カテゴリー「ベネデッティ」の記事

2024年4月20日 (土)

マルサリス ヴァイオリン協奏曲 ニコラ・ベネデッティ

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連日、天候がうらめしくなるほどに雨ばかりだった4月の桜シーズン。

久々の好天に桜見物に出かけました。

こちらは、秦野市。

秦野は県の中央にあって、神奈川県唯一の盆地。

寒暖差があり、名水にも恵まれ、自然豊かな里で、桜の名所が市内にたくさん。

6Kmにおよぶ「桜みち」は圧巻です。

この日は、丹沢から流れる水無川流域を散策

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季節の変わり目、人生の変わり目に、日本の桜はぴったりですが、散るのも早く哀愁も感じますね。

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  ウィントン・マルサリス ヴァイオリン協奏曲

     ニコラ・ベネデッティ

 クリスティアン・マチェラル指揮 フィラデルフィア管弦楽団

           (2017.11.2 @フィラデルフィア)

ウィントン・マルサリスといえば、ジャズのトランぺッターという認識が強く、80年代にジャズのスタンダードをあつめたアルバムを購入してよく聴いていたものだ。
そのあとは、レッパードと共演したハイドンのトランぺット協奏曲があったぐらいの記憶でした。

大好きなヴァイオリニスト、ニコラ・ベネデッティがマルサリスのヴァイオリン協奏曲を録音したので、一応全部の彼女の音盤は集めているので、すぐに購入して一度聴いてのみもう何年も過ぎてしまった。
しかし、今年の1月にBBCで、ベネデッティのヴァイオリン、ロウヴァりとフィルハーモニア管のライブを聴き、とても興奮し感銘も受けたのです。
ジャケットでは年齢を経てふくよかになったマルサリスが、かつての昔、小粋なスタンダードジャスを聴いたあのマルサリスと同一人物であることも、いまさらながらに認識。
ベネデッティのために書いたということ、マルサリスにはほかにもクラシック作品があり、交響曲などもあることもいまさらに認識。

いまいちど、CDを桜の季節に聴いてみた。
この曲は、今現在はベネデッティ(以下、親しみを込めてニッキーと呼びます)の独壇場で、ライブでの録音音源もほかに2種持ってますので、いずれも繰り返し聴いてます。

ジャズの聖地ニューオーリンズ生まれのマルサリスは、ジャズトランぺッターとしての存在を極めてのち、作曲をメインに転じました。
ジャズとクラシックの融合、当然にそのスタイルは相いれないものも多いが、それぞれの共通スタイルを見出すことを前提に作曲をしているという。
その共通項のひとつが、ヴァイオリンであり、フィドルです。
フィドルは、古くはアイルランドのケルト、スコットランド、北欧とくにノルゥエーなどの民族的な音楽、さらにはアメリカのカントリーやブルーグラス系にみられます。
スコットランド出身のニッキーは、ずっと祖国の音楽を好んで演奏してきてます。
そしてこの曲が、彼女のために書かれたこともわかります。
フィドル奏法は、ヴィブラートをかけず、開放弦を多用し、音の移動は巧みに装飾音で飾る、そんなイメージであります。
このCDにカップリングされた、やはりニッキーに書かれた「ソロ・ヴァイオリンのためのフィドルダンス組曲」の方にフィドルの技法はより強く出てます。

協奏曲は、4つの楽章からできてます。
「ラプソディ」「ロンド・ブルレスケ」「ブルース」「フーテナニー」の4つで、全曲で43分の大作です。

①「ラプソディ」
悪夢となり、平和へと進み、先祖の記憶に溶けていく複雑な夢~とマルサリス自身がコメントしてます。
ニッキーのyoutube解説でも、この平和で美しい雰囲気とそのメロディをソロで弾いてます。
夢想的であり、平安と癒しの世界は、バーバーの音楽を思わせるが、フィドル時な要素を含みつつジャジーな傾きも見せるステキな音楽だ。
平安もつかのま、ポリスの警笛もなる中、喧騒も訪れる。
このあとの展開もふくめ、わたしは、マーラーを意識した世界観を感じたものだ。
あとディズニー的な理想郷をも感じさせるラストは、音楽として共感でき、単独楽章としてもいい作品だと思う。

②「ロンド・ブルレスケ」
ブルレスケ=バーレスク
マーラーの9番の3楽章がロンド・ブルレスケ
ブルレスケはカリカチュアや、比喩、こっけいな誇張などを意味することば。
オケのピチカートと楽員たちの足踏みに乗って、ヴァイオリンが高域をキューキュー言わせながら走り抜ける、そんな怪しい雰囲気。
デンジャラス感もあり、しつこいくらいにここでも喧騒なムードを繰り返すなか、ヴァイオリンは超絶技巧のパッケージを連発。
「ジャズ、カリオペ、サーカスのピエロ、アフリカのガンボ、マルディグラのパーティー」と作者は記している。
ジャズ系のパーカョンとともに、ソロヴァイオリンっが繰り広げるカデンツァは、ジャンルの垣根を超えたクロスオーバーの世界。
そのフリーな感覚はなんの論評も不要だろう。

③「ブルース」
前章の後半から続く、ジャズなムード主体のオール・ジャンルな雰囲気で、このまさにブルースは継続する。
泣きの音楽、まさにブルーグラス。
金管はビッグバンド的な様相を呈しつつも、巧みにヴァイオリンソロによりそい、ジャズコンチェルトみたい。
ユニークかつ、どこかで聴いたことあるような音楽は、とても懐かしくそれはまた、いま狂ってしまったアメリカの良き時代へのノスタルジーだ。 

