« バッハ 復活祭オラトリオ | トップページ | プロコフィエフ 交響曲第4番(初稿)・放蕩息子 »

2026年4月14日 (火)

ウォルトン 交響曲第1番、第2番 山田和樹 指揮

Hadano-01_20260411221201

秦野市の水無川沿いの桜並木、丹沢山麓に続くこの川沿いの道には延々と桜が咲いてます。
対岸には途中から枝垂桜、ずっと上流では河津桜が2月末には咲きました。

Hadano-03_20260411221901

さらに南側には併行して「さくら道」があって、こちらは6㎞におよぶ桜並木で、桜の季節には渋滞のメッカとなります。

ほぼお隣の市で、いま住む町には魅力的なスーパーや都市銀行もないので、週に3~4回のペースで秦野に行ってます。

そして秦野出身の指揮者、山田和樹のメジャーレーベル録音が出ましたのでさっそく聴いてみた。
しかも大好きな英国もの。

Walton-symphony-kazuki-yamada-11

  ウォルトン 戴冠式行進曲「宝玉と王の杖」

        交響曲第1番 変ロ短調

        交響曲第2番

   山田 和樹 指揮 バーミンガム市交響楽団

   (2024.12.4、20025.11.5 バーミンガム、シンフォニーホール)

プレヴィン盤でカップリングされていた行進曲の洒落た演奏で始まるこのCD。
2曲ともに収録できるCD時代の強みで、このふたつの交響曲の年代による作風の変化、そしてどちらも変わらぬウォルトン独自のいまの映画音楽の底流にあるものを感じる音楽のかっこよさがふんだんに味わえる1枚なのだ。
戦前の並々ならぬ時期1932年以降で作曲された1番、戦後の1960年の2極化した世界と繁栄の時代の2番。

1932年から書き始めた交響曲第1番は、終楽章の作曲に至り恋愛の失敗などが重なり難航したというが、35年に完成。
苦難から勝利へと導かれる交響曲のセオリー通りの力作。
これまでたくさんの音源に接し、コンサートでも2度ほど経験。
不安と緊張に満ちた音楽の1楽章からしてムチャ好きなんですが、そのあとの「悪意を持って」と題されたスケルツォのシニカルな面白さ。
そして「メランコリーを持って」とされた緩徐楽章は、なかなかに晦渋な雰囲気を持ちつつ、じっくり何度も聴くとスルメのように味わい深い音楽なのだ。
トラジティの積み上げがなす、憂愁と沈鬱の音楽は美しいとともにひんやり感もある。
そして強烈なパワーをもって攻めてくるような爆発的な終楽章はフーガ形式となり、白熱する一方で打楽器打ち乱れる超かっちょいい音楽。

実は、この1番の1楽章は、ある映画の音楽をいつも思い起こしてしまう。
それは1979年制作のジョン・バタム監督の「ドラキュラ」。
そう、吸血鬼ドラキュラの原作に忠実な映画なんです。
そして調べたら、その音楽担当は、ジョン・ウィリアムスで、オーケストラはロンドン響。
う~む、ウォルトン自身も映画への音楽はたくさん書いてるし、名優ローレンス・オリヴィエによる映画に特に多い。
そのオリヴィエ卿、件の「ドラキュラ」にもヘルシング教授役で出ておりますね。
なんか、いろんな因縁を感じます。
コルンゴルトの影響を多大に受けているJ・ウィリアムスですから、ウォルトンのカッコいい音楽からいろいろ学んだとしてもおかしくない。
 さてどこが似ているかというと、1楽章の随所に出てくる主要主題です。
映画の方も、まさにこの主題がメインになっていて、ドラキュラ伯爵とヒロインの切れぬ仲、まさにその宿命的な運命を感じさせる音楽になってるんです。
yotubeにトレイラーとサウンドトラックがありますので、調べてみてください。
夜中にひとりで見るとおっかないですよ。

