カテゴリー「ウェーベルン」の記事

2022年3月 1日 (火)

シューマン ピアノ協奏曲 ブレンデル&アバド

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寒かった2月もおしまい。

季節はちゃんとめぐり、梅の芳香が街にただようになりました。

しかしながら、世界は自然の移ろいを愛でる余地や心地を与えてくれません。

日本だけが崇高なる9条をかかげ、たてまつるなか、そんな夢想ともいえる理想郷を吹き飛ばしてしまった独裁者。

そんなヤツが実際にいて、死んだような眼で、侵攻を正当化し、核で脅す行為を行った現状を世界に見せつけた。

悲しいのは、そんな暴君を支持せざるをえなかった音楽家たちも断罪されつつあること。

いや、その度合いにもよるが、指揮者Gは支持者でもあり友人でもあったが、ロシアの一般の人々が、自分はそうじゃありませんという声明をせざるをえないのが悲しすぎる。
その国の国民であることで謝罪をしなくてはならないっておかしくないか。
日本人も、戦後にそうした教育をほどこされ、自虐史観の固まりとなり、やがて国力さえ弱めるような事態にいまなっている。

Hirayama-ume-9

ウクライナの無辜の民、それから命令で赴き、命を散らしてしまったロシアの兵士たち、それぞれの命の重みは同じ。

西側の脅威があったとはいえ、これをしかけた指導者P大統領、そして危機が迫るのを知りつつ安穏としていたウクライナ政府、それぞれに問題ありだと思う。

他山の石は、日本に即ふりかかる。

めずらしく音楽以外のことを・・・黙ってらんない

危機のときに、やってきてくれるウルトラセブンは、もういないと思っていい。

Brendel-abbado

  シューマン ピアノ協奏曲 イ短調 op.54

        アルフレート・ブレンデル

  クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団

      (1979.6 @ウォルサムストウ、ロンドン)

初めて買ったシューマンのピアノ協奏曲がこのブレンデル&アバド盤。
DG専属だったアバドのフィリップスレーベルへの登場もあり、ともかくすぐに飛びつきました。

デジタル移行まえ、アナログの最終期の録音で、当時、フィリップスの録音の良さは定評があり、このレコードを代表に、最新フィリップスサウンドを聴くというレーベル主催の催し物に抽選で当たり、聴きに行きました。
大学生だった自分、会場はちょうど通学路にあった塩野義ビルのホールで、スピーカーはイギリスのKEFだったかと思う。
名前は忘れてしまったがMCは著名なオーディオ評論家氏で、このシューマンや小沢のハルサイとか、ネグリのヴィヴァルディとかが紹介され、ともかく自宅では味わえない高音質サウンドに魅了されたものです。

いま聴いても、芯のある録音の素晴らしさは極めて音楽的で、ピアノの暖かな響きと、オーケストラのウォーム・トーンがしっかりと溶け合って美しい。
ブレンデルのピアノが、折り目正しい弾きぶりのなかに、シューマンのロマンティシズムの抽出が見事で、柔和ななかに輝く詩的な演奏。
アバドとロンドン響も、ともかくロマン派の音楽然としていて、溢れいづる音楽の泉にとともに、早春賦のような若々しい表情もある。
春や秋に聴く音楽であり、演奏でもあると思う。
久々に聴いて、学生時代を思い出したし、若かった自分、いまとまったく違った若者の街、渋谷を懐かしくも思い出した。

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遡ること小学生の自分。
ウルトラQ→ウルトラマンと続いて名作「ウルトラセブン」に夢中だった。
同時期にサンダーバード。
プラモデルで、ウルトラホーク号や、サンダーバード1~5号、ピンクのペネロープ号など、みんな揃えましたね。

そして衝撃的だったウルトラセブンの最終回。
戦い疲れ、もうあと1回変身したらあとがないと知ったセブン=モロボシ・ダンは、アンヌ隊員に「アンヌ、僕はねM78星雲からきたウルトラセブンなんだ!」と告白します。
ここで衝撃を受けるアンヌ、画面は彼女のシルエットとなり、流れる音楽はシューマンのピアノ協奏曲の冒頭。

アンヌは「人間であろうと宇宙人であろうと、ダンはダンで変わりないじゃないの、たとえウルトラセブンでも」
いまなら涙なしには見れない感動の坩堝となるシーン。
最後の戦いの間、シューマンの音楽は流れます。

このときの演奏は、リパッティとカラヤンのもので、刹那的なロマンを感じる演奏ですね。

昔のレコ芸で、ウルトラマンやウルトラセブンを数本監督した実相寺昭雄氏とウルトラセブン以降、ウルトラシリーズの音楽をすべて担当・作曲した冬木徹氏の対談を読んだことがあります。
あの感動のシーンの音楽は悩んだ末の窮余の一策で、チャイコフスキーのコンチェルトでとか言われたけれど、なんか違うなということになり、家から持ってきたレコードだったと冬木氏は語ってます。
円谷プロの円谷一氏は、早逝してしまったが、ヴァイオリンも習っていたしクラシック好きだったと。
だから冬木氏の作り上げたウルトラセブンに流れる音楽も、シンフォニックで格調高い。
円谷氏は、テレビで流される音楽を聴いてたら日本中の子供たちは耳が悪くなっちゃう、そうじゃない、子供たちの耳が音楽的な耳に育つようなものを作ってよ、と冬木氏に語ったそうな。

ほぼほぼ、セブンの時代は、ワタクシがクラシックに目覚めたころ。
あれがシューマンの曲だと知ったのはずっとあとのことだったけれども、ウルトラセブンのあのシーンは、きってもきれないことになった。
子供時代、青春時代がないまぜになって、どこか切なく甘い思い出です。

ウルトラセブンに出演していたウルトラ警備隊のメンバーも物故したりしてますが、ヒーローのモロボシ・ダン役の森次晃嗣さんは、藤沢の鵠沼でジョリー・シャポーというレストランを経営していて、お店によくいらっしゃるとのこと。
一度行ってみたい。
ヒロインのアンヌ隊員役の、ひし美ゆり子さんは、多くのお孫さんに恵まれ、孫の預かりを日々楽しみにしていらっしゃるご様子。
SNSでよく拝見してます。

そして、私もそっくり歳を重ねて孫も生まれたし、今月、東京を去ろうと決意し準備中で超忙しい。

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2019年10月27日 (日)