④「フーテナニー」
めちゃくちゃに盛り上がる前半。
オケ員が足を踏み鳴らし、手拍子でリズムをとり、ヴァイオリンソロは無窮動的に合いの手を入れつつ、ついにヴィルトゥオーソの極み、アメリカ版のフィドルが炸裂。
後半は徐々に全体がフェイドアウトしてゆき、フィドル奏者がファンキーな街をあとにして去っていくような、そんなムードとなり静かに終わる。
実演では、ニッキーはヴァイオリンを弾きながらステージを去ります。

ベートーヴェンやブラームス、エルガーの協奏曲と同じくらいの長さ。
そうしたクラシカルな協奏曲にもひけをとらない協奏曲だと思いますが、ヴァイオリンソロはニッキーのようにフィドルが身体に沁みついているようなルーツがないと、面白くないかもしれません。
ニッキーは欧米豪の各オーケストラで、この作品を弾いてますが、残念ながら日本には来ませんね。

録音したライブは、ガフィガンとスコットランド国立菅とのプロムスのものと、ロウヴァリとフィルハーモニーアとの2種を聴いてます。

ロウヴァリとフィルハーモニア管は来年に来日するので演目によっては飛びつきたい、そんな新鮮なコンビなんですがね・・がっかりさせてくれますわ、ベネデッティを連れてきて、この曲をやればいいのに。
今年のロンドンフィル(ティチアーティ指揮)も同じく。
日本人奏者ばかりとの共演で、すべての公演に有名協奏曲がついてる。
メインも有名曲ばかりで、せっかくの英国の名門オケなのに、若い注目指揮者なのに・・・・
ほんとに頭にきますよ、呼び屋さんの問題なんですかね。

話しはそれましたが、このCDで指揮してるマチェラルも、いま大活躍のルーマニア出身の指揮者。
ケルンWDR響とフランス国立菅のふたつのオケを率いていて、レパートリーも多彩だ。

4楽章のさわりを。
ガフィガン指揮するパリ管とのリハーサルです。



このリズムには誰しも反応してしまいます。

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はやくも来年の桜が楽しみ。

日本人は桜がほんと好き。

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2014年8月23日 (土)

ブルッフ スコットランド幻想曲 ニコラ・ベネデッティ

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もう何度も書いてます。

吾妻山の頂きにて。

ほんの15~20分くらいで、スニーカーひとつで、ひょいひょいと登れます。

途中、しんどい箇所はありますが、登れば視界がばっちり開け、富士山から、大山、相模湾まで、見渡すことができます。

わたくしの一番好きな場所であり、懐かしい場所でもあります。

この街に育ったわたくしは、幼稚園のときに遠足で登り、麓の小学校のときに、授業をはじめ、体育やなにかで、始終登ってました。
 当時は、いまのように整備もされてなくて、メインはちょっと下にある吾妻神社で、頂上は、広場がちょこっとあるだけで、木々が茂って、見晴らし云々ではなかったように記憶します。
 クラスで飼っていたウサギがいなくなって、放課後、みんなで、この山に探しに出ました。
猿にやられたとか、蛇が出たとか、いろんな証言があって、みんな必死でした。
勝手な、この行動に、知らなかった担任の若い先生は、教頭先生から大目玉。
 大昔の話ですが、よく覚えてますよ。

懐かしいな~

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   ブルッフ  スコットランド幻想曲

        Vn:ニコラ・ベネデッティ

  ロリー・マクドナルド指揮 BBCスコティッシュ交響楽団

                    (2014.1@グラスゴー)


ブルッフの音楽は、メロディアスで、どこか哀愁もただよい、こちらも懐かしさ満載。

>「スコットランド民謡を自由に用いた管弦楽とハープを伴なうヴァイオリンのための幻想曲」という長たらしい原題をもつ。
 ロバート・バーンズが収集編纂したスコットランド・トラディショナルに感化されて書いた作品は、私にはまだ見ぬ英国高地地方、スコットランド地方の風景を思いおこさせる。

夢見るように遠くを眺めるようなロマンテックな音楽。
 その音楽はまさにドイツ・ロマンティシズムであると同時に、英国独特の詩情にもあふれたみずみずしい桂曲。
 前奏曲を入れて全5楽章、ときにしんみりと、ときに明るく快活に、そして終始ノスタルジックな音楽は、誰しも懐かしい故郷やまだ見ぬ懐かしい風景へとその思いをいざなってくれることだろう。<

以前の記事からそのまま引用しましたが、いまでもこれ以上の言葉はありません。

ドイツの音楽でありながら、スコットランドのテイストがたっぷり。

協奏曲第1番でもって、快活なブルッフを聴かせてくれていた、ニコラ・ベネデッティが4年ののちの今年に録音した「スコテッシュ・ファンタジー」は、明朗快活さはそのままに、しっとりと情感の豊かさも増して、自分の郷里の歌を奏でるかのようにして演奏しております。
 スコットランド地方出身の彼女にとって、この曲は、まさに自国もの。

荘重な前奏のあと始まる第1楽章のノスタルジックな主題の心のこもった歌わせ方には、思わず涙が出そうになりました。
この旋律は、全曲に渡って、形を変えたりしてあらわれてきて、そのたびに、ほっとさせてくれる。
そのあたりのニコラさまの旋律の、いとおしみ方は、女性ならではの優しさと、若い感性のしなやかさでもって、とてもステキなのです。
 元気のいい、一度聴いたら忘れられない終楽章においても、最後の最後に、ふっと立ち止まるように出てくるこの旋律にも、心動かされます。
緩徐楽章の3楽章も魅惑の歌に包まれておりますこと、申し添えます。


