カテゴリー「アイアランド」の記事

2014年5月 8日 (木)

アイアランド 「聖なる少年」 D・ライト

Azumayama_3

今日ももう1枚、吾妻山のツツジから。

日の当たる斜面に、ふんだんに咲くツツジですが、年々、だんだんと花の数が少なくなってきた気がします。

それでも、ごらんのとおり、青い空に、新緑の緑、そして、鮮やかな花の色合いが、美しすぎるくらいに、眩しいんです。

実際に、この場にいくと、ほんと、素敵なものですが、花の命の儚さにも、ちょっと哀しい気分にもなったりします。
桜は、ぱっと咲いて、ぱっと散ってしまうから、潔いけれど、ツツジの花は、色が枯れたように朽ちてきて、老いさらばえてしまうから・・・・・

Ireland_piano

  アイアランド 前奏曲「The Holly Boy」~「聖なる少年」

       ピアノ:デスモンド・ライト

                 (1994.10 @ベルン)


ジョン・アイアランド(1879~1962)は、マンチェスター近郊のバウデン生まれの英国作曲家。

アイランドは、かねてより大好きで、このブログでも何度か取り上げてきましたが、そのメインとも呼ぶべき、ピアノ作品を取り上げるのは初めて。

ジャッキーと呼ばれて可愛がれた少年のアイランドは、8歳頃から、ピアノを母に学び、やがて、13歳にロンドンに出向き、ロイヤル・カレッジを受験し、14歳からそこで、ピアノとオルガンを学び、すぐさま作曲にも興味を示し、音楽造りも始める。

16歳で、弦楽四重奏曲を書いて、それが、大御所スタンフォードの目にとまり、ドイツの古典・ロマンの音楽を叩きこまれる。
それでも、彼の本来の嗜好は、印象主義的なものであったり、ケルト文化に根差した民族主義的なもへの傾倒が強いです。
 ですから、交響曲へは目もくれなかったのです。

英国作曲家の多くは、エルガーやRVW、ウォルトンを除くと、交響曲をあまり残しておりませんので、日本ではあまり脚光を浴びないのでしょうかね。

アイアランドのピアノ作品は、ほぼ、そのすべてが小品たちの集まりです。
若書きのものから、円熟期にいたるまで、万遍なく作曲してます。

そのほとんどが、シェイクスピアを始めとする文学や、自然の風光、街の情景、さりげない日常や人々の愛などをモティーフにした優しい柔和な音楽たちなんです。

抒情派アイアランドらしい、この数々のピアノ曲は、強烈な個性や音楽が強く語ることもない代わりに、あくまでも静かで、自然な語り口で、淡々とした佇まいです。
ときに、ドビュッシーやフォーレ、場合によってはキース・ジャレットみたいにも聴こえたりもします。

前奏曲は4篇からなっていて、

 1.「低い音」~The Undertone

 2.「妄想」~Obsession

 3.「聖なる少年」~The Holly Boy

 4.「春の炎」~Fire of Spring


もっとも有名な、「聖なる少年」は、1913年のクリスマスに書かれた、クリスマス・キャロルです。
みどり子誕生のその日を、しずかな感動を持って歌うパストラーレであります。
楚々とした美しさが、胸を打ちます。
この曲は、のちに、合唱曲と、室内バージョンにへと、作者自身により編曲されておりまして、本ブログでは、ヒコックス盤を取り上げております。

5年後に追加された3曲も、それぞれに素敵です。
印象派風の「低い音」は、たゆまぬ静かな繰り返しに、耳を澄ましてしまいます。
捉えどころのない、無窮の動きを感じる「妄想」、これもまたドビュッシー風。
やってきた明るい春にも、決して浮かれることなく、慎ましいアイアランドの描く「春の炎」。

どうでしょうか、それ以外にも、素敵な曲がたくさん。

わたしは、たまに仕事しながらでも、これらの曲を静かに流したりしてますよ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年8月 2日 (木)

プロムス2012 尾高忠明指揮

Tokyotower_20120802

今日の東京タワーのイルミネーションは、金メダル獲得の日なので、ダイアモンドヴェール。

オリンピック開催中は、平日でも、金メダル出ればこうなります。

すさまじい一日だった今日、夜には東京タワーの美しい姿を見てほっと一息入れてます。

Tadaaki_otaka2
(メルボルン響のHPより)