マーラー祝祭オーケストラ 定期演奏会

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日曜午後、こんな素敵なプログラムの演奏会があるのを発見し、思い立ってミューザ川崎へ。

新ウィーン楽派の3人の作品のみ。

わたくしの大好物ともいえる作品3作です。

マーラー祝祭オーケストラは、2001年に指揮者の井上喜惟氏の提案のもと結成されたアマチュアオーケストラで、国際マーラー協会からも承認を得ている団体。
毎年の演奏会で、すでにマーラーの全交響曲を演奏しつくし、今回は、マーラーに関わり、その後のウィーン楽壇の礎をを築いた3人の作曲家、新ウィーン楽派の3人に作品を取り上げたものです。

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 ウェーベルン  パッサカリア (1908)

 ベルク            ヴァイオリン協奏曲 (1935)


     Vn:久保田 巧

 シェーンベルク 交響詩「ペレアスとメリザンド」(1902~3)

  井上 喜惟 指揮 マーラー祝祭オーケストラ

        (2019.10.27 @ミューザ川崎 コンサートホール)

正直言って寂しい観客の入りで、開演15分前に行って全席自由の当日券でしたが、ふだん、ミューザではなかなか体験できない良席を、両隣を気にすることなく独占し、音楽にのみりこみ、堪能することができました。

マーラーの名は冠してはいても、やはりこうした演目では、なかなか集客は難しいもの。
しかも、川崎の地でもあり、この日は、川崎名物のハロウィンパレードが同時刻に開催。

しかし、そんなの関係ないわたくしは、うきうき気分のミューザ川崎でありました。

ウェーベルンの作品1は、ウェーベルン唯一の大オーケストラによる後期ロマン派臭ただよう10分あまりの作品です。
長さ的に、コンサートの冒頭にもってこられる確率が高くて、これまでのコンサート履歴でも、ほとんどがスタートの演目でした。
しかし、いずれも、オーケストラも聴き手も、あったまる前の状態で、流れるように過ぎてしまうという難点がありまして、今回もまったく同じ状況に感じました。
なにものこりません。
1974年のシェーンベルク生誕100年の年にかかわり、翌年にかけてFMで放送されたアバドとウィーンフィルの演奏が、わたくしの、絶対的な完全・完璧なるデフォルメ演奏であります。
これが耳にある限り、どんな演奏も相当な演奏でないとアカンのですが、今回、この曲のキモもひとつ、曲の終結部の方で、ホルンがオーケストラの中で残り、残影のような響きを聴かせるところ、ここはとてもよかったです。

ベルクのヴァイオリン協奏曲。
この曲が、本日のいちばんの聴きもので、豊かな技巧に裏打ちされ、繊細でリリカルなヴァイオリンを聴かせてくれた久保田さんが素晴らしかった。
本来はデリケートでもあり、バッハのカンタータの旋律も伴う求心的な作品。
主役のヴァイオリンの求道的なソロに、大規模なオーケストラは、ときに咆哮し、打楽器も炸裂するが、このあたりの制御があまり効いておらず、久保田さんのヴァイオリンを覆い隠してしまった場面も多々あり。
ここは、指揮者の問題でもありつつ、全体を聴きながら演奏して欲しいオーケストラにも求めたいところかも。
交響曲のように演奏しては、オペラ作曲家のベルクの作品の魅力は減じてしまうのだから。。。
 でも、曲の最後の方、浄化されたサウンドをミューザの空間を久保田さんのヴァイオリンが満たし、夢見心地のわたくし、死の先の平安を見せていただいたような気がしますよ・・・・
 久保田さんのドレス、ウィーンの同時代を思わせる、パープルとホワイトの素敵なものでした!!

シェーンベルクのペレアスとメリザンド
20日前に、ここミューザで聴いた「グレの歌」とほぼ同時期の、後期ロマン派の作風にあふれるロマンティック極まりない音楽。
ここでも、トリスタンの半音階的手法が用いられ、音楽は当然に男女の物語りだから、濃厚濃密サウンドが展開。
 4管編成の大オーケストラが舞台上にならび、圧倒的なサウンドが繰り広げられ、この作品では、ときおり現れる、各奏者のソロ演奏がキモともなるが、いずれも見事なもので、前半プロとの奏者の編成の違いも判明もしたわけだが、木管、それとトロンボーンセクションとホルン群がここでは素晴らしかった。
単一楽章で、その中に、登場人物たちのモティーフを混ぜあわせながら、それぞれの場面を描き分けるには、指揮者の手腕が試されるところだが、本日はなにも言うまい。
 緊張感を途切れさせず、このはてしない難曲を演奏しきったオーケストラを讃えたいです!

演奏効果や、奏者の出番は考えずに、この素晴らしい演目の順番を、自分的には、前半後半、逆にするのも一手かも、とも。

 1、シェーンベルク ペレアス
 2、ウェーベルン  パッサカリア
 4、ベルク     ヴァイオリン協奏曲

作曲年代順にもなるし、オーケストラと聴衆の集中度と熱の入り方という意味での順番で。。

 次の、このコンビの演奏会は、来年5月に、マーラーが戻ってきて3番です。
蘭子さんのメゾで♡

コンサートの時間帯とかぶるようにして、川崎駅の反対側では、有名となった「川崎ハロウィン・パレード」が行われましたようで、駅へ向かう途上、可愛い仮装の子供たちと、吸血鬼やおっかない妖精さんや、悪魔さんたちにも出会いましたとさ・・・・

わたくしは、やっぱり、世紀末音楽の方が好き・・・・・

(10/30に渋谷でコンサートの予定あり、一日前だから大丈夫でしょうかねぇ)

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2016年6月26日 (日)

シェーンベルク、ウェーベルン、ベルク アバド指揮

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関東は、梅雨まっさかり。

そして、ほぼ3ヶ月ぶりの投稿となりました。

幾多の皆さまから、暖かく、そしてご配慮にあふれたコメントを頂戴しながら、まったくご

返信も、反応もしなかったこと、ここに、あらためまして、お詫び申し上げます。

 ともかく、辛く、厳しい日々は、ブログ休止時と変わりなく続いてます。

しかも、予想もしなかったところから、いろんな矢が飛んできたりもします。

やぶれかぶれの感情は、そこから生まれ、音楽なんて、聴くゆとりも、受け入れる感情もありません。

そんな3ヶ月。

 しかし、でも、めぐってきた、「クラウディオ・アバドの誕生日」

存命ならば、今年は、この26日が、83回目。

そんな日に、アバドが生涯愛した、新ウィーン楽派の3人の作曲家を、いずれもウィーンフィルの演奏で聴きます。

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  シェーンベルク  「グレの歌」から 間奏曲、山鳩の歌

