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2024年11月23日 (土)

ヴェルディ レクイエム 神奈川フィル400回定期 沼尻竜典 指揮

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色づく秋のみなとみらい。

神奈川フィルハーモニーの記念すべき第400回定期公演に行ってまいりました。

久々の土曜の横浜は、かつて始終通っていた頃と、その人の多さと整然と開発が進む都市計画の進行とに驚きました。

ともかく忙しく、せっかく感銘を受けたコンサートですが、blog起こしがなかなかできず、1週間が経過してしまった。

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  神奈川フィルハーモニー 第400回記念公演  

       ヴェルディ レクイエム

      S:田崎 尚美   Ms:中島 郁子
        T:宮里 直樹   Bs:平野 和

  沼尻 竜典 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
         神奈川ハーモニック・クワイア
         クワイアマスター:岸本 大
    ゲスト・コンサートマスター:東 亮汰

       (2024.11.16 @みなとみらいホール)

300回記念公演は、2014年に川瀬健太郎の指揮でマーラー「復活」で、わたくしも聴きました。
さかのぼること、200回は現田茂の指揮で「蝶々夫人」(2003)、100回は佐藤功太郎の指揮で「田園」ほか(1992)、さらに1回目は大木孝雄の指揮で、ペルゴレージのスターバト・マーテル(1970)、このような歴史があります。

合唱を伴う大きな作品が、こうした記念公演にはプログラムに載ることは、世界のオーケストラのならいとなってますが、昨今はマーラーが選ばれることが多いのがトレンドかと思います。
そこでヴェルディのレクイエムを取り上げたことの慧眼。
世界に蔓延する不穏な出来事、日本は一見平和でも、海外では不条理な死が横行しているし、いま我々は常に不安に囲まれ囚われて生きています。
ヴェルディの書いたレクイエムの持つ癒しと優しさの側面、オペラの世界も垣間見せる、そんな誠実な演奏が繰り広げられ、満席の聴衆のひとりひとりに大きな感銘を与えることになったのでした。

プレトークでの沼尻さんのお話しで、このレクイエムのなかに、ヴェルディのオペラの姿を見出すことも楽しみのひとつと言われて、バスの歌にリゴレットのスパラフチレを思い起こすこともできますね・・、とのことで、私もそんな耳でもこの日は聴いてみようと思った次第でもあります。

そんな聴き方のヒントを得て、聴いたヴェルディのレクイエム。
ヴェルディの中期後半から後期のスタイルの時期の作品という位置づけでいくと、レクイエム(1873年)の前が「アイーダ」(1871)で、アイーダは劇場のこけら落としなどの晴れやかな節目に上演されるように、輝かしさとダイナミズムにあふれたオペラだが、それは一面で、登場人物たちの葛藤に切り込んだドラマがメイン、最後は死の場面で静かに終わる。
少し前の「ドン・カルロ」(1867)も原作が優れていることもあるが、グランドオペラの体裁を取りつつも、ここでも登場人物たちの内面に切り込んだヴェルディの円熟の筆致がすばらしく、ソプラノ、メゾ、テノール、バリトン、バスに素晴らしい歌がちりばめられていて、これらの歌手は、そっくりそのまま「レクイエム」のソロを務めることができる。
そして、レクイエムを聴きながら、自分では一番思い起こした作品は、「シモン・ボッカネグラ」で1857年の作品を、1881年に大幅改訂している。
レクイエムのあと「オテロ」(1887年)まで、オペラを書かなかったが、そのかわり「シモン」の改訂を行った。
主人公の死で終わるシモン・ボッカネグラ、そのラストはまるでレクイエムそのもの。
わたしはそんな風に、この日のレクイエムを聴いた。

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素晴らしかった4人のソロのみなさん。
このメンバーであれば、もっと自由に好き放題に歌わせて、オペラティックなレクイエムを描くことも可能だったでしょう。
しかし、沼尻さんの作りだすヴェルディのレクイエムは、ソロもオーケストラも、合唱も、すべて抑制の効いた真摯なる演奏だったので、4人のソロが突出することなく、淡々としたなかに集中力の高い歌唱に徹してました。

なかでも一番良かったと思ったのがメゾの中島さん。
繊細精緻な歌唱で、一音一語が明瞭、耳にも心にもよく届くそのお声は素晴らしい。
この演奏の1週前には、ノット&東響でデュリュフレのレクイエムを歌っていて、行けなかったけれどニコ響で視聴ができました。
 あとバスの平野さんも、驚きの深いお声で、ビジュアル的にもギャウロウを思い起こしてしまった。
田崎さんのソプラノも素敵でしたが、この曲のソロには強すぎるお声に思えて、もう少しリリックな方でもよかったかな、と。
でも、リベラメの熱唱は実に素晴らしく感動的でした。
テノールの宮里さん、ずばり美声でした。やや硬質な声はプッチーニもいいかも。
インジェミスコは聴き惚れました。

「怒りの日」で3度、「リベラメ」で1度、あのの強烈なディエスイレが登場するが、いずれも激しさや絶叫感は少なめで、4回ともに均一に轟くさまが、壮麗さすら感じるものでした。
カラヤンなどは、最後のディエスイレにピークを持っていったりして、聴き手を飽きさせない演出をするが、こたびの演奏では、そんな細工は一切なく、ひたすらヴェルディのスコアに誠実に向き合う着実な演奏で、抒情的な場面をあますことさなく引き出した桂演だったのでした。

ベルカントオペラのようなソプラノとメゾの二重唱「レコルダーレ」は美しい限り、圧巻だったのは4重唱と合唱の「ラクリモーサ」における悲しみも切実さというよりは、慰めを感じ、思わず涙ぐんでしまうほどだった。
若い頃、この作品のFM放送をエアチェックするとき、90分テープを用意すると、ちょうどA面の45分で、このラクリモーサが終わりました。
ほとんどが、すぐさまカセットを入れ替えることで完璧に録音できましたが、そうはならなかった演奏がベルティーニとN響のものでしたね・・・

光彩陸離たる「サンクトゥス」はみなとみらいホールが今回一番輝かしく響いた瞬間だった。
木管と弦のたゆたうようなトレモロに乗った、美しい「ルクス・エテルナ」では、素晴らしい音楽と演奏とに身を委ね、ホールの天井を見上げて音がまるで降ってくるのを感じていた次第。
そして、最後のソプラノを伴った劇的な「リベラ・メ」でした。
音が止んだあとの、ホールの静寂。
この素晴らしいヴェルディのレクイエムの演奏の終わりをかみしめる感動的な瞬間でした。

大規模な合唱団とせず、プロフェッショナルな精鋭で構成された神奈川フィルハーモニック・クワイアの精度の高さも大絶賛しておきたい。
あと、もちろん神奈川フィルは、これまで聴いてきた神奈川フィルの音でした。
そして、その音も若々しくもなった感あり、自分にはまた懐かしいあの頃の美音満載の神奈川フィルでありました。

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急に深まった秋は冬にまっしぐらで、みなといらい地区も秋から冬の装いに。

イルミネーションもいくつか撮りましたが、アドヴェントは死者のためのミサ曲にはそぐいませんので、ここでは貼りませんでした。

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次の神奈川フィル、さらには来シーズンは何を聴こうかと思案中。

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2024年2月24日 (土)

神奈川フィルハーモニー第392回定期演奏会 沼尻竜典指揮

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横浜みなとみらいの夜景。

この写真を撮るのも久しぶり。

目を凝らしてみると、かつてはなかったロープウェイも見えます。

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桜木町から、ランドマークタワーを抜けてのホールへのアプローチも久しぶりで、途中、神奈川フィルのポスターもあり、ますます期待が高まります。

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  グリーグ ピアノ協奏曲 イ短調

    ピアノ・ニュウニュウ

  マーラー 交響曲第7番 ホ短調 「夜の歌」

 沼尻 竜典 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

          コンサートマスター:大江 馨

        (2024.2.17 @みなとみらいホール)

