« 東京交響楽団 定期演奏会 エラス-カサド指揮 | トップページ | ベートーヴェン 田園と第7 長老指揮者の若き日 »

2026年5月 9日 (土)

ディーリアス ピアノ協奏曲 シェリー&デイヴィス

Itsukushima-02

過ぎ去った春

今年の桜はどこも美しかった。
隣町の湿生公園は、幼少時代によく遊んだ場所。

当時はよそ者は入れないような、そんな閉ざされた雰囲気と神聖さすら子供心に感じた場所。
丹沢山系の由来する水源は耐えることなく、清らかさを保っているのは昔と同じく。

Derius-piano-con-davis-1_20251212231701

  ディーリアス ピアノ協奏曲 ハ短調 (初稿版)

     Pf:ハワード・シェリー

   アンドリュー・デイヴィス指揮
  ロイヤル・スコテッシュ・ナショナル管弦楽団

     (2011.11 @グラスゴー)

ディーリアス(1862~1934)には、協奏曲作品は4つあり、それらのなかで一番はやく作曲されたのがピアノ協奏曲。
1897年、ディーリアス35歳の作品。
父親の跡継ぎとして実業家になるという縛りから解放され、音楽で生きていくことに舵を切って始めたヨーロッパでの生活。
ドイツで多くの演奏家や作曲家と交わり、影響を受けたが、なかでもグリーグとの出会いは大きく、グリーグ自身もディーリアスの才能を高く評価し支援もした。
ついで生活と活動拠点をパリに移し、そこで本格的に作曲に打ち込むようになり、同時にその頃、1896年にのちに伴侶となるイェルカ・ローーゼンと出会う。
そんななか、ピアノとオーケストラのための幻想曲を作曲。
それは、フロリダ時代にすでに構想されていてスケッチとして残されていたもので、ディーリアスはこの幻想曲をさらに拡大し、3楽章形式のピアノ協奏曲として完成させる。

その初演は、デュッセルドルフの東部、エルバーフェルトにて1904年に行われた。
ドイツで何度か演奏されたが、ディーリアスはこの作品に満足はしていなかった。
その2年後に3楽章を削除して、さらなる改訂を施して、最初の単一楽章形式のものに戻した。
友人でありピアニストでもあったサントー(ブゾーニの弟子)の協力を仰ぎ、ピアノパートがよりヴィルトゥオーゾ風にサントーによって書換えられ、これをディーリアスも承認。
このような曲折を経て、現在演奏されているディーリアスのピアノ協奏曲は、元に戻された1楽章形式の作品ということに落ち着いているわけで、ビーチャムが手を入れたりもしている。
1906年の単一楽章バージョンが23分ほど。
1897~1904年の3楽章オリジナルバージョンは30分。

3つの楽章のテイストを連続する形で巧みに、協奏曲としての形式を真ん中に緩徐楽章的な美しい場面を入れつつ構成した幻想曲ともとれるような1906年版。
以前の記事でも書いてますが、グリーグやシューマンと同じような幻想味と叙情味を簡潔に味わえるロマンテックな通常版でした。

そして3つの楽章がはっきりと分かれている初稿版は、幻想曲というよりはやはり協奏曲としての立ち位置がしっかりあり、規模は大きくなり、3つの楽章の性格とその対比がより明確となっている。
フロリダ時代のアメリカ生活の一端を感じさせるような牧歌的な印象が1楽章ではより強くなった。
 そして、美しく、いかにもディーリアスを思わせる幽玄な2楽章は、改訂版にあるような終結部へのつなぎ的なイメージがなくなり、これだけで独立して取り出して聴きたくなるような、ディーリアス好きにとっては至福を感じるたゆたう儚さの音楽なのであります。 
 3楽章はいくぶんシリアスに、そしてときに5拍子になったりで大胆な雰囲気もある。
オーケストラは複雑な動きを見せ、ピアノも技巧的に、ときに華麗さすら感じさせる。
このあたりがややまとまりに欠け、最終稿における簡潔さのほうが優るような気もしなくもない。
ピアノソロによる長いカデンツァがあるが、この部分をのちにヴァイオリン協奏曲にイメージ転用している。
その後に現れるオーケストラは、静かに印象的に入りつつも、徐々に1楽章の印象的な第2主題を晴れやかに、高らかに奏で始め、勢いを増してそのまま終結。

ディーリアスは青白いもやのようなヴェールにつつまれているような曲、と言ったというが、その言葉が2楽章のことを言ったものだと思いたい。
このハワード・シェリーの献身的なピアノ、ディーリアスへの愛情に満ちた亡きサー・アンドリューの素敵な指揮による演奏と、詩的なジャケットとで、このディーリアスの言葉を受け止めたい。

初稿版の録音はあとピアーズ・レーンのものがありますが、未聴。
改訂版は、カールス、同じくレーン、P・フォークの3種を聴いてます。

 過去記事

「ピアーズ・レーン&ハンドレー」

「ルドルフ・カールス&ギブソン」

Itsukushima-03

まだ1カ月と少ししかたってないけれど、桜の季節がもう懐かしく、そして愛おしい。

日本の巡りくる季節の移り変わりは美しい。

次のディーリアスは、少し間をおいて二重協奏曲を。


|

« 東京交響楽団 定期演奏会 エラス-カサド指揮 | トップページ | ベートーヴェン 田園と第7 長老指揮者の若き日 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 東京交響楽団 定期演奏会 エラス-カサド指揮 | トップページ | ベートーヴェン 田園と第7 長老指揮者の若き日 »