ロンドンのプロムス2012真っ最中。

7月31日には。われらが、オダチューさんこと、尾高忠明が、古巣BBCウェールズ響を指揮して、オール・イギリスものを披露しました。

翌日の、内村選手の金メダルにも増して、うれしいことですよ、これは。

  ヴォーン・ウィリアムズ 「タリスの主題による変奏曲」

  アイアランド  「These Things Shall Be」

  ディーリアス  「村のロミオとジュリエット」〜「楽園への道」

  ウォルトン   「ペルシャザールの饗宴」

       Br:ジョナサン・レマル(アイアランド、ウォルトン)


     尾高 忠明 指揮 BBCウェールズ交響楽団
                ロンドン・ブラス
                BBC合唱団
                BBCウェールズ合唱団

               (2012.7.31 @ロイヤル・アルバート・ホール)


イェーーイ、とんでもなく、すんばらしい盛り上がりのエンディングに、ロンドンっ子たちは奇声を発し、興奮の坩堝ですよ

大合唱と独唱をともなったウォルトンの大歴史絵巻の、壮大で輝かしい幕切れでのこと。

バビロニアによるユダヤ民族捕囚の頃、ネブガドネザルの息子ペルシャザールは、ユダヤ国から奪ってきた財宝に囲まれ、その酒器でもって酒池肉林の大宴会。
ところが虚空に指があらわれ謎の文字が・・・・。
ダニエルというユダヤ人が、それを解読し、王の治世の終わりと国の分割と、読み説き、ペルシャザールは死んでしまう・・・・という、旧約の物語。

驕れるものは久しからず・・・・、旧約時代より伝わる提言でございます。

このあらましを、ウォルトンはダイナミックな音楽でもって劇的なカンタータ風にしたてました。
40分あまり、対訳があればなお楽しく聴けますが、最後の歓喜の爆発は、CDで聴いても大興奮だし、コンサートだったらむちゃくちゃ盛り上がります。

尾高さんの緻密な指揮による、着実な積み上げとその爆発は、RAHの聴衆を釘付けにしてしまったようです!
このところ、尾高さんは、この曲に集中していて、秋にも日本で指揮します。

あと、私が注目してたアイアランドの20分を超える独唱と合唱の作品。
この曲大好きなんです。
ヒコックスのCDで何度も聴いて、そのたびに深い感動を味わってました。
それを尾高さんが指揮してくれちゃうなんて。
おそらく初のレパートリーじゃないでしょうか。
第一次大戦もからんだ時期の祖国への愛も歌いこまれた高揚感と、抒情性にあふれた名品。かっこいい前半と、バリトンソロのヒロイックな歌、その後静かな部分を経て、合唱を加えて再び盛り上がる後半での大感動。
静かに消え入るような末尾も素敵なものです。
無二のヒコックス盤より、少しテンポを上げて淡々とすすめるこの尾高演奏、いいじゃないですか!
ただ、ニュージーランド出身のレマルの歌は、わたしには受け入れがたい声の揺れ方でありましたこと申し添えます。

RVWの静謐なタリスに、バルビローリ以上に、ゆっくりと情を込めて優しく進められたディーリアスの村のロミオとジュリエット。
尾高さんは、きっと、日本のことを思って、万感を込めて慈しむように指揮したのではないでしょうか。
あまりにもデリケートで美しいディーリアスです。

英国音楽の伝統を受け継ぐ指揮者がこんな近くにいたことを痛感し、感謝したくなるプロムスでした。
尾高さん、今回で1988年以来、30回目のプロムス登場でした。

Tokyotower_20120802_b

タワーを写し込んだ今宵の建物。

「アイアランド」 ヒコックス盤

「ウォルトン ペルシャザール」 プレヴィン盤
                

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2012年7月26日 (木)

エルガー「コケイン」&アイアランド「ロンドン序曲」 バルビローリ指揮

London2

千鳥が淵、一番町にある英国大使館。

20日から、日暮れとともにライトアップ・カウントダウンが行われておりまして、27日の開会のその瞬間が最終日です。

数年前、英国音楽ばかり記事にしていたものですから、英国文化を紹介する日本ブロガーとして、英国大使館の関係からイヴェントメールをいただくようになりました。

いろんな講演会や、大使館での催しのご案内を希に戴いておりましたが、勿体ないことに参加経験ゼロ。
今回のライトアップは情報いただき、そそくさといってまいりましたよ。