単なるビジュアル系の演奏者じゃない、本格派の彼女は、毎回、考え抜かれたアルバムを作りだしてきます。
ヴィヴァルディを中心とした「イタリア」に、銀幕に焦点を絞ったコルンゴルトのコンチェルトアルバム。
 そして、今回は、スコットランドがテーマ。
解説書も彼女自身が執筆していて、いずれ国内盤を買い直そうかとも思うくらいの充実ぶり。
ニコラ自身のパーソナルな思いを、この1枚に集結させていると。
ふたつの異なる音楽、それは、ドイツの作曲家のスコッチと、スコットランド・ネイティブの音楽と。
後者は、自分が子供のときから、ずっと親しんできた音楽の世界。
こんな風に、語ってます。

そう、ブルッフをメインに、のこりはたっぷりと、スコットランドの音楽が詰め込まれてます。
バーンズのトラディショナルを中心に、わたしたち日本人が聴いても、どこか郷愁を覚える曲ばかり。

歌もあります、アコーディオンも、フィドルも奏でられ、ニコラのヴァイオリンとの競演もあります。
彼女の、FBとかツィッターをフォローしてますが、よくスコットランドに帰り、地元の人たちと演奏するのが楽しく書かれてます。

そう、このCDのタイトルは、「HOMECOMING」(帰郷)なのです。

ニコラたんの音盤に、ステキな1枚がまた加わりました。

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過去記事

「チョー・リャン・リンのスコティッシュ」

「タスミン・リトルのスコテッシュ」

「ニコラのブルッフ」

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2013年8月10日 (土)

「イタリア」 ニコラ・ベネデッティ

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房総半島、いすみ市の海浜植物群落。

オレンジ色の花は、スカシユリです。

かつては、一面を覆うようにして咲いていたそうですが、最近は盗掘の被害もあり、ちょっと寂しい状況に。

でも、緑とまばらながらのオレンジのユリ、そして青空が美しいのでした。

右手は、まるきりの海で怖いくらいに波が砕けてましたよ。

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  「イタリア」 バロック・ヴァイオリン協奏曲集

   ヴィヴァルディ  ヴァイオリン協奏曲ニ長調RV.208

   タルティーニ   ヴァイオリン・ソナタ ト長調「悪魔のトリル」

   ヴィヴァルディ  ヴァイオリン協奏曲イ短調RV.358

   ヴェラチーニ   「ラルゴ」

   タルティーニ   ヴァイオリン協奏曲イ短調D.115

   ヴィヴァルディ  「まことの安らぎはこの世にはなく」

              ヴァイオリン協奏曲 「夏」


        Vn:ニコラ・ベネデッティ

    クリスティアン・カーニン指揮 スコットランド室内管弦楽団

                     2010.5、6 @エディンバラ、9@ロンドン)


夏の日に取り上げようと思っていた、わたしの大好きなニコラ・ベネデッティのバロックもの。

そう、ニコラたん、こと、ニッキーですの。

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3年前に録音されたこのアルバムは、イタリアバロック時代の協奏作品を、彼女の地元オケとともに演奏しておりまして、まことにハツラツ、俊敏、そして大らかな、彼女ならではの演奏になっているのでございます。

セールスビデオも拝見しましたが、こちらのジャケットもともに、60年代後半のセピア調のイタリアの街の古家を舞台にモティーフにしているようでございます。

このように画像は、セピアに染まるニコラたん、なのですが、その音楽は、彼女の持ち味である、奔放で明るい、ちょっと男まさりの快活なものなのでした。

「悪魔のトリル」のオーケストラバージョンは初めて聴きましたが、室内楽バージョンと違い、響きが多きすぎて求心力に欠けるうらみはございましたが、ニコラさまの大胆かつ、思い入れの込めたソロには魅かれますねぇ。

おおきなくくりでは英国人ですが、彼女はスコットランド人。
男まさりな大胆さと、繊細さが同居するようなハッキリとしたヴァイオリン演奏です。
その顔立ちも、少しのエキゾシズムと、端正な気品とが同居するお美しさ。
もう、わたくし、メロメロなんです。

予想通りに、きりっと、テキパキと運ばれるヴィヴァルディは、甘さも情緒も少なめながら、その大胆な表現の一方で、緩徐楽章における大らかな歌にはほとほと聴き惚れてしまいます。
その宗教曲から編曲された「まことの安らぎはこの世になく」は、リュートやテオルボも鳴り、古雅な雰囲気の中に、牧歌的にヴァイオリンがシンプルに歌いまくる。
彼女の本領のひとつでしょう。

そして、「四季」は、昨今もっと過激でダイナミックな演奏が多いですが、ここで演奏されている「夏」での、ニコラの演奏は、オケとともに基本ヴィブラート少なめ、ピリオドと呼べるほどじゃない、ほどよい潤いがそこある。
でも侮ってはいけません、ずばずばと弾きまくり、猛然たるアタッカやキレのいい楽想の処理。カッコいいのです。

この次は、是非とも鮮烈なる「四季」を全曲聴かせて欲しい。

そして、本格クラシカルにこだわり、変な路線に向かわないで欲しい。

コルンゴルトに酔わせてもらったから、次はバーバーを弾いて欲しい。

そして、ディーリアスやバックス、ハゥエルズなどの英国ヴァイオリンソナタを取り上げて欲しい。

ファンとは勝手なるのもで、そのような願望は次々と湧いてくるのでありました。

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はいはい、それでは、この音盤のプロモーション映像をば。

ニッキーの魅力をもっと弾き出す録音を希望!

