東京交響楽団定期演奏会 ヴィオッテイ指揮「7つの封印の書」
秋の装いのサントリーホール
ヴィオッテイ新監督のシーズン演目の目玉がこの日。
東京交響楽団 第745回定期演奏会
フランツ・シュミット オラトリオ「7つの封印の書」
ヨハネ :マクシミリアン・シュミット
主の声:ローベルト・ホル
ソプラノ:クリスティーナ・ランツハマー
アルト :カトリオーナ・モリソン
テノール:パトリック・グラール
バス :クレシミル・ストラジャナッツ
ロレンツォ・ヴィオッテイ指揮 東響交響楽団
東響コーラス
合唱指揮:富平 恭平
オルガン:大木 麻理
(2026.9.19 @サントリーホール)
1週間前にルイージとN響によるNHKホール公演あり、私は聴きに行けなかったけれどその対比はできませんが、N響は全曲を休憩なしで通しで演奏し、東響の今回は1部と2部の間に休憩あり。
2時間の通し演奏は、この作品特有の緊張感の持続と流れにおいて効果的であると思われるが同じ長さでもマーラーやワーグナーのような親しみがまだない音楽なので、聴き手には辛い一面もあるかもしれない。
映像で保有のルイージの演奏2種、ホーネック、ともに休憩なしのように見られた。
またソリストの配置にも違いが。
N響ではヨハネと4人の歌手は指揮者の左右、主の声はホール右手のオルガンの横。オルガニストはもちろんそちらに。
東響では、ヨハネはオーケストラ右奥のテューバの横、4人の歌手はその反対側、左手のホルンの横で、さらにオルガンもそちらに。
主の声は正面オルガンの前。
ホールの特性、響きの具合とオルガンの位置関係などから考え抜かれた結果かと思いますが、N響は聴いてないからわからないけど、あの大きなホール空間ではこうするしかないし、その音響も想像ができます。
さらに今回すごいと思ったのは、東響コーラスがいつものとおりに暗譜でいどんだこと。
これまた他演との比較でなんですが、N響もふくめ、すべてNDR合唱団までもがみな譜面を手にしての合唱。
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期待に胸膨らませ、始まったホルンから始まる4つの音による印象的な音型。
ここから大好きなんですが、思い入れも施すなく淡々たる出だしだが、とても柔らかい。
その柔和な雰囲気のままに、今のヨハネのスペシャリストともいえるシュミットのリリカルな声がぴたりとはまる。
ここからもう今宵の素晴らしい演奏の結果が予見され、最後にもう一度繰り返される、4音の音型の再来が楽しみになった。
次いで優しい雰囲気のなかでの滋味深いゼーリヒの深い声による主の言葉も素晴らしかった。
4人のソリストたちの贅沢な布陣といったらないくらいで、彼らの聴かせどころの4重唱は文句なく素晴らしく、リリックでもシュミットと異なる清涼さあふれるグラールのテノール、ばらキシですっかりおなじみになったモリソンの深みと光沢あるアルト。
清潔な歌声、バッハなどにも相応しいソプラノのランツハマー、そして驚きのブリリアントなバスのストラジャナッツは初めて聴いたが、こちらも幅広いレパートリーを持っているようでまた聴いてみたい。
ともかく、6人の独唱たちが高レベルであったことは、この演奏が世界にも誇れる水準となったことの要因のひとつだろう。
ヨハネやソロが歌うとき、ヴィオッテイはオーケストラを抑えめにしていて、ときに慎重すぎると感じた場面もあるが、その分、プロローグでの抒情的な場面の美さが、東響のソロの皆さんの秀逸さもあって聴き惚れてしまうのでした。
1部へのつなぎのオルガンソロは、サントリーホール全体を響きで満たしてしまい、私は奏者のいないパイプの数々を見上げながら仰ぐようにして聴きました。
封印が次々と解かれて音楽も千変万化する第1部。
この日のためにものすごく練習を重ねたであろう東響コーラスが大活躍の第2の封印開封では、オーケストラも炸裂、絶叫の度合いも興奮さそうものでしたし、それを嘆く女声コーラスとの対比もライブで見て聴くと鮮やか!