長大なグレの歌、全部を聴けないから、この作品のエッセンスとも呼ぶべき、中ほどにある場面を。
1900年に作曲を始め、第3部だけが、オーケストレーションが大幅に遅れ、最終完成は、1911年。
1913年に、シュレーカーの指揮によって初演。

後期ロマン派真っ盛りの作品ながら、最終完成形のときのシェーンベルクは、無調の領域に踏み込んでいたところがおもしろい。
1912年には、ピエロリュネールを生み出している。

むせかえるような甘味で濃厚な間奏曲、無常感あふれる死と悲しみの心情の山鳩の歌。
アバドのしなやかな感性と、ウィーンフィルの味わいが融合して、何度聴いても心の底からのめり込んでしまう。
久々に、音楽に夢中になりました。

アバドのこのライブ録音は、1992年。
88年には、マーラーユーゲントとECユースオケとで、何度も演奏していた。
そして、最後のルツェルンとなった、2013年に、この間奏曲と山鳩を取り上げた。
この最後の演奏が、掛け値なしの超絶名演で、まさに陶酔境に誘ってくれるかのような、わたくしにとってとても大切な演奏となってます。

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ルツェルンでの最後のアバド。

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  ウェーベルン  パッサカリア

ウェーベルンの作品番号1のこの曲は、1908年の作。

シェーンベルクの弟子になったのが、1904年頃で、グレの歌の流れを組むかのような、これまた濃厚な後期ロマン派的な音楽であり、グレの歌にも増して、トリスタン的でもある。

パッサカリアという古風ないでたちの形式に、ウェーベルンが込めた緻密さとシンプルさが、やがて、大きなうねりを伴って、巨大な大河のようなクライマックスとカタストロフ。

この濃密な10分間を、アバドは、豊かな歌心でもって静寂と強音の鮮やかな対比を見せてくれる。
むせぶようなホルンの効果は、これはまさにウィーンフィルでないと聴けない。

1974年、シェーンベルク生誕100年の年、ウィーンでは、新ウィーン楽派の音楽が数々演奏されたが、そのとき、アバドは、ウィーンフィルとこのパッサカリアや、5つの小品を取り上げ、NHKFMでも放送され、わたくしはエアチェックして、何度も何度も聴いたものだ。
 その音源は、いまも手元にあって、あらためて聴いてみても、若々しい感性が燃えたぎり、ウィーンフィルも、今とはまったく違う、ローカルな音色でもって、それに応じているところが素晴らしい。

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  ベルク  交響的組曲 「ルル」

新ウィーン楽派の3人のなかで、一番若く、そして一番早く死を迎えてしまったベルク。

ウェーベルンと同じく、1904年に、シェーンベルクの弟子となり、以降、ずっとウィーンで暮らすことになるベルクだが、ユダヤの出自であった師がアメリカにのがれたのに対し、ベルクはユダヤではない代わりに、その音楽が退廃音楽であるとして、ナチス政権成立後は、その活動にかなりの制約を受けることとなった。

そんななかで、生まれたのが「ルル」。
破天荒な青年時代を送り、ぜんそくに悩まされ、病弱であったベルクは、文学好きということもあって、オペラの素材には、生々しい死がからむ、いわばヴェリスモ的な内容を選択した。
それが「ヴォツェック」であり、「ルル」である。
さらに、晩年の不倫も、「ルル」の背景にはあるともされる。

人生の落後者のような軍人と、魔性の女、ファム・ファタール。
それらが、悲しみとともに描かれているところが、ベルクの優しさであり、彼独自の問題提起の素晴らしさ。

ことに、「ルル」の音楽の運命的なまでに美しく、無情なところは、聴けば聴くほどに、悲しみを覚える。
自分の苦境に照らし合わせることで、さらにその思いは増し、ますます辛く感じた。
そんな自分のルルの聴き方が、また甘味に思えたりするのだ。

「ルル」は、1928~35年にかけての作品。
間があいているのは、アルマの娘マリーの死に接し、かのヴァイオリン協奏曲を書いたためで、ベルクは3幕の途中で亡くなり、未完のエンディングを持つ「ルル」となった。

アバドは、ベルクも若い頃からさかんに指揮していて、70年のロンドン響との作品集に続き、ウィーン時代の94年に、ウィーンフィルといくつもの録音を残している。
ニュートラルなロンドン盤もいいが、やはり、より濃密で、ムジークフェラインの丸みのある響きも捉えたウィーン盤の方が素晴らしい。

ロンド→オスティナート→ルルの歌→変奏曲→アダージョ

オペラの場面をシンフォニックにつないだ組曲に、アバドは、オペラの雰囲気も感じさせる迫真性と抒情をしのばせた。
「ヴォツェック」は何度も指揮したのに、「ルル」は、ついに劇場では振ることがなかった。
ウィーン国立歌劇場時代、上演予定であったが、辞めてしまったため、その計画を実現しなかったから、この組曲盤は、アバド好きにとっては貴重なのであります。

さてさて、暑いです。

まだ梅雨だけど、そぼ降る雨はなくて、晴れか土砂降りみたいな日本。
熊本の地震もあったし、大きな地震への不安は尽きない

ばかな都知事や辞めたけど、疑惑は消えないし、消化不良のまま参院選と、まもなく都知事選が始まる。
矛盾だらけの政治に社会。
 そして、海外へ眼を転ずれば、どこか某国が、偉そうに軍船で領海侵入を繰り返し、虎視眈々と長期計画で持って、ねらってきているし、さらに英国のEU離脱が、世界規模でもって、政治経済に影響を与える流れが進行中。

今後もトピックは、まだまだ続出するでしょうが、ブログ休止してた間に、こんないろんなことが起きてしまう2016年。
「ルル」の原作ではありませんが、「パンドラの箱」が次々に開いてしまうのか・・・・

しばらく、また消えますが、もう事件事故災害は勘弁してください、神様。。。

それでは、また、いつか。

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2013年1月23日 (水)