そしてもうひとつ、録音セッションから。

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2013年5月11日 (土)

ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ベネデッティ

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毎年、5月の始めがツツジの満開なのですが、今年は桜に続き早かった。

もう咲き終わりの吾妻山。

でも空と緑、アゼリアのコントラストは完全に美しい。

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もう1枚、こちらは自宅の団地の法面。

連休前、4月末。

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  ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調

      Vn:ニコラ・ベネデッティ

  ヤクブ・フルシャ指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

                  (2010.1,2 @ドヴォルザークホール、プラハ)


最近、わたくしがお気に入り(夢中?)のニコラ・ベネデッティ(ニコラたん)のブルッフ。

シマノフスキでデビューするというビジュアル路線の掟破り的本格派のニコラ。
その音源はまだそんなに多くはないけれど、先ごろも、わたくしの愛するコルンゴルトの協奏曲に早くもとりくんでくれて、狂気したばかり。
イタリアバロックの1枚も、渋いところを突いた1枚で、近々UPします。

しかし、レコード会社も売るためには有名曲も録音しなくてはならない、ということで、モーツァルトやメンデルスゾーンの協奏曲、チャイコフスキーの協奏曲などもこうして演奏しております。

そんななかで、彼女がもっとも得意とするのがブルッフ。
チャイコフスキーは正直、飽いてしまい右から左に聴き流してしまう傾向があるけど(ムターとプレヴィンのものは、いまだにカップリングのコルンゴルトしか聴いてないという事実)、好きなブルッフは、この音盤でもう何度も聴きました。
去年のプロムスでは、協奏曲とスコットランド幻想曲を弾いて大受けされてました。

彼女の陰りのない健康的なヴァイオリンは、ロマンティックでほの暗さのあるブルッフの協奏曲をすっきり爽快に、伸びやかに聴かせてくれます。

ブラームスより5つ下、ビゼーやチャイコフスキーとほぼ同世代のブルッフは、この協奏曲と幻想曲、コル・ニドライなどだけが有名で、交響曲や室内・器楽、オペラもと、オールジャンルに作品を残したものの、その生涯も含めて、ちょっと謎な人です。
オペラなんて、どんなのだろうと興味シンシンですよ。
でも、どうしてもこの協奏曲とスコットランドが素敵な曲です。
形式からは自由なようで、音楽全体に旋律からいっても統一感があって、ブラームスにはない幻想味と、ほのかな粘りのようなものも魅力的。

ほとばしる情熱や強烈な個性はないものの、ニコラのヴァイオリンは正統派で音色の明るさと、そのポジティブな雰囲気は、わたしにはとても微笑ましくて、単なる美人で終わらずに、本流をしっかり歩んでいって欲しいと願う、お父さん的な気持ちです。

お馴染みのフルシャとチェコフィルがバックをつとめるという贅沢ぶり。
ホールトーンが美しく、録音は実によろしいが、ここは何もチェコフィルじゃなくて、ロンドンのオーケストラでよかったんじゃないかな。

ニコラさまには、先輩タスミン・リトルの道を歩んでいただきたく、英国ものを極めて欲しいデス。

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そんな目で見ないでいただきたい。

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ハイ、カット!

過去記事

「シマノフスキ ヴァイオリン協奏曲」


「コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲」

「プロムス2012 ブルッフ スコットランド幻想曲」

「プロムス2012 ブルッフ ヴァイオリン協奏曲」 

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2013年4月 6日 (土)

シマノフスキ ヴァイオリン協奏曲第1番 ニコラ・ベネデッティ

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先週末、千葉の平山大師。

この紅枝垂れだけが咲き残っておりました。

鮮やかな色合いです。

昨日は、寝不足に加え、いろんなことがおきて、ドラマティックな一日でした。

そのことは、いずれまた、その思いを書いておきたいと思います。

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  シマノフスキ ヴァイオリン協奏曲第1番

        Vn:ニコラ・ベネディッティ

    ダニエル・ハーディング指揮 ロンドン交響楽団

                  (2004 @ロンドン)


カロル・シマノフスキ(1882~1937)は、分裂時のポーランド生まれ、その生没年からわかるとおり、世紀末系の作曲家。
55歳での死去は、いまからすれば早すぎるもので、なかなかに劇的なその人生は、その早世を肯かせるものでもあります。

裕福な家庭に育ち、ふんだんな音楽教育を受け、ポーランド音楽界の新たな流れの会にも影響を受け(カルウォヴィチの後輩)、その後ヨーロッパ各地を楽旅。
帰還後、ロシア革命の一派による襲撃を受けるなどして、裕福だった家も没落してしまい、困窮と病の中に亡くなってしまう。

その人生を裏付けるように、シマノフスキの音楽作風はそれぞれの時期に応じて変転し、大きくわけると、3つの作風変化があるといいます。

後期ロマン派風→印象主義・神秘主義風→ポーランド民族主義風

その人生にあてはめると、裕福時代→楽旅時代→帰国後の苦難時代、という風になるかと思います。

まだシマノフスキ初心者のわたくしで、多くは聴いてませんが、4曲ある交響曲のうち以前取り上げた第3番「夜の歌は、真ん中の印象主義・神秘主義風時代のもので、ペルシャの詩につけたミステリアスな交響曲でした。

そして、今回のヴァイオリン協奏曲第1番も、まさにその時期に位置する実にナイスな存在なのです。
1915~16年に作曲。
ポーランドの哲学者・詩人のタデウシュ・ミチンスキの詩集「5月の夜」という作品に霊感をえた作品。
ミチンスキの詩集「星の薄明かりのなかで」という作品に、先に6つの歌曲をつけていることから、この詩人を知ることになったとされます。
その詩を是非読んでみたいと思います。
音楽を先に知り、その元となった文学作品を確認するというのも、なかなかに好奇心をあおるものでして、ことにこのシマノフスキ作品のようにいろんな要素が多面的に織り込まれているところを聴くとなると、ますます知りたくなります。

曲は単一楽章で、約27分の標準協奏曲サイズ。
打楽器多数、ピアノ、チェレスタ、2台のハープを含むフル大編成のオーケストラ編成で、それに対峙するヴァイオリンも超高域からうなりをあげる低音域までを鮮やかに弾きあげ、かつ繊細に表現しなくてはならない、難易度の高いソロです。

