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2014年10月 6日 (月)

マーラー 交響曲第8番 現田茂夫指揮 県民ホールリニューアル&開館40周年記念

Mahler8

満員御礼でました。

台風が近づき、あいにくの雨模様でしたが、ホールは、開始前から熱気に包まれ、感動のエンディングでは、ブラボーの嵐!

神奈川県民ホールの耐震補強を中心とする大規模リニューアル工事の完成お披露目と、開館40周年を記念するコンサート。

1975年の開館オープニングコンサートは、たしかFMで放送されたような記憶がありますが、N響で何が演奏されたかは覚えてません。
第9だったかしら?
でも、その年の、BBC交響楽団をブーレーズが指揮したものは覚えております。
それと、同じ年のムラヴィンスキーとレニングラードフィル。
飛行機嫌いのムラヴィンスキーは、船でやってくるので、横浜は真っ先に演奏会場に選ばれました。

船といえば、外来オペラも大掛かりな装置を伴うものは、横浜から入りました。
ワーグナーの「リング」日本初演の地も、横浜のこのホール。
さらに、オープン年の目玉は、マリア・カラスが舞台に復活、という世界的な話題をさらった「トスカ」上演。
でも、カラスは降りてしまい、カバリエが代役をつとめたことも鮮烈な思い出です。

数々の歴史を刻む県民ホールの新たな出発に、マーラーの8番が選ばれるのも、時代の流れ、かつては考えられないことで、しかも、地元神奈川フィルですから、これも開館時には思いもしなかったことです。

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  マーラー 交響曲第8番 「千人の交響曲」

    S:罪深き女:横山 恵子       S:贖罪の女:並河 寿美
    S:栄光の聖母:管 英三子    A:サマリアの女:竹本 節子
    A:エジプトのマリア:小野 和歌子   T: マリア崇拝の博士:水口 聡
    Br:法悦の神父:宮本 益光     B:瞑想の神父:ジョン・ハオ

   現田 茂夫 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

              県民ホール特別合唱団
              湘南市民コール
              洋光台男性合唱団
              神奈川県立湘南高等学校合唱部
              神奈川県立大和西高等学校合唱部
              神奈川県立蛯名高等学校合唱部
              小田原少年少女合唱隊

         合唱指導:岩本 達明、松平 敬
         言語指導:三ヶ尻 正
         児童合唱指導:桑原 妙子


                     (2014.10.5 @神奈川県民ホール)

演奏中、グロスで区切って、おおざっぱに数えました。
オーケストラは、108。
合唱は、700を切る。
都合、約800人とみた演奏者が、せり出した舞台に、たっぷり、ところ狭しと並ぶ光景は、壮観と呼ぶに相応しい光景でした。

3度目の実演の千人。
これまでは、文化会館と藤沢市民会館(現田さん指揮)でしたから、破格に大きいホールでの千人は、これが初のギッシリぶり。

そして、今回の席は、3階席にしてみました。
このホールの1階、2階は、上階のかぶりが大きいのと、デットさが際立つように、いつも感じていましたから。
最上階は、意外と、音がすべて届いて、バランスもよくて、残響も適度にやってくるから。
昨年の「ワルキューレ」で痛感しました。

 指揮棒を持たない現田さん。
いつものように若々しい登場で、さっと降り上げて、オルガンの第一声を伴って、「Veni , creator spiritus!」と歓喜を伴う爆発的な開始。
いきなり、ガツンときました。

さて、ここで、今回は、ふたつの面から、この夜の「千人交響曲」について書いてみたいと思います。

 まず、ちょっと辛口的観点から。

メモリアル的・祝祭的な意味合いの強いこの手の演奏会は、企画の段階から、壮大な構想、今回でいえば、合唱団を公募し、さらに県内のアマチュアを交えた600~700人の大合唱団を仕立て上げるという快挙も伴いました。
 それに伴うリスクは、精度の低下と、巨大な音の塊の咆哮になりかねないということ。
オーケストラは、拮抗できるけれど、独唱者はオケと合唱に挟まれて埋没してしまった。

マーラーの8番は、巨大な作品だけれども、その本質は、緻密で繊細な、愛がもたらす救済のドラマです。
第1部は、ガンガン行けばいいけれど、第2部は、細部に渡るまでよく聴こえなくてはいけない細やかな音楽です。
もう少し合唱団の数は、刈り込んで、明瞭な響きを築いて欲しかった。


あと、声の問題は微妙で、席によって届いた歌手と、そうでない歌手がいると思います。
横山さん、並河さんは、どんなときにもビンビンにきました。
でも、宮本さんと、ハオさんは、オケに埋没。
水口さんも、スタミナ配分、きっとたいへんだったでしょうが、厳しかった。
前に聴いた、「グレの歌」でもそうでした。
でも、この同じホールで聴いた「トゥーランドット」は完璧だった。
難しいものです。

それと、第1部と第2部との間の休憩20分。

当初は、通し演奏と告知されていながらの休憩。
事情は、推察するしかありませんが、仮にも交響曲と銘打つ作品で、4つの楽章の区分けもできる音楽です。
1楽章が終わって休憩はいけませんよ。
もしかしたら、多くの聴衆が初めて聴くかもしれないマーラーのこの曲。
連続して演奏した方が、ホール内の集中力も、音楽の流れも持続したはず。
メモリアルのコンサートだから、きっとそうだし、わたくしの周りにも、そんな感じの方々がちらほら。
なんたって、さんざん館内放送で禁止してるのに、写真撮りまくりの、しかもスマホですから、その電源はどうしたんだって話でしょ。
まったく制止しなかった、ホールの関係者もおかしい。
2階で響いた別働隊バンダと、栄光の聖母の声に、ほぼ立ち上がりかけてきょろきょろする方も・・・。
 少しはお勉強してからのぞんで欲しい、そんなめったにやらない大曲なんですよ!

すいません、文句を先に書きました。

続いて、激賛コーナー  

多くの合唱団のみなさま、きっと、生涯忘れえぬ思いでと経験をされたと思います。
客席から観て、聴いていて、ともかく、うらやましくて、眩しかった。
渾身の「Veni・・・」と、「Komm」そして、「神秘の合唱」いただきました。
 独語指導の三ヶ尻さんの、賜物もあって、子音もクッキリ。
ウムラウトを身に付けたカーテンコールの三ヶ尻さんの思いが、しっかり成果に出ていたと思います。
(問題は、数とホールのキャパなんです)

そして、なんたって、現田&神奈川フィルの紡ぎ出す、音色は、なんでこんなにブリリアントで、美しいの?
なんの小細工も施さない現田さんの指揮は、天然・自然のままに感じられます。
だけど、ほかのオーケストラでもそうですが、出てくる音色が、華美とはいわないまでも、楽しい美しさを持ってるんですよ。
生き生きとした音とリズム、思いきりの歌は、それぞれ、こちら側聴き手の心をくすぐります。
アマオケを振っても、そんな音が出てくるんだから、お互い知りつくした神奈川フィルとの間では、お互いがどう思おうと、自然に、美音が満載の垂れ流しとなってしまう。
 その音の瞬きに、いつしか身も心も任せきってしまう自分を、現田さんの演奏に、いつも見つけるのです。
ラフマニノフの2番、ワーグナーのリングに、チャイ5に・・・・・・
 きっとオケも歌手も、合唱も、知らない間に乗せられちゃってるんだと思います。
オペラ指揮者の本領を見る思いです。
とりわけ、第2部の第3部。
第1ヴァイオリンが、えもいわれぬ美しい旋律を静かに奏で始める時、現田さんは、第1ヴァイオリンの方へと完全に体を向けて、ここぞとばかりに、歌うこと要求。
そして、それに応えた神奈フィル・ヴァイオリン群の美しさといったらない。
ここで、ワタクシは涙腺決壊。
 続く、独唱女声ソロたちの贖罪合戦でも、天上の響きとも言える涼やかな音色に、わが耳もとろけてしまいそう。

で、その神奈川フィルは、今宵も完璧。
とりわけソロの多かった、石田コンマスは、初外しを聴いたものの、そんなの関係ない。
石田サマ以外のなにものでもない音色は、つねに、神奈フィルのサウンドを先頭きって牽引してました。
 麗しの木管、ことに大見さんのピッコロは最高!
明るいサウンドの金管、神戸さんがいないのは寂しかったですが、平尾さんの多彩な演奏ぶりが楽しめた、いぇーーい。