マーラー7番だけで80分、これ一曲でも一夜のコンサートとなる。
1曲目にグリーグの協奏曲が演奏されるという極めて贅沢な美味しいプログラムでした。
プレトークでは、沼尻さんは、亡き小澤さんの思い出をお話しされ、またマーラーでの小澤さんのエピソードなども。

グリーグの協奏曲、はっきり言って、シューマンと並んで大好きです。
でも苦言を言わせていただければ、メインのマーラーとの兼合いでいけば、シューマンか、またはピアニストの徳性からいってリストでもよかったかな。
または、ラフマニノフでやってなかった1番とか・・・

自然を賛美、祖国の自然を歌いこんだグリーグの愛らしい協奏曲と、個人の感情の世界とドイツの自然と人間愛にどっぷり浸かったマーラー、この相いれないふたつの世界を一度にして味わえるという、これまた類まれなるプログラムなのでありました。

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幼い頃のニュウニュウ君の画像でしか認識のなかったが、ホールに颯爽と登場したニュー・ニュウニュウ君は、見事に背が高く、見栄えも抜群の今風の青年になってました。
自信にあふれた物腰は、かの国の芸術家に共通する物腰で、ひとたび鍵盤に向かうと没頭感あふれる演奏を披歴してくれます。
両端楽章でのダイナミックなか所では、文字通りバリバリと弾きまくり見ても聞いても快感呼ぶ演奏。
また、没頭の雰囲気は、音楽にすっかり入り込んで、フレーズのあと弾いた手と腕がそのまま宙を舞うような仕草をするし、へたすりゃ指揮までし兼ねないくらいに入り込んでる。
慎ましい日本人演奏家では絶対に見られないニュウニュウ君のお姿に、やはりかの国のピアニストを思ってしまった。
でも若いながらに、2楽章の抒情の輝きは見事でした。
ことにこの楽章での神奈川フィルの音色の美しさは、コンマスに組長なくとも、オケの特性として、みなとみらいホールの響きと同質化して、ずっと変わらぬものとして味わうことができましたね。

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超大編成の80分が後半戦という、演奏のみなさんも、聴くこちらも、体力と集中力を試されるかのようなプログラム。

この日の満席の聴衆は、その集中力を緊張感とともに途切らすことなく聴きとおしたのだ。
オーケストラと聴き手の幸せな一体感は、かつてずっと聴いてきた神奈川フィルの演奏会、そしてみなとみらいホールの雰囲気ならではとも、久方ぶりに参加した自分にとって懐かしいものでもありました。
音楽に没頭させる、夢中にさせてしまう、マーラーの音楽がこれほどまでに、現代を生きる私たちにとって身近で大切なものになったとも感じました。

かつて、2011年、震災間もない4月に、マーラーチクルスをやっていた神奈川フィル、聖響さんの指揮で聴きました。
そのときは、若々しく素直な演奏で、横へ横へと流れるような流動的な棒さばきでありながら、時期が時期だけに、没頭的でなく、どこか遠くで醒めた目でマーラーを眺めたような感じだった。

そのときの流動的なマーラーとまったく違う、輪郭のはっきりとした明確かつ着実な足取りを感じさせた演奏が、今回の沼尻さんのマーラーだった。
数年前に聴いた、ノットと東響の演奏が、まさになにが起こるかわからない緊張感とライブ感にあふれた万華鏡のようなマーラーともまったく違う。
オペラ指揮に長けた沼尻さんならでは、全体の見通しのなかに、5つの楽章の特徴を鮮やかに描きわけ、最後の明るいエンディングですべてを解き放ってしまうような解放感を与えてくれた。
きっちりと振り分ける指揮姿も、後ろからみていて安心感もあり、オケへの指示も、さすがのオペラ指揮者を思わせる的確・明快な雰囲気でした。

テナーホルンの朗々たる響きで見事に決まった1楽章は、そのあとのゾクゾクするような7番の交響曲の一番カッコいいスタートシーンで、もうワタクシはこの演奏に夢中になりましたよ。
抒情的な第2主題では神奈フィルストリングスの美しさも堪能。
この主題と元気な第1主題とがからみあう、めくるめくような展開に、楽員さんみなさんをきょろきょろみながらチョー楽しい気分の私。

坂東さんの見事なホルンで始まる2楽章、コル・レーニョあり、カウベルあり、ティンパニの合いの手あり、哀愁と悲哀、そしてドイツの森の怪しさもあり、いろんなものが顔を出してはひっこむこの夜曲、楽しく拝聴し、オケがいろんなことやるのを見るのも楽しかったし。

7番で一番苦手な、影の存在3楽章。
音源だけだと、いつも捉えどころなく出ては消えで、いつの間にか終わってしまう楽章だけれど、視覚を伴いコンサートだと、楽しさも倍増。
弦の皆さんは、いろんな奏法を要求されるし、ほんと大変だな、マーラーさんも罪なお人だな、とか思いながら鑑賞。
ボヘミヤやドイツの森は、こんな風に深く怪しいのかなと思わせる演奏。

大好きな4楽章の夜曲。
以前から書いてますが、若い頃、明日からのブルーマンデーに備えて、日曜のアンニュイな気分を紛らわせるために、寝る前のナイトキャップとマーラー7番4楽章が定番だった。
望郷の思いと懐かしさ感じるこの楽章、ちょっとゾッとするような怪しい顔もかいまみせるが、そのあたりをムーディに聴かせるのでなく、リアルに、克明に聴かせてくれたこの日の演奏だった、
大江コンマスも素敵だったし、親子でマンドリンとギターで参加の青山さん、お二人の息のあった演奏もこの楽章の緩やかさを引き立ててました。
2011年も、お父さんの登場だったかな・・・?

急転直下の楽天的な5楽章。
ガンガン行くし、もう楽しい~って気分がいやでも盛り上がるし、よく言うワーグナーのマイスタージンガーの晴れやかさすら感じましたよ。
ハ調はやっぱり気分がいいねぇ~
なんども変転し繰り返される主題に、いろんな楽器がまとわりつく様は、下手な指揮とオケだときっとぐちゃぐちゃになってしまうだろう。
ここでも沼尻さんの打点の明快な指揮が、聴き手にも、それ以上に安心感を抱けるものです。
しかし、この楽章だけでも、泣いたり笑ったり、怒ったりしたような様々な表情をするマーラーの音楽は、ほんとうに面白い。
エンディングに向かうにつれ、わくわくドキドキが止まらなくなり、オケの皆さんを眩しい思いで拝見。
そして来ましたよ、すべてを吹き飛ばすような晴れやかなエンディングが、ジャーンと見事に決まりましたよ!
ブラボー攻撃に、わたしくも一声参加させていただきましたよ。

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終演後は、早めに帰らなくてはならなかったので、勝手に応援団の懐かしい仲間との大反省会には参加せず、遠来の音楽仲間の友人と桜木町駅近でサクっと1杯。
マーラー7番が大好きな方と、マニアックな話しをしつつ楽しい時間を過ごしました。
そのとき、お話しが出たのは、神奈川フィル聴衆も指揮者へのカーテンコールをしたらどうか、ということ。
たしかに、東響ではノット監督ばかりでなく、来演の指揮者に対してもとてもよかったときは、指揮者を呼び出すような熱心な拍手が継続しますね。
この日も、もっと頑張って粘りの拍手をすればよかったww

「何でもアリ」のマーラーの音楽が、いまこうして完全に受入れられる世の中になった。
やがて私の時代が来ると予見したマーラーさん。
人同士がリアルに交わらなくなくても生きていけるようになってしまった現代社会。
それでいいのだろうかと自問せざるを得ないが、その現代人にマーラーの音楽は、自己耽溺的に響くとともに、人間の姿と自然のあり様を見るのだろうか。

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2023年9月11日 (月)