ご覧のとおり、建物をラッピングするみたいなユニオン・ジャックに開会式までの残り時間。
日本時間、7月26日19時20分くらいだったでしょうか。

今日は、ロンドンをテーマにした英国作曲家のふたつの序曲をバルビローリの指揮で。

Barbirolli_elgar1

  エルガー 序曲「コケイン」

   サー・ジョン・バルビローリ指揮フィルハーモニア管弦楽団


コケインは、広範には生粋のロンドンっ子という意味で、コックニー、狭義には、すなわち、ロンドン・シティーのエリアの人々のことを言いました。

ロンドン気質みたいな感じでしょうか。

エルガーの作品には、それはお高い雰囲気はなくって、労働者の市井の営みを感じさせるフレンドリーな街といった雰囲気で、それがそっくり音楽になっているんです。

後年のふたつの交響曲+1に聴かれるような、英国の夕暮れを思わせるような憂愁はここでは聴かれません。
快活で、のびのびと明るい、ナイスなロンドンであります。

Barbirolli_ireland

  アイアランド 「ロンドン序曲」

   サー・ジョン・バルビローリ指揮 ロンドン交響楽団


こちらは、エルガーの作品から35年後、マンチェスター生まれのジョン・アイアランドは、その名も「ロンドン」の序曲を書きました。

もとは吹奏楽のための「コメディ」序曲という作品を書いていたアイアランドに、エイドリアン・ボールトがオーケストラ化を勧め、「ロンドン序曲」としてリニューアルしたもの。

こちらも、ナイスで明るい雰囲気で、盛り上げにも事欠きません。
ですが、エルガーのロンドンと少し違って、都会の矛盾をそこはかとなく捉えていて、中間部では哀愁溢れる旋律を伴って、頬杖をつきたくなるようなアンニュイムードになるのです。
エルガーとの世代の距離を感じるとともに、戦争の影も認めざるをえません。
 でも、それはいっときのはなし。
曲はすぐに、快活なムードに戻り、元気にエンディングを迎えます。

どちらの曲にも感じる、イギリス気質。

この2曲に、V・ウィリアムズのロンドン・シンフォニー、コーツの楽しいロンドン組曲などとともに、ロンドンを描いた音楽は、どちらも個性的。

サー・ジョンの慈しみと歌心あふれる演奏は素晴らしいです。

London3

いかにも英国。

London1


そして、普段は、こんなふうに絶対撮れない大使館の門扉。

オリンピックそのものは、どこの国でもあんまり盛り上がってないんじゃないかしら。

世界はいまそんな風潮になりつつあるような気がします。

でも、英国好きとしては、国とロンドンそのものから常に目が離せません。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年9月30日 (金)

アイアランド 「忘れ去られた儀式」 ヒコックス指揮

Azumayama_cosmos_5

向こうは海、のいつもの山の上。

木の中の木漏れ日は、朝日でした。

Ireland_hikox

ジョン・アイアランド(1879~1962)。

英国音楽作曲のなかでも、かなり好きなアイアランド。
そしてまだ未聴の作品も多いし、音源化されていない曲も多い。

快活であったり、詩的でデリケートな小品も多いアイアランド。
そんななかで、一番のお気に入りが、「The Forgotten Rite」「忘れ去られた儀式」。
と、訳していいのでしょうか?

アイアランドの比較的初期の作品で、若い時分にチャンネル諸島のジャージー島とガーンジー島に訪問した時の印象を後にまとめたもので、1912年の作曲。
そのチャンネル諸島は、英仏海峡のフランス寄りに位置するノルマンディの島々。
位置的にはフランスに近いけれど、歴史的には英国領となっており、英国王室の所有とされる島々。
 しかし、イギリス連合王国には属さないという複雑な性格となっているそうな。
バイキングの名残もあり、そしてケルトの雰囲気もあり、という英仏・北欧の入り混じった独特の雰囲気みたい。
そして、なんといっても美しくも険しい海に囲まれた壮大な自然をその立地から想像できる。