鳥のざわめきや鳴き声、透明感と精妙繊細な響きなどドビュッシーやラヴェルに通じるものがあり、ミステリアスで妖しく、かつ甘味な様相は、まさにスクリャービン。
そして、東洋的な音階などからは、ロシアのバラキレフやリャードフの雰囲気も感じとることができます。
これらが、混然一体となり、境目なく確たる旋律線もないままに進行する音楽には、もう耳と体をゆだねて浸るしかありません。
こんな聴き方をすること、瞬くような流れの音楽、こうした類の音楽に、わたしはいつも快感を覚え、脳内細胞が時には活発になり、そして時には緩やかにほぐれていくのを感じとることができます。

ともかく、わたくしの音楽嗜好にストレート・マッチしたシマノフスキのヴァイオリン協奏曲なのです。

そして、わたしの大好きなニコラ・ベネデッティが弾いているんだもの。好きになりますわな。
DGデビューのこの音源は、実は録音してすませていたところ、最近ちゃんと購入したら、レーベルがデッカになって、その刻印がジャケットにしっかり押されてました。
ビュジュアル派のヤワな存在とは違う本格派の彼女。
先生のひとりがポーランド人だったこともあり、この方のサジェストでシマノフスキを知ることになり、レコーディングに結びつきました。
時に奔放に、時にロマンテッィクに、でもニコラらしい健康的なヴァイオリンがとても清々しく、曲の魅力とともに、何度聴いても飽くことがありません。

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カワユク美しいニコラたん

少し前、日本に来てたんですねぇ。

過去記事

「コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲」

「プロムス2012 ブルッフ スコットランド幻想曲」

「プロムス2012 ブルッフ ヴァイオリン協奏曲」

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2012年11月16日 (金)

コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲~THE SILVER VIOLIN ベネデッティ

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日本橋三越のイルミネーション、11月最初から始まってます。

毎度、申し上げますが、イルミネーション大好き、クリスマスのきらきら大好きおじさんです。

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近づいて、下から見上げて。

ツリー・イルミネーションは、こうして、接近してその飾り付けと照明の具合いをアップして見るのがいいんです。

子供の頃に、庭には樅の木があって、父親がシーズンになると、鉢に植え替えて、室内に運び込んでくれました。
そこに嬉々として、毎年お決まりの飾りを姉弟で付けてゆくのでしたが、どれをお互い付けるか、暗黙の了解がありました。
ツリーのてっぺん、一番星は、わたしに譲ってくれる優しい姉でしたね。
う~ん、しみじみ・・・・・。

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  「SILVER VIOLIN」   ニコラ・ベネデッティ

銀のヴァイオリン、その音色が銀色のように、モノトーンの美しい光沢を帯びた音色、とそのイメージの作品。

シネマ、そう、銀幕(Silver Screen)の音楽が、そのテーマ。

若いけれども、そのビジュアルに反して、本格クラシカル路線を歩むニコラ・ベネデッティに相応しい。

スコットランド生まれ、ゆえに、少しエキゾティックで彫りの深い容貌の美女、ベネデッティ。
デビューは、DGからシマノフスキのヴァイオリン協奏曲で、ビジュアル、ポピュラー路線と一線を画していたところからすでにワタクシのお気に入り。

タスミン・リトルと並んで、英国系女流はともかく無条件に好きなんですが、ついにやってくれましたよ、コルンゴルト

  1.J・ウィリアムス  「シンドラーのリスト」

  2.コルンゴルト   「死の街」~ピエロの歌

  3.ガルデル     タンゴ「首の差で」

  4.ショスタコーヴィチ  「馬あぶ」~ロマンス

  5.コルンゴルト   ヴァイオリン協奏曲

  6.ヘス        「ラヴェンダーの咲く丘で」メインテーマ

  7.ショスタコーヴィチ  「呼応計画」~アンダンテ

  8.マリアネッリ   「ジェーン・エア」

  9.ハワード・ショア 「イースタン・プロミス」

 10.マーラー     ピアノ四重奏曲 断章

 11.ショスタコーヴィチ  5つの小品~プレリュード

 12.コルンゴルト   「死の街」~マリエッタの歌

                  Vn:ニコラ・ベネデッティ

     キリル・カラヴィッツ指揮 ボーンマス交響楽団

                 (2012.4,6 @サウザンプトン)


何故に、マーラーがここにあるか不明ながら、ロマンティックなその習作は、上記のこの流れを阻害することなく、ノスタルジーと甘味なる調べがテーマともなっている銀幕音楽の中にしっとりとおさまっているから不思議であります。

どの曲も、それぞれにメロディアスで麗しいのですが、やはりわたくしにとってコルンゴルトは特別の存在と思うにたる3つの作品があまりに素敵なのです。

来シーズン、再来年に新国立劇場で上演される「死の都」から、とりわけ素晴らしいふたつのモノローグは、ともかく美しく、退廃的なまでに甘くやるせない。
通常、歌を伴っての作品ですが、こうしてオケ部分はそのままに、ヴァイオリンで聴くと、まるで人声のように、どこまでも歌があってヴィブラートも歌でならやり過ぎと思うものも、全然OKで、素直に酔いしれることができます。

ベネデッティ、いや、ニコラちゃんのヴァイオリンは、意外なまでに淡泊で、妙に媚びていないところがよいんです。

そして、わたくしの3大ヴァイオリン協奏曲のひとつ。
ここでは、ハリウッドに本人の意思はともかく名を残し、後世のJ・ウィリアムズにまで影響を与えたという意味で、本CDの核心になってもいます。
詳細はわたくし自身検証できてませんが、この協奏曲の主題のいくつかは、コルンゴルトの書いた映画作品のものが転用されてます。そういう意味でも銀幕音楽でしょうね。