神奈川フィルハーモニー 平塚公演

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昨年オープンした、ひらしん平塚文化芸術ホール。

手前は平塚小学校跡の脇に大樹を誇る樟樹(クスノキ)。

明治28年に芽吹いたものとされます。
平塚は、関東大震災と大空襲と重なる被災がありましたが、立派な雄姿に感心してホールを背景に1枚撮りました。

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  ホルスト 「セントポール」組曲

  ラヴェル  ボレロ

  朝岡 真木子 「なぎさ」

  中田 喜直  「歌をください」

  中田 喜直  「夏の思い出」

  平井 康三郎 「うぬぼれ鏡」

     S:岩崎 由紀子

  ムソルグスキー(ラヴェル編) 「展覧会の絵」

  オッフェンバック 「天国と地獄」ギャロップ

    太田 弦 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

          コンサートマスター:依田 真宣

        (2023.9.9 @ひらしん平塚文化芸術ホール)

ボレロと展覧会という名曲に加えて、惑星だけじゃないホルストの瀟洒な弦楽組曲、そして地元平塚のレジェンド歌手、岩崎さんをむかえてオーケストラ編曲伴奏で歌曲。
クラシック初心者から、ある程度の聴き手までを満足させるプログラムでした。

ヴォーン・ウィリアムズとともに英国の民謡を収集し、愛したホルストの面目躍如たる4編からなる弦楽のための組曲。
神奈フィルの弦楽セクションの美しさが光る演奏で、最後にグリースリーヴスの音色が浮かび上がってくるところは、実にステキでした。

もしかしたら、小澤&新日以来、何十年ぶりに聴くボレロの生演奏。
指揮棒なしで指揮をする若い太田くん。
昔聴いた40歳の小澤さんの指揮は、左手だけでずっと指揮をして、弦が奏で始めたら指揮棒を持った右手で振り始めました。
ともかく全身が音楽をまさにあらわしたような指揮ぶりでした。
もちろん太田くんには、そんな芸風はまだまだはるかに及びませんが、よく頑張りました。
欲をいえば、慎重にすぎたか、展覧会もそうだけど、少しハメをはずしてもいいのかなとも思いましたね。
でも、わたくしは、おなじみの神奈川フィルの皆さんのソロ、ベテランも若い方も、みんなうまくて、それぞれのソロを堪能しました。
とくに今月ご卒業の石井さんのファゴット、味わい深く、しっかりと耳に焼き付けました。

平塚出身の岩崎さん、プロフィール拝見しましたら、私が育ったエリアでもっとも憧れの高校のご出身で、そこから一念発起、郷土を愛するソプラノ歌手になられたとのこと。
二期会の会員でもあり、平塚周辺での活動もかなり活発だった由で、もしかしたら私もどこかで聴いていたかもしれません。
そんな風に、どこか懐かしい、優しい歌声の岩崎さん。
平塚の海を歌った地元産の美しい「なぎさ」、思わず切実な内容に歌唱だった「歌をください」、オペレッタ風、レハールを思わせるような軽やかな「うぬぼれ鏡」。
タイプの異なる3曲を、しっかりと歌い分け、聴き手の耳に優しく届けてくださった。
失礼ながら年齢を感じさせない素敵な歌声でした。
間にストリングスだけで、「夏の思い出」、夏の終わりに後ろ髪ひかれるような雰囲気に。

実は、生演奏で初めて聴く「展覧会の絵」。
いわゆる「タコミミ」名曲なので、リラックスして聴けました。
親しみすぎたメロディばかりなので、思わす、太田くんを差し置いて指が動いてしまうのを必死に押さえましたね(笑)
ここでも堅実・無難な演奏に徹した太田くん。
これまで、ことに「歌」が入るとあまり気にならなかったホールの鳴りすぎる響き。
このホール、前回は2階席で平塚フィルを聴いたときはブレンド感がよく、気にならなかったが、1階席中ほどで聴いた今回は、プロオケが全開したときの威力によることもさることながら、すべての音が前方と上方から降り注いでくる感じで、音が響きに埋没してしまう。
そのかわり、ソロのシーンは実によく聴こえるし、虫メガネで拡大したようにリアルに聴こえる。
一方で、トウッティになるとガーーっと鳴ってしまう。
指揮台は一番苦戦したかもしれませんね。
でも、大オーケストラの迫力を楽しむには充分満足で、多くの聴き手が興奮したこと間違いなし。
平尾さんのシンバルもバッチリ決まった!
展覧会終結と同時に、後ろにいらしたご婦人が、ふぁーーすっごい!と言ってらっしゃった。

思わず、笑顔こぼれるアンコールも、この演奏会のトリとして正解。

あれこれなしに、楽しいのひとことに尽きる演奏会でした。

終演後、ホールをあとにした楽員さんの何人かにご挨拶。
自分にとって懐かしい皆さんに、平塚の地でお会いできたのも嬉しい1日でした。

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これまた久方ぶりにお会いできた、神奈フィル応援メンバーとも再開し、平塚の地の魚で一献。

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鉄火巻は大好物で、最高のおつまみにもなります。

楽しかったーー。

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2023年6月25日 (日)

R・シュトラウス 「サロメ」  神奈川フィル演奏会

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音楽監督、沼尻竜典と神奈川フィルハーモニーとのドラマテック・シリーズ第1弾「サロメ」。

みなとみいらいでの神奈川フィルは、実に7年ぶり。

桜木町からの道のりは、変わったようでいて、変わってない。
ロープウェイが出来たことぐらいかもですが、やはり観光客主体に人はとても多い。

昨年11月に世界1のサロメ、グリゴリアンが歌うノット&東響演奏会を聴き、今年4月は、「平和の日」日本初演を観劇し、さらに5月には、世界最高峰のエレクトラ、ガーキーの歌うエレクトラをこれまたノット&東響で聴いた。
そして、これらのシュトラウスサウンドが、まだ耳に残るなか、神奈川フィルのサロメ。
シュトラウス好きとして、こんな贅沢ないですね。

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  R・シュトラウス 楽劇「サロメ」

   サロメ:田崎 尚美      
   ヘロデ:高橋 淳
   ヘロディアス:谷口 睦美   
   ヨカナーン:大沼 徹
   ナラボート:清水 徹太郎 ヘロディアスの小姓:山下 裕賀
     ユダヤ人:小堀 勇介      ユダヤ人:新海 康仁
   ユダヤ人:山本 康寛  ユダヤ人:澤武 紀行
   ユダヤ人:加藤 宏隆   カッパドキア人:大山 大輔
   ナザレ人:大山 大輔    ナザレ人:大川 信之      
   兵士  :大塚 博章    兵士  :斉木 建司
   奴隷  :松下 奈美子

  沼尻 竜典 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

    首席ソロ・コンサートマスター:石田 泰尚
         コンサートマスター:大江 馨

     (2023.6.23 @みなとみらいホール)

    ※救世観音菩薩 九千房 政光

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ご覧のように、オーケストラを舞台の奥にぎっしりと引き詰め、その前のスペースで歌手たちが歌い演じるセミステージ上演。
P席と舞台袖の左右の座席も空席に。
ヨカナーンは、P席の左手を井戸の中に想定して、そこで歌うから音像が遠くから響くことで効果は出ていた。
字幕もP席に据えられているので全席から見通しがよい。
ステージ照明は間奏や7つのベールの踊りのシーン以外は、暗めに落とされ、左右からのブルーや赤、黄色のカラーで場面の状況に合わせて変化させていたほか、パイプオルガンのあたりには、丸いスポットライトもときに当てられたりして、雰囲気がとてもよろしく、舞台上演でなくてもかなりの効果を上げられたのではないかと思います。