Guernsey

ガーンジー島の画像を探しだしました。

それと、CDジャケットは、ジャージー島の古城のあと。

これらのイメージそのまま。

アイアランドの曲の中で、もっともロマンテックで、甘味な詩情と神秘的な様相と、壮絶なクライマックスを備えた大オーケストラのための小品。
マンチェスター生まれの英国人ながら、海を愛し、ケルトの文化にも深く共鳴していたアイアランドは、かつて訪れた島々の思い出を、その独特の感性でもって思いおこし、交響的な前奏曲としてまとめた。
その名もForgotten Rite。
いにしえを偲ぶ、遠い昔に海に囲まれたその地に住んだ人々や、その風物、そして自然を読み起こしたものと聴こえる。
ドビュッシーを敬愛したアイアランド独特の神秘感と、ミステリアスな曲想と響きに包まれてます。

ごく静かに弦の囁きのようなモティーフで始まるが、それは海のさざ波のよう。
そこに、木管やホルンが優しい合いの手をいれつつ、神秘的に始まる。
やがて、ディーリアスの音楽にも通じる、大オーケストラによる情熱的な、しかし、甘味でどこか荒涼感をともなった大いなるクライマックスへと高まっていきます。
でも、そこに待っていたのは、ハープの清涼なグリサンドと、高弦の澄み切った響き。
急速に曲は静かになって、ハープやチェレスタを神秘的に伴いながら消え入るように終えてゆく・・・・・・・。

10分足らずの曲ですが、こんなに詩的で、心に静寂と安らぎ、そして自然の神秘感を夢想させる曲は知りません。

バルビローリの演奏で知ったのがもう20年以上も前。
ディーリアス好きならば、そしてバックスやモーラン、ハゥエルズにも通じるアイアランドの素晴らしさが共感いただけると思います。
そして、アイアランドを集中的に録音してくれていたヒコックスロンドン響のクールでかつ熱い演奏には涙が出ます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年8月 9日 (火)

「English Landscapes」 マーク・エルダー指揮

Narita

稲、真っ盛り。

畦道は、稲の香りでむせかえるようです。

所用で行った成田の某所。
暑くて、タオルハンカチが何枚もないとだめ。
館山では、早場米が刈り入れられたけれど、東・南関東の米はいったいどうなるんでしょう。

こうした日本の田園風景も危機なのか。
へたすりゃ、ここに太陽光パネルや風車が立ち並ぶ、ぶち壊しの風景になってしまうのか。

そんなの許せないし、見たくない。
でも、場所によってはそうなってしまうのでしょう。
新たな自然破壊と生態系への影響負荷となるのでしょう。
人間中心に考えるとそうなるのだし、飽和してしまって、行き詰ったいまの人間社会の行き着く果てでありましょうか。

同じ島国、英国の風景も緑に溢れて劇的で美しいものです。

Eng03

そのロンドンで暴動がおこり、周辺都市に広がっている。
ニュースで知り、英都でまさかそんなことが、と思った。
事の発端は、黒人男性を警察官が射殺したことで、その追悼集会から暴発したらしい。
ヨーロッパの老舗大国は、マイノリティや格差民族が厳然といるので、あのあたりからの不満の噴出によるもの。
それらが連鎖して、経済格差や政策への不満として広がっていった。
特定の場所を襲撃してゆくという組織的な活動にもなりつつあるようだ・・・・。

これらはいったい・・・。

先進も後進も社会主義国もまったくありまえん。
世界同時苦境(不況)の大連鎖に陥ったのでしょうか。

これって、マジやばいことだと思います。
アメリカの大沈没に中国の相変わらずの隠蔽体質とメッキ主義。
政治不信と震災・人災から立ち上がれない日本。
不安な中東にアフリカ・中南米。
消去法で、残る安全地帯はどこにもありません。

少し酩酊状態で書き散らす記事。

とんでもない8月になるような気がします。

役人や大企業の方々も、安閑としてはいられなくなります。
中小企業はこれ以上ないくらいに厳しいです。
わたしのまわりでも破綻する人や、少し前には命を絶つ人も出てきてます。