新ウィーン楽派による「J・シュトラウス」

Akabane1

ちょっと華やか、でもこの駅前を発し、ちょっと行くと、そこそこの場末感としみじみとした庶民感覚がしっかりと味わえる、ここは北区赤羽。

最近、お気に入りの街です。

広くはないけど、ぜんぶあり、ぜんぶ心地よく人懐こい。

Akabane2

よく見れば、AKABANE、軽くうかがえばAKB。

ナイスじゃございませぬか。

今日は、シェーンベルクを中心とする新ウィーン楽派の面々による、ウィーンの彼らのちょっと前のトレンド、先達のJ・シュトラウスのワルツの編曲バージョン作品を。

神奈川フィルの定期公演の演目のお勉強の流れで。

  ニコライ  「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲

  ハイドン   トランペット協奏曲

           Tr:三澤 徹

  ブラームス=シェーンベルク編 ピアノ四重奏曲第1番

    下野 竜也 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

 2013年1月25日 (金) 19:00 みなとみらいホール

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  J・シュトラウス 「皇帝円舞曲」 シェーンベルク編曲

            「南国のばら」  シェーンベルク編曲

            「酒、女、歌」   アルバン・ベルク編曲

            「宝石のワルツ」 ウェーベルン編曲

      ボストン交響楽団 室内アンサンブル

                      (1978 ボストン)


あまりに有名な喜遊感たっぷりのウィンナ・ワルツの名曲の数々は、わたしたち日本人には、NHKが放送してくれるきらびやかな黄金のムジークフェラインでの映像とともに、甘く切ない休日音楽としてすりこまれ、認識されているかと思います。

そのワルツを、約40年ほど活躍期があとのウィーンの次ぎの世代がサロン風な親密な音楽にしたてあげたのがこれらの編曲バージョン。

シェーンベルクはアマチュアから発し、ツェムリンスキーの強力な後押しを経て、「浄夜」や「グレの歌」で成功を勝ち得たものの、ウィーンではなにかとユダヤの出自が足を引っ張るものとなった。
真正ユダヤ教も隠し、プロテスタントしてふるまいつつも、かくなる不遇。

一方で、ベルリンではキャバレー・ソングで小金を稼ぐこともしたが、でもやがてRシュトラウスに認められたりして、音楽界の中央に出るようになり、私的な音楽レッスンで知り合ったウェーベルンとベルクとは完全に意気投合し師弟の間柄となる。
1904年のことだが、彼らの連動作業は、1920年代、J・シュトラウスのワルツの室内楽化で三者三様の成果をもたらすこととなりました。

さらにそれぞれ、弟子は先生の作品を、先生はバッハやブラームスといった偉大なドイツの先達を、ウェーベルンはさらにバッハを極め、ベルクは同時代のシュレーカーを、といった具合に各自が驚きの編曲の成果を出しているところが、この新ウィーン楽派の類い稀な存在であります。

上記のように、この音盤に収められたそれぞれは、J・シュトラウスの原曲が1880~90年代ということで、彼らの編曲バージョンとは30~40年ほど経た頃あいのもの。
第一次大戦後、次の戦争前のある意味怪しい爛熟期にあり、マーラー後、シェーンベルクと一派たちは無調から12音へと変転の頃。
日本は、大正時代の上向き文化吸収時代でありました。

3人の個性は、さほど明確ではありませんが、ピアノやアルモニウム、打楽器の多用が目立ち、妙に不安感をつのるのがシェーンベルク編。
優しくマイルドで、原作に響きが忠実、かつロマンティックなベルク版。
室内楽的で精緻な細やかさを持ち繊細かつ透明感あふれるウェーベルン。

当時のコンマス。シルヴァーシュタインが中心のベラボーにうまいボストン響のアンサンブルのこの演奏は、まったく素晴らしくって、味わいと機能性とにかけてません。
DGの名作のひとつです。

あとアルバン・ベルクSQがこれらに自在な演奏を残してますが、それはまた別の機会に。

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2012年10月13日 (土)

神奈川フィルハーモニー 第284回定期演奏会 イシイ=エトウ指揮

Minatomirai

いつもと違った場所からパシャリと1枚。

あの先で、これより神奈川フィルの10月定期公演ですよ。

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      ブラームス   ヴァイオリン協奏曲

                「ヴェニスの謝肉祭」(アンコール)

           Vn:シン・ヒョンス

      ウェーベルン  小管弦楽のための交響曲

      J・シュトラウス 「皇帝円舞曲」

      ラヴェル     「ラ・ヴァルス」

   キンボー・イシイ=エトウ指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団


                 (2012.10.12 みなとみらいホール)

「マーラーとその時代、爛熟ウィーンへの旅」のお題に基づいた、不可思議兼よく考え抜かれたプログラム。
一昨年のちょうど10月、コープランドや新世界で神奈フィルとの相性ばっちりの素敵な演奏を聴かせてくれたナイスガイ、エトウさんイシイさんの指揮に期待が高まりました。

・・・ですが、終わってみると、あれ? こんなはずじゃ?

という印象が正直なところ。
どうしちゃったんだろ、調子が悪そうで、キレがなく、オケともしっくりこないままに、「ラ・ヴァルス」をむかえ、そして最後はさすがに勢いで華々しく終了されてしまった感じ。

ブラームスの協奏曲から、ヴァイオリンのシン・ヒョンス嬢に気圧されていた感あり。
若い彼女、チョン・キョンファやサラ・チャンらの先輩たちとも違った個性・・・・との触れ込みだったけれど、超絶技巧を駆使したアンコールも含め、どうしてどうして、自己主張たっぷりのかの国ならではのパッション系のヴァイオリンでありました。
繊細さ、力強さ、歌いぶり、いずれも強調され、これでもかというばかりに圧倒的。
スゴイなぁ、と感心しながら聴くことしばし。
でもチャイコフスキーならともかく、これはブラームスだよなぁ。
うむ、豊かな才能は、これから年月を経てどう音楽をとらえ、開花してゆくのでしょうか。
いまのところは、わたしの思うブラームスとは遠いところにあるブラームスでした。
でも、第2楽章のオーケストラはふくよかで美しかった。
 

コンマスの石田氏にピチカートを強要(?)し、それが弦楽アンサンブルに伝播しつつ、目もくらむ技巧でもって、ひょいひょいと弾いた「ヴェニスの謝肉祭」。
すっかり圧倒されましたよ。
これこそ、スゴイのひとこと。