神奈フィルファンとして、どうしてもオケばかりに目がいってしまいます。

でも、大掛かりな合唱の、マスとしての威力は、ことに第1楽章では炸裂してました。
耳を圧するという言葉が相応しく、逆にまた、そこにこそ、この曲の実演での演奏の難しさがあるといえるのでしょうね。

いつかまた、川瀬さんが、もっと年を成して、みなとみらいホールで、きりっと、小股の切れあがるような千人を聴かせてくれること、夢見ておきましょう。

甘辛交えた、今回の感想。

最後は、県民ホールのお祝いプラス、神奈川フィルのマーラー交響曲完全演奏記念の祝宴です。
聖響さんの金字塔、残した8番を現田さんが完璧に指揮。
神奈川フィルに、マーラー演奏の足跡と自信をしっかり根付かせた聖響さんに感謝し、オペラの大家、現田さんが補完したマーラー・チクルスは、日本のオーケストラ界でも誇っていい実績です。
全部はやっても、10番全曲版をやってないオーケストラがありますからね。

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強い雨もものともせず、興奮に火照った頬を雨に濡らしつつ、中華街へGo!

Dsc07824

小澤征爾さんが、ウィーン時代、帰国すると必ず寄った店「福楼」さんへ。

有名人も多数の、台湾料理系です。

Ebichiri

ともかく、うまい。メンバー全員、言葉もなかった絶品海老マヨ。

Kuushinsai Mabo

空芯菜に、マーボー。

ともかくうまい。

Letasu

そして、自分的に、これも最高にうまかった、中華レタス巻き。

彩りも鮮やか。

あとまだまだ天心もふくめて、たくさんいただきました。

神奈川フィルを応援する醍醐味は、こんな風にたくさんありまぁす。

次の終末は、「アラベラ」だよ

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2014年5月15日 (木)

神奈川フィル定期演奏会 予行演習

Ninomiya

モッコウバラと、フジの花。

いい取り合わせの色あいでしょう。

実家とお隣のお庭から。

5月ならではの光景です。

  神奈川フィルハーモニー第299回定期演奏会

 
 團 伊玖磨     交響組曲「アラビア紀行」

 モーツァルト    ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ長調 K218

                Vn:崎谷 直人

 ドヴォルザーク  交響曲第7番 ニ短調

  現田 茂夫 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

          2014年5月16日(金) 19:00 みなとみらいホール


神奈川フィルの5月の定期は、このところ、いつも名誉指揮者の現田さん。

いつもながらに、面白いプログラムを出してきます。

1曲目は、まったくの未知作品、團伊玖磨の「アラビア紀行」という、オリエンタリズム満載の予感の曲。
この曲について書かれたものもなく、初見で挑みます。
團伊玖磨は、今年、生誕90年。
そして、演奏会の16日が、13回目の命日の前日にあたります。
 團さんを、桂冠芸術顧問として冠する、ゆかり深い神奈川フィルと、多くの作品を手掛け、得意とする現田さん。
どんな曲に、演奏になりますか、楽しみです。

2曲目は、モーツァルトの協奏曲を、4月から正式就任した第1コンサートマスターの崎谷さんのソロで。
ソリストに、自ら結成したウェールズ四重奏団にと、豊富な経歴を持つ崎谷さんのしなやかで、緻密な演奏が、明るく朗らかななモーツァルトをどう聴かせてくれますか。

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今日は、パールマンとレヴァイン、そしてウィーンフィルの明るく伸びやかな演奏を聴いてみました。
グリュミオーでもよかったけれど、このコンビのチャーミングな演奏の方が、親密感があって明日に向けて、相応しいと思ったから。
 冒頭の「セレナータ・ノットゥルナのような軍隊風の元気のいい出だしの雰囲気は、ほんのいっとき。
あとは、明るく優美、華麗さもまじえて、心浮き立つような音楽。

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ドヴォルザークの7番は、8番や9番に隠れてしまいがちだけれど、こちらも、メロディアスで、魅力たっぷりの名曲にございます。

ロンドンのフィルハーモニー協会からの委嘱作で、ブラームスの3番を聴いたあとに、奮発して意気込んで書いただけに、すみずみまで、充実しております。
ブラームス的ということは決してなくて、ボヘミアの香りと風光が、そこここに立ち昇るのを感じます。

特に、わたくしは、抒情的でほのぼのとした第2楽章が大好きであります。
これまで、バルビローリセルの演奏を記事にしております。

今日は、ウィーンフィルつながりで、チョン・ミュンフン盤を。
ハツラツとしていて、リズムの刻みもよい、ミュンフンの指揮は、ウィーンフィルからマイルドな音色とともに、キレの良い音の響きも引き出しました。
最近、あまり聴かなくなっちゃったけれど、90年代が一番よかったような・・・・。

現田さんと、旧知の神奈川フィルは、きっと素敵なドヴォルザークサウンドを聴かせてくれると確信してます!

ちなみに、6月は定期演奏会300回。
マーラー「復活」キターーッです。

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2013年5月25日 (土)

神奈川フィルハーモニー第290回定期演奏会 現田茂夫指揮

Minatomirai1

今日はこんなところから覗いて1枚。

夏至に向かってますます日が長くなります。

そして朝もやってくるのは早かった(?)

Kanapfill201305

  ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲

  バッハ      無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番
                ~サラバンド~

        Vn:三浦 文彰

  ヴェルディ   「アイーダ」序曲  「シチリア島の晩鐘」序曲

            「運命の力」序曲  「ナブッコ」序曲

            「ラ・トラヴィアータ」前奏曲

            「アイーダ」凱旋行進曲とバレエ音楽

    現田 茂夫 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

              (2013.5.24 @みなとみらいホール)


音楽を聴き楽しむうえで呼吸のよさ、ということがこれほどに大事で、聴く側も、おそらく演奏する側にも、それは解放感と安心感をあたえてくれるものなのだな・・・・、というようなことを思ってみた、そんな夕べの演奏会。

ベルリンフィルに前音楽監督アバドが毎年5月に戻ってくるように、神奈川フィル定期には、この月、現田茂夫さんが帰ってきます。
一昨年はチャイコフスキーの5番、去年はワーグナーのリング、そして今年はヴェルディ、という具合に、わたくし的に大好物ばかりを取り上げてくださる。

カラッとした5月らしい陽気のなかで聴く高潔で力強いヴェルディの音楽は、きっとみんなを元気にしてしまうことだろう。

しかし、その前にベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。
この大作は、かつてよりどうも苦手で、CDも1枚しかもってない。
何が苦手か、それもよくわからない。
本来は優しく美しい旋律にあふれた協奏曲であるものが、ヴァイオリン協奏曲の王様みたいなレッテルを貼られ、大家による堂々たる演奏が理想みたいなイメージも自分的に勝手にできあがってしまい、敬遠しがちなのだ。

20歳の青年、三浦クンのチャイコフスキーを神奈フィルで2年前に聴いたときは、曲が曲だけれど、ヴィトオーソ的な側面を打ち出し、顔色ひとつかえずにクールに弾きまくる印象。アンコールのパガニーニも口あんぐりの超絶ぶりだった。

ところが、今回、見た目の落ち着きぶりも増して、率直に音楽を見つめ、内省的な捉え方をも試みているような演奏ぶりだったのです。
この姿勢もまた20歳にしては大成しすぎているかもしれませんが、出てくる音楽は磨き抜かれていて、どこまでも美しく、夾雑物の一切ないピュアなものに感じられました。
ことに2楽章の静やかな美しさは、筆舌に尽くしがたいものでした。
現田さんも、ここでは左手を静かにはじくようにして指揮していて、オーケストラも最高に心のこもったピチカートによる背景を作り出してました。
1楽章も、3楽章も、ベートーヴェンの優美で優しい音色を感じさせるもので、それはまた若いフレッシュな感性も伴っておりました。