本題のこの曲は、なにをおいても、その音楽があまりに素敵なのだ。
ふとした時に、電車に乗っているときに、人と話しているときに、そして夢の中に、頭に佐村河内やディーリアスやワーグナー、シュトラウスらとともに、めぐってくる音楽なのです。
それだけ、血肉と化しているんです。

伝統的な3つの楽章の構成で、幻想風な1楽章、あまりに甘味(本稿で何度書きましたでしょうか、この言葉)で郷愁あふれる第2楽章。
無窮動的なせわしなくもユーモアにも満ちた3楽章。

ニコラちゃんのヴァイオリンは、正直まだ味が薄く、健康的にすぎるきらいもあります。
でも、若さみなぎるハツラツ感は、聴いていてビジュアル以上の若さを体感させてくれます。
こんな健康的なエロ眩しさも、コルンゴルトの音楽にお似合いなのです。

またお気に入りのこの曲の演奏が加わりましたよ。

ボーンマス響の首席、カラヴィッツは、ウクライナ出身の注目株です。
こちらも落ち着いたいい雰囲気出してます。

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ニコラた~ん。だいしゅき(酔ってます)。

彼女のホームページで素敵な映像も見れますよ。

http://www.nicolabenedetti.co.uk/

Nihonbashi_mitsukoshi_2

玉のなかに、わたくし映ってます。

コルンゴルトの協奏曲。

きっと石田コンマスが弾いたらいいと思ってましたが、先日藤沢で演奏してくれました。
あいにく、聴くことはできなかったのですが、神奈川フィルで現田さんまたは、ゲッツェルの指揮でなにがなんでもやっていただきたい曲のひとつでございます

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2012年9月12日 (水)

プロムス2012 後半

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この夏、世界中がロンドンに注目。

パラリンピックも終了し、同時に音楽の祭典、プロムス2012もラスト・ナイト・コンサートでもって終わりました。

ほぼ2ヵ月間、オーケストラコンサートを中心に毎日行われたその模様は、全部BBCのストリーミング放送でもって世界中に配信されるという、開かれた文化発信のBBCの姿勢は、大いに評価すべきです。

8月の後半以降、聴いた気に入ったプログラムのみを、ここに記録しとこうかと思います。

⑰ディーリアス ヴァイオリン協奏曲、ショスタコーヴィチ 10番

     Vn:タスミン・リトル

  ヴァシーリー・ペトレンコ ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック


 CDにもなっているタスミンのディーリアス。彼女はヴァイオリンのデュ・プレだ。 
 
 明朗快活、陰りも充分、歌いに歌うピュアなヴァイオリンは、ほんと気持ちいい。
  ペトレンコのタコ10は、スピーディで疾走感あふれる快演だった。

⑱ブリテン 「ピーター・グライムズ」

     ステュワート・スケルトン、アマンダ・ロウクロフト、イアン・ペテルソン
     マテュー・ベスト、フェリシティ・パーマー

  エドワード・ガードナー  イングリッシュ・ナショナルオペラ


 
 
Peter_grims

 自国最大のオペラ作曲家ブリテンの代表作を演奏会形式・セミステージ風上演。
 
 
 10月の新国でもタイトルロールを歌うスケルトンが、実に没頭的な歌唱で素晴らしい。
 
  携帯音源として、日々楽しんでます。
オペラ全体に散りばめられた、有名な海の間奏曲をはじめ、聴き応え充分。
ガードナーは、期待の英国音楽演奏の継承者。

⑲パルシファル、ベルク ヴァイオリン協奏曲、ばらの騎士、ラ・ヴァルス

         Vn:F・ペーター・ツィマーマン

     ダニエル・ガッティ  マーラー・ユーゲント・オーケストラ


 渋いプログラム、でも、アバド以来続く、このオケのバックボーン的な曲目ばかり。
  ガッティの思いのほか着実で手堅い演奏。
  ツィマーマンとのベルクでは、歌謡性豊かで、とても美しかった。

⑳ドビュッシー フルート・ヴィオラ・ハープのためのソナタ
 
  シェーンベルク  ピエロ・リュネール

         S:クリスティーネ・シェーファー

      マーティン・ブラビンス  ナッシュ・アンサンブル


  ドビュッシーとシェーンベルクというナイスなショートプログラム。
  シェーファーの蠱惑的かつ、没頭的な演じる歌があまりに素晴らしい。
  バッハもルルもしっかり歌う彼女。どうも、わたしはあのホクロが好きなんだな。

㉑ハゥエルズ 「楽園讃歌」  エルガー 交響曲第1番

        ミア・パーション、アンドリュー・ケネディ

     マーティン・ブラビンス  BBC交響楽団/合唱団
                     ロンドン・フィルハーモック合唱団


Howells


  今年のプロムスの中で、尾高さんの英国ものと、ハイティンク&ウィーンとともに、
  もっとも注目していたコンサート。
  英国音楽好きのわたしですが、なかでも最も好きな曲がふたつ。
  ハゥエルズの我が子の死への想いを込めた鎮痛かつ、慰みに満ちた合唱作品。
  ブラビンスは心を込めて演奏してくれました。
  ミア・パーションの清純無垢なソプラノも泣けました。
   いつも陽気な、RAHに集まった聴衆も神妙に集中してます。
  後半のエルガーでは、ブラビンスが、ヒコックスの後継者として決まり、
  とわたし的に思わせる、納得の演奏。

㉒リゲティ アトモスフィール、ローエングリン前奏曲、シベリウス 4番
  ドビュッシー 遊戯、ラヴェル ダフニスとクロエ組曲

       サイモン・ラトル  ベルリン・フィルハモニー管弦楽団


  なんと、見事なプログラミング。リゲティとローエングリンは連続して演奏。
  そして、精緻なシベ4へと続きました。
  底光りするようなベルリンフィルの凄さを感じ、また後半のドビュッシーと
  ラヴェルでは、ラス細工のような音色と、きらめきと爆発力に感嘆。