20分の休憩をはさんで、後半に期待。

いきなりウェーベルンの不思議世界につれていかれてしまい、緻密な時間空間を10分間息を殺すようにして楽しみました。
ブーレーズの冷徹な演奏のCDに慣れてしまっていたものですから、ちょっと緩くは感じましたが、こうした曲を取り上げてくれたことは実にうれしい。
コンサートには、こうした刺激も必要ですからね。
 ただ、曲の配列からして、ちょっと異質すぎましたかね。
後半は、フルオケの曲ばかりにして、オーケストラの温度を高めていったほうがよかったかも。
同じウェーベルンなら「パッサカリア」とか、ベルクの「3つの小品」とか。

「皇帝円舞曲」は、異次元に持っていかれたこちらの耳を補正できぬまま、どこか余所行き風に聴こえてしまったのは、こちらのせいかしら?
いや、神奈川フィルならもっと美音の爆発があってもいいはず、と思いつつ終わってしまった10分間。

うーむ、ラヴェルに期待だな、とぎっしり勢ぞろいのフル神奈フィル。
でもラヴェルならではの精緻さ・精妙さがちょっと足りなくて、イシイさんとエトウさんの指揮姿とオーケストラの音に乖離が感じられる。やっぱり体調でも悪いのか、と思ってしまう。
でも、ラヴェルの巧みな音楽は、そんな思いを最後は見事に吹っ飛ばして、ゴージャスなエンディングを華麗に迎えてしまうのでした。
そして、ここに至って、さすがは神奈川フィル!と溜飲を下げるワタクシでした。

忙しすぎの神奈川フィルの皆さん、今回は文句言ってしまいすいません。
聴く側にも夏の疲れが出てますし、次回は満員御礼の「皇帝」と「ヘルデン・レーベン」をバッチリ聴かせていただきます。

演奏終了後、退職されるファゴットの境野さんへの花束贈呈セレモニーがありました。
石田コンマスは、こんな厳粛なムードでも笑いをとってしまうんですね(笑)。
境野さん、お疲れ様でした。

そして、アフターコンサートは、新メンバーも交えて、終電まで飲みまくり。
こちらもお疲れ様でした。

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こちらは、日付が変わった桜木町駅前。

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2012年10月11日 (木)

神奈川フィル定期演奏会 前夜祭

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池の縁に立っただけで群がる鯉たち。

黒いのもいますが、色合い的に目立ちませんね。

こんな鯉より、群れずに、静かに佇む姿の方がよいですな。

でも、鮮やかなもんです。

明日は、神奈川フィルハーモニー10月定期演奏会

  ブラームス   ヴァイオリン協奏曲

         Vn:シン・ヒョンス

  ウェーベルン  小管弦楽のための交響曲

  J・シュトラウス 「皇帝円舞曲」

  ラヴェル     「ラ・ヴァルス」

   キンボー・イシイ=エトウ指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団


  2012年10月12日(金) 19:00 みなとみらいホール

「マーラーとその時代、爛熟ウィーンへの旅」が今シーズンのお題。

J・シュトラウス(1825~1899)、ブラームス(1833~1897)、ラヴェル(1875~1937)、ウェーベルン(1883~1945)の4人。
ワルツ王もブラームスも以外ながら、思えば世紀末を生きた作曲家。
間にマーラー(1860~1911)をはさんで、シーズンテーマに合致し、どうしても玄人好みになりそうなテーマの中で、一見とりとめないながらも、有名曲もうまく配分した巧みなプログラムです。

Brahms_violin_con_mullova

ブラームスの協奏曲は、韓国女流のシン・ヒョンスさん。
若い美人ですぞ
女流先輩、キョン・ファ・チョンやサラ・チャンとの違いを確かめたいです。
で、ムローヴァは、女性演奏家にある情熱の発露はどちらかというと控えめで、クールで知的なアプローチが先行するタイプです。
アバド(当時噂のふたり・・・)とベルリンフィルの明晰で確固たるバックを得て、まっすぐピュアなブラームスのサントリーホールライブです。

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12音技法に則った、ウェーベルン後期様式の名作、交響曲op21は、録音も少なめ。
難解なれど、何度も何度も聴いてゆくと、静的かつ空間美を持った音の配列に魅せられるようになってくる。
聴いてると、何もおこらないけれど、実は時間の経過を音にした10分間を過ごしてしまった自分に気がつく。
ブーレーズの冷静かつ冷徹な指揮が切れ味鋭いナイフみたいだ。
1度目のCBSへのウェーベルン全集には、この曲は入ってなかった(はず)。

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ここで、J・シュトラウスのウィンナ・ワルツが演奏されてしまうことの大胆さ。
思えば、新ウィーン楽派とブラームスとシュトラウスって、大いに結びつきがあります。
12音を聴いて、その真反対の調性全開の曲とはまた刺激的なプログラム。
聴きても、演奏側も、ともに気が抜けません。
そして、今宵はウィーンとは遠いアメリカのメジャーオケのゴージャスだけど、以外に渋い演奏で。
オーマンディとフィラデルフィアの演奏は、色気や遊びは少なめだけど、とても音楽的で音楽そのもの素材のよさを味わうことができる。時としてケバいところは録音のせいかとおも思います。
旧オーストリア・ハンガリー帝国出身指揮者とアメリカンオケとの組み合わせ。

Ravel_bernstein

ラヴェルのラヴァルスがここにあるのは、ウィーンのワルツつながり。
コンサートの大団円を迎えるに相応しいゴージャス演目。
華奢できらびやかな音色のオケ、神奈川フィルのラヴェルは最高なんですよ、みなさん。
絶対、絶対に、めくるめく音色の洪水とトロける甘味なる雫に全面降伏してしまうであろう明日のワタクシ。
おフランスの本場オケ(フランス国立管)とアメリカンな指揮者バーンスタインの組み合わせ。ときに粘っこい指揮者にしっかりついてゆくオーケストラだけど、最後の猛烈なる向こう見ずな追い込みには、ほとほと興奮させられます。
この曲は、ほんと、大好きでして、アバド、ブーレーズ(NYPO)、プレヴィン(VPO,LSO)、ハイティンク(ACO)、小澤、メータ等々、もちろんアンセルメ、クリュイタンス、マルティノン・・・・。往年系の演奏ばかりを好みます。

明日の指揮者は、注目の日系指揮者です。
ドイツのオペラハウスでの活躍も目立ち、準・メルクルのような存在になって欲しいと願うイシイさん&エトウさんなんです。

まだ間に合います、明日12日、横浜へ、神奈川フィルへ是非。

「神奈川フィル全演目レビューの過去記事」

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2012年9月17日 (月)