アンコールがバッハの無伴奏の静謐な世界であったことも、前回のパガニーニを選択したこととも大違いなところに、三浦君の進化ぶりがうかがえるものでした。
この人、次にまた聴く機会があれば、またさらなる変化があるかも。
小柄な彼の肩を抱くようにして讃えた現田さんの優しい姿も好ましいものでした。

後半は、いよいよ、ヴェルディ。
ほんとに、アイーダは序曲版をやるのだろうか。
前奏曲の間違いではないのか?
疑問を解消するために、楽団に電話して問合せましたところ、シンフォニアをやります、とのご返事。
そうかほんとにやるんだ。
音源すら少ないのに、演奏会でやること事態がたいへん珍しい序曲バージョン。
アイーダのカイロ初演後、ミラノでイタリア初演をする際に大規模は序曲を用意したヴェルディ。しかし、リハーサルで聴いてみて、本編オペラとの不釣り合いを感じて、引っ込めてしまった経緯があるいわくつきの作品。
ライトモティーフを多用したものだから、当時の口さがない評論家からは、ワーグナーの影響と言われ、まったく面白くなかったヴェルディ。
劇中の登場人物や事象のモティーフを絡み合わせるようにして作り上げたこの序曲。
少しばかり、とってつけたような印象も与えかねないけれど、凱旋の場のようなスペクタクル感はなく、相反する感情や想いのぶつかり合いをそのまま序曲にしたような感じ。
聴衆の側が、なんだろ?的な感じで、乗ってこなかった空気はありましたが、現田&神奈川フィルは誠実・着実な演奏ぶりでした。
 そうそう、今回はゲストコンマス、崎谷直人さん。
まだ若い方ですが、ミュンヘン国際音楽コンクール四重奏部門入賞ほか、かなりの実績をお持ちのようです。
石田コンマスとは、見た目も音色もがらりと違いますが、しっかり神奈川フィルに溶け込んでます。
まして指揮が現田さんだから、まったく問題なし。

この日は、指揮者とオケの一体感は、目でも耳でもとても気持ちよく感じることができました。存続なった神奈川フィルの、それこそ本来の姿と音、それがそのあともヴェルディの心わきあがる音楽に聴いてとれました。

山本・門脇ダブル豪華首席のチェロ軍団が奏でる麗しい歌、また歌の「シチリアの晩鐘」では、ヴェルディ・クレッシェンドが見事。
威圧的に響くことのない運命の和音、弦の刻みが心震わせ、響きが舞い上がるのを感じた「運命の力」。
「行け想いよ金色も翼に・・・」が、かくも晴れやかに、神々しく歌われるとは。そしてキレのいいダイナミズムも満喫の「ナブッコ」。
前奏曲だけなのだから、実はもっともっと歌わせてもよかったかもしれない、「椿姫(トラヴィアータ)」。
オルガンの鎮座する正面席に左右陣取った6人のアイーダ・トランペットが輝かしく咆哮した「アイーダ」。弾みまくりのバレエ音楽に酔い、最後はこの日オケもバンダも最高位の爆発を見せて華々しくコンサートは幕となりした。

やったぜ、イェーーイ。
ヴェルディッシモ
神奈川フィル最高

ということで、元気と景気のいい序曲ばかりをずらっと演奏しつくしたオーケストラの皆さん、さぞかし大変だったでしょうね。
そして、いつくるかと見守り続けた、現田さんの背中の羽根(汗のにじみ出るさま)。
序曲後半あたりから、これもまたお約束。

それと、神奈川フィル監修の名曲案内本が、ついに完成。
会場で先行販売され、多くの方々の手に渡ったようです。
わたくしも当然購入。

Minatomirai3

今宵の、アフターコンサートは、コンサートの余韻の感興とともに、この本の企画・取材・執筆をされた勝手に応援団のお一人をまじえて、出版記念で乾杯。
さらに楽団からブルーダル基金のご担当Nさんもまじえて、存続決定で乾杯。

Minatomirai2

こんな美酒は久しぶりでしたよ。

Minatomirai4

場所を変えて、もっと乾杯。

気が付いたら、朝でした。

夜明けのひと気のない横浜の街、こんな機会はないと思って、散策し写真もたくさん撮って歩くことなんと2時間。われながら、ばかですねぇ。
朝から酔ってるし、覚めちゃうし。

でも朝までほんとに楽しい神奈川フィルの1日でした。

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2012年5月26日 (土)

神奈川フィルハーモニー 第281回定期演奏会 現田茂夫指揮

Minatomirai20120525

薄曇り、薄暮のみなとみらい、6時41分。

コンサート開始まで、あと19分。

もっとも楽しみにしていた神奈川フィルのワーグナーですよ。

そして、コンサート終了後、応援メンバーの皆さんに語った開口一番。

「もう、なんも言えねぇ

Kanaphill201205

     リスト 交響詩「レ・プレリュード」

          ピアノ協奏曲第1番

         Pf:後藤 正孝

    ワーグナー 「ニーベルングの指環」抜粋

    現田 茂夫指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

          (2012.05.25@みなとみらいホール)


日本に、いや、世界にまたとないユニークなワーグナー。

ばか言うな、と言われそうですが、ワーグナー狂となって40年のワタクシがそう言うんですから、信じて下さい。
もっともっと多くの方に聴いて欲しかった。

>現田さんの、外向的で華やかかつ歌心にあふれたワーグナーが楽しみです<

1ヶ月前の記事で予告したとおりでした。

重厚長大、威圧的、難解・・・、といったワーグナーのイメージとは真逆の軽快できらびやかで明るくわかりやすい、明快なワーグナー。

 ①「ラインの黄金」より「ヴァルハラ城への神々の入場」

 ②「ワルキューレ」より「ワルキューレの騎行」

 ③   〃        「魔の炎の音楽」

 ④「ジークフリート」より「森のささやき」

 ⑤「神々の黄昏」より「葬送行進曲」

 ⑥   〃       「ブリュンヒルデの自己犠牲」

あっという間に終わってしまった。
すっかり、自分の血肉と化した感のある「リング」。
歌抜きリングは、車で聴いたりするときは、ワタクシは、フローにウォータンにローゲ、ハーゲンになってまるでカラオケのように歌いまくって運転する変なオジサンです。

コンサートで、そんなことやったら摘み出されてしまいますがね、今回はホント歌いたくなるような気持ちのいい演奏。
そんな呼吸感と歌心あふれる現田さんの指揮は、見ていてもとても自然で流麗。
リングの後半あたりから、トレードマークのようになってしまった、背中の汗。
左右の点から徐々に広がって羽のようになって、ワーグナーの音楽とともに飛翔してしまうかのようでした。
 
  オーケストラも乗ってます。
神奈川フィルの本来の麗しき姿を見た思い。
明るい美音と曇りなく透き通った神奈フィルの魅力炸裂。

ラインゴールドは、ドンナーのハンマーと雷鳴の、カッキーン&ドッカーンが見事に決まった。神々の入場は、晴れやかで、軽快。ブラスのキレのよさも抜群。
 
有名曲ゆえ、このあたりから会場の雰囲気が変わった「ワルキューレの騎行」。

いつも途中からうつむいてしまうお隣の御婦人も、今日のワーグナーはしっかりとずっと聴き入っておられました。
ワーグナーの魔力に加え、うるさくならない、親しみあふれるこの演奏が、会場をひとつにしてしまったのです。
この「騎行」で拍手が来るのはやむをえないことですが、特定のおひとりさまが、どの曲も最後に拍手をするんですよ。
まして「葬送行進曲」は勘弁してよ。
さらに心外は、「自己犠牲」の感動的なエンディングでのフライング拍手。
いけませんよお客さん、現田さん、まだ手を降ろしてないじゃないですか。

でもそんな苦言もなんのその。
素晴らしき感動の前には、ちっぽけなこと。

「ウォータンの告別」は、ほんとうはもっと前の方からやってほしかったし、途中のカットも寂しく、いきなりローゲ召喚に飛んでしまったけれど、やはりこの音楽は感動的。

「Wer meines Speeres Spitze furchtet, durchschreite das Feuer nie!」
 (わが槍の穂先を恐れるものは、この炎を超ゆることなかれ!)