身を軽くして、持つ人生から持たない人生に、ダウンサイズしながら捨て去り人生も必要なのかもしれないと思いつつあります。
もうなにもかも充分に満ちたりでるのですから、これ以上の便利や、かっこいい人生はいらないかもです・・・・。

なんか、爺さんの心境になってきました。

English_landscapes_elder

本題の音楽にやっとたどりつきました。

英国の風景、と題する1枚。

英国音楽好きにとって、心から愛する作曲家と、その詩的で素敵過ぎる作品が1枚に収められたもの。
しかも、オーケストラは英国の良心ともいうべきハレ管弦楽団に、マーク・エルダーの指揮。

 バックス    「ティンタジェル」

 ヴォーン・ウィリアムズ 「揚げひばり」

 フィンジ    「散りゆく葉」~オーケストラのためのエレジー

 ヴォーン・ウィリアムズ 「ノフォーク・ラプソディ」

 ディーリアス  「川の上の夏の夜」

          「春はじめてのかっこうを聴いて」

 エルガー    「夏の激流のように」

 アイアランド  「丘」」

   マーク・エルダー 指揮 ハレ管弦楽団/合唱団
        ヴァイオリン:リン・フレッチャー
                       (2005.11@マンチェスター)


ハレ管の自主制作CD。
マーク・エルダーは、2000年来、歴史あるハレ管の常任指揮者をつとめており、ハレ管も、久方ぶりの英国指揮者のもと、かつてのバルビローリ時代の復興を思わせる、自国音楽の再生に取り組んでいる。
バルビローリのあと、ロッホラン、スクロヴァチェスキ、K・ナガノと続いたのちのエルダー。

エルダーは当初、オペラ指揮者の印象が強く、イングリッシュ・ナショナル・オペラの指揮者として少しばかり先鋭なイメージを抱いていた。
バイロイトにいきなり登場して、ウォルフガンク・ワーグナーの新演出の「マイスタージンガー」を81年に34歳にて指揮をしたが、劇場の特性を読み込めず1年で、ベテラン、シュタインと交代。
そんな経験も経て、オペラでジワジワ実力をつけ、いまや英国楽壇の雄のひとりです。

どちらの曲もしみじみと、味わい深く、自国ものを慈しみながら丁寧に演奏していることが聴いてとれます。

シャープで絶海の古城を思わせるような名品ティンタジェル。
バルビローリやB・トムソンの超名演と並び立つ素晴らしい演奏。

有名すぎる「揚げひばり」は淡々としたつつましい仕上げ。
フィンジの「落ち葉」は、真夏に聴くと、先取りの秋の悲しさが満載。
早く秋がこないかな・・・・。
どうように、メロディアスなRVWのラプソディには嘆息してしまい、ディーリアスの高名な小品では、ここにこそ、日本の季節の風物とオーヴァーラップする親しみと忘れられた日常を脳裏に思い描くのだ。
エルガーとアイアランドのふたつの無伴奏合唱作品。
実に爽やかで気品に溢れてます。英語の美しい語感も本場のものに感じちゃいます。

以上、素敵すぎる英オムニバスCDでございました。

大好きな英国。

頼むから暴動なんかやめてちょーだい。
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年6月12日 (土)

アイアランド 「These things shall be」 ヒコックス指揮

Ube_5
海に沈まんとする夕陽。
海に囲まれた日本だけど、季節にもよるけど、海に朝日が見られる場所と、夕陽が見られる場所とそれぞれ。
私の育った相模湾も東よりは夕陽が見れるけど、私の街は海から太陽が昇る。
子供の頃は見てたけど、いまや不可能。
酔っていてたいてい起きれませんゆえにね。

こちらは、瀬戸内海。山口は宇部から防府にかけての海岸線。
波もなく静かですな。

Ireland_greater_love_hath_no_man_hi
ジョン・アイアランド(1879~1962)は、マンチェスター生まれの英国の作曲家。
「さまよえるクラヲタ人」は、アイアランドの記事はまだ少ないが、CDはいつのまにかたくさん集めてしまった。
正直、記事にしにくいのであります。
交響曲とオペラ以外にまんべんなくその作品を残したアイアランド。
でも大作がなく、小品や中規模作品に特化していて、大作好きの私からすると、これ一曲に絞り込めないうらみがあったのだ。