神奈川フィル定期演奏会 後夜祭

Minatomirai_2_2

悪化する中国の治安。

そんなところに、神奈川フィルが行ってどうにかなってしまったら私たちファンは困ってしまうことになりました。
早く、まともな文化交流くらいができるように戻って欲しいものですが、しばらく無理でしょうな。

日曜の晩に、暴徒のニュースとバイオハザードの群がるゾ○○をチャンネル変えながら見ていたら、どっちも同じに見えてきてしまった・・・・。

そんな悪夢はいまは置いといて、神奈川フィル定期での演目を聴いて、3人の作曲家に興味をお持ちの皆さんに、「聴いてみるならこんな曲」をご案内。

Abbado_webern_3

  ウェーベルン オーケストラのための5つの小品

           オーケストラのためのパッサカリア


演奏会で聴いた6つの小品と対のなすような作品。
6つの小品が「動」ならば、5つの小品は「静」。
5分あまりの演奏時間の中に、時間が凝縮されたようで、なにも起こらない5分間だけど、とてもその5分間が大切に思えてくるような濃密な瞬間を味わえる音楽。
アバドが初来日したとき、評論家先生たちは、ベートーヴェンやブラームスは酷評したけれど、この曲を静寂で歌うように演奏したアバドに驚嘆した。

それと作品番号1のパッサカリアは、初期作品だけに、後期ロマン派臭プンプンの濃厚ロマンティシズムあふれる音楽。
こちらも10分に満たない演奏時間だけれど、内容は濃い。
マーラーとツェムリンスキーの流れの中にあるこの曲は、やはりウィーンフィルで聴くのが一番。ホルンの響き、泣けます。
神奈川フィルで聴きたい曲、上位に位置します。
かつて、ジュリーニとウィーン響の来日公演で聴きました。

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  R・シュトラウス  ホルン協奏曲第1番

2番を聴いたら、やはり1番。
こちらも朗々たるホルンが屈託なく響き渡る名曲ですよ。
このザイフェルト&メータ盤は、アルプス交響曲とのカップリングで、アルペンホルンのジャケットがいかにも、この曲にもお似合いです。
一般には1番の方が有名ですが、2番が楽しめたら絶対にこちらもお薦め。

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  R・シュトラウス  オーボエ協奏曲

シュトラウスの協奏曲で、一番すぐれた作品。
ホルンの2番と同じく晩年の作品で、こちらも澄み切った明るい基調で、オーボエソロはよどみなく常に吹き続け、歌い続ける難役です。
まるで、オペラのようなこの協奏曲は、しみじみと達観した雰囲気も漂います。

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  R・シュトラウス 歌劇「カプリッチョ」~「月光の音楽」

シュトラウス最後のオペラの、それもヒロインの最後のモノローグの前に演奏される絶美の間奏曲。
ホルンのソロが紡ぎ出す透明感あふれる豊饒かつ繊細な音色。
銀色の雫が舞い降りてきそうな夕暮れの音楽。
わたしの好きなオペラの中でも、上位にくる「カプリッチョ」の神がかり的に美しい、「月光の音楽」とそのあとの伯爵令嬢マドレーヌのモノローグ。
この曲も是非にも、神奈川フィルで聴いてみたい

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   ブラームス   ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調

第2交響曲はニ長調で、かつ全楽章が長調の明るく、優しさにあふれた交響曲でした。
次月のプログラムにのるヴァイオリン協奏曲もニ長調だけど、こちらは気品というか高貴さが先にたち、交響曲の持つ優しい微笑みとはまた違う魅力があります。
 というわけで、第2交響曲のあとは、ほぼ同じ頃に書かれたピアノ協奏曲第2番はいかがでしょうか。
4つの楽章を持つシンフォニックな協奏曲。季節で言えば、「ブラームスの秋」のイメージよりは、春、それも5月ぐらいの好天がお似合いのうららかで、明るく幸せな音楽です。
これもまた神奈川フィルで是非お願い。

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麦酒を背景に、土曜日のアフターコンサートの料理の数々。
地産地消、神奈川県内の素材を多く使ったお料理はとてもおいしかったです。
そして、こちらで醸造もされているビールも
ちょっと飲みすぎました。

  横浜ビール「驛の食卓」

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2012年9月16日 (日)

神奈川フィルハーモニー 第283回定期演奏会 伊藤翔指揮

Minatomirai

まだまだ暑い土曜日の昼のコンサート。

都内でも、魅力的なコンサートやオペラもたくさんのこの日。

本格シーズンのスタートです。

そして、神奈川フィルから巣立つ若い指揮者を眩しい想いで、聴くことができました。

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   ウェーベルン  オーケストラのための6つの小品

  R・シュトラウス ホルン協奏曲第2番

  スラヴィッキー  ソロ・ホルンのための音楽~第3楽章
                           (アンコール)

       Hr:プジェミスル・ヴォイタ

  ブラームス   交響曲第2番

   
       伊藤 翔 指揮 神奈川フィルハモニー管弦楽団

              (2012.9.15
 みなとみらいホール)

伊藤翔さん、というか翔クンと呼んだ方が、神奈川フィルを聴いてきたファンとしては、親しみがあります。
ウィーンに学び、著名指揮者に師事、今年3月まで神奈川フィルの副指揮者をつとめるかたわら、昨年は、ルトフスワフスキ指揮者コンクールで2位受賞した、1982年生まれの若い翔クンです。

神奈川フィル定期デビューは、実に堂々と、そして爽やかなものでした。

「マーラーとその時代、爛熟ウィーンへの旅」が今シーズンのお題。
昨シーズンのマーラー特集を汲んでの内容。

今回は、シーズン当初にブラームスのハイドン変奏曲から、ウェーベルンへと曲目変更がありました。
これまた、実に見識高いもので、次回も再びウェーベルンは実に嬉しい。
精緻で、緻密な構成のウェーベルンの音楽は、ライブで聴くと静寂のピアニッシモがとりわけ美しく感じられ、オケの皆さんとともに、われわれ聴き手も、その緊張感を共有できる。
この日の「6つの小品」は、音楽の中にある静寂の間と、音色の美しさ、ピアニッシモから最強フォルテまでの鮮やかな対比。
多分に慎重な出だしだったけれど、そのあたりが見事に決まっておりました。