と心でつぶやいたウォータンの決めセリフ。
ジークフリートの主題が、これほどにブリリアントに響くなんて!
そして、炎は、赤くキラキラと輝くように聴こえました。

精緻でクリーンな「森のささやき」は、木管の皆さん冴えわたってましたね。
そして石田コンマスの甘味なるフライアの主題の美しかったこと。

自分では、心して、哀しみの面持ちでもって迎えた「葬送行進曲」。
でも悲しみは、ここには少なめで、輝かしき英雄の死といった感じで、死の動機は少しあっさり気味。そして、そのあとやってくる剣の動機では、トランペットにさし抜かれました。
そのあとのオーケストラ総力をあげての全奏では、感動のあまりワナワナしてしまい、涙でステージが滲んでしまった。

最後の「ブリュンヒルデの自己犠牲」は、この日のハイライト、最高の瞬間でありました。
25分に及ぶブリュンヒルデの長大なモノローグだから、ハイライトでは大幅カットはやむをえないことながら、もっともっと聴きたかった。
本当に素晴らしかった。
ブリュンヒルデが愛馬グラーネと亡き夫ジークフリートに別れを告げる場面、愛の救済のテーマが繰り返され、もう、わたしの涙線決壊。
指環がラインの流れに戻ると、そこは本当に涼やかで清らかなムードがただよい、再び「愛の救済」の動機があらわれますが、このリングきっての名旋律が、かくもゆったりと、そして思いをたっぷり込めて美しく演奏されるのを私は聴いたことがありません。
ともかく美しく歌う。
オケの皆さんも感じきって演奏してます。
現田さんも感動しながら指揮してます。
ワタクシも涙滲ませて聴いてます。

ビューテフルなワーグナーでいけませんか?

いえ、全然いいんです。


ワーグナーばっかりになってしまいましたが、前半のリストも素敵だった今宵のコンサート。
中間部の森のような情景に陶然となってしまった「レ・プレリュード」では、この曲のダイナミズムと抒情の対比が素晴らしく、冒頭からオケがこんなに鳴るものか、これ神奈フィルだよね、と嬉しくなってしまった。

そしてさらに嬉しかったのは後藤さんのピアノ。
小柄な青年がステージに現れたので、今風の華奢なピアノを想像していたら、ところがどっこい、強靱な打鍵を繰り広げる本格派でした。
それでいて第2楽章の夢想的なリストならではの静けさがまったく素晴らしい。
フランツ・リスト国際コンクール優勝の凄腕ピアニストに注目です。

Seiryuu

青菜炒めとプリッぷりのエビマヨ。

アフターコンサートは、皆さんで先ほどの感動を興奮冷めやらぬ勢いで語り、飲みまくり。
オーケストラメンバーと楽団スタッフの方にもご参加いただき、本当に楽しい会でした。
皆さまお世話になりました。

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2012年4月27日 (金)

リスト「前奏曲」とワーグナー「リング」 5月神奈川フィル定期

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この急な階段に、重厚なる建築物。

わたしも、この階段を昇り、帰りは上気した気分でゆっくり慎重に降りたことが何度かあります。

Hibiyakoukaido2

正面にまわるとこの趣き。

昭和4年の開設。生きる東京の歴史です。

1階には、アーカイブカフェがあって、蓄音器が鎮座し、SPコンサートも行われちゃうみたいだ。

わたしの思い出に残るこちらでのコンサートは、ドラティと読響のハイドン「ロンドン」とマーラー1番だ。
初ライブ・マーラーはいまも鮮やかに、そのドラティの動きのまったく少ない指揮とともに、このホールの音塊を覚えております。

響きは少なめだが、音のブレンド感は抜群。

Hibiyakoukaido3

レトロです。

日比谷公会堂には負けますが、神奈川フィルのもうひとつの本拠地の音楽堂も歴史あります。

そして、素晴らしかった神奈川フィルの今シーズンオープニングのマーラー。

次に続く今シーズン演目を、一挙に先取りして聴いちゃいますシリーズやります。


Liszt_les_preludes_sinopoli

神奈川フィルハーモニーの5月の定期公演は、リストワーグナー

もっとも楽しみにしているコンサートのひとつ。


 リスト 交響詩「レ・プレリュード」

       ピアノ協奏曲第1番

        Pf:後藤 正孝(2011 リスト・コンクール1位)

  ワーグナー 「ニーベルングの指環」抜粋

        指揮:現田 茂夫

  2012年5月25日(金) 19:00 みなとみらいホール


わたくしのブログをご覧いただければおわかりのとおり、わたくし、そこそこのワグネリアンなのでもございます。
その膨大なワーグナー音源をこの先の人生、再び聴けるか、その置き場所は・・・、悩ましい問題デス。考えると夜も眠れません。

ワーグナーの理解者であり、義理の父親でもあるリスト
この二人の作曲家のコンサートとはまた実にオツなものであります。

マーラーを演奏した後に、そのマーラーや同時期の音楽家に徹底的に影響を与えたワーグナーの音楽と、ワーグナーの根源にある存在のリストを取り上げることの妙。
世紀末のドイツ・オーストリアに焦点をあてた神奈川フィルの今シーズン。
その世紀末を生きた作曲家たちの指標になったのがワーグナーの、それも「トリスタン」を中心とする巨大な楽劇なのですから、マーラーのあとに聴くワーグナーにリストは格別なものがあるんです。

交響詩の元祖リストの、その名も「前奏曲」(レ・プレリュード)。
この曲は、ともかくカッコよくってダイナミックだし、抒情的な夢見る場面にも欠けておりません。
その中間部のホルンの朝の目覚めのような音色が魅力的なパストラルな場面が素敵です。

また違う演奏でレビューしますが、今回はシノーポリとウィーンフィルの生々しい演奏を再度取り上げておきます。(→過去記事

Abbado_chopin

コンサートの2曲目は、同じリストのピアノ協奏曲第1番

協奏曲的な華やかさを持ちつつ、交響詩的なファンタジーあふれる音楽。

トライアングルの活躍が聴きものです。

こちらの最強の演奏は、若きアルゲリッチとアバドの共演。

瑞々しさと勢いに溢れた永遠の名演であります。(→過去記事)

演奏会ではリストコンクールの勝者の若い後藤さんと現田さんの巧みなサポートが聴きもの。

Wagner_ring_solti

ワーグナーの4部からなる大作「ニーベルングの指環」。

延べ15時間あまりを要する史上空前の連作音楽劇。

一般のリスナーには、あまりに手ごわい作品なれど、その中からオーケストラ映えする名曲をチョイスして演奏することも、コンサートではよく行われるし、CD録音も多数出ております。

なかでも、ヴリーガーによる編曲は、連続して1時間あまりの「リング」ファンタジーのような大作で、CDもそこそこ出ております。

しかし、今回の神奈川フィルの演奏では、ヴリーガー版だと長く、重くなりすぎてしまうので、リング全体からの自由なチョイスによる演奏ではないかと推察しております。

現田さんの、外向的で華やかかつ歌心にあふれたワーグナーが楽しみです。
CDでは、ヴリーガーやマゼール版以外のチョイス版では、録音の素晴らしさも含めて、ショルティとウィーンフィル盤が最高。(→過去記事)
ウマすぎるし、オケの味がありすぎです。
あとは、セルとクリーヴランドなんかが定盤でありましょう。

ワルキューレの騎行ばかりに注目せず、5月の緑を感じながら「森のささやき」を、そしてワーグナーの行きついた最高のオーケストレーションを感動的な「ブリュンヒルデの自己犠牲」で味わっていただきたいです。

いずれも、神奈川フィルのビューテフルな音色がホールに鮮やかに広がることでしょう

次は6月定期を先取りします。

神奈川フィルのシーズン定期に是非おいでください。

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2011年6月25日 (土)

神奈川フィルハーモニー定期演奏会 現田茂夫指揮

Minatomirai

暑い梅雨の中休み。
この日、「暑いぞ熊谷!」では、39.8度を記録。
東電の供給余力も9%となりましたぞ。

こんなとんでもない、蒸し暑さのなか、大いに気分爽快となるコンサートに行ってきました

Kanaphill201106

    團 伊玖磨     交響曲第1番 イ調

    ラフマニノフ    パガニーニの主題による狂詩曲

           Pf:外山 啓介

    チャイコフスキー 交響曲第5番

  現田 茂夫 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                 (2011.6.24@みなとみらいホール)

 

ショスタコーヴィチと同じようにその出世作となった團伊玖磨交響曲第1番
おまけに雰囲気もショスタコっぽいその作品。
そして、ラフマニノフにチャイコフスキー。
現田さん、お得意のロシアン・ナイトでございました。
これは絶対に、聴かナイトいけない、ということで、汗だくになりながらホールに向かいましたが、走らナイトいけないぎりぎりのタイミングで飛び込みました。

マーラーと並んで、シーズン前から楽しみにしていた、チャイコの5番。
現田さんの指揮で、神奈フィルの音で、絶対に聴いてみたかった。
ホールに入ると、ほぼ満席で、女性や学生さん多数。
皆さんお目当ては、わたしのようなチャイ5じゃなくって、外山君の弾くラフマニノフのようでございます。
大正解のマーラーシリーズに次いでの大盛況。
嬉しいじゃありませんか!
 そして、華々しいチャイコフスキーのエンディングのあとは、演奏のみなさんも、ホールのわたしたちも、満面の笑み。爽快爽快!