今後予定されているドラマテック・シリーズはこうした設定が基本になるのだろう。
すべての客席から、前面の歌手エリアがよく見えるようになることを併せて願います。

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①この日、もっとも素晴らしかったのはオーケストラだと思う。
神奈フィルをずっと聴いてきて、途中、移動や仕事の不芳などもあり遠ざかった時期があり、本拠地での演奏体験は久方ぶりだった。
お馴染みの楽員さんたちも多数、そして若い楽員さんたちも多数。
ほんとうに巧いオーケストラになったものだと、今日ほど実感したことはありません。
華奢すぎる感のあったかつての神奈フィルは、それが個性で、横浜の街を体現したかのような洒落たオーケストラだった。
現田さんとシュナイト師によって培われた、美音極まりない音色はずっとそのままに、オペラの人、沼尻さんの就任によって、本来もってた神奈フィルの自発的な開放的な歌心あるサウンドが導き出されたと思う。

細部まで緻密に書かれたシュトラウスのスコアは、物語の進行とともに、微細に反応しつつ、リアルに描きつくしてやまない。
ヘロデがサロメの気を引こうと、宝石やクジャクなどの希少な動物をあげると提案すると、音楽はまるで宝石さながら、美しい動物の様子さながらのサウンドに一変する。
私の好きな、サロメとヨカナーンのシーンで、サロメが欲求を募らせていくシーンでも、音楽は禍々しさとヨカナーンの高貴さが交錯。
ガリラヤにいるイエスを予見させるヨカナーンの言葉は、清涼かつ神聖な音楽に一変してしまう。
それでも、サロメはさらなる欲望を口走り、ヨカナーンは強烈な最後通告を行う。
このあたりの音楽の変転と強烈さ、演奏する側は、その急転直下の描き分けを心情的な理解とともに描き分けなくてはならないと思う。
 沼尻さん率いる神奈川フィルは、このあたりがまったく見事で、目もくらむばかりの進行に感銘を覚えたものだ。

このようなシーンに代表されるように、シュトラウスの万華鏡のようなスコアを手中に収め、指揮をした沼尻さんと、それを完璧に再現した神奈川フィルは、ふたたび言うが素晴らしかった。

②日本人でサロメを上演するなら最強のメンバー
田崎さんのサロメは、剛毅さよりさ、繊細な歌いまわしで、シュトラウス自身が「16歳の少女の姿とイゾルデの声のその両方を要求する方が間違っている」と、自分に皮肉を述べたくらいに矛盾に満ちたサロメ役を、無理せず女性らしさを前面に打ち立てた、われわれ日本人にとって等身大的な「サロメ」を歌ってみせた感じに思った。
そんななかでも、数回にわたる首のおねだりの歌いまわしの変化は見事で、ラストの強烈な要求は完璧に決まった感じだ!
長大なモノローグも美しい歌唱で、このシーンでは恋するサロメの純なる心情吐露なので、沼尻指揮する極美で抑制されたオーケストラを背景に、煌めくような歌声だった。

田崎さんとともに、先月のエレクトラで待女役のひとりだった谷口さん。
わたしの好きな歌手のおひとりで、ソロアルバムもかつて本blogで取り上げてます。
アリアドネ、カプリッチョなど、おもにシュトラス諸役で彼女のオペラ出演を聴いてきましたが、こんかいのヘロディアスも硬質でキリリとした彼女の声がばっちりはまりました!ステキでした!
谷口さんのCDに、神奈フィルのクラリネット奏者の斎藤さんが出ておりますのも嬉しい発見でした。→過去記事

福井 敬さんの代役で急遽出演した高橋さんは、ヘロデを持ち役にしているし、キャラクターテノールとしての役柄で聴いた経験も多い歌手。
役柄になりきったような明快な歌唱と、その所作はベテランならではで、舞台が引き締まりましたね!

P席から歌った大沼さんのヨカナーンは、高貴な雰囲気がその声とともに相応しかったが、井戸から出されて、舞台前面でサロメと対峙するとなると、声がこちらの耳には届きにくかった。
また井戸に召喚されると、またよく通る。輝かしいバリトンのお声なのに、ホールによっては難しいものだ。

気の毒なナラボート役の清水さん、恋する小姓役の山下さん、よいです!
ほかのお馴染みの名前やお顔のそろった二期会の層の厚さにも感謝です。

③この1か月の間に、ミューザとみなとみらいで、ふたつのシュトラウスオペラを聴いた。
どちらも響きのいいホール。
その響きが混ぜ物なくストレートに耳に届く「ミューザ」。
その響きそのものが音楽と溶け合ってしまうかのような「みなといらい」。
どちらも長らく聴いてきて好きなホールだけれども、いまは「ミューザ」の方が好きかも。
でも「みなといらい」にはいろんな思い出もあり、脳内であの響きが再生可能なところも愛おしい。

ノットの次のシュトラスは「ばらの騎士」のはず。
神奈川フィルは、次は・・・。
勝手に予想、フィガロ、オランダ人、トスカ、夕鶴・・・、な~んてね。

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終演後は西の空が美しく染まってました。

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久しぶりだったので、パシャリと1枚。

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野毛に出向いてひとり居酒屋をやるつもりだったけど、いい時間だったし、もうそんな若さもないので、サロメで乾いた喉は、お家に帰ってから潤しました。

【サロメ過去記事】

「サロメ 聴きまくり・観まくり」

「グリゴリアン&ノット、東響」

「二期会 コンヴィチュニー演出 2011」

「ドホナーニ指揮 CD」

「ラインスドルフ指揮 CD」

「新国立劇場 エヴァーディンク演出 2008」

「ショルティ指揮 CD」

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2023年3月23日 (木)

神奈川フィル @小田原三の丸ホール 

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毎度おなじみ小田原城。

自分の育った神奈川西部エリアに帰ってきてから1年。

小田原と平塚には始終行くようになりましたが、鶴首していたのがこのふたつの街に出来た新しいホールでのコンサート。

平塚のホールは先月に行きました。

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昨年オープンした小田原三の丸ホールでは、待望の神奈川フィルの演奏会♪

お堀のすぐそばの、まさに三の丸が位置した場所にできたホール。

長年、小田原の文化の中心だった市民会館が閉館し、その跡を継いだのがこちらのホール。

市民会館は何度かその舞台にも立ったこともあり、寂しいものですが、この美しい新ホールには今回まったく心奪われました。

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2階のホワイエから望めるお城と背景は丹沢連峰、この左手奥には箱根の山々も見えます。

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落ち着いた雰囲気のホール、先日聴いた平塚ひらしんホールよりも天井高で、音の広がりのよさを予見できる造り。

そして実際に聴いてみて、素晴らしい音響に感嘆。

フォルテからピアニシモまですべてがよく聴こえ、どんな強音でも楽器ひとつひとつが聴こえる分離の良さと、併せて音のブレンド感も豊か。
ずっと浸っていたい安心で気持ちのいい響きと聴こえの良さでしたね。
サントリーホールはいいけど、響き過ぎる。
実にちょうどいい三の丸ホールで、県立音楽堂を新しくしたような音だと思いました。
次は声やピアノも聴いてみないものです。

Kanaphil-odawara

  ブラームス    ハンガリー舞曲第1番、第5番

  ドヴォルザーク  チェロ協奏曲 ロ短調

  マーク・サマー  Jukie-O~ジュリー・オー
                     (アンコール)
     チェロ:宮田 大

  チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調

    飯森 範親 指揮  神奈川フィルハーモニー管弦楽団

        (2023.3.19 @小田原三の丸ホール)

ブラームス、ドヴォルザーク、チャイコフスキーという同時期に活躍した民族色の強い作曲家たち。
しかも昨年のホールオープニングに来演した都響のオールブラームス・プログラムからの流れを意識して飯森さんが選んだものとありました。

それで付け足しとも思われたハンガリー舞曲の意味がわかった。
オーケストラを乗らせ、整える意味、観客も乗せるという意味では短い舞曲はよかったかも。
5番のラストではパウゼに溜めをつくって、飯森さん、観客を振りむいて、どう?っていう仕草をしましてリラックスムードも作り上げましたね。