次いで、チェコ出身のヴォイタ氏のホルン。伊藤氏より若くて、はるかに大きいヴォイタ君は、83年生まれ。
ベルリン・コンツェルトハウス管(旧ベルリン響)のソロから、今秋はベルリン・シュターツカペレのソロに転じる、若き注目株。
若書きの1番の方ばかりを聴いてしまう傾向があったが、こうしてじっくりと、後年の2番を聴いてみると、シュトラウス晩年の澄み切った心境の作風の刻印を随処に聴くことができました。
まず、なによりも、いい曲だなぁ、と思わせる演奏。
さりげなく演奏しているけれど、実は難易度がむちゃくちゃ高い。
大きい人だから、ホルンがおもちゃみたいに見えちゃうし、あんまりにもスイスイすらすら吹くもんだから、唖然としている暇もない。
これ誉めてるんです。こんだけ余裕を持って演奏されるとヒヤヒヤせずに、曲に没頭できます。そして何より、確かな技巧もさることながら、その音色の美しさに感嘆。マイルドで輝かしいそのホルンは、R・シュトラウスにぴったり。
このホルンで、アルペン交響曲や月光の音楽を是非聴いてみたい。
 で、神奈フィルの煌めくシュトラウス・トーンは、この曲でも健在。
ことに第2楽章の緩やかで、優しい旋律は、前回定期の「インテルメッツォ」や「家庭交響曲」とも相通じるほのぼのと達観した名品でした。
若いオーボエの佐藤君、見事でした。
 ソロと指揮者の二人の大小コンビはとても相性よく感じましたね。

さて後半のブラームスの2番。
心持ち早めの運びで1楽章。わたしの好みは、もう少しゆったり目。
この楽章では、オケももっと心地よく歌わせた方がよかったかも。
でも、新芽の息吹を感じるようなフレッシュな表情のブラームスは悪くないぞ。
木管とピチカートの終結部では、安心して夢見るような気分に浸ることができましたよ。
 思いのほか渋く、じっくりとまとめた第2楽章は、堪えた寂しさと若々しい抒情が交錯する素晴らしい演奏でした。
さらに、鈴木さんが戻ってきた3楽章の優しいオーボエを中心とした木管と弦の掛け合いの妙は、神奈フィルの音色の美しさを堪能できました。
 終楽章へは、トゥティで突入して欲しかったけれど、爆発は最後のお楽しみで、淡々と着実な歩み。もっとギラギラと爆走するかと思ったら、好漢翔クンは、浮足立つことなく、大人のブラームスを目指してまとめ上げている。
しかし、歓喜爆発のエンディングでは、テンポもみるみる上げて、これまで押さえ気味だった金管も全開となって、ホール一杯に喜びが響き渡る晴々しい旅立ちを飾る終結となりました。
もちろん、大ブラボーの拍手喝さいでございました。

指揮者を讃える、オーケストラのみなさんの暖かい足踏みと拍手もとても印象的。好ましい指揮者の門出。
気持ちのいい、素敵なコンサートを聴くことができました。

Yokohama_beer

これもまたお楽しみ。アフターコンサートは、応援メンバーに楽団のおふたりをお迎えして、横浜地麦酒、「驛の食卓」で。
こちらの常連さんのメンバーのお骨折りで、目もくらむ料理の数々、そして劇ウマの各種ビールをたくさんたくさん飲んで食べて、音楽を語りました。

来季は構想中とのことですが、客席も日に日に埋まるように見え、ブルーダル基金も右肩あがり。
中国公演の延期は、情勢を鑑み残念なことですが、神奈川フィルの明るい展望がうかがえるような、初々しいコンサートを楽しむことができ、元気をもらったようで感謝の気持ちで一杯です。

Moheat

2軒目突入。ガイジンさんもたくさんいるバーで、モヒート

本日を締めくくる爽やかな一杯でした。

でも、調子に乗り過ぎ、電車は途中までとなりました・・・・・。

みなさま、お疲れさまでした。

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2012年9月14日 (金)

神奈川フィル定期演奏会 前夜祭 

Rainbow

先週の日曜日、急な雨が降って、慌ただしく上がったあと、虹が広がりました。

しかも、虹、ダブルで

バーでは、いつもウィスキー、ダブルで、と唱えますが、虹ダブルはより嬉しいですね。

9月15日は、神奈川フィルハーモニーのシーズン後半の幕開け定期演奏会。

 ウェーベルン  オーケストラのための6つの小品

  R・シュトラウス ホルン協奏曲第2番

       Hr:プシェミスル・ヴォイタ

  ブラームス   交響曲第2番

   
       伊藤 翔 指揮 神奈川フィルハモニー管弦楽団

  2012年 9月15日(土) 14:00 みなとみらいホール


暑い日中、早めに会場に着いて、汗を覚まさないと、精緻なウェーベルンが台無しになってしまうかも。

8月より、湿気も手伝って、やたらと暑いです。

この2か月間、隣国との雲行き怪しい動向には、日々、目を離せなくなってしまった。

神奈川フィルの日中国交正常化40周年の記念公演も、招聘元の広東省人民対外友好協会から昨今の情勢から安全面確保の観点から延期の要請があり、楽団側も受け入れたとのこと、本日発表ありました。

近隣二ヶ国との繋がりも強い横浜ですが、どうも複雑な心境です。

さてと、明日のコンサート演目に関しましては、4月に聴きどころを含めCD再現コンサートを行いました。

→ウェーベルン、R・シュトラウス、ブラームス 9月神奈川フィル定期

前夜祭として、先と違う演奏で、練習しておきたいと思います。

大きな聴きどころとしては、前副指揮者の伊藤翔さんの本格定期デビュー。

それと、これまた若いチェコのホルン奏者、バレンボイムのベルリンシュターツオーパーの主席ヴォイタのソロです。

Boulez_webern

  ウェーベルン オーケストラのための6つの小品

     ピエール・ブーレーズ指揮 ロンドン交響楽団


マーラー後、ツェムリンスキーをはさんでの新ウィーン楽派は、シェーンベルクを師とするウェーベルンとベルクの3人で構成される世紀末トリオ。

ウェーベルンは作品は少ないものの、その当時の前衛的な手法において、一頭抜きん出ていて、後世、ブーレーズやケージに至るまで影響を及ぼしているとされます。

前にも書きましたが「精緻で研ぎ澄まされた緊張感」あふれるその音楽。
中間部の大フォルティッシモを頂点にした母の死を想っての怪しく光る美しい音楽です。

あまり深く考えず、その音色の変化を体で受け止められたらいいと思います。

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  R・シュトラウス  ホルン協奏曲第2番

        Hr:デニス・ブレイン

    ウォルフガンク・サヴァリッシュ指揮フィルハーモニア管弦楽団


2曲あるシュトラウスのホルン協奏曲。
父親がホルン奏者だったし、モーツァルトと同じように、息子の出世も大いに気にかけた父親。
息子は、オケ作品を書いても、ホルンが図抜けて活躍する作品が多かったりします。
18歳の若書きの1番から60年後、オペラもすべて書き終えた晩年の2番の協奏曲。