おっ、トゥーランドットじゃん、と思わせる威圧的なブラスの響きで始まる團1番。
連続する20分あまりの曲のなかに、4楽章の形式を埋め込み、さらに、おっ、ショスタコだ、F・シュミットだ、ムソルグスキーだ、日本民謡だ・・・・などなど、いろいろ感じる玉手箱的折衷音楽。
初聴きでしたが、なかなか親しみやすく、わかりやすい曲でした。
ことに、オーボエが歌う日本的な哀愁の調べが美しいものだ。
受取る私の方が、お疲れムードで、すこしぼぅっ~として聴いてしまいました。
オケもエンジン始動が遅めだったかもしれません。

次いで外山啓介氏登場。
ラフマニノフのこの曲は、ピアノ協奏曲と違って、歌わせどころが後半にあるのみで、あとはモザイクのように変奏を積み上げるのみだから、奏者にとっては難しい曲なのではないかと思う。
若い外山君は、外観のスマートさを崩さず、冷静に弾いていて、そのぶん、曲の外側に立っていたように感じた。
あまりに美しく、そして有名な第18変奏になって、ピアノもオケにも熱い血が通ったようになり生気にあふれた魅力的な演奏になり、その後は怒涛のように、洒落たエンディングに向かったいきました。
終わりよければ・・・、ということでございます。
あと、なによりも気になったのは、啓介君の「髪の毛」。
別に、ないもののヒガミでもないけれど、今風のイケメン風の前髪は、お父さんは嫌いだゾ!
気になってしょうがなかったゾ!

さて、気をとりなおして、お楽しみの後半。

小学校時代からの付き合いの長い曲のひとつが、チャイコフスキーの5番
カラヤンとベルリンフィルのレコードを擦り切れるほど聴いて、その華麗な演奏がひとつの基準となってしまい、その後いろいろ聴いたソビエト・ロシア系のむせび泣きと勇猛な演奏にはついてゆけなかった。
この曲は華麗で、カッコよくなければだめなのです。
あとは、ハイティンクやアバドのようなヨーロピアン的な演奏も好き。

そんなワタクシを絶対に満足させてくれるであろう、と確信犯的に思いこんでいたのが、今日のコンビによる演奏。

そして、その思いはまったくその通りとなりましたよ

 

あのカラヤンでさえもほの暗い冒頭を足取り重くテヌートぎみに演出していたのに、現田&神奈川フィルは、その持ち前のきらびやかなサウンドを冒頭から隠そうともせず、(いや、出てくる音がそんな風に響いてしまうのだからしょうがない)眩しいくらいの鮮やかなチャイコフキーを描いてみせちゃう。
もう、うれしくって、わくわくしちゃって、体がオケの皆さんと一緒に動いてしまいそう。
そして、好きな曲すぎるので、指揮したくなって、腕が、指がむずむずしてしまう。
 それにしても、楽員のみなさん、気持ちよさそうに弾いてらっしゃること

マーラーではずっと対抗配置だったけれど、この日は、久しぶりの通常(なにが通常かわからなくなったが)の配置。
右から低音、左から主旋律と高音域、間に中音・木管と、いわばレコード少年にとっての基本配置は、耳にとっても心地よく、安心感すら感じた。
 いろいろ聴けて、試せて、そういう意味でも神奈川フィルは、バラエティ豊かなオーケストラなのだ。

2楽章へは、休みなくアタッカでつないだ現田さん。
3楽章へは、休みを置き、3と4楽章はよくあるように、こちらもアタッカ。
前半と後半、暗と明を明らかに際立たせる意図でしょうか。
しかし、どちらも輝きすぎ(笑)

その2楽章の美しいことといったら!
甘味なホルンに、優美はオーボエ、軽やかクラリネット、優しいフルート、透き通るような弦セクション、威圧的にならない金管。
もう、ほんとたまりません。クリスタルな耳のご馳走です。
夢見るように聴いてしまいました。

エレガントなワルツもオシャレ。
そして、超かっちょイイ終楽章。
オケもノリノリ、現田さんもいつものように背中に汗が抜けてきて踊るように指揮、コンマス石田氏もいつもより立ち上がり弾きが多い。
見て、聴いて、最後の大フィナーレに向かって、きらきら輝く大行進を目の前に、顔に笑いさえ浮かべてしまったワタクシ。
はたから見たら、にやにや笑いの不気味なオジサン。
見事にきまったエンディング。
イェーイ、カッチョええぞ
気持ちいいーーーーっ

会場は大ブラボーでした。

上気して、ふらふらと階段を下りると、下に待ち受けしは、現田さん、オケの女性メンバー、理事のみなさん。
手には、ブルーダル基金の募金箱。
すっかり術中にはまり、ご協力させていただきました。

こんな素敵な気分にさせていただき、ありがとうって感じですよ!

マーラーも大いに心に響きましたが、今回みたいに、気分よろしく、エンジョイさせてくれるコンサートもほんとに大事だと思います。

それにしても、現田さんは当然として、神奈川フィル向きの曲だと思いましたね、チャイコの5番。
次週は、神奈フィルで聴きたい曲、お願いランキングでも記事にしましょうかね。

アフターコンサートに、いつものメンバーと、いつもの店で、いつものものを飲み、いつものものを食べ、いつものように終電近くに帰りました。

Kirin

暑かったし、気分よかったし、で、死ぬほど美味しいビール。

Kirin2

お昼ごはんから10時間ぶりくらいの食べ物、死ぬほど美味しいピザ。

Kirin1

こんな風にラスト・オーダーとなると、ピッチャーを在庫してしまう。
誰かが、大曲にはさまれた個性豊かなマーラー7番、なんて言ってました(笑)

みなさん、お世話になりました。

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2010年12月 4日 (土)

神奈川フィルハーモニー定期演奏会 現田茂夫指揮

Dogyard

横浜ランドマークタワーのドッグヤード。
周辺やクィーンズスクエアには、美しいイルミネーションがたくさんあって、イルミ好きのワタクシですから、たくさん写真を撮りました。
でも、それらはまたの機会に。
今回の演奏会の曲目や、諸々鑑みて、華美なものは相応しくないと思いまして。。。

Kanagawaphill201012

    團 伊玖磨  管弦楽のための幻想曲「飛天繚乱」

    サン=サーンス  チェロ協奏曲第1番

            チェロ:遠藤 真理

    フォーレ      レクイエム

          S:幸田 浩子   Br:山下 浩司

       現田 茂夫 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                 神奈川フィル合唱団
                 合唱指揮:近藤 政伸
                     (2010.12.3@みなとみらいホール)