 でも思えば、すてきな作品ばかりで、ピアノ協奏曲やピアノの小品集、歌曲、ヴァイオリンソナタなどなど、一度はまったら病みつきになる曲ばかり。
その魅力は、アイアランドが愛したケルトのファンタジーを漂わせた、いわばバックス風のミステリアスな雰囲気と、英国風の田園的な抒情と国教風の厳格さ。
これらの融合でありましょうか。
今回取り上げた、亡きヒコックスの残したアイアランド・シリーズの一環の1枚は、声楽作品と管弦楽作品を取り上げた、いかにもシャンドス=ヒコックスらしいCDで、アイアランドの魅力をほぼ万全に味わえることができるんだ。

 1.Vexilla Regis (王の御旗)
 2.Greater Love Hath No Man (至上の愛)
 3.These Things Shall Be (これらはきっと)
 4.A London Overture (ロンドン序曲)
 5.The Holy Boy (聖なる少年)
 6.Epic March (エピック・マーチ)


    S:パウラ・ボット        Ms:テレサ・ショウ
    T:ジェイムス・オックスリー  Br:ブリン・ターフェル
          Org:ロデリック・エルムス

  リチャード・ヒコックス指揮 ロンドン交響楽団/合唱団
                         (1990.4 @ロンドン)

Vexilla Regisは、アイアランドがスタンフォードの元で学んでいた19歳の時の作品。
オルガンにトランペット・トロンボーンを伴う合唱曲で、原典は6世紀の聖歌で、受難週の日曜用の讃歌で厳かかつ壮麗な作品に、背筋も伸びます。

至上の愛は、こちらも教会音楽でモテットである。
33歳の作品を、のちにオーケストレーションしたもので、聖書の聖句を自身選びだし、つなぎ合わせた桂品。祈りに満ちつつ、アイアランド特有の抒情が光ります。

These Things Shall Beは、このCDの中では一番の大曲で壮大な高揚感とともに、ひたひたと滲み出る感動に包まれること請け合い。
1937年、ジョージ6世の名を冠した合唱祭用に、BBCから作曲以来があったのは年初。コンサートは5月。A・シモンズの詩に付けた英国讃歌。
でも速筆でなかったアイアランドは、間に合わず、オーケストレーションの一部を生徒のアラン・ブッシュに頼み、完成させ、ボールトの指揮により初演された。
 この時代の作曲家のご多分にもれず、第一次大戦の影も引きずり、解説によれば、その祖国愛は、ルパート・ブルックスの「The Soldier」にも例えられるとされる。
特徴的で一度聴いたら忘れられないオーケストラのリズムにのって高揚した合唱が繰り広げられる前半。
そのリズムをいろいろ変化させつつも、味わい深いオーケストラによる中間部。
やがて、後半に入り、大らかでかつ感動的な旋律が弦のユニゾンで現れる。
この旋律はほんと素晴らしくて、ついにバリトンによる熱い歌となって登場し、合唱に広がって、何度も繰り返され徐々に壮麗さを増してゆく。
しかし、最後はそれも徐々に静まり、オーケストラの精妙な背景を経て、もう一度クレッシェンドし、合唱が強く歌う「These things-they are no dream-shall be・・・・」
ここにいたり鳥肌立ち涙ちょちょぎれる思いだが、それもまた静まり、徐々に去りゆくようにフェイドアウトしつつ音楽は消えゆく。
これはあまりに感動的な音楽であると同時に、ちょっぴり悲しい思いも味わうのであります。

一転、ロンドン序曲は、明るく楽しい色調。1936年の作。
もとの曲は「コメディ序曲」というブラスのための作品で、ボールトの勧めでフルオーケストラ作品として生まれ変わった名作。
「コケイン」と同じようにロンドンの街の光と影を描いていて、明るく楽しい場面もよいが、中間部にオーボエで出てくる憂いを帯びた旋律は泣かせるし、次にホルンとストリングスで静かに歌われる旋律もやたらに素晴らしい。
そんな素敵な中間部をもったこの序曲は、コンサートピースとしても最適。

