章が好き。

①ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団
           (1960.3.18 @セヴァランスホール、クリーヴランド)
 初めて買ったレコードがセル盤で、この1枚がこの曲の刷り込み。
やや硬質な音で、きっちりした演奏でありながら詩情も忘れず、ゆたかな情感にあふれた名演だった。
CDで買い直したら音もよくなり、さらにいい演奏だと確信したし、終楽章も存外にダイナミックだった。

②ズビン・メータ指揮 イスラエル・フィルハーモニック
           (1968 @テルアビブ)

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 7番の交響曲を初めて聴いたのが、メータとイスラエルフィルのベルリンでのライブ放送で73年のものだったかと記憶。
FMで放送され録音したもので、これを繰り返し聴いてこの曲に馴染んだのちにセルのレコードを買った。
レコードの方は、71か72年にロンドンレコードから発売されたはずだが、CD化はずつとされず外盤で2000年頃に発売されたが、いまや廃盤の様子で、一昨年こちらはうまく入手ができた。
この時期のメータらしいメリハリの効いた、じつにウマい演奏で、旋律の歌わせ方や歯切れのいい金管の心地よい響かせ方、気持ちよく決まるティンパニなど、まさにやるじゃん、と思うナイスな演奏。
面白い演奏だが、憂愁や陰りなないし、ヨーロッパがない。

③ジョン・バルビローリ指揮 ハルレ管弦楽団
           (1957 @マンチェスター)

Dvorak-sym-barbirolli-11

 バルビローリのドヴォルザークは3曲の交響曲があるけれど、いずれも大好きですね
慈しむように曲を大事に愛するように指揮するサー・ジョン。
2楽章の滋味あふれる演奏はもう最高です。
まるでディーリアスみたいな音のするオーケストラとちょっとひなびた録音も懐かしい響きにあふれてる。
長く続いたマーク・エルダーに変わったいまのマーラーやショスタコを得意とする指揮者で、ハルレ管が遠くに行ってしまうようで寂しい・・・

④カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 ロンドン・フィルハーモニック
           (1976   @アビーロードスタジオ、ロンドン)

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 ジュリーニがいちばんよかったのは、70~80年代前半ぐらいまでと思っているが、その一番の時期の録音がこちら。
DGに移籍する頃で、シカゴと当時ハイテインクのもとで絶好調期にあったロンドンフィル、ウィーン響と録音していたジュリーニ。
ウィーン響との来日でジュリーニファンになったのもこの時期で、誠実で集中力みなぎる指揮者と渋めのカラーのオーケストラで、セピア色のヨーロッパの景色を見るような演奏になっている。
ゆったりした2楽章は、まるでブルックナーの緩徐楽章かと思うくらい。
よく歌う演奏は存外にしなやかで、きっと聴くことのないであろうコンセルトヘボウとの後年の未聴の再録音より若々しいと思ってる。
シカゴとの8番と9番とでセットで素晴らしいジュリーニのドヴォルザークであります。

⑤コリン・デイヴィス指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
           (1975.11 @コンセルトヘボウ)

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 コンセルトヘボウとフィリップスということで思い起こすことのできる、そのイメージ通りの演奏に録音。
この時期のハイティンク、デイヴィスとのハイドンやストラヴィンスキーなど、ともかくコクのある豊かなオーケストラの音色がいずれもすばらしく、ブラームスの3番というイメージに一番近く感じる演奏だと思う。
それにしても、この頃のコンセルトヘボウというオーケストラと、その音を見事にとらえたフィリップスは何を聴いても素晴らしく、私のような思いはノスタルジーにすぎないと思われるかもしれないが、この音がもう失われてしまったと思うと悲しい。

⑥オトマール・スウィトナー指揮 ベルリン国立歌劇場管弦楽団
           (1981.2 @ベルリン)

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 スウィトナーがあれよあれよという間にドヴォルザークを全曲録音したのには、当時は驚きましたね。
奇をてらわない、ナチュラルな姿勢を貫いたいつものスウィトナーらしい柔和な音楽がここにあります。
ベルリンのオーケストラながら明るい色調があり、響きは軽めで自然児のようなドヴォルザークは魅力があります。
ドイツ統一後のバレンボイムやいまのティーレマンの方が、よっぽど重厚な音がするベルリンシュターツカペレは、オーストリアの指揮者スウィトナーでユニークなコンビだったといまは思います。

⑦ロリン・マゼール指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
           (1983.2 @ウィーン)

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 ウィーンと蜜月だった頃にマゼールはDGとソニーに多くの録音を残したが、そのなかの1枚が後期3曲の交響曲の録音。
案外とまとも、なんていったらおかしいが、変なことしてないストレートな演奏で、素直にウィーフィルの音、ムジークフェラインの音が楽しめる。
それ以上でも以下でもないと思うし、マゼールならもっと掘り下げてやらかして欲しかった。

⑧ネヴィル・マリナー指揮 ミネソタ管弦楽団
           (1983.3 @ミネアポリス)