前半の目玉、宮田大さんのドヴォコン。
ほんとは、エルガーが聴きたかったと思いつつ、実に久方ぶりのドヴォルザーク。
まさにメロディーメーカーだなと楽しみつつ聴きました。
1楽章はソロとオケがしっくりくるまで見守りましたが、楽譜なしの暗譜の飯森さんの指揮がなかなか的確でありつつも、ソロとの齟齬もややあったかな、と思いました。
でもですね、2楽章の牧歌的かつ詩的な演奏はもう絶品。
神奈川フィルの木管のソロの素晴らしさにみちびかれ、チェロソロが入ってくるところなんざ感涙ものでした。
この楽章でのソロとオケとの幸せな交歓の様子、聴いて、見て、本当に幸せな気分になりましたね。
終楽章も好調のまま、なんやら自然に囲まれた小田原の街の緩やかさと、温厚な機微をその音楽と演奏にと感じることができたのでした。
宮田さんの豊かで繊細なチェロの音色は神奈川フィルにぴったり。

アンコールがすごくて、ドヴォルザークを食ってしまったかも。
ジャズチェロというジャンルがあるかどうか知らないが、まさにそんな感じで、ファンキーさリズム、そして歌にあふれた佳曲で、ピチカート、胴たたきも駆使した技巧的な作品。
めちゃくちゃよかった、大拍手でしたよ。

後半は、神奈川フィルも出演のドラマ「リバーサルオーケストラ」でみなさんにすっかりお馴染みのチャイコフスキー5番。
ドラマではこの作品がちょこっとアレンジされて、運命的なあの動機と2楽章のロマンテックな旋律が随所で流れてました。
最終回、オーケストラの存続を決めるコンサートでは、まさにこの交響曲が勝負曲となり、晴れやかなラストシーンとなっておりました。
わたしの席のお隣には小学校高学年ぐらいの少女を伴ったお母さまがいらして、後半が始まるときに少女はお母さんに、「いよいよチャイ5だね」とささやいてました。
こうして、クラシック音楽も広がりを見せていくことに、音楽を聴く前から感動しちゃいました。

この曲が自分も小学生以来大好きで、もう半世紀以上はいろんな演奏で聴いてきましたが、神奈川フィルでの実演はこれが3度目で一番多い。
その神奈川フィルの演奏会も仕事のこともあり、生活環境の変化もありで、実に7年ぶりとなりました。
舞台に並ぶ神奈川フィルのメンバーのみなさん、半分以上は懐かしく、知悉の方々。
そんな神奈フィルメンバーが奏でるチャイ5は、ドラマでも田中圭演じる指揮者、常葉朝陽の言葉によれば、チャイ5はみんなに聴かせどころがある交響曲。
ほんとその通りで、スコアを見ると、どの楽器も、第1も第2もみんなまんべんなく活躍するし、めちゃくちゃ難しいし音符の数もはんぱなく多い作品。
それぞれのソロや聴かせどころでは、〇〇さん、〇〇ちゃん、頑張れとドキドキしながら聴く始末。
プロのオケだからそんな思いは不要だけれども、自分にとって神奈川フィルは、そんな思いでずっと聴いていたオーケストラだった。
聖響さんの時代のときの公益社団法人への法人格見直し時における存続危機に一喜一憂しながら応援したオーケストラ。

7年もご無沙汰してしまった反省と後悔も、このチャイ5の素晴らしい演奏で気持ちの高ぶりをとどめようがない状況になりました。
冒頭のあの動機を奏でる管楽の演奏から、こりゃまずい、涙腺が・・となりました。
オーソドックスな飯森さんの指揮にみちびかれ、観客もすぐにチャイ5に入り込みました。
アタッカで続いた2楽章、若いホルン首席の方、マイルドでブリリアント、完璧でした、心配した自分がバカでした。
めくるめくような甘味さと、感傷の交錯、ロシア系の濃厚さとは真反対にある神奈川フィルの煌めきのサウンドは、かつてずっと聴いていた音とまったく同じ。
石田組長はいなくても、小田原で聴いてるこの音は神奈川フィルサウンドそのものだった。
もうここで泣いちゃうと思いつつ聴いてた。
休止を置いて、まろやかな3楽章。
終楽章もアタッカで続けて、さて来ましたと会場の雰囲気、おっという感じになったのもドラマの効果でしょうか。
堂々と、でも軽やかに、しなやかにすすむ。
指揮の飯森さんも、ときにオケに任せつつ、ときにドライブをかけつつ、すっかりのりのり。
お馴染みの楽員さんたちが、隣同士で聴き合い、確認しあいつつ、体を動かしつつ、そしてなによりも楽しそうに演奏してる。
もうめちゃ嬉しい、テンションめちゃあがり。
そして、ラスト、コーダで金管の堂々たる高らかな咆哮、指揮者は指揮を止めてオケに任せ、その開放的なサウンドが三の丸ホールの隅々に響き渡る。
それを五感のずべてで感じるかのような喜びたるや!
込みあがるような感動と興奮を味わいつつ終演。

声掛けはお控えくださいとの開演前のアナウンスに、ブラボーは飛ばせませんでした。
もう、いいんじゃね、と思いますがね。



飯森さんの合図で、撮影タイム30秒。
しかし、みなさんあわてて起動しても、なかなか間に合いませんねぇ(笑)
こんどは起動タイム1分、撮影タイム30秒でお願いね。

Odawara-5_20230323135901

こちらは1年前の城址公園の桜。

2022年4月8日の撮影ですが、今年はその頃にはもう散ってしまうでしょう。

桜の花は儚いですが、音楽はずっと変わらず、わたしたちの傍らにいてくれます。

Kanaphil-odawara-1

神奈川フィル、また聴きに行こう。

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2018年6月10日 (日)

「グリーンウェーブコンサート 20th」

Greenwave2018

初夏の恒例、今年もグリーンウェーブコンサートに行ってまいりました。

20年の節目。

保土ヶ谷の高台、仏向町にあるハンズゴルフクラブで行われる、神奈川フィルのヴァイオリン奏者、森園ゆりさんのコンサート。
相方のピアニストは、こちらもすっかりおなじみになりました、佐藤裕子さん。

梅雨どきに行われるけれど、毎回、晴れ率が高く、ことさら今年は30度越えの暑い一日となりました。
でも、緑に囲まれ、ときおり、ティーショットの心地よい音が漏れ聞こえる、それが音楽の邪魔にならない、そんな爽やかなひと時が、毎年の楽しみ。

Greenwave20th

  1.シューベルト         「アベ・マリア」

  2.ベートーヴェン   ヴァイオリンソナタ第5番「春」  第1楽章

  3.ヴィエニャフスキ    創作主題による華麗な変奏曲

  4.ショパン         マズルカ op.33-4

  5.パガニーニ          「ラ・カンパネラ」

  6.シンディング     プレスト

  7.モリコーネ       ニューシネマパラダイス

  8.ヘス          ラヴェンダーの咲く庭で

  9.ブラームス      ハンガリー舞曲第5番

  9.サラサーテ       ツィゴイネルワイゼン

 10.森園康香       花の香り~アンコール

         ヴァイオリン:森園ゆり

         ピアノ    :佐藤裕子

           (2018.6.9 @ハンズゴルフクラブ)

何度目かの曲もあり、初の曲もあり、そんななかで、ご自身も解説されてましたが、毎回入れる、自分としての勝負曲、そして聴き手にも、聴く覚悟を迫る作品、それが3曲目のヴィエニャフスキ。
攻めの姿勢で、まさに華麗なテクニックも披歴もありましたが、この曲の陰りある部分もしっとりと聴かせてくれました。

毎回、よく練られたプログラム。
ドイツ初期ロマン派の爽やかさで始まり、ついで、ヴィエニャフスキとショパンのピアノ作品(佐藤さんの安定感あるピアノ、素敵でした)でポーランドの憂愁。