㉓メシアン われ死者の復活を待ち望む マーラー 6番

      リッカルド・シャイー ライプチヒ・ゲヴァントハウス


  なかなか長大・充実のプロ。
  まさかのゲヴァントハウスのメシアン。
  これが新鮮で、シャイーはこういうのがいい。
  マーラーは、明るく軽快に聴こえましたが、集中力常に高し。

㉔シェーンベルク 5つの小品、パリのアメリカ人

      デイヴィット・ロバートソン セントルイス交響楽団


  前半のドイツものはスルー。お得意のシェーンベルクは切れ味よく、かつ説明的。
  ラスト、ガーシュインはノリノリで、アンコールはキャンディードときた。
  このコンビ、かつてのスラトキンのようになるか。
  ロバートソンはもっと聴かれていい指揮者。日本のオケが捕まえとくべき。

㉕アダムス 「ニクソン・イン・チャイナ」

      カスリーン・キム、アラン・オーケ、ジェラルド・フィンリーほか

     ジョン・アダムス BBC交響楽団  BBCシンガーズ


  3幕の長大なオペラのセミステージ上演。
  ながら聴きも半分、録音したのでいずれレヴューしたいと思います。
  クセになる音楽の一種であります。

  こんなオペラをやってしまうプロムスがすごい。
  ちなみに、今年のプロムスのオペラは、「トロイ人」「ペレアスとメリザンド」
  「女王のボディガード(サリヴァン)」「フィガロ」「ピーター・グライムズ」
  そして、「ニクソン・イン・チャイナ」

㉖ベートーヴェン ピアノ協奏曲第4番  ブルックナー 交響曲第9番

       Pf:マレイ・ペライア

    ベルナルト・ハイティンク ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


Vpo

  もう、なにをか言わんや、この素晴らしいハイティンクならではのプログラム。
  ペライアの透明感とともに、雄弁さも兼ね備えたベートーヴェンはいい。
  そして、ハイティンクのブルックナー。
  もったいなくて、1楽章のみの視聴でお預けとしました。
  録音したので、これもまたいずれ。

㉗ハイドン 104番「ロンドン」 R・シュトラウス 「アルプス交響曲」

   ベルナルト・ハイティンク ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


  これもまた充実極まりないプログラムに、その演奏。
  至芸品のような手作り感溢れる名演。
  活気あふれるハイティンクのハイドンは、録音が少ないのが残念。
  かつて、ロンドンフィルと録音していたフィリップス盤を復刻希望。
   そして、ハイティンクの定番となったアルペン。
 
  堂々たる構えで、恰幅よろしく、でも重ったるさはひとつもなく、どこまでも明快。
  ウィーンフィルも、ときおりやらかしてますが、夢中の演奏ぶり。いい!
   アンコールは、驚きのウィンナ・ワルツ、「春の声」でした。


㉘ラスト・ナイト  

Nikola_2

  シンプソン、スーク、ディーリアス「告別の歌」、オペラアリア
 ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 J・ウィリアムス オリンピックファンファーレ
 ドヴォルザーク 「謝肉祭」、ショスタコーヴィチ「くまあぶ」・・・・あとはいつもの。

      Vn:ニコラ・ベネデッティ

      T:ジョゼフ・カレヤ

   イルジ・ビエロフラーヴェク  BBC交響楽団 合唱団


  ビエロフラーヴェクの任期、最後の出演となるのでしょうか。
  ディーリアスの「告別の歌」が実にしんみりと演奏されました。
   だが、さしもの自国物とはいえ、部分部分で拍手が入ってしまう・・・。
  快活なニコラたんのブルッフは素敵すぎ。
  カレヤはちょっと好みの声じゃないけど、盛り上がり大。
  5月にCBE勲章を叙勲したビエロフラーヴェクの指揮する後半は、自国物と、
  英国の国歌みたいな各曲をユーモアたっぷりで、そして有終の美に輝く演奏。

Jili


以上、プロムス2012おしまい。

今年は、オリンピックがあって、実に賑やかで多彩な演目。

それとディーリアスを中心に英国音楽も多々演奏され、実に嬉しいことでした。

そんななかで、久々登場の尾高さんが誇らしく思えます。

BBC系の各地のオケとロンドンの各オーケストラの実力もまざまざと感じましたね。

外来常連の、ベルリンとウィーンのオケのスーパーぶりも引き立ってました。

画像は、BBC放送のサイトより拝借。

プロムス2012 前半

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2012年8月25日 (土)