現田さんらしい、いいプログラムです。
今シーズン、期待してたコンサート。しかもマーラーばかりだからよけいにそう。
フランスの作曲家ふたりに、日本人作曲家。

奇異な取り合わせと思いつつも、初聴きの團伊玖磨作品であったが、これが面白くて、そこにドビュッシーやラヴェル、ルーセルらのフランス音楽テイストを感じ取ったのであります。さらに近代北欧系の雰囲気も。そして当然に日本の和テイストも。
18分のなかなかの大曲で、編成も打楽器多数の大所帯。
オケがガンガン鳴ったのはこの曲のみ。
そうした場面も爽快だったけれど、印象に残ったのは最後の方の、フルートソロによる長いソロ。優雅に舞う天女でしょうか、山田さんのソロが美しすぎ。
あと、弦楽器奏者たちが楽器を抱えて、それこそギターのようにつま弾く場面。
都合3度ほど出てきたけれど、これは見ていて楽しかったし、奏者の皆さんもなんとなく楽しげ。そう、石田コンマスも大真面目にやっておりましたよ。
 こうした曲は、現田さんはうまいもんだ。

そのあとは編成が少なくなってのサン=サーンス
人気と実力を兼ね備えた遠藤真理さん。
初に聴きます。
出てきたのは、小柄な可愛い女性でしたが、その第1音からグイッと引き込まれる深い音色。
まさに中低音域の楽器、純で無垢なチェロそのものの音色に感じる。
現田&神奈フィルの軽やかで小粋な背景に乗って歌う第2楽章は、もっとも素敵な場面だった。
敢然としたテクニックも見事なものだが、緩やかで抒情的な場所での歌い回しに彼女の素直なチェロの良さを見出す思い。
いい演奏でした。9月にN響でも聴いたけれど、そちらよりずっと自分に近いところで響いてくれたサン=サーンスに、曲のよさもようやくわかってきました。
元気に曲が閉じると、これまた元気にブラボーが、わたしの斜め後ろから飛んできました。
おじさん、やるね。と同時に少し不安に・・・・。

休憩後は、フォーレ
演奏会で聴くのは初めて。
オーケストラはさらに編成が少なくなり、打楽器はゼロ。
オルガン参加はもちろんながら、弦の配置もがらりと変わった。
左手から第1ヴァイオリン、ヴィオラとその奥に第2ヴァイオリン、そして一番右がチェロ。
ヴィオラとチェロが活躍するこのレクイエム。
その配置からしても、オーケストラもオルガンの響きそのものを意識したものといえるのでしょう。
そのあたりの渋くて、かつ神々しい雰囲気が、いつものこのコンビらしからぬ響きから立ち昇るのを感じ、この曲を愛してやまないわたくしを冒頭のイントロイトゥスからして、祈りの世界へと導いてくれました。
最初の方こそ、合唱が決まらず、ざらついたけれど、喉が温まるとともに精度も高まり、滋味あふれるフォーレの世界を、オケの皆さん、独唱者ともども、心の底から感じながら演奏してます。
それを束ねる現田さんは、動きも少なめで、まるで音楽に奉仕しているかのように、静かな指揮ぶりです。
こんな現田さん、初めて見た。

宗教曲としての存在や、癒し的な慰めの音楽としての「フォーレのレクイエム」。
そいう意味では、今回の演奏はちょっと違う次元にあるように感じた。
どこまでも音楽的に美しく鳴り響き、それが結果として、純粋に優しい気持ちで人の心をつつみこんでくれたような結果となったのでは。
以前に、この曲を取り上げたとき、フォーレの音楽の持つ陶酔感というようなことを書いたけれど、そうした感じはちょっと薄めで、音楽の美しさのみで勝負した感があり、いつものビューテフルな現田サウンドではなく、淡い薄口の音色に、なんだか日本人的なものを感じてしまった。

しかしこのレクイエムは、どうしてこんなに美しいのだろう。
最初からうるうるしながら両手を握りしめて聴いていたけれど、ピエ・イエズではこらえ切れずに涙ひとしずく。
最後の、イン・パラディスムでは、天から降り注ぐかのようなオルガンとハープ、女声合唱の調べに、先に亡くなった伯叔父ふたりの安らかな顔や、昨年同じく亡くなった従姉のお顔、そのほか親しかった人々の姿がまぶたに去来して、そして唯一元気な母を思ったりして、もう涙が止まらなくなってしまいました・・・・・。
情けないくらいに涙もろい最近のワタクシでございます。

幸田さんのピエ・イエズは、声の微妙な揺れが少し気になったけれど、相変わらずピュアで美しいです。存分に泣かせていただきました。
そして素晴らしかったのは、山下さん。ホスティアスとリベラ・メ。
どちらも、まろやかで優しい歌を聴かせてくれました。
山下さんは、昨年の「カプリッチョ」で見事な劇場支配人を演じ歌ってました。
注目のバリトンです。

天国的な最終章が静かに終わって、ホールはしばしの静寂。
ほんとうはこの曲には拍手は相応しくないんだけれど、演奏者を讃えなくてはなりませぬ。
少し遅れて、わたくしも拍手に参戦。
ところが、さっきのおじさんブラボーが出ましたよ。
ちょっとやめて欲しかったな。

終演後、yurikamomeさんから、現田さんのお母様が亡くなったとのお話をお聞きしました。それを聴いて、指揮をしていた現田さんの後ろ姿を思い出し、これまた涙があふれそうになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。

Kirin

終演後のアフターコンサート。
いつものメンバーに新しいお顔も加えて、いつもの店で、いつものものを食べる。
でもこの夜は、しっとりと日本酒を飲みたい気分。
ピザをつまんで日本酒を飲むという試みに、いたく満足の「さまよえるクラヲタ人」なのでした。
みなさま、お世話になりました。

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2010年8月23日 (月)

日伊声楽コンソルソ入賞者披露演奏会 イタリア・オペラ名曲アリア・コンサート

Suntry2
今年も聴いてきました。
46回を迎える日伊声楽コンソルソの受賞者コンサート
100名を超える応募者から選ばれた上位3人の若い入賞者の皆さん。
1次2次の予選を経て本選には12人。さらに選ばれた入賞者たち。大変なことです。

Suntry3
日曜日の午後2時開演。
猛暑のなか、一番暑い時間帯。
出演者の皆さん、体調管理が大変だと思います。
と思いつつ、こちらは開演前にさっそく1杯
くぅ~、たまらんばい。

46aria_concert

   ヴェルディ   「シチリア島の夕べの祈り」序曲

            「アッティラ」~「ローマの前で私の魂が」
 
             Bs:三戸 大久(第3位)

   レンカヴァッロ 「パリアッチ」~「ごめん下さい皆様方」

             Br:今井 俊輔(第2位)

   プッチーニ   3つのメヌエット~第1番

             「トゥーランドット」~「この宮殿に何千年も昔・・」

   ヴェルディ    「エルナーニ」~「エルナーニよ私を連れてって」

             S:岡田 昌子(第1位)

          ・・・・休憩(白ワイン一杯フッフッフ)・・・・・・

   ドニゼッティ   「アンナ・ボレーナ」~「あなた方は泣いているのですか」

   プッチーニ    「トスカ」~「歌に生き、恋に生き」

   チレーア     「アドリアーナ・ルクヴルール」第2幕間奏曲
                    〃    ~「私はいやしい神の僕です」

   プッチーニ   「つばめ ラ・ロンディーヌ」~ドレッタの夢

   ヴェルディ    「椿姫」~ 第1幕前奏曲
               〃 ~ ヴィオレッタとジェルモンの二重唱

   モリコーネ     「Se」(ニュー・シネマ・パラダイス「愛のテーマ」)

   サルトリ&クヮラントット 「CON TE PARTIRO」(Time To Say Goodbye)

             S:中丸 三千繪

             Br:大島 幾雄

        現田 茂夫 指揮 読売日本交響楽団
                      (2010.8.22@サントリーホール)

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満員のホールの隅々まで、その若々しくハリのある声を響き渡らせ、聴く者すべての耳をそばだたせたのは、岡田昌子さん
トゥーランドット姫が、若くて無垢な恋したことないお嬢様だったことを、そのスピントする真っすぐストレートヴォイスで今さらながらに、わからせてくれた数分間。
彼女の圧倒的な声に、ワタクシ、クラヲタ人、すっかり魅せられてしまいましたよ。
おっかなくて冷酷なお姫様ばかりを観て聴いてきたトゥーランドット姫。
こういう活きのいい若い方によって歌われる必然も本来の劇の人物としてありというもの。
同様に、蝶々さんもそう。
トゥーランドットや蝶々さんが、劇中、女性として成長を遂げる姿を歌と演技を通して確認してゆくのも、プッチーニのオペラの楽しみ。
岡田さんは、このあたりもしっかり押さえて実力を発揮してゆかれることでしょう。
 エルナーニのエルヴィーラのアリアにおいては、冴えわたる技巧と輝かしい高音を堪能させてくれた。
ほんと、素晴らしいんだから。
そんなに大きくない体からどうしてあんな声が出せるのかしら。容姿も可愛いし。
褒めすぎかもしれないけど、ダイヤモンドの原石を発見した感じですよ