イタリアと北欧の、風土異なる作曲家ふたり。
ことにシンディングは、これまで何度も聴いてきたけれど、段々とシンプルに音楽だけがそこに鳴っているような感じになってきたように思うのは私だけでしょうか。

シネマ系の作品ふたつ。
映画好きでもあるワタクシの心に触れるステキな選曲。
望郷さそうニューシネマP、そして、大好きなラヴェンダーの咲く庭では、こちらも切ない主人公の思いが、美しく切々と奏でられました。
この2曲が、この日の一番のわたくしにとっても聴きもの。

最後は、エキゾティックなハンガリーもので、お客様も大喜び♪

楽しいコンサートのお開きのお決まりは、ドイツで活躍中の娘さん、康香さんのこの日のための新曲。
チャーミングだけれど、音の進行など、なかなかと思わせる小品でした。

オーケストラの一員としての存在と、こうしてソロコンサートを行うソリストとしての森園さん。
断続的に聴かせていただき、今年は、ことに内省的な音楽の掘り下げを感じました。
わたしのような凡人には、表現者たる芸術家が、とてもうらやましく思ったりもします。
心情や感情を、音楽にその想いを載せて発信できるのですから。

Greemwave2018

絵面はよくありませんが、こちらもお楽しみの軽食。

毎回、おいしゅうございます。

梅雨のひと休み、初夏の1日を楽しみましたよ。

過去記事

 「2011年 第13回」

 「2012年 第14回

 「2013年 第15回」

 「2014年 第16回」

 「2015年 第17回」


 「2017年 第19回」

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2017年6月12日 (月)

「グリーンウェーブコンサート 19th」

Grennwave2017_a

梅雨に入ったけど、いいお天気続き、しかも、この日は夏日で、やたらと暑かった。

今年も、聴いてきました、グリーンウェーブコンサート。

神奈川フィルのヴァイオリン奏者、森園ゆりさん、そして相方の佐藤裕子さんのコンビによる毎年の初夏のコンサート。
今年で、19回目を迎えました。

私は、今回が、昨年のお休みを挟んで、6回目。
神奈川フィル応援のメンバーたちも、毎回顔ぶれを変えつつ参加の恒例行事となってます。

緑あふれる保土ヶ谷の街、その高台にある仏向町。
そこにある名門ゴルフ練習場のレストランホールが舞台。

光がたっぷり降り注ぐホールは、天井が高く、響きも豊か、そして、時おり聴こえるゴルフのショットの音。
今年もいい感じでしたよ。
さらに、木を中心に、改造が行われたそうで、確かに、音響が変わった。
 拡散しがちな響きだったのが、同じ豊かさながら、音がストレートに届きつつ、広がり方が音楽的になった。
Greenwave2017


  1.クライスラー         「美しきロスマリン」

  2.モーツァルト  ピアノとヴァイオリンのためのソナタ K305 第1楽章

  3.ミルシュテイン       「パガニーニアーナ」

  4.メンデルスゾーン   無言歌集~「デュエット」「紡ぎ歌」

  5.エルガー          「愛の挨拶」

  6.ヴィエニヤフスキ  ファウストの主題による幻想曲

  7.バッハ        G線上のアリア

  8.シンディング    プレスト

  9.サラサーテ     ツィゴイネルワイゼン

 10.森園康香      山のワルツ~アンコール

         ヴァイオリン:森園ゆり

         ピアノ    :佐藤裕子

           (2017.6.10 @ハンズゴルフクラブ)


コンサートには、毎年、テーマがありまして、今年は「初夏の日差しに包まれて」。

有名曲も多く配され、しかも明るめの色彩の曲ばかり、そして、少し傾きつつある眩しい日差し、まさに、テーマどおり。

ご本人も、この曲のイメージがまさにそう、とおっしゃっていたモーツァルト。
爽快でキリリとしたモーツァルト、いい感じでしたね。

大ヴァイオリニストのパガニーニアーナ、昔レコードで持っていたから、とても懐かしく聴きましたが、ソロヴァイオリンの技巧あふれる大作をしっかりと、そして思い切りよく演奏されました。

ほんわかとしたメンデルスゾーンは、佐藤さんのピアノソロ。
こうして、いろんな作曲家を次々に聴いてくると、メンデルスゾーンの温厚で優しい音楽がとても気持ちよくて、そしてロマンあふれるものだとわかります。さすがの選曲に演奏。

あと、気に入ったのが、このコンサート一番の大曲で、ご本人からの、大曲注意、ご覚悟を、とひとことあったヴィエニヤフスキのファウスト・ラプソディ。
グノーの歌劇「ファウスト」のアリアやテーマが散りばめられていて、次々にあらわれる旋律と、それらの展開がとても面白かった。
そして、メフィストフェレスのアリアのあと、思わず拍手も入っちゃった(笑)

あと個人的に、しんみり聴いたのがバッハ。
抑え気味に、じっくりと味わい豊かに演奏してましたね。

毎年プログラムに乗るシンディングの曲、今年はプレスト!
そして名曲ツィゴイネルワイゼンで、聞き手はみんな、わくわくドキドキに。
大きな拍手が巻き起こりました。
わたしのまわりの地元のご婦人方も、とても楽しそうに、そして目を輝かせて聴かれてましたよ。

拍手に応えて、これもまた恒例のアンコールは、ドイツでヴァイオリンを学んで、着々と成果をあげてらっしゃる娘さん、康香さんの作品。
今年で7曲目の初演は、可愛い「山のワルツ」、おしゃれで粋なエンディングにほっこり♪

楽しいコンサート、それと毎度、チャリティ的に企画開催してくださる、ハンズゴルフクラブにもありがとうございました。
Greenwave_2017_b
 
コンサート前は、素敵な軽食をテラスで。

軽食ながら、毎度、本格的なお味。

今年は、クロワッサンのローストビーフサンドが美味でございましたよ♡   

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2017年4月13日 (木)

松尾茉莉 ヴァイオリン・リサイタル2017

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毎年、桜と同じ時期に満開のきれいな椿。

奥には、ぼんやりと、これまた満開の桜。

寒くて、春は一進一退の今年、先の週末は、雨ばかりの菜種梅雨。

ゆっくりと開いて、長く楽しめたのかもしれない今年の桜です。

そして、雨模様のその日曜日、久方ぶりのコンサートへ。

 実は、その前日は、神奈川フィルの、今シーズンオープニング定期公演で、その演目も、サロネンの「フォーリン・ボディーズ」という曲と、マーラーの1番という、ともに大規模編成のまばゆいコンサートで、大盛況だったそうな。

土曜が主体となった神奈川フィルだけど、わが方は、仕事が不芳だったり、その土曜も開けられなかったりすることが多くなり、ここ1年以上、聴けなくなってしまった。

この葛藤たるやいかばかりか。

そんな喝を癒してくれるかのようなコンサート。
しかも日曜だったので、行けました。

神奈川フィルのヴァイオリン奏者であります、松尾茉莉さん(旧姓・平井さん)のリサイタルに行ってきました。

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 松尾茉莉 ヴァイオリン・リサイタル 2017

   シューベルト ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第1番 ニ長調 D384

   モーツァルト ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 変ロ長調 K378

       サラサーテ ツィゴイネルワイゼン

   フランク   ヴァイオリン・ソナタ イ長調

            アンコール曲

   岩田匡史  「Mari」

   モンティ   「チャールダッシュ」~お楽しみアレンジ付き

         ヴァイオリン:松尾 茉莉

         ピアノ    :加納 裕生野

                            (2017.4.9 @鶴見区文化センター サルビアホール)


前半が、ウィーンの古典派の流れ、後半は、近代ロマン派のそれも民族派的な作品。
よきコントラストと、有名曲も配置した素敵なプログラムです。

フランクは、「ヴァイオリン・ソナタ」だけど、前半2曲は、「ヴァイオリンとピアノ」とのタイトルに。
それも、順序が違う。

そう、モーツァルトの時代は、ピアノが主役的な立場で、ヴァイオリンは随伴者的であったのが、「ヴァイオリン・ソナタ」のありかた。
ベートーヴェンも、そんなスタイルを踏襲したが、中期の「クロイツェル・ソナタ」あたりから、ヴァイオリンに明らかに主軸が移り、より劇的になり、完全に「ヴァイオリン・ソナタ」になった。

