東京都交響楽団定期演奏会 インキネン指揮
朝に雨、ちょっとのお湿りがありがたい夕刻のコンサートホール。
風はまだ冷たいけれど、気温は上昇中でいい感じで、早めの桜の季節を迎えようとしてます。
東京都交響楽団 第1039回 定期演奏会 Bシリーズ
ラヴェル ラ・ヴァルス
サン=サーンス ピアノ協奏曲第4番 ハ短調 op.44
左手のための6つの練習曲~第2番「フーガのように」
Pf:キット・アームストロング
プロコフィエフ 交響曲第3番 ハ短調 op.44
ピエタリ・インキネン指揮 東京都交響楽団
(2026.3.19 @サントリーホール)
一見、風変りなプログラムですが、いずれもパリにおいて初演されたパリ・フランスにゆかりのある作品。
前半はまさにわかりますが、プロコフィエフはロシアから亡命し、アメリカからドイツやフランスで過ごした期間が10年間あり、その間で独創的な作品を多く作曲していて、オペラ「炎の天使」とその素材を元にした交響曲第3番がまさにこの時期のものです。
ハ短調と作品44が共通しているのは、都響の発表だと偶然だそうな。
そのプロコフィエフの3番狙いのワタクシ。
全部プロコフィエフで決めて欲しかった気持ちもありましたが、どうしてどうして、前半も抜群に面白かった。
インキネンとラヴェル、まったくイメージはなかったですが、きらびやかさとは遠い、淡々としたなかに入念できめ細かな味付けもあるユニークなラ・ヴァルスだった。
インキネンを実演で聴くのは初めてですが、シベリウスやドヴォルザーク、ワーグナー、プロコ3番の専門家みたいに思ってたけど、丁寧な仕上げの渋めのラヴェルは悪くないと思った。
演奏会の終わりに晴れやかにやるのでなく、冒頭にホールの空気感をあげるようなこうした選曲は悪くないし、次のサン=サーンスの音楽の舞踏性との対比でも面白かった。
そのサン=サーンス、奏者のアームストロング氏もわたしは初だし、恥ずかしながらお名前も知らなかった。
作曲もなし、オルガン奏者でもある天才肌の音楽家。
小柄な少年のようにサクッと登場し、ササっと弾き始めたそのピアノは、転がるような軽やかなタッチで実に心地よい音色をかもし出す。
これまたコンサート初聴きのサン=サーンスの4番という渋い作品で、変奏形式の第1部の前半とやや難渋な後半ではちょっとワタクシ退屈しかけたけれど、それでもピアノは明快で曇りなし。
楽しい雰囲気になる第2部は、いかにもサンサーンスらしい屈託のない音楽となり、ピアノもオーケストラもウキウキ感が満載だ。
飛翔するがごとく高い技巧に裏うちされたアームストロング君のピアノは、もはや耳に心地よさをもたらす快感ですらあり。
インキネンのオーケストラもここでは煌めきを尽くし、この作品のベースにある循環形式などといった小難しいことは抜きに明るく楽しくアームストロング君を支えてる。
あっという間に盛り上がって、あっという間に終わってしまう協奏曲だったけれど楽しい30分間だった。
アンコールは驚きの左手作品。
左手だけで演奏してるとはまったく思えない鮮やかなタッチの演奏に舌を巻きましたよ!
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お楽しみのプロコフィエフ。
自慢じゃなけど、「炎の天使」を完全マスターしてから交響曲第3番の楽しみ方も増した。
まして今回は、実演初のプロコ3番。
奏者のみなさんが、あんなことしてる、こんな風に弾いてるんだみたいにキョロキョロしながらワクワク忙しくも聴いたものです。
いうまでもなく、8作ある完成されたプロコフィエフのオペラ(ほかに少年時代に4作あり)のなかで、いちばん刺激的でかつ傑作といわれる「炎の天使」だが、三角関係の恋愛、悪魔主義、騎士道精神、キリスト教、これらがないまぜになった筋立ての複雑なオペラです。
堕天使となるヒロインに振り回される騎士、このヒロインの性格がややこしく心変わりも激しく目まぐるしい。
だから、このオペラのモティーフを随所に折り込んだ交響曲第3番も、まさに目まぐるしいほどに、いろんな旋律や動機が交錯し、とつぜんの心がわりのように音楽はつねに変転する。
そのあたりの差配が、インキネンの指揮ぶりを見ていても、曲を完全掌握している感じで頼もしいものがありました。
①指揮台にあがるや否やすぐに指揮棒を振り下ろしすぐさまに、ベルを伴うあの強烈なサウンドが開始された。
オーケストラの準備も万端だった。
ヒロインが悪霊にとりつかれたようにして歌うシーンの音楽、そこに低弦はそれをなだめる相方のリベラメの祈り。
もう冒頭からその描き方が着実で一挙に音楽に気持ちが入っていった。
そのあとのヒロインの愛の旋律がいやでも美しく抒情的に奏でられ、オーボエも見事でした。
②ミステリアスな緩徐楽章は、修道院入りしたヒロインのシーンで、こうして聴くとオペラでの禍々しさは後退し、抒情的でクールな演奏も手伝い、シンフォニーとして実によく書けてるものだなと感心。
ときおり怪しいムードになるのは、悪魔文献を読み漁るヒロインの姿なのだな、これが。
③はい、みなさんお待ちかねの目まぐるしくも弦の分奏による変転グリッサンドの激しい3楽章。
これこそ見て聴いてみたかった。
なるほどなるほどと思いながら聴き、中間部の束の間の正気に戻った抒情味の対比もうまい描き方だ。
オペラでは霊魂の召喚で鳴らされるドアのノックがわりの3つの太鼓、このあたりの腹にずしりとくるところ、打楽器各種の活躍もライブならではの興奮のしどころ。
④オペラの眩しい最終シーンで終わる3楽章だが、ラストとそう感じさせることなく、アタッカで終楽章になだれ込むことでよけいに終楽章の奇怪な姿を浮き彫りにできたものと思う。
いうまでもなく、最終幕の悪霊と惑わされた修道女たちのトランス状態の酩酊的な強烈な音楽が入乱れるのであるが、都響の整然としたアンサンブルがあって、またインキネンのアクセルぶかしが生きてくるというものだ。
強烈なエンディングにあっけにとられるホールは、音楽が消えても、インキネンが指揮棒を下ろして構えを解いても、しばしの間がありました。
ブラボー一声かましました。
爆発的な演奏というよりは、冷静さも保ちつつ整然とした抒情味も大切にしたクールで熱い演奏だったように思う。
都響は次はヴァンスカが来てシベリウス。
インキネンは、次はシベリウスを聴きたいものだ。
さらに都響の4月はカラビッツがやってきてプロコフィエフの4番の初稿版をやります。
これ行きます。
ホールのうしろの公園には終わりかけのモクレンが。
次は満開の桜坂です。
過去記事
「プロコフィエフ 交響曲第3番」
「プロコフィエフ 炎の天使」音源
「プロコフィエフ 炎の天使」映像
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