次ぐ食糧危機を嘆く女声ふたりの悲しみの二重唱の素晴らしさ、そして戦場でのふたりの男の二重唱の囁き合いに、木琴と弦が付きそう場面に息を飲み、そこにオルガンが入ってふたりは融和する、これらの場面に耳を澄ませ、音源では味わえない感動をここでも味わう。
第5の封印で、主の裁きを待つ合唱を受け、ゼーリヒのパルジファルにおけるグルネマンツのような歌唱があり、やがて地震・天変地異の大変動を迎えるが、うごめきうなりをあげる低弦、低音金管、つんざくようなトランペットに高域木管・・・
すべてが精緻に仕上げられ混濁なくクリアなのはヴィオッテイのいつもの音楽造りで、東響の完璧なアンサンブルが大いに寄与。
壮大なフーガに興奮を覚えつつ、合唱にも明快な指示を与えつつカッチリを指揮を進めるヴィオッテイの手腕にも感服だ。
休憩後の第2部の開始は再びオルガンソロ。
1部の終わりのフーガをそのままに引き継ぎ壮大な伽藍を見せてくれた。
大木さんの一音一音に共感あふれるオルガンの音色、またも天井の方を仰ぎ見るようにして聴きました。
サントルリーとミューザ、両方のオルガンを弾き分けるというのも大変なことかもしれないが、その比較もしてみたかった。。。
ヨハネのこの作品におけるもっとも長大な歌いどころは、ワーグナーのワルキューレのウォータンの2幕の独白かのような内省的かつドラマテックなモノローグに比較できると思う。
ヴィオッテイはここでもオーケストラを抑制しつつ、歌心ある背景をしっかり作っている。
この独白的なか所は、聖書では長大な場面で、幼子の誕生や地上に降り立つ竜・サタンを物語るが、シュミットはかなり端折って書いたと思うので、音楽のリアルティや霊感はやや欠けるように感じてた。
実演でオーケストラの各部の動きを観察しながら聴くと、そのような不満は皆無で、ヴィオッテイの積極的な指揮ぶりも頼もしく感じた。
言葉の明瞭なシュミットの歌唱は疲れることなく、よく通り、何年か前のゲロンティアスでの名唱も思い出した。
4人のソロを挟みつつ、禍いを語り、描きつつ静かに進行する第7のラッパに至るまでのその間の緊迫感と合唱も加わって盛り上がりゆくさまは、ワクワクしたし、ついに壮大なフーガにここでも至り着く、この経過につぶさに立ち会いつんざくようなトランペットの一条の響きで閉じることに鳥肌。
ヨハネの事後の顛末の語りで、最後の結びが近いことの空気感が漂い、ここで主の荘厳なるバスのゼーリヒの3度目の御発声が極めて感動的。
しかしこれでは終わらないのがこの作品。
輝かしい「ハレルヤ」がついに来た。
ヴィオラ、チェロ、ヴァイオリンと上昇音階でもって高上りようなオーケストラの様相を見つつ、合唱団の7度のハレルヤ。
思いのほか淡々と沈着に進行させるヴィオッテイだったが、これがまぁ徐々に、徐々に盛り上げてゆくのがよくわかったし、最後のにはティンパニ3人も加わって輝かしさの極みを作り上げた。涙も出た。
そのあとの原初的ともいえるグレゴリア聖歌風の男声合唱によるアカペラに神妙な場面となり、いよいよ冒頭の回帰となった。
このあたりの終結感がとてもよくできていて、神は奪い、試し、そして救われる、そんな聖書の詩句が思い浮かぶようなこの黙示録につけた音楽の展開に心より納得のできた演奏だった。
万全の布陣でのヴィオッテイ東響の「7つの封印の書」、完璧な演奏でした。
公私ともに嫌なことや試練の連続するワタクシですが、この音楽と演奏にひととき救われました。
ありがとうと言いたいです。
素晴らしかった6人の世界的歌手。
シュミットとゼーリヒは、この作品のスペシャリストでもあります。
オルガンの大木さんもバッハ演奏で秀でた方です、静岡で一度聴いてみたいです。
それと忘れてならない冨平さんが鍛えた合唱の素晴らしさ。
N響での新国合唱団を指揮したのも冨平さんです。
カーテンコールで喝采に応え、分厚いスコアを掲げるヴィオッテイ。
アーノンクールのウィーンフィル盤の演奏会で合唱に参加していたといいます。
合唱作品やオペラへの適性もとてもあるヴィオッテイです。
まだ若いから、この先、どこかでまたこの大作を指揮するでしょうし、何度も指揮をして将来もまた東響で取り上げて欲しいと思います。
来シーズン以降での、声を伴ったプログラムがどうなるか、それも楽しみです。
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コメント
聴きに行けてよかったですね。僕は川崎の方でして、台風25号の接近よる荒天と大雨が予想されたので(実際凄いことになりましたが)、断腸の思いで遠征中止しました(泣)。でも、サントリーのは1週間配信で拝見。ルイージのは来月オンエアだそうだけど、ヴィオッティの指揮をみていて「宗教音楽だ」と実感(オラトリオだから当然だけど)。ルイージ=N響がオペラに寄っているようなので比較が楽しみです。独唱、6人とも凄かったですね。ノットさんのマラ千も凄かったし、「グレ」もそうだったけど、今回も凄い!東響の事務局さんの力も今回の公演に寄与していたことを忘れてはなりませんね。
そして、改めてロレンツォが劇場で育った人であることを確信しました(ルイージ氏、きっと同僚だった息子さんの成長、喜んでいたでしょうね)。
投稿: IANIS | 2026年9月21日 (月) 21時05分
IANISさん、まいどです。
ミューザの日の悪天候、心配してましたが、やはり無念のこととなりましたか・・・・
SNSなどを見ていると、サントルリーよりさらに練度と燃焼度があがったようで、ほんとはニコ生もミューザでやって欲しかったと思います。
私もあらためてニコ響を鑑賞しましが、歌手たちの声は、実際に聴いたホールの方がよくとどいてまして、ことにシュミットのヨハネは素晴らしかったです。
ご指摘のとおり、ノット時代より、東響の歌手・ソリストの人選は素晴らしいですね。
オペラシリーズで築き上げた手腕でもありましょうか。
ライプチヒやミュンヘンで接点のあったであろう父とルイージ、まさか同じ演目で東京競演が起きるとは思ってもなかったでしょうね。
N響でのツーショットも微笑ましかったです。
投稿: yokochan | 2026年9月24日 (木) 10時30分