聖なる少年。本来はピアノソロ用に書かれたクリスマスキャロルのワンピース。
第一次大戦後、ヴァイオリンとチェロ、ピアノ用に編曲し、さらには第二次大戦後には合唱作品にも仕立てた。
嬰児誕生を静かに祝うパストラーレ的な静かなる桂曲であります。
ここでは弦楽合奏によって心をこめて演奏されております。

最後は、エピック・マーチ
痛快な行進曲。ここでもボールトが登場し、行進曲作曲を勧めたことにより1942年に誕生。
 エルガーの「威風堂々」のテイストを持った心のすくような行進曲で、中間部はさきの「These things shall be」の感動的な旋律が奏でられ、曲の最後のクライマックスにもオルガンも鳴り渡り盛大に響きわたる。

「These things shall be」を中心に据え、合唱と管弦楽作品でたくみなプログラムを組んだ、ヒコックスならでは1枚は、ほんとうに聴きごたえがあり、これまで何度聴いたことかわからない、大好きなCDなのだ。
オケと合唱もべらぼうにうまくて、ターフェルのビンビンの声も圧巻

BBCの音楽責任者を務めていた、ボールトがあってこそ生まれた作品も多々あり、英国音楽はこうした名匠たちによって豊かに育まれてきたのを痛感する。

Ube_7
しばらく立ちつくし、夕陽もすっかり沈んでしまった。

壮麗な夕日と音楽。
好きです

 

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年6月13日 (金)

アイアランド 「レジェンド」 パーキン&トムソン

Ajisai

紫陽花が盛りを迎えておりますな。

淡い色の数々、自然はこの雨の時期にほんとうにパステルの美しい花を作ってくれたものだと思う。

紫、ピンク、白、ブルーといろいろあるけれど、このラムネブルーが好きだな。

Ireland_piano_concerto_thomson

  アイアランド  ピアノとオーケストラのためのレジェンド

            シンフォニック・ラプソディ「マイ・ダン」

            ピアノ協奏曲 変ホ長調

        ピアノ:エリック・パーキン

    ブライデン・トムソン指揮ロンドン・フィルハーモニック

                         (1985.12@ ロンドン)


ジョン・アイアランド(1879~1862)は、英国音楽の中でも抒情的でメロディアスかつモダンな作風をもった人。
交響曲とオペラ以外のジャンルにそこそこの数の作品を残していて、先日は、その素適な歌曲を横浜で聴いたばかり。

マンチェスターの出身だが、バックスと同じくケルトの文化に大いなる関心を抱き、さらに、海を愛したことでも同じだ。
ウェールズの作家アーサー・マッケンに触発されたことも大きいらしい。
マッケンはわたくし、未読だけれど、ケルト臭プンプンの幻想作家らしい。これは是非にも読まねばなるまいの。

レジェンド」は、マッケンに捧げられた音楽で、サセックス州あたりのHarrow Hillという場所に触発されて書かれたという。
そこには、有史以前の城郭の遺跡や鉱山があるらしい。
ピアノとオーケストラのための15分あまりのこの音楽は、幻想味豊かで、古代に思いを寄せるようなミステリアスな雰囲気や抒情的な歌に溢れたもの。
バックスのクールな荒涼感を思わせる壮絶な雰囲気もあって、短いながらにケルテックなアイアランドの音楽の特徴が凝縮されているように思う。

Maiden_castle_dorset

もう1曲、この作品と兄弟のようなオーケストラ作品「Mai-Dun」。
メイデン城という、これもいにしえの遺跡にちなんだシンフォニック・ラプソディ。
リズミカルなメインテーマで始まるが、すぐに静謐なムードに支配され、コールアングレやホルンがとても美しい雰囲気を作り上げ、徐々に情熱的な歌となってゆく。
こうしたノスタルジックな要素や、妖精の舞うようなファンタジー溢れる音楽は、英国音楽を愛する私の最も好む場面。

このCDのメインは「ピアノ協奏曲」。以前取り上げたけれど、こちらの方が親しみやすい音楽かもしれない。その第2楽章の美しさはたとえようがありませぬ。

エリック・パーキンのピアノに、ブライデン・トムソン指揮するロンドン・フィル。
バックスでも素晴らしい演奏をたくさん残したこのコンビの演奏、悪かろうはずがない。
というか他が考えられない・・・。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2006年7月13日 (木)