でも、ベートーヴェンのあとのシューベルトは、初期のソナチネでは、モーツァルトを思わせる、ピアノ中心スタイルに逆戻り。
でも、後年のシューベルトは、ちゃんとした(というのも変な言い方だけど)、ヴァイオリン・ソナタに行きついている。
しかし、そんなシューベルトのソナチネやソナタには、シューベルトならではの、「歌」の世界があふれていて、ピアノも、ヴァイオリンも、簡潔だけれど、麗しい歌が振り当てられている。

そんなシューベルトを、快活に、そして伸びやかに演奏したお二人。
冒頭から、息のぴったりとあった演奏を危なげなくスタートさせましたね。
聴いてて、とても気持ちのいいシューベルトでした。

そして、シューベルトからモーツァルトへ。
同じ「歌」でも、この時期のモーツァルトには、ギャラントな華やぎがある。
そして、可愛い。
あと、ふっと見せる短調の哀愁が、さりげなく散りばめられてる。
 柔らかなピアノがステキな加納さんに、天真爛漫の茉莉ちゃんのヴァイオリン。
いいモーツァルト、聴かせてもらった。

 後半は、いきなり「ツィゴイネルワイゼン」。
どこもかしこも有名。
でも、面と向かって聴くのは、ほんとに久しぶり。
哀愁とジプシー風な濃厚サウンドと超絶技巧。
バリバリと、でも心をこめて弾きまくってくれました。

最後は、大好きなフランクのソナタ。
この曲との出会いは、中学生の頃、クリスティアン・フェラスのEMIのテスト盤で、解説もなにもなく、曲のこともまったくわからず、聴きまくってた。
終楽章と激しい2楽章ばかりを中心に。
でも、歳を経ると、冒頭の楽章と、幻想的な3楽章が大いに気に入り、その交響曲と併せて、フランクの渋さと晦渋さを楽しめるようになりました。

さて、この日のお二人は。
MCで、とても好きな曲、とお話されてた茉莉ちゃん。
これまでの3曲と違う、落ち着きと、内省的な表現に心をさいて演奏している様子が、その音からも、充分にうかがうことができました。
色合いのそれぞれ異なる4つの楽章が、これほど身近に、眼前で、響きのいいホールでもって聴けることの幸せ。
 お二人とも、母になり、生活も内面も、一歩踏み出し、そして守り、愛し愛されるものを持った充足感。
ちょっと飛躍した想いかもしれませんが、人はこうして変化し成長してくんだなぁ、なんて風に思いながら聴いてました。
 自分を表現できる手段をお持ちの音楽家の皆さんが、羨ましくも思ったりした一日です。

アンコールは、オリジナル曲をほんわかと、それから、この日の4曲を、バラエティ豊かに取込み、鳥さんの小笛までも愛嬌こめて披露してくれた「チャールダッシュ」
エンディングは、フランクに回帰して、喝采のもとに、ステキなコンサートは終了しました。

鶴見は、いい居酒屋がいっぱい。

一杯ひっかけて帰りましたよ。

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ポテチの突き刺さった魅惑のポテサラと、紫蘇ジュース割りに、鳥わさ
   

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2015年11月28日 (土)

神奈川フィルハーモニー第314回定期演奏会  サッシャ・ゲッツェル指揮

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横浜、みなとみらい地区は、今年も華やかなイルミネーションに彩どられる季節となりました。

そして、それに相応しい、ステキで煌びやかなコルンゴルト・サウンドを堪能できました。

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   ブラームス     ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op83

          ピアノ:ゲルハルト・オピッツ

   コルンゴルト    シンフォニエッタ op5

   J・シュトラウス   ポルカ「雷鳴と電光」 ~ アンコール

     サッシャ・ゲッツェル指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

                   (2015.11.27 @みなとみらいホール)


今シーズン、もっとも楽しみにしていた演奏会のひとつ。

そう、ワタクシは、コルンゴルト・ファンなのであります。

忙しいせいもありますが、この1ヶ月ぐらい、コルンゴルトの音楽以外は聴いてません。

ですから、オピッツという日本贔屓の世界的大家をソリストに迎えるという豪華なブラームスのことは、あんまり眼中になかったという不届きものです・・・・。

ブラームスの2番の協奏曲。
この大曲は、レコード時代からすり減るほどに聴いてきたけれど、演奏会で聴くと、何故か、いつも虚ろに聴いてしまい、途中から覚醒するということが多い。
実は、今回もそうなってしまった。
おまけに、オーケストラがどうもいつもの冴えがなかったように思いましたし、ちょっとした乱れもありました。
大好きな神奈川フィルに対し、ちょっと辛口の評価です。

そんな流れに、ピリッと引き締めが入ったのが、3楽章のチェロ・ソロでした。
ピアノに隠れてしまって、そのお姿が見えませんが、その優しいけれど、しっかりした語り口のチェロの音色は、山本さんと、すぐにわかります。
そう、ここから、わたくしも音楽に集中できたし、演奏もキリッと締ったような思いがしました。
実は、以前聴いた、ポリーニとアバド&ルツェルンの同曲の演奏会でも、前半は冴えず、しかも、あのポリーニがミスを連発するなどでしたが、3楽章でのブルネロのチェロがすべてを救い、その後は迫真の名演となりました。
そもそも、この曲が難しい存在なのでしょうか・・・。

それと、ゲッツェルさんの指揮が、ちょっと飛ばしすぎた場面もあるかもです。
このコンビの適性は、コルンゴルトや、マーラー、シュトラウスあたりにあるのかもしれません。

オーケストラのことが先行しましたが、しかし、オピッツさんのピアノは、抜群の安定感がありました。
まったくぶれがなく、滑らかかつ力強く、でも音には透明感すら漂う無為の域に達した凄さを感じました。
丸みと、強固さ、ともにブラームスに相応しい音色。
お姿どおりのピアノでした。
そして、いつも思うのは、サンタさんみたいだし、シュークリームのオジさんみたいだと(笑)

 さて、後半のコルンゴルト。

神奈川フィル応援のFBページに書きましたが、そこから一部転載します。

 神奈川フィルでコルンゴルトを聴くのは、これで4回目。

   2014年10月 ヴァイオリン協奏曲 (1945)

   2015年 1月 チェロ協奏曲     (1946)

       〃    「シュトラウシアーナ」 (1953)

   2015年11月 シンフォニエッタ   (1913)

ヴァイオリン協奏曲以外は、ゲッツェルさんの指揮。
作曲年代をみてわかるとおり、これまでの3曲は、いずれも、ナチスの台頭により、コルンゴルトがヨーロッパを去り、アメリカに渡り、映画音楽の世界で活躍し、戦後ふたたび、本格クラシックのジャンルの作品に回帰した時期のもの。
 そして、それより遡ること3~40年。

今回の「シンフォニエッタ」は、神童と呼ばれ、ウィーンの寵児としてもてはやされた時期、コルンゴルト16歳のときの音楽なのです。

このように、横断的にコルンゴルトの音楽を1年間で楽しめたことに、まず感謝したいです。

複数の音源で、徹底的に聴きこんで挑んだだけあって、大好きなコルンゴルトに思いきり浸ることができました。

冒頭の「陽気な心のモティーフ」が、4つの楽章それぞれに、いろいろと姿・表情を変えてあらわれるのが、これほど明快にわかったのは、やはりライブで、演奏者を見ながら聴くことによる恩恵でありました。
キラキラのコルンゴルトの音楽を、神奈フィルの奏者の皆さんが、楽しそうに、そして気持ちよく演奏しているのもよくわかりました。
 そしてゲッツェルさんも、この曲を完璧に把握して、いつもながら縦横無尽の指揮ぶり。
それはもう、音楽が楽しくて仕方がない、といった具合でした。
オーケストラから、もっともっとと、音楽をどんどん引き出す、そんな積極果敢の指揮。
この積極的音楽がゲッツェルさんの魅力です。
それが、われわれ聴衆にズバズバと伝わるわけです。