この山田和樹盤は、不安な時代のこと、つねにつきまとう不安な様相など、そうした背景まったく感じさせることなく、ひたすらにスコアを完璧に音楽にしてみた、そんなピュアな演奏だと思った。
音楽の造形をしっかりつかんで明快に聴かせてくれる才能あふれる指揮と、フレキシビリティあふれるバーミンガムのオーケストラの素晴らしさ。
そして3楽章の冷静さを保った美しさ。
枯淡の境地を聴かせた尾高さんの演奏にはかなわないが、ヤマカズの繊細で感じ切ったしなやかさは捨てがたい。
そしてこけおどし的にはっちゃけない終楽章も長く聴きこむにはいい。

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんなに昔でない1960年作の第2番。
30分あまりの長さで、いわゆる現代音楽が隆盛となりつつあるなかで、交響曲という保守的なジャンルに、これまた保守的な作風と当時はみなされたウォルトンの音楽は、ゴージャスですらあります。
歳を重ねると作曲家はシンプルな作風になったりもしますが、ここでのウォルトンは映画音楽もかくやと思わせるような明快でわかりやすいもので、かつ技法をつくした高度なもの。
実演ではブラビンスの指揮で1度だけ。
尾高さんもこの2番もレパートリーにしていて、かつてPromsで演奏して喝采をあびていた。
レコードでは、セルが大いに評価をしてクリーヴランドと録音してました。
セルやブラビンスの音盤を持ってないので、プレヴィン盤のみで楽しんでましたが、この山田和樹のCDは決定的な演奏になるでしょう。

3楽章編成だが、最初の楽章がソナタ形式でかつスケルツォ的なところが新鮮。
これまたシネマ的なミステリアスサウンドでもあります。
同時に暴力的かつバーバリアンな様相も併せ持ち、ほんと映画音楽みたいでカッコいいんです。
演奏会でやったら、やたらと興奮しますぜ、これ。
 そして、ともかく美しい2楽章。
悲恋をあつかった自作のオペラ「トロイラスとクレシダ」から楽想を得ている。
明滅する儚さをともなったクールな抒情がとてもすてきだし、盛り上がりも高貴な情熱をまとっていてクールすぎる。
 3楽章ではパッサカリア形式となり、12音技法にも踏み込み技巧的かつ複雑な様相をみせる。
しかし変奏とともに姿をいろいろ変えてみせる目をみはる音楽の進行は、なんども聴くと面白くなります。

山田和樹の指揮のうまさは、まさに終楽章で本領発揮。
主題が拡散せず、しっかり見通しよく押さえられつつ展開するさまは圧巻だし、エンディングの壮快なまでの切れ味のよさも抜群だった。
精緻な2楽章ももちろん美しく気に入りましたね。

DGへの次の録音が楽しみ。
DGはこのところ、いろんな指揮者でさまざまな交響曲全集を体系的に録音している。
エルガーやスタンフォード、パリーなんかもやって欲しい。
それともうひとつの手兵となるベルリン・ドイツ響とはどのような活動をしていくか、こちらも楽しみです。
バーミンガムの指揮者は、かつてのラトル、オラモ、ヤンソンスと、いずれも大成してます。

過去記事

「B・トムソン指揮 ロンドンフィル」

「尾高忠明 指揮 芸大フィルハーモニア」

「M・ブラビンス指揮 東京都交響楽団 1番」

「M・ブラビンス指揮 東京都交響楽団 2番」

Hadano-02_20260415001001

秦野市の出身者は有名人、とくに音楽や俳優が多いです。

吉田栄作、菊池凛子、岸井ゆきの、合田雅史、山田涼介、坂井泉水、LUNA SEA(特に先ごろ亡くなった真矢)、古くはスマイリー小原、などなどたくさんいらっしゃる。

なかでも世界に冠たる存在となりつつある山田和樹です。

Hadano-04

神奈川県唯一の盆地である秦野市は、山に囲まれ、豊かな水にあふれる都市です。

いまは八重桜が満開で、食用の桜では日本一らしい。
桜の塩漬けは美味しいですよ。

|

« バッハ 復活祭オラトリオ | トップページ | プロコフィエフ 交響曲第4番(初稿)・放蕩息子 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« バッハ 復活祭オラトリオ | トップページ | プロコフィエフ 交響曲第4番(初稿)・放蕩息子 »