アイアランド ピアノ協奏曲 ホースレイ

Barbirolli_ireland2日間をかけたココログメンテナンスが終了し、ようやく普通のサクサク感に戻った。この1週間はひどかった。ログインに時間はかかるは、記事は消えるはで、ストレスが溜まるばかり。
しかも、ココログの対応の悪さ。フリーの無料版は影響を受けず、有料会員だけが今回の不具合の被害者。特設ブログには非難の声が山のように寄せられた。この非難も無視、クレームには外注スタッフによるマニュアル対応のみ。復旧した今(本当に復旧したのかしら?)、ココログがユーザーにどのような対応をするのか、サービスを対価で得ていただけに注目が集まるところ。

不快指数満開の今日、一日の終わりにまたイギリス音楽を。
1879年マンチェスター生まれの「ジョン・アイアランド」を聴く。初めてアイアランドを聴いたのが、「Forgotten Rite」という抒情的なオーケストラ作品で、英国作曲家特有のメロディアスタイプという印象で、「これは良いぞ」という思いでCDも集めた。

がしかし、いくつも聴いてみて、いまひとつ焦点が定まらないのである。
抒情派として作風は充分わかっている。モダンな洗練された要素もあり、風刺の利いた皮相的な要素もあり、はたまたフランス音楽のような印象派的な要素もある。といった具合。
これがアイアランドの特徴かもしれない。名士の家の出で、いわゆる「いいとこの坊ちゃん」として順調な人生を送った人ゆえに、ゆとりがあり作風もひとつに拘らなかったのだろう。

今日のCDのメインのピアノ協奏曲は伝統的な3楽章形式だが、ピアノが主役とも言えず、オーケストラも対等に自己主張する幻想的な作品である。ピアノ付きのオーケストラ作品に「レジェンド」という超美しい作品があるが、それと対をなす幻想作品ではないかと思う。
先程のアイアランドの特徴が、すべて盛り込まれているうえ、旋律が親しみやすい。

このCDには、バルビローリ指揮によるオーケストラ作品も収められている。
特に「ロンドン」序曲は、楽しく活気に満ちた大都会を描いている桂曲。
エルガーの「コケイン」にも似た作品。ちなみに原曲は、自身の吹奏楽作品「コメディー」序曲で、これもここに収められている。

いずれまた取り上げたい管弦楽作品や、ジョージ・ウィンストンを思わせるピアノ作品などもある、幸せ感じる作曲家「アイアランド」である。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

いぬ ねこ アイアランド アバド アメリカオケ アメリカ音楽 イギリス音楽 イタリアオペラ イタリア音楽 ウェーベルン エッシェンバッハ エルガー オペラ カラヤン クラシック音楽以外 クリスマス クレー コルンゴルト コンサート シェーンベルク シベリウス シマノフスキ シュナイト シュレーカー シューベルト シューマン ショスタコーヴィチ ショパン スクリャービン スーク チャイコフスキー チャイ5 ツェムリンスキー テノール ディーリアス ディーヴァ トリスタンとイゾルデ ドビュッシー ドヴォルザーク ハイティンク ハウェルズ バス・バリトン バックス バッハ バルビローリ バレンボイム バーンスタイン ヒコックス ビートルズ ピアノ フィンジ フォーレ フランス音楽 ブラームス ブリテン ブルックナー プッチーニ プティボン プレヴィン プロコフィエフ ヘンデル ベイスターズ ベネデッティ ベルク ベルリオーズ ベートーヴェン ベーム ホルスト ポップ マリナー マーラー ミンコフスキ ムソルグスキー メータ モーツァルト ヤナーチェク ヤンソンス ラフマニノフ ランキング ラヴェル ルイージ レクイエム レスピーギ ロシア系音楽 ロッシーニ ローエングリン ワーグナー ヴェルディ ヴォーン・ウィリアムズ 北欧系音楽 古楽全般 器楽曲 小澤征爾 尾高忠明 幻想交響曲 料理 新ウィーン楽派とその周辺 旅行・地域 日本の音楽 日記・コラム・つぶやき 映画 書籍・雑誌 東京交響楽団 東欧系音楽 歌入り交響曲 現田茂夫 神奈川フィル 第5番 若杉 弘 趣味 音楽 飯守泰次郎 R・シュトラウス