後半は、中丸さんのリサイタル状態。
岡田さんの声が耳に残るなか、ベテラン中丸さん、最近お名前を見なかったものだからちょっと心配だった。
でも、予想以上の健在ぶりに安心。
というか、上にはまた上があるもので、岡田さんは、ストレートな若さが武器で眩しかったのだけれど、中丸さんの女優のような立居振舞、そしてその声による豊かな感情表現を前にしちゃうと、役者が違うといわざるを得ないんです。
ステージにあらわれただけで、がらりとホールの雰囲気が変わっちゃう。
全盛期の声ではなかったかもしれないが、ともかく巧いし聴いてて、彼女の歌にどんどん引き込まれてしまい、いつのまにかホロリとさせられてしまう。
おまけに、ワタクシのブログをご覧いただいているとおわかりのように、大好きな曲ばっかり。
トスカの心境を歌いこむソット・ボーチェの素晴らしさ、気品あるアドリアーナ、プッチーニらしい甘味なつばめ、思わず襟を正したくなる真正ベルカントを聴かせてくれたドニゼッティ。

大島さんの美声は相変わらずで、実に安心で心地よいジェルモン。
ふたりの二重唱は、まるでオペラの舞台を観てるかのような感興あふれるものでございました。

最後のモリコーネとTime to Say Goodbyeは、ちょっと付け足しみたいに感じた。
中丸さんは、ちょっと苦しそう。
でも満員の聴衆は、このふたつに大満足みたい。
むしろ、わたしは、このふたつでは、歌上手の現田ワールドが満載で、オケに耳が行ってましたよ。

現田さんの歌ものへの合わせの巧さは、毎度感心してしまう。
あれこれ言われようと、これは天性のものと思ってます。
指先のしなやかな動きや身のこなし、それらが音楽とそして歌手の歌と一体になっていて、そこから自然に特有のビューティフルな響きが生まれてくる・・・・と思いながら聴いておりました。
ヴェルディの序曲からしてしなやかで輝かしい。
パリアッチにおける泣き節や優美なプッチーニ。
そしてチレアのアドリアーナの間奏曲をコンサートで取り上げるなんて、普通あり得ないけれど、この短いオーケストラ間奏は、この美しい旋律がたっぷり詰まったオペラのダイジェストみたいな部分。夕映えのように儚くも美しい名演でした

話は前後してしまいましたが、バスの三戸さん、バリトンの今井さん、どちらも伸びやかな美声を聴かせてくれましたが、喉が全開になるまで、それぞれあと1曲ずつ歌わせてあげたかったかな・・・・。

若さという一度しかない強力な武器と、ベテランの味わいある人の心に響く歌い口。
どちらも、オペラを聴くという楽しみのひとつですね。

ベテランふたりの若い歌唱も、わたくしは、かつてしっかり聴いておりました。
中丸さんのデビューにあたる、小澤さんとの「エレクトラ」と若杉さんの指揮した、大島さんの「ヴォツェック」。ちなみに、鮫島有美子さんのデビューのデスデモーナも聴いてる。
 かくして、私も古い聴き手のひとりなのですな。
こうして若い歌手たちが檜舞台にこぎ出してゆくのを見守るのもオペラファンの務め。
岡田昌子嬢を応援しましょう

Uokin_sanma
アフターコンサートは、ご一緒した「(懲りずに)勝手に神奈川フィルを応援する会」幹事長と新橋に出て、居酒屋ライフ。
明るいうちから飲みまくり。
これは絶品「さんまの炙り」、肝醤油でいただきます

話題は尽きず、日曜にもかかわらず営業してた洒落たバーを発見しアイラモルトで乾杯。
お世話になりました。

Bar    

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2010年6月 7日 (月)

オルフ 「カルミナ・ブラーナ」 神奈川県民ホール開館35周年記念 

Yamashita_park_4 
陽光あふれる、山下公園のばら園。

今日、日曜日は、開港記念バザールや、Y151(?)のイヴェントで、湾岸地区は大賑わい。
県民ホールでのコンサートは、関内から歩くことにしてるので、余裕をもったつもりでも、今日の山下公園方面へのルートは、人で一杯!!。
休日コンサートは、家族への負い目もあったりして、ギリギリの行動なので、よけいにひっ迫した動きをしなくてはならず、並みいる方々を押し分けつつ、ゴメンなさいよ、と思いつつ、突進。
それでも、ちゃんと想定内に到着し、公園内を散策するゆとりも。

Yamashita_park_2
今日は、山下公園でもイヴェントたくさんで、ボート競技もやってたし、これは任意かもしれませぬが、怪しげなセーラー・コスプレ軍団もいましてね、彼ら、彼女らがヴァイオリン持ってたんですよ。
いったい、なんだったんでざましょ。

Img

そんな賑やかなヨコハマベイにある、神奈川県民ホールでは、ホール開館35周年/神奈川国際芸術フェスティバルの、素敵なコンサートが行われたのでございます。

日本晴れの初夏の日曜日。
気温は26℃。
ともかく、ちょっと汗ばみつつも、2週連続、気分良く35年目のホールに到着。

   団 伊玖磨      素戔鳴ファンファーレ

   ショスタコーヴィチ 祝典序曲

   ストラヴィンスキー 組曲「プルチネルラ」

   オルフ        世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

       S:幸田 浩子    T:高橋 淳
       Br:堀内 康雄

      現田 茂夫 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                   神奈川県民ホール特別合唱団
                                       小田原少年少女合唱隊
                  合唱監督:近藤政伸
                  合唱指導:岩本 達明、桑原 妙子
                  練習ピアニスト:平川 寿乃、藤井 美紀
                    (2010.6.6 @神奈川県民ホール)

 

当日気がついた団伊久麿のオペラのファンファーレ。ずらり勢揃いの圧巻ブラス。数えましたよ、トランペット12、ホルン8、トロンボーン4、テューバ2の偶数。
若い人たちだし、華やかなもんです。
でもって、次のショスタコに向けて、オーケストラメンバーが出てきてからも、26名さまは、そのまま。
ははぁ~ん、やる気だな。中身の薄めな曲も、こんなことされたら、面白くて、しょうがないじゃないか
それよりも、先週、音像が遠く感じたホールとは思えないくらい、音がよく響き、耳にびんびん届いてくる。
先週は1階中央、今回は2階左の一番壁より。
上には、3階部分が被さってる。
不思議なホールであります。

ホールのことは置いといても、ショスタコの第一声から明るめで、きらめくような神奈川フィルらしい音色が響いたのですよ。
一週間前の、金さんマーラーの時は、こじんまりしたなかにも、清々しい響きを聴かせてくれたのに、今回は、曲目や編成のことは棚にあげても、豪奢で輝かしい音がする。
 台の上の指揮者によっての違い、面白いもの。

マーラーは、作曲家の術中に見事ハマってしまい心に感動を落としこんでくるような音楽だけど、今宵の曲目、まさにオルフなどは、五感をそれぞれに刺激されてしまうような、気持ちのいい感覚の音楽だったわけで、現田さんのもっとも得意とする分野ではないかと。

さて、プルチネルラは、5人の弦の主席がソリストのように、舞台前面に出ての演奏。
なるほど、こんな風に書かれていたんだと納得。
2年前のシュナイトさんの濃密な凄演を聴いてしまっているだけに、比較のしようがないのであるが、すっきりといかにも新古典風のさわやかなストラヴィンスキーでありました。
欲を言えば、もう少し編成を刈り込んで、軽やかに演奏して欲しかった気もしますけど。