優しく羽毛のような軽やかさも楽しめた第1楽章。
強靱な響きと、文字通り夢見るような中間部の対比をダイナミックに描いた第2楽章。
そして、神奈川フィルならではの繊細さと、音色の美しさを堪能できた魅惑の第3楽章。
この楽章は、わたくし、大好きなんです。
イングリッシュホルンが素敵だったし、第1ヴァイオリンがボーイングを変えて弾く場面も興味深く拝見しました。
 不安と狂喜の交差する、ちょっとややこしい終楽章も、ゲッツェルさんは、しっかりと整理しながら、大いなるクライマックスを築き、華麗なるエンディングとなりました。
軽くひと声、ブラボ進呈しました。

屈託ない若いコルンゴルトの音楽ですが、後年は辛酸をなめ、郷愁をにじませ、その音楽は、ほろ苦さを加えてゆくのでした。

今宵は、甘味で、とろけるような、ウィーンのお菓子をたっぷりといただきました。

ゲッツェル&神奈川フィル、最高っ

アンコールは、ウィーンっ子大爆発。

自分的には、コルンゴルトのあとに、ウィーンものを持ってくるんだったら、もうちょっとおとなしめのポルカやマズルカを所望したかったけど、聴衆は沸きにに沸きましたね

縦横無尽・上下左右の軽やかなゲッツェルさんの指揮姿は、かのカルロス・クライバーを彷彿とさせました。

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2015年10月11日 (日)

神奈川フィルハーモニー第313回定期演奏会  川瀬賢太郎指揮

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暗く立ちこめる曇空の土曜日。

これから聴く、ショスタコーヴィチの音楽を先取りしたような気分で、みなとみらいホールに、この日は、横浜駅から歩いてみました。

またこの日は、横浜ジャズプロムナードという恒例催しが行われていて、街中で、ジャズが流れてましたよ。

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  ショスタコーヴィチ  交響詩「十月革命」 op131

               ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 op77

        Vn:三浦 文彰

  シベリウス       交響曲第5番 変ホ長調 op82

     川瀬 賢太郎 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

                       (2015.10.10 みなとみらいホール)


ショスタコーヴィチ(1906~1975)没後40年、シベリウス(1865~1957)生誕150年。
ともにアニヴァーサリー作曲家ですが、同時に、ロシア→ソビエト連邦という巨大な国の元、または影響下にあったふたりなのです。
 ショスタコーヴィチは、巧みにその本音を隠しながらときにシニカルに、ときにあきれかえるほど露骨に、体制におもねり、そして批判を繰り返した。
そして、シベリウスは、圧政に対する、民族の誇りと祖国愛を歌い上げた。

そんな二人の音楽の対比を楽しめた素晴らしい演奏会でした。

①「十月革命」、交響曲でいえば、13番と14番の間にあるけれど、その時期のシリアスで内面的な作風とはうってかわって、あっけらかんとした、虚しささえ覚えるプロパガンダチックな音楽。
そんな15分間の音楽をCDではなく、ライブで聴くと、オーケストラの皆さんが、それこそ必死こいて演奏されているのを、そして川瀬さんの颯爽とした指揮ぶりを、拝見してるだけで、妙に興奮してしまいました。
神戸さんのティンパニの炸裂と、平尾さんのスネアの小見味よさを味わえました。
カッコいいし、ダイナミックなので、ちょっと爽快だけど、しかしまぁ、なんてヘンテコな曲でしょうか・・・・面白かったけど。
 思えば、10月革命にまつわる他の作品、2番と12番の交響曲とともに、曲作りは面白いけれど、内容的には、どうも虚無感がつきまとうように感じますね。

②チャイコフスキー、ベートーヴェンに次いで、3度目の三浦さんのヴァイオリン。
いつものとおり、ひがみじゃないけど、前髪が気になる(笑)
 それはそうと、こちらは、かなりシリアスな音楽で、交響曲でいえば、9番と10番の間。
まともに体制側から批判をされた時期、こっそり引っ込めてしまったこの因縁の作品を生で聴くのは初めて。
 夜想曲と題された夢想と沈滞を繰り返す第1楽章から、三浦さんの繊細で透明感あるヴァイオリンは、冴え渡ってます。
つぐ、スケルツォも鮮やかに決まり、オケとの掛け合いも楽しく、聴くわたくしもノリノリでしたよ。
 そして、古風で荘厳なたたずまいすら感じるパッサカリア楽章。
オケの背景も深刻極まりないものです。
 長大・超絶技巧のカデンツァでの、三浦さん。
この若者の集中力と気迫に圧倒されました。
ホールは静まり返り、一挺のヴァイオリンに聴衆の耳は釘付けとなりました。
 そして休むことなく突入するブルレスケには大興奮。
ショスタコの常套手段的な、無窮動ミュージックに完全に飲みこまれてしまいますが、それでも冷静かつ沈着な三浦さんの演奏姿には恐ろしいものがありました。
川瀬さんの指揮ぶりにも熱がこもってきて、怒涛のクライマックスを築き、さすがに前髪掻き乱れつつの三浦ヴァイオリンと息もつかせぬ壮絶エンディングとあいないりました
 ワタクシ、思わず、ブラボーしちゃいましたよ。

相変わらず、ショスタコを聴いたあとは、一体何だったんだろ、的な狐につままれた思いが去就するのですが、ともあれ、三浦さんのヴァイオリンは凄かった!

拍手に応えて、何度も登場するなか、三浦さんは手ぶら、川瀬さんはヴァイオリンを手に、ちゃっかり喝采を受ける茶目っ気のある指揮者に、会場は笑いに包まれました。

③休憩後は、シベリウス。
その田園的・牧歌的な雰囲気は、大好きです。
冒頭のホルン。前半のショスタコとうってかわったその音色と、音楽の雰囲気に、耳が浄化されるような思いです。
救いのないショスタコの聴後感が払拭されました。

あぁ、やっぱりシベリウスはいいわ~

透明感のある神奈川フィルならではの弦と、柔らかな木管、輝かしい金管、それが見事に溶け合ったシベリウス。
北欧の響き、ことに、かの地のオーケストラから感じる、突き抜けるような冷凛とした音とは対局にあるような柔らかなシベリウスに思いました。
日本人が演奏し、日本人が聴く、身近なシベリウス。
そして、神奈川フィルの聴き手にとってはハマのシベリウスでした。
 川瀬さんは、ことにオーケストラを抑え、各ソロが突出することも控えているように感じます。
最後に持ってくる曲としては、華やかな結末に欠けるこの5番を盛りあげるのは、なかなかに難しいこと。
もちろん音楽が創成され、自然豊かな野山を感じさせるようにクレッシェンドしていく第1楽章の鮮やかなエンディングには興奮しました。
そして、6つの途切れ途切れの和音で、最高のクライマックス築くのに、抑えに抑えた川瀬さんの音楽造りは、とても効果的です。
じわじわくるシベリウスの醍醐味を味わわせてくれたように思います。
 そして、間に挟まれた、それこそ田園風の第2楽章は、優しく可愛く、そして楽しい聴きものでした。

来シーズンは、1番と7番を、本場の大御所、親日家のオッコ・カムで聴ける神奈川フィル。
楽しみ極まりなし。

今回も、アフターコンサートは、個人的にお休みして、雨がポツポツし始めたMM21地区を抜けて横浜駅に向かいました。

Bayquater

ハマのシベリウスのあとのベイサイド。なんのこっちゃ。

さぁ、次回はコルンゴルトですよ

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