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 以前書いたものを再掲「早めのテンポで、こだわりなく、すいすい進む。
ときに、ティンパニの強打を見せたり、終楽章でたたみ込むような迫力を見せたりと、思わぬメリハリを展開してみせる。
2楽章のブラームスがボヘミアにやってきたかのような、内声部のほのぼのとした豊かな歌が、マリナー特有のすっきり感でもって、とても爽やかに聴くことができます。」

⑨アンドレ・プレヴィン指揮  ロサンゼルス・フィルハーモニック
           (1988.5 @ロイスホール、UCLA)

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 ジャケットも美しく、ノスタルジックなプレヴィンのドヴォルザークシリーズ。
メータのロスフィルとは別物のように感じる柔和でウォームトーンのオーケストラ。
プレヴィンの優しい目線も感じるこの演奏、やはり2楽章と3楽章が美しく、曲全体に内声部の描き方が新鮮でオヤっと思う瞬間があったりした。
久しぶりに聴いてみて、こんなにいい演奏だったか、と思った次第。
亡くなって6年が経ち、プレヴィンの名も埋もれがちかと思うが、新しいライブなど発掘されないものだろうか。

※ドヴォルザークを語るうえで欠かせないノイマンとチェコフィルの2つの全集、ケルテス、クーベリックといずれも所持してないのです。
これはいけませんね、いつかはと思いつつ・・・という音盤はまだたくさんありますよ。

⑩イルジ・ビエロフラーヴェク指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
           (2012、13 @プラハ)

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 亡くなる5年前に、ビエロフラーヴェクは手兵のチェコフィルでドヴォルザークのいろんな作品を一気に残してくれた。
しかもデッカの録音がとてもよろしくて、すべての交響曲やスタバト・マーテルなど、すべてがスタンダートとなるべき理想的な演奏かと。
冴えたオーケストラの響きには、往年のくすんだ美音とかのイメージのチェコフィルとは異なり、ヨーロッパのオーケストラのひとつという認識を与えるもの。
この傾向は、ビシュコフ盤を聴くとより感じるが、政治的にも安定し、スロヴァキアと分離したいまのチェコは多難な時代のオーケストラの強い個性が失われて感じるものの、ビエロフラーヴェクの元でのドヴォルザークやほかの自国作品においては、完全に自分たちの音楽という自信やプライドがにじみ出ているように思う。
指揮者とオーケストラが一体化した、幸福な結びつきを、9曲の交響曲を順番に全部聴くことでまざまざと感じる。

⑪セミョーン・ビシュコフ指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
                              (2023.9 @プラハ)

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 大柄なドヴォルザークというイメージで構えは大きい一方で、細部にも目線が行き届いた緻密な演奏と感じる。
チェコフィルは実にうまいと思うが、もっとスッキリしたビエロフラーヴェクの方が歌が豊かだし、気持ちがいい。
マーラーを得意とし、ブルックナーをやらないビシュコフならではのドヴォルザークと言ったらいいか。
3つの交響曲以上に、「自然と人生と愛」という序曲3部作がとてもいい。
次の首席のフルシャも交響曲を全部録音してくれるだろう。

最後にネット録音した海外ライブから、これから日本でも活躍する注目の若手の演奏

⑫ダニエレ・ルスティオーニ指揮 アルスター管弦楽団
            (2024.8.18 ロイヤル・アルバートホール)

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 新イタリアの若手三羽烏のひとり、42歳にしてもうオペラの手練れ。
リヨン歌劇場でレパートリーを広げ、アルスター管、メットオペラの首席客演指揮者、来年からは都響の首席客演となるルスティオーニ。
イケメンイタリア男で、奥さんのヴァイオリニスト、デコーも美人さん。
ともかく欧米の劇場から引く手もあまたの存在。
プロムスで聴衆を熱狂させたこのドヴォルザークは、指揮ぶりは熱烈だけれども、その音楽は本格派で起承転結が見事で構成感も見事。
来年1月の都響では、ヴェルディ、ワーグナー、レズピーギ、夫妻共演ブラームスなどが予定されていて、いずれもチケット入手済み

⑬ロレンツォ・ヴィオッテイ指揮 ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
                              (2024,6.16 @ムジークフェライン)

Viotti

 2世指揮者のなかでもピカイチの実力派、そしてこちらもイケメン極まりない35歳のロレンツォ君は、東京交響楽団の次期音楽監督。
ローザンヌ出身であることから、独・仏・伊、いずれの音楽にも通じ、すでに幅広いレパートリーを身につけている。
こちらもオランダオペラとネーデルランドフィルという、比較的好きなことができるポストで腕を磨いた。
いまや世界のオーケストラとオペラから引っ張りだこだ。
ウィーフィルを指揮してしなやかで、流麗なるドヴォルザークを聴かせてる。
すでに東響でこの曲を指揮しているようだが、実は来期にも取り上げる。
そのときの組み合わせが、ブラームスの3番というから、ロレンッツォ氏のプログラムはなかなかにおもしろい。
ツェムリンスキーやコルンゴルトもよく指揮しているから、今後ともに楽しみな存在であります。

Togawa-02

ドヴォルザークは、メロディーメーカー。
室内楽など、まだまだその宝庫は尽きず、オペラもいくつか揃えているが、この先ちゃんと聴けるかな。         

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