メインのカルミナ・ブラーナは、合唱350名がステージにギッチギチ乗って、見るからにゴージャス。
展開された、この日のカルミナは、華麗で色彩があふれ、リズムも抜群。
単純なだけに、思わず指が、体が動いてしまう。
まわりの合唱団のお友達関係とおぼしきご婦人がたも、ゆらゆらしてましたよ
中世の俗的な原色感や、湧き出す生命のエネルギーというようなものとはちょっと縁遠い、ビューティフルな肯定的な中世観といったところ。
ともかく楽しい、賑やか、派手。
まったくもって気分がよろしくなるカルミナだ。
実演だと、打楽器や音板楽器、2台のピアノやチェレスタなどの大活躍を観察する楽しみもありだし。

 私の好きな高橋淳さんの、キャラクターたっぷり入れ込みの歌唱は、演技も伴い、客席から笑いがおこる名唱。この方は、表現の幅が極めて広く、ミーメやムツェンスク、ルルなどでいつも感心してしまう一方、アリアドネでバッカスまで歌ってしまう人。
日本のオペラの舞台にはなくてはならない方です。

そして幸田浩子さんの繊細な高音にもシビレました。わかってはいたけれど、こうして聴かされちゃうと、たまりせん。
わたしの愛しいひと、では涙が出そうになった。オーケストラの繊細極まりない背景にも耳をそばだててしまった。

出番の多い堀内康男さんも孤軍奮闘。大合唱に見事対峙してましたね。

そして、その合唱団もだんだんと熱を帯びていって、歌いながら感動を高めていってるのが、手に取るようにわかる。たくさん積んだ練習が、素晴らしい成果となっていました。
最後の怒涛のエンディングで、ホールは大喝采の仕儀とあいなりました

Aichiya_1
白鳥を喰らう、流れで焼き鳥に行こうとしたものの、満席だったり休みだったりで、横浜では有名な「かに屋」さんに連れていっていただいた。
今宵は、「かに」で、勝手に応援する会の定例会
「愛知屋」さんというお店です。
安い、うまい、家庭的。驚きのカニ屋さんでありました

Aichiya_2
カニ食うと、無口になると言うけれど、今夜は違う。
みなさん好きな音楽のこと、神奈川フィルのこととなると、あーだ、こーだと口が止まらないんです。
それもまぁ、神奈川フィルを応援しようという大いなる心意気なんですから。
お疲れさまでした。

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2010年2月 3日 (水)

「明日の担う音楽家による特別演奏会」 現田茂夫指揮

Operacity クリスマスシーズンが終わっちゃうと1年で一番寂しい雰囲気になるオペラシティ。
でも隣接のオペラパレスは年中、晴れやかに感じられるのは私だけ?

Bunkacho_2010 今日は、文化庁主催による「明日を担う演奏家による特別演奏会」に行ってきました。
国が若い広範な分野の芸術家を海外研修に送り出していて、その後、活躍の場を海外や国内に得て頑張っている若い歌手の皆さんの成果発表ともいえるコンサートであります。
新進芸術家海外留学制度といわれるもので、21年度からは、新進芸術家海外研修制度と呼ばれるもの。
勉学よりは、より、実地の研修を重んじるということらしい。
例の芸術家や愛好家を心底ヒヤヒヤさせた事業仕訳のターゲットにされた分野であります。
今回のコンサートは、平成18年から20年度に派遣された方々のコンサート。

愛好家としては、実績を上げつつある上り調子の歌手のイキのいい歌が数々、それも格安に聴けるということで、こんなにうれしいことはありませんね。
(私の席は1階後方A席2000円ですよ!)
しかも、オペラを得意とする神奈川フィルハーモニー名誉指揮者の現田茂夫さんの指揮だから、もういうことなし。
メンバーの皆さんに声をかけなかったのが悔やまれるが、今日は「勝手に神奈川フィルを応援する会」ひとり分課会となったわけです。

グルック   「オルフェオとエウリディーチェ」~序曲
        「おいで、君の夫についておいで」 鷲尾 麻衣・小野 美咲

モーツァルト 「コジ・ファン・トゥッテ」~「岩のように動かずに」
             吉田 珠代

ヴェルディ   「エルナーニ」~「エルナーニ、一緒に逃げて」
             石上 朋美
         「リゴレット」~「悪魔め、鬼め」
             町 英和
         「トロヴァトーレ」~「わかったか 夜が明けたら…」
             石上 朋美

プッチーニ   「蝶々夫人」~「夕暮れは迫り」
             田口 智子・塚田 裕之


グノー     「ファウスト」~「宝石の歌」
             田口 智子

ビゼー     「カルメン」~「母のたよりを聞かせて」
             駒井 ゆり子・塚田 裕之

オッフェンバック  「ホフマン物語」~「お前はもう歌わないのか」
             吉田 珠代・町 英和・小野 美咲

プーランク    「ティレジアスの乳房」~「いいえ、だんな様」
             駒井 ゆり子


バーンスタイン  「キャンディード」~「きらびやかに着飾って」
             鷲尾 麻衣

ワーグナー    「ラインの黄金」~「避けよ、ヴォータン!避けよ!」
             小野 美咲

           「ワルキューレ」~「さらば 大胆で輝かしき娘よ!」
             大塚 博章

     現田 茂夫 指揮  東京フィルハーモニー交響楽団
                  (2010.2.3@オペラシティコンサートホール)



「THE JADE」の成田さんの司会で進められたコンサート、曲目をご覧のとおり、イタリアを発し年代順に進行し、後半はフランス、アメリカ、ドイツと、 万遍なく楽しめるもので、ヴェルディとワーグナーを中軸に、オペラの歴史を俯瞰できるものになっている。
文化庁らしい優等生的なことでもあるが、歌手の留学先に応じた得意曲でもあるので、成果披露の目的も万全に達しているわけ。

こうして、皆さんしっかり成果をあげて、オペラ界に羽ばたいていってるわけで、こんな立派な制度はどんな名前に変わっても、しっかり存続させていただきたいものだ。

ここで、個々の歌い手さんたちを、どうこう言ってもしょうがないですね。
皆さん素晴らしい!
強いて印象深かったのは、鷲尾さんのコケットリーで軽やかなキャンディード。
小柄な体から、深々としたメゾを聴かせた 小野さんのエルダ。
しっかりワーグナーしてました

そして、私の耳と目は、しばしば、現田マエストロのしなやかな指揮に向かうのでありました。
歌手の呼吸や声を入念に見守りながら、時にオーケストラを抑制しつつ、そして煽りもして、美しくも味わいある背景を作りだしておりました!

軽やかなモーツァルト、弾むような推進力あふれるヴェルディ、痺れるような美音のプッチーニ、洒落たプーランク、ゴージャスなバーンスタイン。
そして、これら今日会場に来て知ったプログラムのなかでも注目は現田ワーグナー。
過去に全曲の上演を手がけているし、神奈フィルでも演奏しているワルキューレ。
いやこれが実に素敵なものだった。
決してうるさくならない、そして、重くならない、充分に抑制の効いた美しいワーグナーで、舞台に上がったから突出してしまう、金管や低弦を巧に抑えつつ、結果として柔らかなワーグナーが響いたのだ。
大々大好きな音楽だから、涙うるうるを覚悟のうえ構えたが、なんということでしょう、ブリュンヒルデを優しく眠りにつかせる絶美の箇所、そのあとのローゲの召喚、このふたつがカットされ、いきなり「我が槍を恐れるものは・・・」のウォータンの絶唱の部分に飛んでしまった。そのあとの魔の炎の音楽も少し短縮。
うーーーん。
いろいろ状況でおありだとは存じますが、歌入りのワーグナーにカットは厳禁ではないかと存じますが・・・。これならマイスタージンガーの方がよかったかも。

最後はややがっかりだったが、フレッシュな歌と素敵なオーケストラが聴けて満足の一夜でございました。

蛇足ながら、司会者のインタビューで、現田さんも派遣経験があるとのお話で、その場所はウィーン。そして、「ばらの騎士」をじっくり学んだと言われていた。
そんなんなら、来シーズンの新国の「ばらキシ」は、現田&神奈川フィルをピットにいれて欲しかった! アルミンク&新日フィルは、もう聴いてるし・・・・。

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