プロムス2012 前半

London_a

一部、後味が悪かったものの、オリンピックは成功裡に終りました。

次は、パラリンピックですね。

そして、ロンドンの音楽のお祭り、プロムス2012は、まだまだ継続中。

2か月に渡って、ロイヤル・アルバートホールで繰り広げられる音楽祭の数々。

例年にも増して、英国各地のオーケストラと英国人指揮者、そして英国作曲家の名前が目立つ今年のプログラム。

100演目近いコンサートをいくらなんでも全部はチェックできません。

好みのプログラムだけ、ネット試聴したり、録音しましたので、簡単に前半戦をレビューしときます。

Proms2012

①4人の英国指揮者による英国作品・・・・既報

②ドビュッシー ペレアスとメリザンド

  ガーディナー指揮・・・・いかん、半分しか聴けなかった。
   情を切りつめたあっさり系でした。

③スメタナ(セル編曲) 「わが生涯より」、ドヴォルザーク7番

  ビエロフラーヴェク指揮 BBCso

   セルによって編まれたオケ版スメタナが、まるでシンフォニーのようで素敵。
  ドヴォルザークも充実の演奏。この指揮者はもう大物級です。

④ブリテン シンフォニア・ダ・レクイエム、マーラー 10番
  ストラヴィンスキー 「春の祭典」

   マーク・エルダー指揮 オールドバラ・ユースオケ

  魅惑のプログラム、ブリテンゆかりの地の勉学生による、やるきあふれる演奏。
  ハルサイは、はやり若者の音楽だ。

⑤尾高忠明指揮 BBCウェールズso  オール英国もの・・・既報  最高っ

⑥ワーグナー 「ジークフリート牧歌」、ブルックナー8番

    ドナルド・ラニクルズ指揮 BBCスコテッシュso 

  ワーグナー指揮者による熱演。テンポ早し。
  スコットランド出身の左手による指揮棒は、本物ですよ。

⑦「マイスタージンガー、スコットランド幻想曲、ドン・ファン、ローマの松」

       Vn:ニコラ・ベネデッティ

     ドナルド・ラニクルズ指揮ナショナル・ユース・オケ・スコットランド
                     BBCスコテッシュso

Benedettinicola

  盛りだくさんのプロ。好きな曲ばかり。
  わたし大好きニコラちゃんのおおらかなブルッフ。
  ダイナミックなローマの松は超盛り上がり。

⑧バーンスタイン  ミサ曲

     クリスティアン・ヤルヴィ指揮 BBCウェールズso
                        合唱、歌手多数

  ライブでは初聴きの曲。この曲のスペシャリストのヤルヴィ二男。
  主役歌手がイマイチだけど、全体にノリノリの好演。
  ビデオ・クリップで映像が数分見れます。
  クリスティアンは、親父ネーメと、ジョン・トラボルタを足したような顔しとる。

⑨エルガー 「アポステルズ(使徒たち)」

      エヴァンス、ケンプスター、グローヴスほか

    マーク・エルダー指揮 ハルレ管、合唱団、LPO合唱団

  エルガーらしい真摯なる音楽。CDでかなり聴きこんだ音楽は聴けば聴くほど感動的。
  この曲は、いまエルダーが一番かも。
  エルガーの3大オラトリオ、じっくり聴いてみて欲しいと思います。

⑩シェーンベルク 「グレの歌」

      デノケ、オニール、シェーネ

    エッカ・ペッカ・サラステ指揮 BBCso cho

    まずなにより、曲が好きだし、素晴らしいシェーンベルクの音楽にしびれちゃう。
  歌手も万全。世紀末系はデノケですよ! 
  そして、往年のアンフォルタスやシェーン博士のシェーネの味わい深い語り。
  ワーグナー歌手としても注目のオニールのヴァルデマール。
  サラステの指揮も意外なほどいい。
  最初は、ビエロフラーヴェクの名前だったような気が・・・

⑪ディーリアス「パリ」、サン=サーンス ピアノ協奏曲2、チャイコフスキー5番

      シャルル・デュトワ指揮ロイヤル・フィルハーモニー
        Pf:B・グロスヴナー

  デュトワのディーリアスとはまた珍しい。さすがにカラフルなパリっ!
  定番チャイ5は、新コンビRPOとの相性ばっちり、ビューテフル。

⑫ドヴォルザーク「新世界」、コープランド「市民のためのファンファーレ」
  ヴィラ・ロボス、ほかブラジル系音楽

      マリン・オールソップ指揮 サンパウロso

  情に流されない、意外なほどにまっとうな美しい新世界。
  後半はラテン大会で、大盛り上がり!!
  次回オリンピック開催国からの来演。
  世界のオケの一員として注目かも。

⑬ヴォーン・ウィリアムズ 交響曲第4、5、6番

      アンドリュー・マンゼ指揮BBCスコテッシュso

    こんなプログラムは、英国プロムスならでは。
  4・5・6ですよ。
  4と6は戦争の影もあり、激しさと不条理さが響き合うが、5番は田園的柔和さ。
  5番がとても美しい演奏でした。
  マンゼは、ヴァイオリニストとして、バロックから近現代まで、指揮者としても
  ヨーロッパ全域で活躍中。
  この人ブレイクしますよ、きっと。

⑭チャイコフスキー 「マンフレッド交響曲」

  ウラディミール・ユロフスキ指揮ロンドン・フィルハーモニック

  俊敏でダイナミック、でも、こけおどしのない純音楽的なチャイコ。

⑮フィンジ「バガテル」より、ディーリアス「エヴェンテュール」、ニールセン5番

     Cl:マイケル・コリンズ

   オスモ・ヴァンスカ指揮 BBCso

   前段はエグモントとモーツァルトのCL協、ヴァンスカらしいユニークなプロ。
  ヴァンスカのディーリアスは、ミステリアスな「昔々・・・」で始まるディーリアス。
  オケの声による咆哮は大人しめだったけれど、雰囲気豊かなディーリアスが聴けた。

⑯ショスタコーヴィチ 交響曲第7番「レニングラード」

   アンドリス・ネルソンス指揮 バーミンガムシティso

    弾むリズムに、生き生きとしたフレーズ。巧みな聴かせどころの盛り上げ。
  若きヤンソンスを思わせる絶好調男ネルソンスだ。
  オケも実に上手い。

前半、というか、残り、3分の1。
これから大物が登場して、楽しみも増します。

BBCは、こうして全演目、ストリーミング放送をしてくれます。
以前は、1週間限定だったけれど、日によって1ヶ月以上そのままだったりしますので、その加減がよくわかりません。
ソリストがいない場合とか、BBC放送系のオケだったり、と想像するのですが不明。
本国内ならば、映像もタダで楽しめるみたい。

わが国営放送の厳然としすぎた管理下におかれた各種音源たちの扱いと、大違い。
いずれにしても、毎年ありがとう、BBCッて感じですよ。

後半は、また9月半ばに。

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