生涯、その明朗快活な作風が変わらなかったシュトラウスならではの、おおらかかつ歌にあふれた音楽です。
1番と同じく、スイスの山々にこだまするような朗々とした1楽章。
第2楽章は、シュトラウスの家庭交響曲やこれまでのオペラの一節を思わせるような、平和な雰囲気でホノボノ。
終楽章は、古典的なロンドフィナーレで、きっとヴォイタ氏の超絶技巧が冴え渡り、大盛り上がりとなることでしょう。
それとオーケストラの皆さんも、一聴、シンプルで古典風に聴こえるものの、実は奏者泣かせな曲だという情報もございました。
シュトラウストーンを持った神奈フィルの伴奏も楽しみですよ。

ブリリアントで神々しいブレインと、若きサヴァリッシュの共演は素晴らしいです。

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   ブラームス 交響曲第2番

    クラウディオ・アバド指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団


アバドの1回目の70年録音の2番は、わたくしが一番好きなブラ2の演奏。
ともかく、歌いに歌う。
音色は明るく、でも構成は豊かで、俊敏でかつ若々しい。
シュナイト翁の南ドイツ風の明るさとも違って、アルプスの山をひと超えちゃって、イタリア側から見た晴朗なブラームス。
揺るぎない私のブラ2ナンバーワンの音源です。

伊藤翔君の若い感性は、神奈川フィルとともに、どんなブラ2を聴かせてくれるのでしょうか。
1楽章の繰り返しは?
第2主題はどんなに美しく鳴らすでしょう。
そして1楽章の素敵な終わり方も聴きどころです。
少しかげりのある2楽章は、どんな憂愁を漂わせるでしょうか。
可愛い3楽章では、神奈フィルの管と弦の掛け合いが聴きもの。
そして、終楽章の若さの爆発は、みなとみらいホールにどう響きわたるでしょう。

とても楽しみです。

ブラームスの2番は、歳とともに、好きになってきました。3番もそうです。
そのブラ2で好きな演奏を列挙しちゃうと、新旧アバド、B・クレー、ハイティンク(ACO)、スゥイトナー、ベーム(VPO)、バルビローリ、シュタイン、ヤンソンス(RCO)、カラヤン(60’)・・・などなどたくさんあります。

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2012年9月 7日 (金)

ウェーベルン 6声のリチェルカーレ ブーレーズ指揮

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高層ビルを望みつつ、江戸時代よりの由緒ある寺社。

こちらは、港区三田の寺社院が密集する坂の多いアリアです。

幽霊坂、暗闇坂、蛇坂、大きなところでは魚藍坂。

なんでも、江戸城開闢いらい、城周辺より移転してきた寺社群だそうです。

都会の中でのコントラストが東京=江戸ならではです。

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   ウェーベルン (バッハ)

        「音楽の捧げもの」〜6声のリチェルカーレ


     ピエール・ブーレーズ指揮 ロンドン交響楽団


このジャンルになると、圧倒的にブーレーズのおハコです。

思えば、ブーレーズがいなかったら、新ウィーン楽派や、バルトーク、ストラヴィンスキーなども、いまみたいに、ふんだんに聴くことができなかったかも。

60年代後半に作られた、ブーレーズのウェーベルン全集。
DGに、ベルリンフィルを中心とした二回目の全集を録音はしたが、そして収録曲が微妙に異なるものの、1回目のエッジの効いた鋭い、そして問題意識に富んだ全集は、レコード録音芸術史上に名を残す名盤なことは衆目の一致するところであります。

ウェーベルンは63歳の生涯だが、短命ベルク(50歳)とともに、師シェーンベルク一門にあり、そしてともに、その作品数は限られております。
シェーンベルクが、後期ロマン派風の甘味なる音楽からスタートし、無調、表現主義、十二音と進んで行ったのと、ほぼ同じ足跡を歩みます。
がしかし、その作曲ジャンルは、室内的な作品や合唱作品が多く、管弦楽作品は、いまならCD1枚に収まるぐらいのものしか残さなかった。
ブーレーズの監修全集も、CD3枚。

大作はなく、ミニアチュア的、独創的な短編が多くて、それら緻密極まりない音楽が後世に与えた影響ははかりしれないものがあります。
こちらのブーレーズも、その作曲家としての音楽は大いに影響を受けてます。
武満徹を代表として、日本人作曲家の多くもそうかもしれません。

そして、ウェーベルンの音楽の源流は、ほかの新ウィーン楽派作曲家たちと同じく、ブラームスとマーラーの、そう伝統と世紀末音楽との流れを汲むウィーンの本流なのです。

バッハの「音楽の捧げもの」は、自由な発想で演奏できる柔軟な形態でありながら、やはりバッハゆえに厳格で孤高の側面も持っている名品。
その一部であるリチェルカーレを、ウェーベルンは、大オーケストラの作品に編曲。

原作以上に、透き通った響きを醸しだし、次々に現れる明滅するようなオケの各楽器が浮かんでは消えて、やがて、フルオーケストラの響きに収斂してゆくさまは、ウェーベルンのオリジナル作品として、しっかり受け止めながら聴いている自分を最後は見出すものだ。

ジャズの領域までにも許容範囲のあるバッハの音楽の素晴らしさと、ウェーベルンの透徹した音楽造りが結びついた、これまた名品にございます。

ブーレーズの演奏は、のちのベルリン盤よりは、こちらのロンドンでのものの方が好き。
あとは、歌と色があるアバドとウィーンフィルも!

そして、神奈川フィルでは、次週から2定期連続でウェーベルンが聴けます。
新ウィーン楽派の音楽のライブは、なかなか聴く機会もありません。
横浜へ是非!

  ウェーベルン  オーケストラのための6つの小品

  R・シュトラウス ホルン協奏曲第2番

       Hr:プシェミスル・ヴォイタ

  ブラームス   交響曲第2番
   
       伊藤 翔 指揮 神奈川フィルハモニー管弦楽団

  2012年 9月15日(土) 14:00 みなとみらいホール


明日も、新ウィーン楽派いきます。

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